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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
戦争編Ⅱ-海獣大決戦(?)の章-
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第55話 ボーナス屋、夜に起こされる

――港町ヴァール 冒険者ギルド――


 依頼の達成報告をした俺達はそれなりの報酬を受け取った。


 なお、倒した魔獣達は色々あって漁協側が引き取ることになった。


 聞いた話だと、カニとイカに関しては住民達の今夜のご飯になる予定だそうだ。


 ドラゴンとキメラに関してはギルドや商人達を介して各種素材を売却し、その収益は港や船の修繕、今回の一件で損失を被っている漁師達への補償、領主への税などになるらしい。


 あと鮫に関しては・・・



「おい聞いたか?例の調査船が持って帰ってきた魔獣の話!」


「ああ、死んだと思ってた魔獣が脱皮して逃げたんだってな!俺も見たかったぜ!」



 ギルドに依頼を探しに来た冒険者達が街中で話題になっている話で盛り上がっている。


 そう、あの何だか無駄に丈夫な鮫は実はまだ生きていた!


 俺達がギルドに行くために漁港から離れようとした直後、死んだと思っていた鮫の背中がパカッと割れ、中か幾分小さい鮫が飛び出して外海へと逃げていったのだ。


 あまりに予想外な展開にその場にいた全員がポカンと立ち尽くすしかなかった。


 脱皮って、あの鮫は蛇か!?


 まあ、あの鮫は魚の減少には関わってなさそうだから逃げても問題はないだろう。


 今頃は次の海を目指してるはずだ。




--------------------------


 ギルドを出ると、そこにはツンデレマグロ―――――ヒューゴとケビンの祖父さんが仁王立ちしていた。


 その背後には魚がたくさん乗せられた荷車がある。



「ガキ共、これを持ってけ!」



 ツンデレ爺さんは横に一歩ずれ、魚がたくさん積まれた荷車を指差す。


 え、これってもしかしてお土産?



「知り合いの店が魚が売れ残ってたからよ、捨てるの勿体無いからお前らが何とかしろ!!」


「命令すんな!!」


「お兄ちゃん、落ち着いて!」



 ヒューゴは相変わらずガルルと祖父さんと睨み合っている。


 それにしてもツンデレ爺さん、魔獣のせいで漁獲量が減っているのにこんなに魚が余る訳ないだろ。


 俺から見たらどう考えても孫へのプレゼントだろ?


 きっと迷わず財布の口を開けて買い集めてきたんだろうな。荷車も。



「え~と、魚ありがとうお祖父ちゃん!」


「フ、フン!これに懲りたら2度と危ない真似はするんじゃないぞ!!」


「ハッ?ジジイこそ、船ごと海に沈まないようにさっさと隠居するんだな!」


「お兄ちゃん、素直にお礼を言おうよ。」



 何だかたった1日でこの光景に見慣れてしまったな。


 まあ、すぐに打ち解けあうのは難しいだろうけど時間が経てば何とかなるよな?



「フン!じゃあな、ジジイ!」


「余り物が欲しければまた来るんだな、ガキ共!」



 そこは素直に「また来てね♡」って言えばいいのに・・・。


 そして俺達はツンデレ爺さんと別れて村へと帰った。


 別れ際、爺さんのどこか嬉しそうで寂しそうな顔が目に入った。




--------------------------


――ファル村――


 ケビンの魔法で村に戻ると、村の入口の前で地面に付した甲冑1と、その上で勝利の雄叫びを上げるコッコくんがいた。



『ゴケ~~~~~~~~~!!』



 一体何があったんだ・・・?


 あ、コッコくんのレベルがまた上がってる。


 気のせいかも知れないけど、金色の羽根がより一層輝いているようだ。



「・・・何があったんだ?」


「さあな?」



 俺達はコッコくんに軽く挨拶をして村に入っていった。



「あ!お帰りになったんですね、勇者様!」


「ただいま、アンナちゃん♪」


「何だか凄い量の魚ですね?」



 入ってすぐに会ったアンナちゃんは荷車に積まれた大量の魚に驚いていた。


 今更だが、ツンデレ爺さんがくれた魚は本当に大量だ。


 その後、俺達は手分けをして村中の各家に貰った魚をお裾分けしていった。


 勿論、一番いい魚はヒューゴ達の分に残してある。



「あら、お帰り!」


「お母さんただいま!」



 ヒューゴとケビンのお母さんことボーラさんは温かくヒューゴ達を待っていた。


 そして魚の積まれた荷車を見ると、どうやら一瞬で察したらしく複雑そうな表情になった。


 ここから先は家族の問題だから俺とアンナちゃんは挨拶だけして去った。


 その日の夕飯は当然ながら魚尽くしだった。


 俺としては刺身も食べたかったけど、流石に醤油やワサビがないから諦めた。


 今度、銀耀に頼んで地球から持ってきてもらおうか?それともボーナスの通販で交換するか?





--------------------------


 俺が無理矢理起こされたのはまだ日も昇らない、夜と朝の境目位の時間だった。


 正直言って、この時間帯はマジで眠い。


「――――――――ロウ!起きろシロウ!」


「ん・・・ステラちゃん?」


「起きろシロウ!」



 肩を揺らされながら俺は目を僅かに開く。


 こんな暗い時間にステラちゃん?


 一体何の用?


