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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
戦争編Ⅰ-領主からの報せの章-
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第49話 ボーナス屋、策を考える

――ファリアス帝国 火山地帯の高原――


 やあ!


 今日の俺はいつぞやの高原に来ている!


 覚えているか?


 ファルの森にある『古の魔法扉』を通った先にある場所のひとつ、つまり・・・



『ギャォォォォォォォォォ!!』



 そう、ファイヤードレイクの群と戦ったあの高原だぜ!


 あの時はマジで焦ったけど、2度目だと以外と冷静になれるものだ。


 まあ、俺だけはだけど。



「無理だぁぁぁぁ!!」


「矢を放て!魔法も放て!」


「落ち着け!ブレスは盾が守ってくれるら!」


「わあああ~~!火が来たぁぁぁ!!」



 戦っている連中は絶賛パニックだ!


 俺は後ろで主に見学、やばそうになったら助けに入る予定だ。



「おおおおおお!!!」


「防げてるぞ!」


「イイぞ盾!」


「やるじゃないか、ヴァールの盾!」


「そのまま頼んだぞ、盾!」


「盾じゃない!マテューだ!」



 後ろにツッコミを入れられるなんて余裕だな?


 それにしても、さすがオリハルコン製の楯、ドラゴンの炎にも余裕で耐えるなんてスゲエな!


 タダ同然でゲットしたあいつは超ラッキー、《幸運》の補正が効いていたんだろうな。


 ああ、言い忘れたけど、今戦っているのは領主のオッサンのとこの騎士団チームと、ステラちゃん率いる王国チーム、そしてバカ皇子率いる帝国チームの混成チームだ。


 正直、バカ皇子にはあまり期待していなかったけど、予想以上に活躍してくれている。



「くらえ!《白き雷撃(ホワイトライトニング)》!!」


『ギャオッ!?』



 バカ皇子の雷の魔法がファイヤードレイクに直撃した。


 ダメージはそれほど高くはないが、片翼が麻痺して飛行を維持できなくなったファイヤードレイクは地上へと落下した。


 現在のバカ皇子の職業レベルは平均21、貯まったポイントのほとんどを《攻撃魔法》の適正レベルを上げるのにつぎ込んでレベル4になっている。


 未だにバカだけど、戦闘で大活躍だ!


 村長の地獄メニュー(笑)の成果も出ているんだろうな。



「落ちたぞ!」


「よし!魔法で集中攻撃しながら接近するぞ!」


「「おおーーーー!!」」



 俺の時とは違い、ステラちゃんが的確な指示を出しながらの戦闘は俺にもいい勉強になった。


 俺は力押しで圧倒したけど、集団で戦う時はステラちゃんのやり方が正攻法だ。


 しっかり役割を分担し、それをリーダーが上手く指示を出して戦うやり方は全体のリスクを大きく軽減しているのが見てわかる。


 これは俺の助けはいらないな。



「止めだ!!」



 光を纏ったステラちゃんの剣が急所を斬った。


 あれ、ライトセイバーにも見えるな。



「勝ったぞ!」


「ほ、本当に勝った・・・のか!?」


「あのファイヤードレイクに!!」


「夢みたい・・・!」



 周囲から感動と安堵、その両方の意味が込められた声が聞こえてきた。


 だが、それは長くは続かなかった。



『ギャォォォォォォォ!!』


『ギャォォォォォォォ!!』


『ギャォォォォォォォ!!』


「「「え!?」」」



 考えてみたら当然だな。


 ここは奴らの縄張りなんだから、仲間がピンチだったり殺されたりしたら集まってくるのは自然な流れだ。


 しかも、ついこの間仲間が大勢やられまくったんだからかなりピリピリしてるはずだ。


 ていうか、俺が原因なんだけどな♪


 それにしても、どっかの怪獣映画みたいな光景だな。


 群れているところがギャ〇スっぽい。



「「「いっぱい来た――――――――――!!!」」」


「落ち着け!陣を組み直し、敵の連携を崩していくぞ!!」


「ハハハハハハ!!奴らも今夜のディナーにしてくれる!!」



 食うの前提かよ!


 よく見れば、普通のファイヤードレイク以外にも亜種のジオ・ファイヤードレイクも混ざってる。


 確かに今夜のおかずにしてみたいな。


 ただし、食べすぎ注意!


 さてと、流石にあの数は厳しいから助けに行くか!



