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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
戦争編Ⅱ-海獣大決戦(?)の章-
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第54話 ボーナス屋、帰港する

 俺の詠唱の直後、イカ、鮫、カニの3体の魔獣を真っ赤な炎の爆発が飲み込んだ。


 ~~~~~~~~~!!!


 み、耳に響く――――――!!



「わあ~~~~~~~!!耳が!!耳が~~~~!!」


「耳ィィィィィィィィィィ!!??」



 予想以上の爆音のデカさに俺達の耳がやばい事になりかけた。


 まだキンキンしてるよ。


 もう少し加減すべきだったな。



『キ…ィ…ィ………(ポクッ!)」


『ギ………(ポクッ!)」


『シャ……シャァァァァァァァァァァ!!』



 イカとカニはそろってお陀仏した。


 鮫の方はまだ生きてるようだ。


 さっきから何だか無駄に頑丈じゃないか、鮫?



「…妙にしぶとくないか、あの鮫?」


「だよな…?」



 ジャンとロルフも若干呆れ気味だ。


 氷の上をピチピチしてたと思ったらイカに捕まって、逆に抵抗してたと思ったら脳天にカニが激突、俺の爆炎でコンガリかと思ったらまだ生きてるしな。


 あ、殺気の爆炎で鮫の周りの氷が解けてしまっている。


 海中に潜られる前に倒さないと!



『シャァァァ!!』


「潜らせるか!《浮遊(フロート)》!」


『シャッ!?』



 海中に潜ろうとする鮫に《浮遊》をかけ、鮫の全身は海面から2mほどの地点に浮かんだ。


 鮫は必死に海に飛び込もうとするがヒレをピチピチさせる事しかできなかった。



「今だ!一気に止めを刺すぞ!」


「「おう!!」」



 宙で身動きが取れなくなった鮫に俺達は止めを刺しに行った。


 強化した脚力で鮫の頭上にまで跳び、頭蓋骨ごと脳みそを斬る一撃をお見舞いしてやった。



「《重力斬(グラビティスラッシュ)》!!」



 よし、直撃!


 ジャンとロルフも俺の後に続いて鮫の脳天に斬撃をお見舞いした。



『シャァァァァァァァァ……ァァァ…ァァ…ァ……』



 俺達が斬った箇所から血が吹き出し、鮫は空中でぐったりとしながら死んだ。多分。


 フウ、これで残る魔獣はヒューゴとケビンが相手をしているドラゴンだけだな。



「さてと、あっちの方は……」



 俺達はドラゴンがいる方へ視線を向けた。


 自分の戦闘に集中して聞き流していたけど、さっきから何度も落雷みたいな音がしたな。


 まあ、さっきの爆発ほどじゃないけど。



「《轟雷砲(ライトニングブラスト)》!!」


「《轟雷剣(ライトニングソード)》!!」


『ギャォォォォォォォォォ!!!』



 ケビンの魔法がドラゴンの全身を襲い、動きが止まったところにヒューゴが高く跳んで“そこ”をおもいっきり斬り裂いた。



『ギャオォォォ……ォ……(ドサッ!)』



 ドラゴンは大量に血を流しながら氷の上に倒れた。


 どうやら向こうも終わったようだ。


 よっぽど手強かったのか、2人ともかなり息が乱れているな。



「ハア…やっと終わったのか?」


「みたいだな。俺達も船に戻……ん?」



 俺は持っていた謎の剣の異変に気づいた。


 あれ?また何かのオーラが吸収されてる…?


 これって、ファイヤードレイクの時と同じ現象だな。


 オーラの出所は俺達が倒した魔獣達からだ。


 特にキメラから流れてくるオーラの量が多い。


 お!何だか疲労がどんどん無くなっていく!?



「おい、その剣、また形が変わってないか?」


「ああ・・・前より長くなったし、妙に力が湧いてくる!」



 謎の剣は刀身が伸びて色も綺麗な銀色に変化した。



【神代の謎の光の剣】

【分類】片手・両手剣(魔法剣)

【品質】高品質

【詳細】製作者も素材も不明の剣。

 たくさんの魔獣のオーラを吸収して全ての能力が覚醒し始めている。

 持っていると使用者の身体能力が中上昇する。

 回復力が中上昇する。

 全状態異常に対する耐性が中上昇する。

 攻撃に《浄化》の効果が付与される。

 光属性が使えるようになる。

 空属性が使えるようになる。



 何だかどんどんチートな剣になってきたな。


 あ、そういえば光属性が使えるようになってたの完全に忘れてたぜ!テヘ♪



「とにかく船に戻るか!」



 俺達はヒューゴとケビンと合流して船に戻った。






--------------------------


 船に戻るとツンデレのオッサンが眉間に皺を寄せて待っていた。


 もしかして怒ってる?



