第450話 ボーナス屋、永遠に……
とうとう最終回です。
――オオバ王国 王都――
その日は早朝から雲一つない快晴だった。
まあ、そもそも高度が高度だし、仮に雲が沢山あっても今日だけは力ずくで排除しただろうけどな!
――――ド~ン!ド~ン!ド~ン!
王城の真上に3発の花火が打ち上げられ、それが合図となって数百人の演奏家が各々の楽器を一斉に奏で始める。
同時に大爆発する大歓声!
この日、王都には文字通り世界中から大勢の方々(・・)が集まり、世界を救った『勇者王』である俺の結婚式を祝福したのだ。
「……ソフィアちゃ…ソフィアに訊かなくても解ってたけど、とんでもない人数が集まっちゃったな。これ、一千万でもきかない人数だぞ?」
「私、結婚式は大勢に祝福されたいって小さい頃から思ってたけど……これは多過ぎ!」
「ゆ、唯花様。周りに聞こえるので声を落としてください」
「―――!ゴメン、つい……」
想像以上の人の集まりに声を上げてツッコんでしまう唯花と、それを制するアンナちゃん。
俺達は今、王城を特注の馬車に乗って出発し、結婚式を行う超聖堂に向かって王都の中をのんびりと移動している。
一列5人乗りの座席の前中央部に俺が座り、その両脇を唯花とアンナ、ステラとヘル様が座り、その後ろには光葉、ユニス、ユリアとウェディングドレスを着た俺のお嫁さん達が行儀よく並んで座り、超大歓声を上げる人々に笑顔を向けながら手を振っていた。
ちなみのこの馬車、今回の結婚式だけの為に俺とお嫁さん全員が乗っても違和感が無いように作られたものなので、明日以降に使用される予定は今の処無しだ。
「陛下~!」
「こっち向いて~!」
「おめでと~!」
「羨ましいぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「幸せになれよ~!」
「(干乾びるなよ~!)」
「おうひさまきれ~!」
「私も射止めて~!」
「よ!世界一の幸せ者め!」
「お幸せに~!」
国民達からも様々な祝福の声を投げかけられる。
中には余計なお節介も混ざっていたけど、基本的にはこの結婚を心から喜んでいるようだ。
国民の種族も人種もバラバラ、故郷もバラバラ、だけど今は全員がオオバ王国の国民だ。
最初は文化の違いで衝突する事が多かった者達も、今では酒の入ったジョッキを片手に肩を組みながら俺達にエールを送ってきている。
それが偽物ではない真実であるのは直感が無くても一目で分かる。
この国を造って本当に良かったと、俺は心の底から思った。
「フフ、ずっと冥界に居た私が青空の下で結婚するなんて本当に夢みたい♡」
「ヘル、アレは本当に良かったのか?」
冥界の女王なヘル様は未だ嘗て無い程上機嫌だった。
女神だけど結局俺と結婚するヘル様は、そのイメージから黒のドレスが似合いそうだけど、今来ているのは黒ではなく鮮やかなピンク色のウェディングドレス、胸部は神業レベルで違和感のない膨らみになっている。
「いいのよ。私の結婚式なんだから、これ位はしないとね♪」
慈愛に満ちた女神スマイルの先には、俺達が乗る馬車を御者無しで引く1頭の馬……ではなく、八本足が特徴の神馬『滑走するもの』の堂々とした姿があった。
本来は北欧の最高神オーディン専用の軍馬だった筈だが、実はヘル様の片親違いの兄妹だか姉弟だったので、その縁に甘えて馬車を引っ張って貰っているらしい。
結構怪しいけど。
「というか、国民に混じって神様や眷属らしい輩がちらほら……」
俺が大衆の方に視線を向ければ神速で隠れる人影が幾つも見えた。
チート過ぎる俺の前では無意味な行動なのにな!
