第423話 ボーナス屋、モフる?
――東京 白井家――
発狂し大暴走した大怨霊こと平将門を綺麗に片付けてから10分後、俺達は『勇者』白井泰雅の自宅のリビングで中華まんをモグモグと食べていた。
懐にも優しいコンビニの中華まんだ。
「え!また異世界に召喚されてたの!」
「どうりであんまんが遅いと思ったよ」
「気付かれてすらいなかったよ……」
1時間程度とはいえ、この世界から居なくなっていた事に気付かれてすらいなかった事実に泰雅はショボンと落ち込む。
温かい肉まん美味しいな~♪
『く~ん』
『く~ん』
『く~ん』
と、そこに聞こえてくる犬の鳴き声。
俺の背後から犬3匹――柴犬、トイプードル、シベリアんハスキー(仔)――が何かを訴えるように視線を向けてきた。
さっきのラッキー&ロッキー以外にも犬がいたのか。
この家は犬屋敷なのか?
「ちょっと!なんだか犬が増えているんだけど!?」
泰雅は驚愕の眼で3匹を見ながら叫んだ。
どうやら、この家の飼い犬じゃないらしい。
よく見たら首輪も付けてないな。
「え~と、外でお腹を空かせていたから入れちゃった。ゴメン」
どうやら泰雅の仲間の1人――ミロンという小学校高学年くらいの少年――が勝手に居れたらしい。
まあ、仔犬が家の前でお腹空かせて鳴いていたら放っておけなくなるよな~なんて暢気に考えていると、隣で豚まんを食べていたソフィアちゃんが小さく首を横に振った。
え、違うって?
「ミロン……。でも、3匹も一緒に家の前にいたの?」
泰雅は何かを疑う様にミロンをジッと睨みつけると、ミロンは誰が見ても解る位あからさまに動揺し、視線を泳がせた。
ああ、あれは嘘を言っている反応だ。
そして改めてこの家の中の気配を探ってみると、内部の広さは外観の数倍はあり、その中を複数の生命体が駆け回っているのがハッキリと感じ取れた。
これは全部……
「兄ちゃんごめんなさい」
観念したのか、ミロンは泰雅に頭を下げて謝罪する。
そして部屋のドアの1つを開けると、「ピー!」と指笛を吹き、それを合図に扉の向こうから沢山の小動物達が駆け込んできた。
『『『わんわんわんわん!!』』』
ラッキー&ロッキーを筆頭に総勢26匹の犬達がリビングに集結した。
多っ!!
「ミロン~~~~!!」
「ゴメンなさ~い!兄ちゃんの帰りが遅くて探しに行ったら、あちこちにお腹を空かせたワンワンがいて、とても見捨てられなかったんだよ~!」
「多過ぎるよ!拾うにしても多過ぎるよ!」
「ゴメンなさ~い!」
ビックリ仰天する泰雅に謝り倒すしかないミロン、そして無差別に群がってくる犬達、ゲームの大音声と犬の鳴き声でリビングは阿鼻叫喚とはまた異なった騒々しさに包まれた。
元からこの家にいたラッキー&ロッキーは除いても、一体何所からこれだけの犬を拾ってきたんだ?
どう考えても積極的に捜さないと短時間で集められないと思うが。
俺はソフィアちゃんの方を向く。
「この町周辺ではブームの勢いで買った末、途中であきたり、世話が出来なくなってペットを捨てる住民が大勢存在します。そして飼い主に捨てられた罪の無いペット達の多くは、新しい飼い主と出会う事も無く非業の最期を――――」
「重い!!」
「そんな時、一種の生存本能等が働き、『勇者』が暮らすこの街に誘われるように集まってきました」
「犬の本能凄いな!」
本能に従って動いて新しい飼い主の家に辿り着いたとか!
今後も沢山集まってくるんじゃないのか?
コッコ団みたいにラッキー&ロッキー団を結成したりして神連中を狩りまくったりもしそうだな。
『わふ!』
「ってデカ!何か凄くデカいのも混ざってるんだけど!?」
「セント・バーナードです。犬の中でも最大級を誇ります。飼い主の予想を超えて大きくなったために捨てられました」
「こら!じゃれつくな!」
『わふ♪』
「ちなみにメスです。サイズは殆どオスですが」
超大型犬に懐かれ地味にピンチ!