 まさか・・・・・いや、それは邪推だ。


 よく見たらフィリスがステラちゃんの後ろに立っている。



「一体何・・・?」


「シロウ、すぐに村長の家に来るんだ!」



 真剣な表情で訴える声に俺の意識はだんだん覚醒してきた。



「・・・何かあったのか?」


「私の部下で《千里眼》を持つ者が、この村に接近する軍勢を複数確認した!」


「――――――――――――――!」



 俺の意識は一瞬で覚醒、すぐに着替えて村長の家に向かった。




 村長の家に行くと、そこにはバカ皇子とロビンくん、騎士トリオも来ていた。


 意外だ。


 てっきり朝まで寝ていると思ってたな。



「ハハハハ!遅かったではないか!今は――――――」


「黙れバカ!」


「皇子、お願いですから黙っててください!」


「・・・ハイ。」



 ステラちゃんとロビンくんに怒られたバカ皇子は大人しくなった。


 あれ?


 バカ皇子(改)だったっけ?


 まあいいや。



「全員集まったようですな。」


「あ、村長!」



 どうやら、この緊急会議には家主の村長も参加するみたいだ。


 ま、会場がここの時点で分かり切ってた事だけど。



「勇者殿、夜も明ける前に起こしてしまい申し訳ありません。しかし、事態は急を要しているのです。」


「良いって、ステラちゃんにも聞いた。敵がいよいよ村に近づいているんだってな?」


「ハイ、実は私の所にも帝都にいる孫から緊急連絡が着ました。数日前、秘密裏に結成された騎士団が帝都を出発したそうなのです。しかも、騎士団を率いているのは双子の第八皇子と第九皇子だそうです!」



 村長は若干興奮しながら話していった。


 それによれば、今から数日前、表向きには存在しない騎士団が第八皇子と第九皇子の主導で結成されてファル村に向かって出発したらしい。


 帝都で学生をしている村長の孫は、その話を酒を飲みながらぼやく貴族出身の学生から知り、急いで村長に知らせてくれたそうだ。


 エルナさんが改良した通信用魔法具、やっぱり便利だな。



「私達やステラ殿下の方は《千里眼》を持っている者が村の北と北東、そして西でそれぞれ軍勢を確認しました。それぞれ、ムリアス、ファリアス、フィンジアスの軍勢で間違いないようです。」



 ロビンくんは落ち着いた口調で俺達に説明していく。


 ついに来たかチート勇者!


 けど、帝国と王国も向かってくるというのは一体・・・?


 まさか、あの時のダニールって奴が裏で糸を引いてるのか?



「私の方はそれに加え、王都に向かった部下から私の兄上達が軍を率いてこの村に向かったとの報が届いた。」



 王国側はステラちゃんのお兄さん達が来るようだ。

 これはどう考えても偶然じゃないな。


 絶対に裏で糸を引いている奴がいる。


 でなきゃ、こうもタイミングよく3ヵ国の軍が同じ村に向かってるなんてありえないからな。



「いよいよだな!」


「いよいよですね。」


「いよいよか!」


「いよいよですな!」


「い、いよいよ来るんですねっ!」


「ハハハハ!いよい・・・」


「「黙れ!!」」


「ハイ・・・(シュン)。」



 とにかくいよいよだ!


 予定と違ってチート勇者以外にもたくさん攻めてくるみたいだけど、とにかくいよいよだ!


 数多くの魔獣と戦って鍛えた力を発揮する時が来たのだ!


 よし、まずは敵戦力の確認だ!



「数はどれほどなんだ?」


「監視をしていた者の見立てだと、帝国側はおよそ1000人、公国側は500~600人とのことです。」


「王国側は帝国側と同じく約1000人だ。あくまで《千里眼》で確認できた範囲でだが。」


「だいたい3000人弱ってとこか。」



 対してこっちの戦力は全部足しても1000人にも満たない。


 数では圧倒的に不利だな。


 ま、その分質はかなり上げてきているけどな♪



「――――――現在位置から考えますと、3つの軍勢がこの村に到着するのは丁度明日になりそうです。」


「こちらと同じ見立てだな。しかし、3勢力全てが同じ日に到着するとなるのは明らかに不自然だな?まるで私達の時と似た状況だ。」


「多分、裏で糸を引いているのは同じ奴だと思うぜ?」


「「「!」」」



 俺の意見にロビンくんもステラちゃんもハッとする。



「案外、また邪魔になった皇子とかをまとめて処分する気なんじゃないのか?」


「それは・・・確かに考えられますね。」


「ああ、そう考えるとこの村が戦場に選ばれる理由も説明がつく。表向きには死んだ事にされてはいるが、生きているよりは本当に死んだ方が都合がいいだろうからな。」



 バカ皇子は無能だから、ステラちゃんは逆に有能だから嵌められてしまったんだよな。


 今度もまたいらない人材を処分というのは十分に考えられる。


 なんか、ファル村って不要人材の処分場扱いされてる気がするな。


 それに、帝国側の指揮をしている双子の皇子がバカ皇子2&3なんてことありそうだ。



「ともかく、残された時間は限られていますのですぐに対策を練りましょう!」


「は、はい!村人のひ、避難もありますし・・・!」


「ダニー、少しは落ち着きなさい!あなたはヴァール騎士団の代表なんですから!」


「まあまあ、みんな落ち着こうぜ?まだ1日も時間があるんだしさ?」


「ハア・・・。シロウは余裕だな。」



 ステラちゃんは気が抜けたような顔になった。


 あれ?


 もしかして呆れられている?


 まあとにかく、明日の大決戦(?)に向けて作戦会議だ!






 次回からいよいよ戦争突入!


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