「花嫁に女神が数名混じってるから当然でしょ?」
何を今更と、唯花が隣から呟く。
そう、既にお気付きであろうが、俺のお嫁さんの中にはヘル様を含めて数名の女神様が混ざっている。
全員神気を完全に隠しているから一般人で気付いている人は少ないが、一部の聖職者らしき人達は今にも卒倒しそうになってたりする。
神話の世界じゃよくある話だけど、まさか俺が女神とも結婚するとは思わなかったな。
最初は若干抵抗があったけど、今は全然OKなのは内緒だ。
「お!見えてきた!」
そうこうしている間に会場の超聖堂に到着した。
そこには俺達の家族や来賓の方々が拍手をしながら馬車の到着を待っていた。
俺の家族も本日は100%王族ファッション、何時もは元気200%な弟妹達も今日ばかりはちゃんと礼儀正しく王子王女として振舞っている。
なんかバカ皇帝が父さんにガン飛ばしているけどスルーされてる。
お祖父ちゃん(公爵)達は流石は生まれから大貴族なだけはあり、異世界の王族達の前でも臆することなく堂々としている。
「あ……!お祖父ちゃん(神主)……」
だけどその中で、1組だけ可哀想な人達がいた。
父さんの実家、大羽本家のお祖父ちゃん(神主)一行だ。
ただでさえ慣れない異世界で緊張している上に、周りには超VIPな人達に加え、やっぱり来てしまった古今東西の神様達――無論、日本の八百万の神々もいる――の前に生きた心地を一切感じさせない顔色をしていた。
しかもお祖父ちゃん(神主)のすぐ近くには天照大神御本人が……頑張れ!
「さあ、お手を」
馬車が止まり、最初に俺が下りると1人ずつお嫁さんの手を取って降ろしていく。
そして拍手の嵐に包まれながら新築の超聖堂の中へと入る。
カトリックだと神父さんが居るんだろうけど、残念ながらここは異世界、中で待っていたのはファンタジーな人だった。
『新郎新婦の皆様方、お待ちしておりました』
背中から神々しい羽を数十枚生やした熾天使――――天使長ミカエルさんが。
って、何でだよ!?
「「「!!??」」」」
これには俺だけでなくお嫁さんズもビックリ!
ヘル様も知らなかったようで、両目を真ん丸にしている。
女神にも予想外だったらしい。
「……なして?」
『世界の意志です』
ミカエルさんはニッコリと答える。
同時に俺の目の前に1枚の画面が開いた。
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『「真の敵ラスボス」を倒そう!』
・世界を滅ぼそうとする敵がいる。世界に芽吹く数多の命を摘み取ろうとする悪意がある。そして勇者は世界を滅亡から救い、元凶を倒す存在。勇者よ、汝に与えられた真の敵を倒す時が来た。汝の勇者としての真の敵を倒し、異世界ルーヴェルトを滅亡から救うのだ!
・達成条件:「真の敵ラスボス」を倒す。
・達成状況:達成!(『魔神』バロール、『無限神』ウロボロス、計2柱を完全撃破!)
・報酬(変更):世界初にして史上最大の結婚式(+披露宴)、新婚旅行~時空世界遺産100選を巡る旅~、超大型時空渡航船『ロイヤル・シロウⅠ世号』、本当に幸運な聖花束×∞
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「……これか」
すっかり忘れかけてたけど、そういえばこんなクエストを俺は受けていたんだった。
『世界初にして史上最大の結婚式(+披露宴)』、ミカエルさんの言っていた「世界の意志」ってこういう事だったのか。
クエストの報酬により豪華メンバーによる結婚式が強制開催、見ようによってはとても豪華な報酬だが、見方を変えたら何かの罰ゲームやハプニング映像にも思えてしまう。
「…………ま、いっか」
取り敢えず気にしないことにした。
今日は一生に一度(多分)の結婚式、かなり次元が違い過ぎるけど鬱な気分で迎えるのは勿体無いし、何より参列してくれた人やお嫁さんズに失礼だ。
も う 開 き 直 っ て し ま お う !!
