第46話 ボーナス屋、村を案内する。2
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今後ともボーナス屋をよろしくお願いします。
――ダーナ大陸 とある森林地帯――
士郎が渋々領主一家にファル村を案内してた頃、ファルの森にある『古の魔法扉』と繋がっている場所の1つである、とある森林地帯では・・・・・・。
『ギャォォォォォォォォォォ!!』
牛2頭分位の大きさの小型のドラゴン、俗に言うワイバーンに類似した姿のドラゴンが口から風のブレスを放つ。
周囲の空気を圧縮したブレスは避けた獲物の代わりに1本の木の幹を抉り、数秒後にはドンという音が森に響きわたった。
「―――――――――皇子!!」
「《麻痺雷撃》!!」
『ギャオッ!?』
バカ皇子ことヴィルヘルムは目の前のドラゴンに向かって雷属性の魔法を放つ。
魔法の直撃を受けたドラゴンは全身が硬直したかのように動かなくなり、そのまま地上へと落下した。
そこにロビンが銀槍で止めを刺す。
「ハッ!!」
『ギャッ・・・・・・・』
ドラゴンは悲鳴を最後まで上げることなく事切れた。
「フウ・・・。下位とはいえ、竜種との戦闘も大分慣れてきました。ケガはないですか、皇子?」
「ハハハハ!ロビン、そこは兄と呼んでくれても良いのだぞ?」
「ハア・・・・・・。」
ロビンは一気に疲れたように息を吐いた。
ここ数日、何があったのかヴィルヘルムはロビンを始めとした異母弟妹達に自分を兄と呼ぶように言ってきている。
年少組は何の疑問も抱かずに聞いたが、ロビンやヒューゴといった年長組は物凄く抵抗を感じてならなかった。
というより、思いっきり引いた。
「・・・・・それにしても、ファル村に来てから皇子も大分強くなってきましたね。これも村長殿のお陰ですから、後でこのドラゴンの肉を届けに行きましょう。」
「うっ・・・!そ、そうだな・・・!」
「皇子はまだ村長殿が怖いようですね?」
ロビンは倒したドラゴンを四次元倉庫に収納しながらヴィルヘルムに訊くと、ヴィルヘルムは悪夢を思い出したかのように背筋を震えさせた。
どうやら村長の恐怖が心身に染み付いているようだ。
「ロビン、お前は知らないからそんなことが言えるのだぞ!?」
「そうですね。それより、今日もレベルが上がりましたからそろそろ村の方に戻りましょう。ここから扉まではそれなりに距離がありますし、今回“鍵”を持っているのは別行動中のステラ王女ですので、先に戻っておいた方がいいですよ。」
ロビンは空の太陽の傾き具合を確認した。
今回、2人はこの森林地帯へはステラを始めとする王国勢と一緒に来ている。
色々あってヴィルヘルムとステラは扉の鍵をどっちが持つかでいがみ合っていたが、ロビンやフィリスが間に入ってどうにか止め、最終的に1日ごとに交代で持つことになった。
今日はステラが持つ番であり、明日はヴィルヘルム・・・ではなく、ロビンが持つ事になっている。
何でロビンが持つかというと、ヴィルヘルムだと失くしそうだから、というのが理由だ。
ちなみに、現在7本ある『古の魔法扉』の鍵の内、5本までは何所に繋がっているのかは判明している。
士郎達がファイヤードレイクと戦った高原はファリアス帝国北部の活火山地帯、ステラ達が最初に実践訓練で訪れた岩山はゴリアス国南西部にある山岳地帯、そして今回来ている森林地帯はフィンジアス王国北東部である。
判明している鍵の内、残り2本は大陸北西部にある沿岸沿いの小国にそれぞれ繋がっており、判明していない残り2本については後日調査する事になっている。
「何?もうそんな時間か?」
「はい、移動中に他の魔獣や猛獣との戦闘を考えるとそろそろ戻った方がいいです。それとも、遅くなってステラ王女に嫌味を言われたいのですか?」
「戻るぞ!!」
ヴィルヘルムは剣を鞘に収め、元来た道を歩き始めた。
そんな兄の背中を見たロビンはクスッと笑みを漏らしながら後を追いかけていった。
そして歩きながら自分達のステータスを確認し、着実にレベルが上がっている事を確認する。
【名前】ヴィルヘルム=O=ファリアス
【年齢】18 【種族】人間
【職業】皇子(Lv17) 魔法使い(Lv17) 騎士(Lv17) 【クラス】バカ皇子(改)
【属性】メイン:火 雷 サブ:光 風 時
【魔力】141,000/261,200
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv1) 補助魔法(Lv3) 特殊魔法(Lv2) 剣術(Lv2) 体術(Lv1) 投擲(Lv2) 鑑定
