第53話 ボーナス屋、チートを発揮し始める
さて、鮫はさっきからピチピチしてるからしばらくはほっといても平気だろう。
俺達は残る4体方へと攻撃を開始した。
「まずは一か八かの《加重》!《加重》!《加重》!《加重》!」
どれだけ効果があるのか分からないが、俺はいつものように魔獣達の重量を増やしていった。
すると、少しずつだけど動きが遅くなっていった。
「よし!少しは効いてる!」
『ギギィィィ!!』
「うわっ!何かきた!?」
「ウォーターカッターだ!」
カニはハサミからウォーターカッターを出してきた。
『ギャォォォォ!!』
「こっちはビーム!?」
『ギャォォォォ!!』
「こっちは竜巻だ~!」
ドラゴンは口からビームっぽい何かを放ち、キメラは口から竜巻を吐いてきた。
そりゃあ、敵だって黙ってこっちの攻撃を待つ訳がないよな。
まあ、みんな避けたけど。
「《サンダーボルト》!!」
ケビンはドラゴンに向かって雷属性の魔法を放った。
これも凄い威力だ。
普通の人間だったら確実に即死だな!
『ギャゴォォォォ~~~!!』
おっ、効いてる!
効果は抜群みたいだ!
氷属性は効果が薄かったが、雷属性はかなり有効みたいだな。
これはイケる!
「ヒューゴ、ケビン、今のを見たな!あのドラゴンには雷属性が有効だ!」
「ああ、そうみたいだな!」
「ここは僕とお兄ちゃんが何とかします!」
「よし、任せたぜ!!」
ドラゴンの相手はヒューゴとケビンに任せて俺達は先に進んだ。
あの2人なら何とかなるだろう。
次は・・・・・・
『シャ~~~~!!??』
『キィィィィィィィィィ♪』
あ、鮫がイカの触手に捕まっている。
氷の上でピチピチしているところを狙われたのか。
そういえば、水族館でイカかタコが鮫を食べたニュースがあったな。
もしかして好物なのか?
『ギギギィィィ!!』
「来たな、カニ!」
俺の前にカニが立ちはだかった。
重量が増えても相変わらずカニ歩きで近づいてくる。
このまま体当たりされるのはマズイな。
重くなった分、ぶつかった時のダメージが倍増し・・・・そうだ、今度は逆に軽くしてみよう!
「《軽量》!《軽量》!《軽量》!《軽量》!《軽量》!」
『ギギギィィィ!!』
「ロルフ、ジャンを強化!ジャン、お前の斧をお見舞いしてやれ!」
「おう!任せろ!」
「わかった!」
ロルフがジャンに強化魔法を目いっぱいかける。
そしてジャンがカニに向かってフルスイングした。
『ギギィィィ~~~~~!?』
「お~~~~!よく飛ぶな~~~!」
かなり軽量化したせいか、それともジャンのパワーが強化されたせいか、カニはジャンのフルスイングで天高く飛んだ。
まるで野球のボールみたいだな。
軽くなっても強度はそのままだから甲羅はあまり傷ついていないようだ。
『ギギギィィィ!!』
カニはこっちにハサミを開いてさっきの高圧水流を放とうとした。
あ、その体勢で下に向かって撃ったら・・・・!
『ギギィィ~~~~~~~???』
あ~あ、ウォーターカッターがロケット噴射みたいになってるよ。
あ~、あんなに小さくなって・・・。
『ギャォォォォォォォ!!』
「おい、キメラが走ってくるぞ!?」
カニがいなくなったと思ったら今度はキメラが俺達に向かってきた。
両手のハサミやタコの足を器用に使ってるな。
あ、横じゃイカと鮫が死闘を繰り広げている!
鮫も抵抗してイカの触手(足)を何本か食いちぎってる。
あっちは共倒れしてくれそうだな。
『ギャォォォォォォォ!!』
「火の玉だ!!」
キメラは口から炎の弾を何発も放ってきた。
俺達は《加速》などを使って速度を上げて回避していく。
次々と撃ってくるが、強化した俺達なら十分避けられるレベルだ。
しかし、海の魔獣が火を使うって変じゃないか?
ファイヤードレイクでも喰ったのか?
『ギャォォォォォ!!』
「今度は雷か!」
「うわっ!背中のイソギンチャクも襲ってきた!!」
「気持ち悪ぃ!!」
炎弾が効かないと判断したらしいキメラは全方位に電撃を放ってきた。
同時に背中のイソギンチャクがうねうねと動きながら触手で襲ってきた。
マジでキモイ!!
「うわっち!ちょっと掠った!酸か!?」
「こっちは痺れた・・・!」
触手の一本が掠ったらジュッとコートの一部が溶けた。
あの触手、直撃したらかなりヤバい!
ジャンの方は電撃が少し当たったようだ。
「触手邪魔だ!」
俺は謎の剣でイソギンチャクの触手を斬っていった。
お!意外とサクサク切れる!
ロルフの魔法のお陰か?
『ギャォォォォ!!』
うおっ!キメラの頭が急接近!
「吹っ飛べ!《重力砲》!!」
俺は眼前に迫るキメラの頭に向かって重力波の一撃をぶつけた。
すると、それは俺の予想以上の威力を発揮した。
『ギャゴッ!?』
「ワオ!全身ごとふっとんだ!!」
「スゲエ!思いっきり吹っ飛んだぞ!!」
キメラのデカい図体は軽く50m以上後方に吹っ飛んだ。
予想以上の威力が出たな!