そして結婚式が盛大に始まった。
角笛を吹いている光の神を始め、音楽系の神様達が混じった楽団の演奏と共に……
『――――汝、士郎=ヴィリアーズ=オオバは唯花=ヒラタ、アンナ=F=ファリアス、ステラ=W=フィンジアス、ヘル=ゴッデス(女神)、ソフィア=アガペー、スクルド=ノルン、ユリア=S=リヒトシルト、リスティアーナ=K=モーブ、薺=コウサカ、光葉=スメラギ――――――以上の者達を、その命の炎が燃え尽きるまで愛する事を誓いますか?』
「誓います」
何時の間にかミドルネームが付いちゃっているが、これは本名だと名前がちょっと短いという意見が意外と多く出たせいだ。
ミドルネームは国によって付け方が異なり、宗教による洗礼名や親の名前、母親の旧姓などパターンは色々だ。
俺は特に拘りは無いから、母さんの実家である「ヴィリアーズ」を採用した。
ちなみに、現代の英国貴族ではミドルネームのある人はあまりいないらしい。
『次に唯花=ヒラタ、汝は士郎=ヴィリアーズ=オオバを夫とし、終生まで愛し続ける事を誓いますか?』
「はい。誓います」
『次にアンナ=F=ファリアス、汝は――――』
・
・
・
(*以下省略)
長い!
仕方がないとはいえ、結婚式の定番、誓いの儀式が滅茶苦茶長かった。
俺だけじゃなく、後ろの来場者席からもドン引きに似た気配が感じられるけど、それでも大半は「士郎だから仕方ない!」といった雰囲気だ。
主に神関係が。
『では、誓いの口付けを』
「「「はい」」」
そんな式場の雰囲気に一切動じず、ミカエルさんは誓いのキスまで進行させていき、俺は1人目の唯花と向かい合い、互いに顔を近づけていく。
「――――これからも、よろしく頼む。ずっと愛してるよ、唯花」
「ええ、私も愛してるわ。士郎」
自分達にしか聞こえないとはいえ、日本で言ったら悶え死ぬこと必死のセリフが思わず出てしまう。
だけど、幸せのテンションが(キスシーンによって)限界突破していた俺はそんな些細な問題など気にすることなく唯花と唇を重ねる。
その瞬間、一部で乱闘紛いな騒ぎが一瞬だけ起こったが気にする事無くキスを続け、互いに頬を深く紅潮させながら一旦離れ、次にステラちゃんにキスをする。
「「「うおおおおおおおおおお!!姉御ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
なんだか色んな意味で場違いな悲鳴が聞こえてきたが、俺は気にする事無くキスを続けるが、ステラちゃんの方はプルプルと震えていた。
この世界に召喚されてから2番目に出会った俺のお嫁さん、出会った当初は真面目で堅そうな雰囲気だったけど、今ではお伽噺のお姫様のような可愛さもよく見せてくれる。
彼女との出会いを思い返しながらキスを終えた。
そして次はアンナちゃんだ。
「シロウ様……」
「アンナちゃ……アンナ、今日からは別の呼び方で読んでくれるか?」
「……はい、シロウ」
俺をこの世界に召喚した少女、実は皇帝の落胤だったというテンプレ属性を兼ね揃えていた彼女は常に俺に対して一歩引いた場所に立っていた。
だけどそれも終わり。
思い返せば初めて呼び捨てで名前を呼んでくれたアンナに、この世界に呼んでくれた感謝と、生涯愛し続ける事を誓って深いキスを送る。
「ああああああああああああああああああああ!!アンナアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――ッ!!やっぱりお父さんは認めなっ――――」
「「「黙れ」」」
暴走する花嫁の父とそれを封殺する妻達。
初見の人達にはビックリな光景だが、生憎とこの場に居る大半の人は慣れ過ぎているので大した騒ぎになることなくアンナとの誓いのキスを終了した。
「――――いよいよ私の番ね」
ヘル様は大興奮していた。
家庭の事情により男性経験が極めて乏しいせいか、夢にまで見た結婚式でのキスシーンに周囲の視線などお構いなしに大興奮していた。
俺はそれを微笑みながら見つめ、深いキスをする。
「主……」
「ソフィア?」
「……私の旦那様♡」
「「「おおおおおおおおおおおおおお!!」」」
そしてその後も続く口付けの嵐に、会場の空気はボルテージを上げていく。
その度に俺の脳裏にはこれまでの思い出がダイジェストとなって駆け巡っていく。