尚、このデカワンコ以外にはラフ・コリーやアイリッシュ・ウルフハウンド、ベルジアン・シェパード・ドッグ・グローネンダールなんて種類の超大型犬がいた。
きっと物珍しさから買ったはいいものの、デカくなり過ぎて捨ててんだろうな……って、何でこんなデカい犬が捨てられたままでいられるんだ!?
保健所どうした!保健所!
そして最後の奴、名前長っ!
「仕方ない。飼おう」
「飼うんだ!」
結局、飼う事にしたらしい。
そして自宅を再度魔改造、犬達が存分に運動できるスペース――無人の平原に繋がる部屋+ペット用シャワー室――を設置したのだった。
エサはどうするんだ?
ジャーキーだけでも相当だろう。
「兄ちゃん、エサは取り敢えずラッキー達と同じものを上げたから大丈夫だよ。ブラッシング?の仕方は良く分からないけど」
「え?ドッグフードってそんなに置いてなかった筈だけど……何をあげたの?」
「これ」
ミロンは異次元?から生肉を乗せた皿を取り出し、俺もデカワンコをモフモフしながらそれをのぞく。
見た目は牛肉のブロックだが、俺の目と鼻が「それは牛肉じゃないよ☆」と訴えていたのですぐに謎のブロック肉を鑑定してみた。
【霊獣のばら肉(特上)】
【分類】食品(肉)
【属性】無
【魔力】500000
【ランク】Ex
【品質】超高品質
【用途】食料、薬
【詳細】
・旧『アポロン大迷宮』に生息していた霊獣の最高級ばら肉のブロック。
・良質な魔力と栄養を豊富に含んでおり、どのように調理しても並の黒毛和牛とは比べ物にならないほどの旨味を出してくれる為、食べた者は身も心も至福に包まれる神々の大好物。
・更に、生前の霊獣の力そのものも残しており、食べた者は「身体能力向上」、「知能向上」、「魔力上昇」、「潜在能力覚醒」、「体内異常完全回復」、「精神異常完全回復」、「最適化」の恩恵を受け、稀に「霊獣化」、又は「進化」を起こす場合もあるが、これはあくまで個人差があるが、食べれば食べるほど効果は大きくなる。
・歯が丈夫でない方も美味しく戴けます。
「「犬の餌じゃないだろ(よ)!!」」
俺と泰雅のダブル勇者ツッコみ!
RPGなら間違いなくレアアイテムな肉を犬の餌にするとかどうかしている!
俺くらいのドチートには効果が薄そうだが、地球世界の生物が食べたら例外なく仰天沙汰に発展してしまう。
だけど納得もいった。
どうしてラッキーとロッキーが大怨霊兼神の平将門を圧倒したのか?
それはこの肉を毎日食べ続けたせいでチートワンコに進化、それも狂った崇り神が逃げ出すくらい戦闘力の高い域にまで達してしまったんだ。
神使な狛犬さん達なんか敵じゃないな、これは……。
「結構お肉が余ってたし、みんな美味しそうに食べるから、つい」
「ついで食べさせる物じゃないよ!もう!」
泰雅、ツッコみ続けて息切れしそうだな。
〈『勇者』泰雅は『ワンコの勇者』になった! by神〉
そこへ流れてくる暇な神のアナウンス、うん、俺も今そう思ったよ。
きっとあいつはラスボス(笑)との最終決戦でワンコ軍団を率いて無双するんだろうな。
俺も俺でアニマル達と無双するんだろうけど。
「そんな称号は要らない!」
「……諦めろ。俺も色々やられてるんだ」
俺は同情の眼差しでポンと泰雅の肩に手を置く。
けど、一方でいい加減外野の神連中も鬱陶しくなってきたので、連中にも仕返しというか意趣返しのようなことをしておく。
具体的な内容については割愛。
〈すみませんでした!! by神〉
〈ゴメンなさい!! by神〉
〈調子に乗り過ぎました!! by神〉
〈だから鬼嫁達にはあ――――!! by神〉
「これで最低1ヶ月は大人しくなるな♪」
「……世界の危機の最中なのに、神様達は暇なの?」
「それは本人に訊いてくれ」
その後、神界の片隅で悪戯好きな八百万の神々が悲鳴を上げるほどの惨劇に遭ったらしいがそれはまた別の話だ。
さて、時間も押しているようだし本題を進めるとしようか。
泰雅の仲間にもラスボス(笑)との決戦に参戦してくれるように話を進めないと。
「じゃあ、本題に入るけど――――」
「主、事件です」
「え……」
話が進まない~~~!!
次回は閑話みたいな話です。