 ちなみに、後で今回狩ったドラゴンをまたフライハイト商会に持っていったら前回同様の大騒ぎになり、後日、ヴァールの町の商人やら肉屋やら元冒険者やらが大勢過労で倒れる事態になった。


 そんな中、フライハイトさんを含めた商会の職員達は、フライハイトさんの奥さん手製のポーションで強制的に復活させられて通常営業に戻ったらしい。




--------------------------


――ファル村――


 死闘(?)の末、ファイヤードレイクを16体、ジオ・ファイヤードレイクを3体倒した俺達はヘトヘトになって村に帰ってきた。


 まあ、帰りはみんなきつそうだったからロビンくんの転移でさっさと帰ってきた。



「いや~~~、今日は本当に大変だったな?」


「ええ、私もさすがにクタクタです。けど、今日だけでかなりレベルが上がりました。」



 そう、今日だけで戦った全員のレベルはかなり上がった。


 基本的にレベルが高くなるほど上がりにくくなるのは間違いないが、ファイヤードレイクはレベルが高いのか経験値が多いのか、大勢で戦ったのにも係わらず全員がどんどんレベルアップしていった。


 ステータスを確認しながら思ったんだが、ここにいる混成チームって、もしかしなくてもこの世界最強のチームになるんじゃないのか?


 まあ、それはいいとして、村に戻った俺達を出迎えたのはチビッ子達だった。



「あ、お兄ちゃんお帰り~~!」


「あ!バカ皇子だ!」


「暴れん坊王女だ!」



 ズコッ!!


 バカ皇子とステラちゃんはほぼ同時にズッコケた!



「違うよ!バカ皇子(改)だって!」


「あ、そうだった!」



 面倒なので詳しくは言わないが、この名前は完全に浸透してるようだ。


 あ、後ろで必死に笑いを堪えている奴らがたくさんいるな?


 俺も堪えてるけど・・・・プッ!



「今日は大量だったの?」


「あ~~~、お帰り~~~~♪」


「うわっ!生臭~~い!」


「竜殺し軍団だ~~~!」


「にいちゃ~~~~~!」



 広場で遊んでいたチビッ子達がどんどん集まってくる。


 マイカにニール、エレンにレミにノエル、ルドルフに銀耀(・・)・・・・・・・。



「・・・銀耀、今日も来てたのか?」


「まあね~~~♪」


「僕もいるよ!}



 遊んでいたチビッ子の中には奴隷商事件で出会った龍族の銀耀と、その契約者のルチオも普通に混ざっていた。


 何でこいつらがいるのかというと、一言で言えば遊びに来たからだ。


 領主のオッサンが来たあの日、 実は何時の間にかこの2人も村に来ていたらしく、俺よりもいち早くトーイ達と再会して雲の上に(・・・・)遊びに行っていたらしい。


 今は人間の姿をしているが、こちは歴とした(東洋系の)龍!


 しかも元龍王の孫で、コイツのバカ兄(・・・)も列記とした龍王だ!


 つまり龍族の中でもエリートに入るってわけだ。


 その気になればやりたい放題、雲の上をみんなで走る事も可能だ。


 今日は地面の上を走ってたけど。



「今日は何をして遊んでたんだ?」


「「ドッジボール!」」



 横を見ると、ニールが両手でおもちゃ屋で売っているようなボールを持っていた。



「そ、そうか・・・夕方になったらちゃんと家に帰るんだぞ?」


「「は~~~い!」」



 チビッ子達はそのまま散っていった。


 馴染んでるな、あいつ等?


 ちなみに、2人には地球と異世界を往復する度に地球側との連絡を頼んだりしてもらっている。


 その時に分かった事だが、俺のいるこの異世界は『ルーヴェルト』と呼ばれているらしい。


 らしいと言うのは、その名前で呼んでいるのは人間じゃなくて神様達だそうだ。




--------------------------


 話によると、この世界には元々人間は存在しない世界だった。


 そこに地球の一部の神々、主に現代の地球で大勢力を持つ宗教の侵攻に遭った神話や宗教の神が地球に見切りをつけて一部の人間達と一緒に移住した世界だそうだ。


 この世界にはいくつかの大陸があり、大陸によって担当する神様が分かれている。


 俺の今いるダーナ大陸は『ケルト神話』の神様達が担当していて、アンナちゃん達の先祖は元々は地球のヨーロッパに住んでいた人達だ。


 これまで会って来た人達の外見が白人、というより欧州系だったのも納得がいく。



 さて、話は変わって俺が地球に戻れるかどうかだ。


 結論から言えば、どうやら今は無理らしい。


 なんでも、俺がこの世界に来た手段がかなり特殊らしくすぐには戻れないらしい。


 さらに言えば地球から友人達がこの世界に来る事もまず不可能、この世界にいる神様達が入国拒否ならぬ入界拒否をしているせいで基本的に違う世界の人間(・・・・・・・)は出入りができないそうだ。


 ならどうして俺は来れたんだろうな?


 考えられるとしたら、アンナちゃんが持っていた《奇跡の書》だろうな。


 ああ、それなら何で銀耀やルチオは気軽に毎日往復できるかって疑問に至るよな?