思えば短いようで長く、そして濃厚すぎる時間だった。
ほんの1年前までは自分がこんな幸福に包まれるなんて微塵も想像しなかったし、今でも信じられないと思う事はある。
だけど、これは間違いなく現実だ。
『此処に夫婦の契りが結ばれ、此の者達は今日この時を持って夫婦となりました』
超聖堂の中を沢山の拍手が包み込む。
今日この日、俺達ははれて正式な夫婦となった。
『ゴケェ~~~~~~!!』
コッコくんも超聖堂の上から後光を照らしながら俺達を祝福してくれている。
『ピィ~~~~~~~!!』
スラ太郎達もカラフルに増殖してイルミネーションの様に俺達を包み込んでくれる。
『ピ!』
『ガク!』
ブレイくんは……外でスレイプニルを倒して馬車を引こうとスタンバイしている。
その隅っこでは狼と大蛇がプルプル震えながら身を寄せ合っているけど、きっと気のせいだ。
披露宴へはブレイくんと共に――――
スラ太郎とコッコくんが悔しがっているようだが、きっと気のせいだ。
「――――では、行こうか」
「「「はい!」」」
俺はお嫁さんズの手を引いて超聖堂の外に出る。
地球の結婚式の定番(*一部地域を除く)のブーケトスを行うのだ。
使う花束はクエストの報酬、これを投げて受け取った女性は冗談抜きで結婚する事が可能になる奇跡の花束だ。
だが、その情報が一体何処から漏れたのか、超聖堂の前には結婚願望丸出しの女性達が獲物に狙いを定めた狩人の目をしてスタンバイしていた。
ルーヴェルトには、より正確にはガンドウ大陸以外の大陸には結婚相談所といった婚活を支援してくれる組織なんて存在しないから、貴族でも一家の長子以外は結婚に必死になる。
それはもう、血眼になって!
『では~ブ~ケトス~の時間でえ~~~す♪』
「「「…………」」」
そしてそれを煽るのはバカ龍王、コイツは後でお仕置き確定だ!
『あんぎゃ~!』
あ、その前に親友達物理的にヤッちまった。
御愁傷様。
て、そうこうしている内にお嫁さんズは一斉に花束を投げた。
そして始まる――――女の聖戦。
ああ、俺 は 幸 せ 者 だ~~~~~~♪(遠目)
・
・
・
その後、この結婚式に参列した王や皇帝、各地の領主及び代官を含めた地方自治の責任者達は各地に結婚相談所を設置、そして公共主催の婚活パーティを定期的に開催する事を提言し、それは色々あった末に承認される事となったのだった。
彼らは口を揃えてこう語ったという。
「未婚の者を放置し過ぎれば国が滅ぶ!(*物理的に)」
彼らは一体、何を見たのだろうか?
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結婚式は無事に終わり、その後の披露宴も前代未聞のレベルで盛り上がり、お嫁さんズもお色直しを楽しみながら俺に抱き付いて来たりキスをお見舞いして来たりした。
披露宴では来客者達は自重無しに一発芸を披露していき、手品セットを持ち込んでいた父さんの弟で俺の叔父(宮司)は隅っこで小さくなったり、お祖父ちゃん(両方)は酒神達に絡まれてしまったり、性懲りも無く復活してきたバカ神×3を断罪の女神達が公開処刑して盛り上がったり、英雄神達が決闘を始めたり、コッコ団が無双したり、バカ龍王が世界各地から龍神や龍王を全員呼んで来たり、バカ皇帝が俺に決闘を申し込もうとして奥さんにプロレス技を掛けられたりと、最終的には「何、このカオス!?」という展開にまで発展しながら幕を閉じた。
あの文字通り山の様に巨大なウェディングケーキにはビビったよ。
物理的に有り得ないでしょ、あれ。
「昨晩は……お楽しみ………………でしたね?」
結婚式の翌朝、女官達は目に隈を作りながら俺に対してドン引きしていた。
彼女達は夜の見張り当番をしていた者達だ。
何の見張りかは割愛、一晩中起き続けていた彼女達はゲッソリとやつれていたので特別有給休暇を与えて療養させてあげた。
俺達の初夜は刺激が強過ぎたぜ!
あ、洗濯当番の人にもご褒美あげとかないと。
「陛下、夜の大仕事も大事ですが日中の仕事にも心血を注いでください!」
「うわ~ん!」
俺は結婚の翌日からも激務に翻弄されていった。
新婚旅行?
そんなの、この仕事の山を攻略してからだ!
俺の戦いはこれからだ!