「…ガキども、随分と派手に暴れてくれたな?」


「ああ!?何か文句あるのかよ!」


「お兄ちゃん、落ち着いて!」



 あの2人、また睨み合ってるな。


 無駄に火花が散ってるようにも見える。



「馬鹿野郎!!何て危ない真似をしやがったんだ!!」


「痛っ!?」



 ツンデレのオッサンはヒューゴを殴った。



「あれだけの力があるなら戦わねえで逃げる事もできただろ!!」


「はぁ!?俺は冒険者なんだから戦うのは当たり前だろ!船を守れって依頼を出したのはそっちだろ!?」


「誰が魔獣に遭ったら戦えって依頼した?俺が依頼したのは警護(・・)だクソガキ!!」



 ヒューゴの反論をツンデレのオッサンは即座に否定した。


 確かに依頼書には「魔獣と遭遇する可能性あり。」とは書いていたけど、戦えとはどこにも書いていなかったな。


 俺も警護=敵は倒す、って考えていた。


 確かにオッサンの言ってることが正しいな。



「大体、ガキが魔獣と戦うなんて真似、非常識にもほどがあるだろ!!」


「うるせえ!冒険者が戦うのは普通だろ!?」


「そっちのデカいガキはともかく、お前ら4人はどうみても未成年(こども)だろ!どこに上位の魔獣と戦う子供の冒険者がいる!普通は採取や雑用、それか野兎や鳥の狩りだボケ!」



 うん、正論だ。


 最初は驚いていたギルドの職員も、最近は普通に対応してくれているから忘れがちになるけど、子供が巨大魔獣と戦うなんて非常識だよな。


 特にケビンの歳だと…。



「あんな怪物と戦ったら大の大人も死ぬのが常識だ!その歳で死んだらお前らの親はどうなるか考えなかったのか!?」


「あ、俺は孤児だから家族はとっくに死んでるぜ」


「え!そうなんですか!?」


「そうなのか?」


「初耳だな!」


「……すまねえ」



 つい話に割って入ったらツンデレのオッサンは素直に頭を下げた。


 そういや、みんなには言ってなかったっけ?


 まあ、実の家族は死んだけどたくさんの仲間がいるから平気だけどな♪



「と、とにかく!腹を痛めて産んでくれた親を泣かす真似は二度とするな!いいな!」



 調子を崩されたのか、最後は簡単な説教で終わったな。


 それにしても、さっきからツンデレのオッサンを見てると何かが引っかかるんだよな?


 う~ん、何でだろうな?


 と、そこにケビンが俺に近づいて耳打ちをしてきた。



「(・・・どうした?)」


「(さっきから気になっていたんですけど、船長さんとお兄ちゃんが似てる気がします。)」



 それは俺も気づいていた。


 何だか同族嫌悪って思える位に2人は性格がそっくりな気がする。



「(それに、最初に港で会った時から・・・何だか他人に見えない気がするんです。)」


「(おいおい、それって……)」



 あからさまにフラグだよな。


 ケビンには《王の直感》という補正があるから余計に無視できないぞ!


 と言うか、今のでテンプレ的な展開を思いついてしまった!


 ヒューゴとケビンの家庭事情、ツンデレのオッサンの家庭事情、そしてケビンの直感、これらから導かれる答えはひとつ!



「ケビン、お前の母さんの名前はなんて言うんだ?」



 俺はわざとらしく、ヒューゴやツンデレのオッサンにも聞こえる声でケビンに訊いてみた。



「え・・・ボーラですけど?」


「何!?」



 ケビンの回答にツンデレのオッサンは予想通りに反応した。


 うん、これはもう間違いないな!



「お、おい!い・・今何て言った……!?」


「え!?」



 ツンデレのオッサンは声を震わせながらケビンに詰め寄った。


 あ、俺の横にいるジャンとロルフは何がどうなっているのか分からないみたいだな。


 ケビンも驚いて困っている。


 しょうがない、ここは俺が説明してやるか。


「――――――ヒューゴとケビンのお母さんはボーラさんて言うんだよ。昔はヴァールで娼婦をしてたんだってさ!この前まで悪党に嵌められて奴隷にされていたけど、今は俺達と同じ村で暮らしてるんだぜ」


「な……ま…ま………!?」



 オッサンは目を丸くしながらヒューゴとケビンを交互に見た。


 どうやら理解したらしいな。



「そういえば、マグロさんの家でした一人娘も娼婦をしていたけど、今はやめて真っ当に暮らしていたけど奴隷商に売られたらしいな。凄い偶然だな?」


「え…!」


「なっ…!」


「おい、それって!」


「はぁ…!?」



 フッフッフ、どうやらみんな察してくれたようだな?