 銀耀については人間じゃないだけじゃなく龍王の直系なのが関係していているそうだ。


 ルチオはと言うと、これがよく分かんないんだが、アイツの祖父さんの祖父さんが神さえ恐れる『大魔王』と呼ばれる男で、しかも先祖代々平気で神とガチンコバトルしたり倒したりしている人外一族だかららしい。


 噂だと、この世界にいる神々の多くが大魔王によって弱味を握られているらしく、ルチオの異世界ルーヴェルトへの出入りは黙認されるんじゃないかという話だ。


 一体、どんな爺さんなんだろうな?


 というか、先祖代々神様とガチンコバトルって、本当に人間なのか!?


 以上が、俺が現在知っているこの世界の事情の全てだ。


 余談だが、俺に加護を与えてくれている日本の神様が陰で俺の捜索をしていてくれたらしい。


 ありがとう、ハニヤス様!



--------------------------


 ステラちゃんとバカ皇子と適当に別れた俺は、特に予定もないから家畜を放牧している所に来た。


 1人で考えたい事があったから村の外れにあるこの場所に来た訳だ。



「う~~ん、レベルアップだけじゃチートに勝てる保証はないよな~?」



 俺はもうすぐ攻めて来るだろうチート勇者×4とムリアス公国の騎士団対策を考えていた。


 オッサンはああ言ってたけど、やっぱり念には念を入れて対策を打った方がいいよな。


 相手がどんなチートを使うか分からない以上、単純にレベルを上げて戦うだけじゃ足りない気がするからな。



「ん~~~~、何か良いチートなボーナスとかないかな~~~?」



 俺は《エフォートエクスチェンジャー》を起動させて、機能やボーナスをチェックしていった。


 何でもいいから都合のいい能力とかってないかな~?



「―――――――――――ん?」



 俺は操作する手を止めた。


 目の前に表示された画面には、機能の一覧が表示されている。



〈強制オールリセット機能〉

・その人が保有する能力と補正(一部を除く)を強制的に全てポイントに変える。

・相手の意志に関係なく使えるが、その分、相手の能力や補正の数によって多くの魔力を消費する。

・強制的に全能力を失う為、リセットされる能力の数や種類によっては相手が体調を崩す場合もある。



〈マイナスリセット(ペナルティ)機能〉

・ポイントの数値がマイナスの場合、数値を0にすることができる。

・ただし、マイナスの数値分だけその人が保有する能力が減るか、マイナスの補正が入る。



「・・・・・・・。」



 これって、この前追加された新機能だよな?


 「その人が保有する能力と補正(一部を除く)を強制的に全てポイントに変える。」に「マイナスの数値分だけその人が保有する能力が減るか、マイナスの補正が入る。」か・・・。



「・・・・・・もしかしなくても、この機能って使えんじゃね?」



 俺は、ちょっと卑怯と呼ばれるかもしれない作戦を思いついた。


 その直後、俺の背後に立つ影が―――――――――!



『ゴケ~~~~~~~~!』


「あ、コッコくん!」



 そこにいたのは金色王鶏(ゴールデンキングチキン)のコッコくん(♂)だった。


 コッコくんは繁殖用の鶏だから大人になってもまだ食われていない。


 というか、デカくなり過ぎて解体するのが大変なんだけどな?



「元気そうだな?」


『ゴケッ!』



 もしかして、俺の言葉分かる?


 なんて事を考えていたら、俺はあることを思いついた。



「そういえば、ボーナスって動物にも有効なのか?」



 考えてみれば、何でその事を疑問に思わなかったんだろうな?


 少なくとも、人間以外にも有効なのは確認済みだしな。


 混血(ハーフ)も然りだ。


 俺は目の前のコッコくんのステータスを確認してみた。



【名前】コッコ

【年齢】0.1  【種族】鶏(金色王鶏)

【職業】家畜  【クラス】まだ食われない鶏

【属性】光 風

【魔力】5,000/5,000

【状態】正常

【能力】鶏戦法

【加護・補正】物理耐性(Lv1) 魔法耐性(Lv2) 光属性耐性(Lv3) 風属性耐性(Lv3) 鶏の王

【BP】16



 なんか、その辺の人より強くないか?


 《鶏戦法》って何?


 何で生まれて一ヶ月くらいでポイントがこんなにあるの?


 家畜だからか?


 人間よりも必死に生きてるってことか?



『ゴケ?』


「・・・・・・やってみるか。」



 俺はコッコくんに《職業レベル補正》を与えてみた。


 さて、この後どうなるかな?





 本編では詳しく表現していませんが、ファイヤードレイクとの戦闘はハッキリ言って想像を絶する死闘でした。

 戦闘後、多くの騎士や兵士が疲労で嘔吐したり失神したりしました。圧勝できる士郎が滅茶苦茶なのです。


 そして久しぶりに登場のコッコくん!

 飼い主のお爺さんは毎日コッコくんと死闘を繰り広げています。



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