「陛下、ワクワク大陸の魔王陛下から結婚式の招待状が届きました。後で目を通しておいてください。ああ、スケジュールには既に入れておきました」
「不参加権無し!?」
「あと、オリンポス大陸のソル帝国から、日本人の召喚者達の一部が脱走して各地で問題を起こしているそうです。同じ日本出身者として御助力頂きたいと」
「担当は何してる!?」
「天空大陸のククルカン様から、ダンジョン運営のアドバイザーになって欲しいと……」
「それ、配達ミスじゃないのか?それはオリンポスの方が適任だろ」
「ガンドウ大陸の与羽根国からミカエル様を紹介してほしいと……」
「祈れ!」
チートを沢山手に入れた。
だけど、手に入れる度に仕事が増えて忙しくもなった。
便利なものが増えると仕事が増える法則なのかもしれないが、俺はそれを放棄する事無く懸命に戦い続けている。
だって、これからどんどん子供が生まれてくるんだから、父親として恥ずかしくない姿を見せないといけない。
時には書類と戦い、時には邪神と戦い、時にはバカ神を〆殺し、時には『ボーナス屋さん』の出張営業をしたりと、俺のやる事は常に一杯だ。
かくして、たった1つのチートから始まった俺の物語は社畜とまではいかないまでも、全く退屈になる事の無い年中激闘モードへと突入していったのだった。
「陛下!ファリアス帝国のロビン皇子が突如召喚系魔法により拉致されました!勇者召喚系要人拉致誘拐事件の発生です!」
「ロビンくん、最近は目立った活躍が無いと思ったら主人公になっちゃった!?じゃなくて、直ぐに帝国の担当者と合流して召喚した側に抗議を!」
「現地の神だった場合は?」
「コッコ……いや、今回はブレイくん出動で!」
「御意!」
決して暇になる事も退屈になる事は今後一切ないのかもしれない。
けど、今はそれが刺激的過ぎて楽しくもある。
俺の物語はまだ序盤を終えたばかりなんだから!(多分)
――――見つけました!救世主よ、我が国をお救い下さい!
おや、早速新たなイベントが発生したよ。
執務室の床に魔方陣が現れて、俺を異世界に召喚しようとしている。
〈旦那様、召喚されますか?やり返しますか?〉
頭の中で妻が俺の選択を訊いてきた。
と同時に、天井の方にも別の魔方陣が出現する。
――――オホホホホ!さあ、私の勇者よ!私の願いに答えなさい!
こっちは確実にアカン方の勇者召喚だった。
〈旦那様、〆ますか?滅ぼしますか(*物理)?〉
俺の妻は過激だぜ!
なんて思ったら右の壁にも魔方陣が出現した。
と思ったら背後から、前方、左の壁にも次々と魔方陣が出現した。
――――破滅の御子よ!我が命に従い、異界より現れよ!
――――神の使徒よ!邪悪な魔王を滅する為に我らの声に答えよ!
――――わお~ん!
――――異界の花婿よ!邪神に魅入られし姫君を救いたまえ!
良くも悪くも沢山の世界が俺を必要としている。
さて、俺はどうするかな?
〈旦那様、如何致しますか?〉
俺は考える。
その間は魔方陣を力ずくで待機させておく。
「よし!決めた!」
数分が経ち、俺は1つの結論に至った。
「――――《ボーナス屋さん》起動!!」
そして俺は、今日もチートを揮い始めるのだった。
『ボーナス屋さん』、今日も色んな世界で絶賛営業中だ!
これにて「ボーナス屋、勇者になる」は一旦完結となります。
元々は「黒龍の契約者」のスピンオフ作品だったのですが、気付けば本編よりも人気が出てしまいこっちを優先して執筆しました。
後半はグダグダになった感じですが、最後まで愛読してくれている人がいてくれて嬉しかったです。
士郎、君は勇吾を超える超主人公だったぜ!
さて、今後の予定ですが、のろのろと本編の方を完結させていこうと思っています。
ボーナス屋の方も偶に短編を載せたりしていこうと思います。
士郎の嫁達の出産とか、最後は出番の無くなった人たちの話とか、バカ皇子の物語……はいらないか。何時になるかは未定です。
では、長い間応援してくださりありがとうございました。
爪牙