「もしかして、マグロさんってヒューゴとケビンのお祖父さんなんじゃないのか?」


「えぇぇぇぇ!?」


「なななななな・・・!?」


「ウッソ!」


「マジかよ!」



 俺以外の全員が本気で驚愕した。


 その時のヒューゴとツンデレのオッサンの顔は面白いほどそっくりだった。


 ヒューゴ、間違いなく祖父さん似だな。



「マグロさんの娘の名前もボーラだろうから間違いないと思うぜ?」



 しかし、マグロ(鮪)の娘がボーラ、ボラ(鯔)って…。


 サ○エさん一家かよ。


 死んだお婆さんはなんて名前なんだ?



「あのう、船を出したいんで氷をどうにかできないっすか?」


「それと、あの尖った島みたいなのもどうにかできないか?あのままだと海流が狂ってしまうぜ。」



 若い漁師さん達が困った顔で話しかけてきた。


 あ…忘れてた!






--------------------------


――港町ヴァール――


 船が港に到着すると、町は今までにないほどの歓声に沸いた。


 原因は船が引っ張ってきている5体の魔獣だ。


 最初はケビンの四次元倉庫にしまおうとしたんだけど、何故かツンデレのオッサンに猛反対されたので仕方なく多少軽量化して船で引っ張ってきた訳だ。



「凄いぞ!あれは上位の竜種だぞ!」


「暴食王もいるぞ!!」


「あれはまさかキメラか!?」


「母ちゃ~ん、おっきいカニ~!」


「食べ甲斐がありそうね!」


「鮫もデカいな!」



 港に集まった住民達は魔獣達を見上げながら口々に感想を喋っていった。


 ヤッバ~、目立ちたくないのに目立ってしまった!


 こうなりたくないから四次元倉庫に収納したかったのに・・・。


 そしてこうなった原因の1人はというと・・・



「ホウ!この子らがマグロんとこの孫か!」


「ボーラちゃん、母親になってたのかい!」


「そういや、昔のボーラちゃんの面影があるな?」


「えへへ♪」


「はっ!ただの一人前気取りの生意気なガキどもだ!」



 ツンデレよ、そのニヤけた顔で怒鳴っても迫力がねえよ。


 しかもケビンの頭を撫でてるし。



「フン!」



 ヒューゴはあれからずっと不機嫌な顔をしている。


 その一方でさっきからソワソワしている。


 お前も素直に喜べばいいのに…。



「おや?そっちの大きい子はなんだか昔のマグロにそっくりじゃないか!」


「「はあ~?」」



 息ピッタリだな。


 うん、やっぱりそっくりだ!



「そっくりじゃな」


「ああ、そっくりだ。中身が」


「素直じゃないんだから」


「面倒くさい性格じゃな」



 その他の漁師さんやその奥さん達は暖かい視線を2人に送った。


 港に戻る間は大変だったけど、あの3人はとりあえずは大丈夫そうだな。


 あの時は事情を全て話した途端、ツンデレのオッサン・・・いや、ツンデレ爺さんが両手に銛を持って「クソ皇帝を殺りにいく!!」と騒いでいたけど落ち着いたようだな。


 皇帝、また敵を増やしてしまったな。




 その後、騒ぎを聞きつけた領主や騎士団が港に駆け付け、俺から事情を聞いた領主のオッサンはいろいろ手を回して今回の件に俺達が関わっている事をどうにか誤魔化してくれた。


 正直、これだけの騒ぎになってどこまで誤魔化せるのか怪しいものだけどな。


 まあ、今回の依頼は無事に達成できたし、レベルもかなり上げられたから良しとするか!


 ヒューゴとケビンも祖父さんに会えて幸せそう(?)だしな!


 さてと、さっさとギルドに報告に行くか!






 ツンデレマグロはヒューゴとケビンのお祖父さんでした。

 まあ、大半の読者は気付いていたと思いますが。


 次回、ファル村に3つの軍勢の影か・・・・!?



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