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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
最終戦争?編
452/465

第437話 ボーナス屋、絶体絶命になる

 ストックが溜まったので、今日からラストまで毎日更新します。


――異世界ルーヴェルト――


 それはどの星よりも遥かに大きく、1つの星の海を一飲みできるほど飢えていた。


 生物とすら呼べない、実体の無い不定形な体――スライムやアメーバに近い――にあるのは銀河を飲み込む巨口と、一切の光の見えない、最早闇とすら呼べないほど悍ましい2つの眼が浮かんでいる。


 焦点の定まらない眼を動かしながら、それは大きく口を開き、真下に広がる銀河に喰らいつき、一切の光を残さず飲み込んでいく。


 銀河に輝く恒星も、恒星の周りを公転する大小無数の惑星・小惑星も、尾を引きながら銀河を翔ける彗星も、星々の上で暮らす全ての命も、其処にある全てを、それは飢え続ける己の中、決して満ちる事の無い無限の闇へと沈めていった。



 “それ”には意志は無い。


 あるのは決して満たされる事の無い、森羅万象を延々と喰らい続ける「飢え」という本能1つだけだった。


 『深淵』の果ての更なる先、神々すらも触れる事を恐れる“真”の最果ての領域――――『混沌』の世界に潜む禁忌中の禁忌。


 邪悪でありながら、その邪悪の対である神聖を抗う事すら許さず全て喰い尽くす、全ての神聖存在の天敵中の天敵。



 その名は――――聖喰の飢餓神皇(ロード・オブ・ホーリー・イーター)



 混沌の中にて生まれ、あらゆる次元から隔離された七つの混沌級始原能力(カオス・オリジン・スキル)七つの終焉セブン・カタストロフィ』の1つである。


 本来ならば一度としてその力を揮う事無く、混沌の中で永遠に封じられていた筈だった忌まわしき概念(ちから)


 だが、それは世界の終焉と創世を企む、混沌に至りし7柱の神によって破られ、混沌より解き放たれた“それら”は各々の神の中に宿り糧と成り果てた。


 そして現在、7柱の神の一角、『魔神』バロールに取り込まれた「飢餓」を司る力が異世界ルーヴェルトに解き放たれ、数多の神々に守護された世界を喰い尽くしていった―――――




『何も視えず。聞けず。感じず。一切の救いの無い闇の中で、全ての世界が終わるのを待っているがいい。ああ、もう貴様らには何を言っても届かぬか』




 無限の闇の中でバロールは苦笑する。


 終わってみれば呆気ないものだった。


 少々手古摺りはしたが、己の全力を振るう事無く戦いは終わり、残ったのはバロール本人と、彼の同族であるフォモール神族、そして彼によって創造された邪悪な獣達だけだった。


 そこには邪悪を滅ぼし人々に希望を与える勇者の姿は1人も無かった。




『“始まり”に触れた小娘は全ての戦が終わった後、物好きな『冥王(ハデス)』にやるとしよう。それまでの間は―――――高みの見物を決め込んでいる愚物共を一掃するとしよう』




 憎悪に満ちた3つの眼は次元を超えた先の一点を凝視する。




『――――母神(ダヌ)愚孫(ルー)も、二度と再臨する事なき永久の死を与えてくれる!』




 バロールは動く。


 嘗て人間の英雄と共に己を封印した因縁の敵、この世界を創造し君臨し続ける一族の怨敵、最も憎み恨み続けている神々――――ダーナ神族を滅ぼす為に。


 己の障害となる者を、牙を向ける者達の存在を決して許さないが故に。


 王たる『魔神』は邪悪な軍勢を率いて、次の敵地へと進み出す。


 その進軍の軌跡には何も残さず……




『ゴケコッコ~~~!!』




 ……残さ…………ず?




『―――――何?』




 驚愕。


 バロールは進軍の足を止め、配下共々後ろを振り返った。


 そして振り返った先、彼らの視界に映ったのは、現状では存在するはずの無い、1羽の鶏の姿がそこにあった。



『――――馬鹿な!!有り得ん!!』


『ゴケ!!』



 3つの眼が驚愕により丸く開き、第三の眼からは同時に《即死魔法》(神)が視線の先の鶏に向け放たれたが、鶏は涼しい顔(?)をしながら立っていた。


 並の神さえも即死させるバロールの第三の眼があっさりと無効化されたのだ。


 鶏凄い!



『畜生風情が!!』


『ケンコス!』


『フォモールを愚弄する者は滅びろっ!!』



 バロールの配下の1柱、足無き邪神ケンコスは仲間の制止を振り切り、身の丈を超える巨斧を鶏の頭を真っ二つに割るように振り落した。



『ゴケ!』


『なっ!?』



 トサカガード!