【加護・補正】物理耐性(Lv1) 魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv1) 全属性耐性(Lv2) 鍛冶神ゴヴニュの加護 職業補正 職業レベル補正
【名前】ロビン=W=ハワード
【年齢】17 【種族】人間
【職業】冒険者(Lv24) 騎士(Lv24) 魔法使い(Lv23) 【クラス】バカ皇子の賢弟
【属性】メイン:空 サブ:風 水
【魔力】395,000/513,000
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv1) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv3) 特殊魔法(Lv4) 剣術(Lv2) 槍術(Lv3) 体術(Lv2) 虚空の銀槍
【加護・補正】物理耐性(Lv2) 魔法耐性(Lv1) 精神耐性(Lv3) 空属性耐性(Lv3) 英雄神プイスの加護 職業補正 職業レベル補正
ロビンはポイントの残量が足りない為、最初は〈職業レベル補正〉だけを取得していたが、先日、レベルアップと共に貯まったポイントを消費して〈職業補正〉も取得した。
2人ともケビンほどではないが、総じて魔力の上昇率が高いらしく、ロビンはレベルでは上のはずのヒューゴよりも魔力が高い。
ヴィルヘルムに至っては、村長による地獄の日々の成果が出たのか能力や補正がボーナス以外でも増えていた。
『ギャォォォォォォォォ!!』
「――――――――皇子!」
「うむ!どうやら先程のドラゴンの仲間のようだ!奴も俺の剣の錆にしてくれる!!」
同胞の血の匂いにでも誘われたのか、先程2人が倒したのと同種のドラゴンが空から襲い掛かってきた。
すると、別の方角からも似た鳴き声が聞こえてきた。
『ギャォォォォォォォォォ!!』
『ギャォォォォォォォォォ!!』
『ギャォォォォォォォォォ!!』
『グォォォォォォォォォォ!!』
前方上空以外からも複数のドラゴンが襲い掛かってきた。
だが、よく見れば違う種類も混じっている。
「おのれ!群で仲間の敵討ちか!!」
「違います皇子!後方のは別のドラゴンから逃げているようです!!」
「何!?」
「私は後方の方を相手にしますので、皇子は前をお願いします!」
「任せろ!」
その後、仲間の敵討ちをしにきたドラゴンや獲物を追ってきたドラゴン、そして逃げていたドラゴンとの乱戦が始まった。
ぶっちゃけ、ロビンが転移魔法を使えばすぐに逃げる事はできた。
それをあえてしないのは、強くなろうとする兄の意志をロビンが汲んだからである。
ヴィルヘルムがどこか変わったように、ロビンも主であり兄であるヴィルヘルムに対する意識が変わり始めているのである。
ただし、“兄”と呼ぶのだけは抵抗があって言えそうにないが。
結局、2人が扉に戻るのはもう少し先になるのだった。
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――ファル村――
俺、士郎!
今日の午後は不本意ながらオッサンこと、領主一家にファル村を案内する事になった。
断る事も出来たのかもしれないが、オッサンのペースに流されてこうなってしまった。
で、今俺は農地に来ている。
「ほう、これは壮観な光景だな!」
「良い眺めですね。」
「スゴ~~~~イ!」
目の前に青々と広がる麦畑にオッサンとオッサンの家族は感動していた。
最初は改良しまくって凄い勢いで成長した麦も、村の備蓄が満杯になり、倉庫を新たに建てないといけないほど収穫されているので今は再度改良して成長速度は緩やかにしている。
何より、今は一部の帝国兵や王国兵が手伝ってくれてるとは言え人手不足の状態だ。
作物が麦にある以上は、必要以上に収穫量を増やしたり成長速度を早めたりすれば忙し過ぎて過労で倒れる者が出かねないからな。
加減は大事だ。
「え~~~、ここが麦畑で、あっちが野菜畑、更に進んだ所にコショウ畑や果樹畑があるぜ!」
「話では聞いていたが、ここまで豊かな農地があるのは我が領内でもここだけではないのか?」
「まあ、魔法を使いまくって農地を広げたり改良したりしたからな。とりあえず、俺の知っている知識を村の人達に伝えておいたから、今後は魔法なしでも自力で生産ができると思うぜ?」
「ほう、これは領内の他の村にも見習わせたいものだな。」
「それは良い考えですね。」
オッサンと奥さんは目をキラリと光らせながらブツブツと何かを話し始めた。
おい、まさか他の村や町に俺を行かせようとか考えてないよな?
「お父様、お母様、私、果物の畑に行ってみたいです!」
「そうか!では向こうに行くとしようか!」
クリスティーナちゃんナイス!!