これが適正レベル4の力ってとこか?
最近は《加重》と《軽量》ばかり使ってたから今まで実感なかったな。
これは魔法でフルボッコできるかもな。
「ジャン、ロルフ、俺がキメラに魔法で攻撃するから、その間に奴の弱点を攻撃してくれ!」
「弱点!?」
「首と胴の間に隠れている魔石だ!」
「あそこか・・・?わかった、やってみる!」
よ~し、手あたり次第に攻撃魔法をお見舞いしてやるぜ!
『ギャォォォォォ!!』
逆上したキメラは辺り見境なく攻撃をし始めた。
風、火、雷だけじゃなく水や氷、土まで出してきた。
「こっちの攻撃もくらえ!《フレイムストーム》!《ウインドエッジ》!《グラビティプレス》!《プラントプリズン》!」
炎の竜巻に鎌鼬の雨、周囲も押し潰す重力に海中から飛び出した海草による拘束、どれもキメラに効果覿面だ!
あ、重力はほどほどのところで解除しとかないとジャンとロルフが近づけないな。
『ギャゴォォォ~~~!!』
「まだまだ続くぜ!《グラビティアロー》×50!《リーフアロー》×50!《フレイムアロー》×50!《ウインドアロー》×50!」
『ギャゴォォォ~~~!!』
初級魔法の雨もかなり効いているみたいだ。
けど、それでもまだ元気みたいだ。
“ロード”の名は伊達じゃないか。
「だったら上級魔法はどうだ!《巨岩槍の乱撃》!」
俺は土属性の上級魔法を唱えた。
直後、キメラの真下からたくさんの尖った岩石が氷を突き破ってきた。
『ギャゴ~~~!?』
「・・・何だか凄い光景になったな?」
岩石の槍はどれも海面から30m近くも突き出していた。
突き出したたくさんの岩石はキメラの全身を攻撃し、最後は岩同士の間にキメラを閉じこめた。
「まるで島だな。」
ま、これでキメラの動きを止められたから結果オーライだな♪
後はジャンとロルフに任せるか。
「動きが止まったぞ!」
「今のうちに弱点に攻撃するぞ!」
「おう!《閃光斧撃》!!」
「《大地剣撃》!!」
ジャンとロルフは魔力をたくさん込めた武器でキメラの弱点、首と胴の間に隠れている魔石に向かって攻撃した。
岩石の槍に阻まれて首すら満足に動かせないキメラは避けようとしてもできなかった。
『ギャオオオオオオオ~~~!!!』
キメラは苦痛に染まった悲鳴を上げる。
2人が斬った箇所から血が噴き出し、肉の中から亀裂が入った青い魔石が出てきた。
「あれが魔石だな!」
「次で止めだ!!」
2人はもう一度魔石に向かって武器を振るった。
『ギャオォォォォォォォ・・・・・・』
魔石が真っぷたつに割れ、キメラは悲鳴を上げながら死んでいった。
フウ、ファイヤードレイクの群より手ごわかったな。
さて、後はイカと鮫だ・・・
『ギギィィ~~~!!』
「ん?」
上から聞き覚えのある鳴き声がした。
見上げると、手足をバタつかせた巨大ガニが空から落ちてきた。
「あ!そういえば忘れてた!」
ジャンのフルスイングで空の上に飛んで行ったカニ。
今ごろ落ちてきたのか。
あ、そういえば《軽量》の効果もそろそろ消える頃か?
「なあ、カニが落ちていく先ににいるのって・・・」
「あ・・・!」
俺達はカニが落下予想地点に視線を向けた。
そこには、未だに死闘を繰り広げているイカと鮫がいた。
うわあ、鮫がかなり優勢だな。
イカなんか全身を喰いちぎられてボロボロだ。
足(触手)も半分は確実に減っている。
『キ、キキィィィ~~~!!』
あ~あ、何だかイカの目が涙目に見えてきた。
嫌なら遠くに投げ捨てればいいに。
『シャァァァァァ・・・ジャッ!?』
『ギッ!?』
『キィ!?』
あ、鮫の脳天にカニが直撃した。
同時に片方のハサミがイカの頭(?)にブスッと刺さってビュッと血が噴き出した。
痛そうだ・・・・・。
『キィ~~~~~!!!』
激痛に襲われたイカは我を忘れて暴れ出した。
「ヤバ!こっちにも足が来た!!」
暴れだした触手の何本かは俺達のところにまで襲い掛かってきた。
こうなったら3体まとめて片付けてやる!
「くらえ!《紅蓮の爆炎》!!」
俺は火属性の上級魔法を魔獣達に向かって放った。
そして、爆音と共に紅蓮色の炎が俺の視界を染めていった。
士郎達は5人だけで戦ってますが、本来は戦い慣れた騎士や兵士が千人以上いないと倒せない魔獣ばかりです。
あと、実は士郎が頻繁に使っている《加重》や《軽量》は両方とも補助魔法だったりします。
つまり、本来は士郎の苦手な種類の魔法なんですが力任せに使い続けたらかなり効果があったので重用しています。まあ、苦手といっても常人と比較すれば天才のレベルなのですが。