 邪神ケンコスの渾身の一撃を、鶏は真っ赤な鶏冠(トサカ)で受け止めた。


 直後、巨斧は粉塵となった。



『――――ッ!』


『下がれケンコス!!その鶏はっ――――』



 足は無いけど一歩下がる邪神ケンコス。


 他の邪神は鶏の正体(・・)に気付き慌てて同胞を下がらせようとするが既に遅く、ケンコスの目の前で鶏は嘴を大きく開いていた。



『ゴケゴケ~~~!!』


『な!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――』


『ケンコスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』



 まるで泥人形が大きな渦潮に飲み込まれるように、ケンコスの全身の輪郭が崩壊し、螺旋を描きながら鶏の嘴の奥に吸い込まれていった。


 この間、僅か0.8秒。


 いや、0.8秒もった(・・・)と言うべきだろう。


 鶏の吸飲初速度を鑑みれば、本来ならケンコスが如何にに巨体でも0.8秒どころか0.0001秒未満で完全に吸い尽くされていただろう。


 それが0.8秒も掛かったのは、同胞達や怪物達が一斉に鶏を攻撃――バロールも第三の眼で攻撃――し続けていたこともあるが、ひとえにケンコス自身の必死の抵抗のせいだろう。


 流石は腐っても邪神、最強の鶏に対して単純計算で8000倍の抵抗をするとは見事である。


 彼はきっと良い肥やし(・・・)になることだろう。



『『『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッッ!!!!』』』



 巻き添えに一緒に吸い込まれていく邪悪な怪物軍団も。


 アーメン。



『ゴケ!』



 さて、読者の皆さんはもうお解りだろう。


 この邪神(+α)をあっさりと吸い殺した最強の鶏、みんな大好きなコッコくんである。


 バロールの必殺技的なチート技で銀河と一緒に消えたと思われたコッコくんだが、彼は決して邪悪に滅ぼされるような鶏ではなかった。



『……。お前はあの『大特異点(ゆうしゃ)』の一の眷属。貴様が無事ということは――――ッ!』



――――ッッッグオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!



『!?』



 世界全体を絶叫が埋め尽くす!


 いや、世界全体がバロールの軍勢を巻き込んで盛大に揺れた!



『こ、これは―――――!?』


『馬鹿な!我らの王の“御業”が!破られるッ……だとッッ!?』


『こんな…………有り得ん!!!!』


『―――――ああ!!』


『~~~~~~ッ!!勇者ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』


 邪神達は混乱に陥り、その悲鳴が世界に響き渡る。


 そして次の瞬間、



――――バキッ!!



 一筋の光が差すと同時に――――世界が、割れた!



『ピィ~~~~~~~~!!』



 と同時に世界に聞こえてきたのは心温まるスライムの鳴き声――――スラ太郎だった。


 開戦と同時に邪神Aと一緒に何処かに消えていったスラ太郎が今、再び戦いの最前線に復帰した。



 銀河より大きい筈の《聖喰の飢餓神皇(ロード・オブ・ホーリー・イーター)本体(・・)を超神速で小さな体に吸収しながら……。


 聖喰の飢餓神皇は高い知性も理性も存在しない本能のみの存在だが、まるで掃除機に吸い込まれる布団のシーツみたいにスラ太郎に吸収されているそれ本体から響く絶叫からは心なしか、物凄く哀愁を感じさせてしまうような何かが混ざっていた。



家畜(ニワトリ)の次は最下等魔獣(スライム)か!!我が力を奪うつもりか!?』



 自身の物であった筈の、無敵と言っても過言ではない筈の、自分達7柱のみが持つ混沌級始原能力(カオス・オリジン・スキル)がスラ太郎に理不尽にも吸収されようとしている事実に、バロールの怒りは臨界点を超えて爆発した。


 数多の世界でも最弱の魔獣種とカテゴライズされやすいスライムが、全次元レベルで最高位最強の神であると自負している自分の能力を吸収しているのが彼の自尊心(プライド)が許さなかった。



『下等生物ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――ッッ!!』


『お、王!!』


『まさか!!此処で混沌級のを!?』


『マズイ!!』



 バロールの全身から超高密度のエネルギーが大放出される。


 其の無尽蔵のエネルギー放出には同胞である邪神達も恐怖せざるをえない。


 邪神達は我が身の安全を最優先に考えバロールから離れるが、バロールによって創造された怪物達は創造主の力を全身で浴びた末、その圧倒的なエネルギー量に耐え切れずに全身を崩壊させ次々と消滅していった。



『消え去れッッ!!我に仇なす下等生物共がッッ!!』



 バロールの周囲に大小無数の立体魔方陣が出現し、それらの照準がスラ太郎とコッコくんに向けられると同時に魔方陣から破壊の力――混沌級の神術《フォモール魔神術-終-》――が解放された。



『《醜く澱んだ楽園の嘆きカオス・カタストロフィ・ペスト》!!!!』



 それは醜悪の極みと表現してしまう程澱み切った色をした汚泥の奔流、触れるどころか近付くだけで、視界に入れただけでその存在を汚染し尽くし、汚染された対象から更に別の対象へと、神速を超える勢いで汚染を拡大(パンデミック)させていく病魔の力だった。


 神代において他の神族を黒死病(ペスト)で滅ぼしたフォモール神族の十八番、その最終進化形である。


 混沌級にまで極められた病魔の力がコッコくんとスラ太郎に襲い掛かる。



『ゴケェ~!!』


『ピピィ~!!』



 だが、最強過ぎる鶏(コッコくん)最強過ぎる魔獣(スラ太郎)のコンビは微塵も怯まなかった。


 そして醜悪な力の奔流が2匹に到達する寸前―――――



『ゴケゴケェ~!!』


『ピッピピィ~!!』


『な!!』



 その瞬間、憤怒に歪んでいたバロールの表情が驚愕の色一色に染まった。


 それほどの光景が、輝きが世界を埋め尽くしたのだ。



『金色の………太陽……!?』



 コッコくんとスラ太郎を中心に、黄金の輝きを放つ美しい星が生まれた。









 最強の味方がついに登場!

 明日も同じ時間に更新します!


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