親バカのオッサンの思考を一瞬で変えたぜ!
よし!今後は流されないように、オッサンの親バカぶりをうまく利用してやるぜ!
「さあさあ、こっちが果樹畑だよ♪」
そして俺は一家を果樹畑に案内し、そこで果物狩りなどで楽しませていった。
その後は村の中に戻り、砂糖を作っている工房や、乾燥させた麦やコショウを挽いている小屋などを見学させていった。
途中、村産の小麦粉と砂糖で作ったクッキーを始めとするお菓子を振る舞ったりして奥さんやクリスティーナちゃんを喜ばせていった。
親バカのオッサンも、愛娘の笑顔で満足!
俺も変な話に利用されることが無かったから満足!
そんな感じで、最後は女性陣に大人気の温泉だ!
「ここがファル村の新名所、ファル温泉だ!!」
「わあ~!」
「フフフ、やっと温泉に入れますわ♪」
奥さんとクリスティーナちゃんが今日一番の笑顔を見せている。
最初は簡単な造りだった脱衣用の小屋などは、予想以上に温泉の需要が増えたことからより立派な造りになり、浴槽も大分拡張したから窮屈な思いはしないはずだ。
それと最近わかった事だが、この温泉には地下の不思議な力が溶け込んでいるらしく、普通の温泉よりも効能が強いみたいだ。
そのせいか、先に言ったように村の女性陣が綺麗になった他に、腰の曲がったお年寄り達が背筋をピンと伸ばして歩く姿が増えてきている。
かく言う俺も、狩りや修行でできた怪我もすぐに治るようになった。
今は宣伝しないけど、したらかなりの人が集まってきそうだ。
「さあどうぞ、効能は美容の他に筋肉・関節痛、打撲や内蔵系の病気にも効くぜ!」
「ほう!いろいろ効くようだな?」
「あなた、私とクリスティーナは先に入るわよ!メイド長!」
「ハイ、奥様。」
ここで新キャラ登場!
奥さんが指をパチンと鳴らすと、何時の間にか老メイドがそこにいた。
何だこの人!今、忍者みたいに現れなかったか!?
俺は思わず老メイドに《ステータス》を使っていた。
【名前】『百獣殺し』グレーテル=カップ
【年齢】61 【種族】人間
【職業】メイド 【クラス】最恐のメイド長
【属性】メイン:風 氷 サブ:水 土 火 雷 闇
【魔力】85,000/85,000
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv1) 剣術(Lv3) 体術(Lv4) 弓術(Lv3) 杖術(Lv2) 投擲(Lv3) 隠行術(Lv4)
【加護・補正】物理耐性(Lv3) 魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv3) 風属性耐性(Lv3) 氷属性耐性(Lv3) 毒耐性(Lv2) 麻痺耐性(Lv1) 凍傷耐性(Lv3) 狩人の眼 不撓不屈 地獄耳 戦女神オイフェの加護
スペック高!!
何だよ『百獣殺し』に『最恐のメイド長』って!?
能力は《体術》や《隠行術》がチート級だし、メイドというより暗殺者っぽいスペックだろ!?
魔力がこの世界の人にしてはかなり高いし、《地獄耳》があるから(今は)無闇に愚痴や悪口ん漏らしたら絶対に聞かれてしまう!
というか、名前と年齢からして執事さんの奥さんだ、きっと!
「―――――奥様、奥様とお嬢様の分のタオルと着替えでございます。」
「御苦労様。」
用意良いな、メイド長!?
というか、今、何もない所から出さなかったか!?
「じゃあ、入ってきますね。」
「お父様、覗かないでね?」
「覗いたら殺す!」と言ってるような視線だったぞ!
オッサン、まさか娘の入浴を覗いた前科があるのか?
あったらいろんな意味で要注意人物に認定するぞ!
「・・・私のクリスティーナ、綺麗になりすぎてモテたらどうしよう?」
ズゴッ!!
思わずズッコケてしまった。
何の心配をしてるんだ!!
これは、クリスティーナちゃんに彼氏が出来た日には・・・・・
いや、余計な事は考えないでおこう。
「オッサンも男湯に入ってきたらどうだ?」
「・・・!そうだな、変質者が覗かないように見張らなければ!!」
「いや、そういう意味じゃなくて・・・ま、いいや。」
タイミングよくバカ皇子が帰ってきて・・・なんて事も有り得そうだからな。
さてと、俺はオッサンと一緒に風呂に入る趣味はないから、オッサン達が入浴している間に騎士団の人達のパワーアップでもしてよっかな?
メイド長は・・・・・後にしておこう・・・。