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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
最終戦争?編
436/465

第421話 ボーナス屋、一時帰省する(笑)

――オオバ王国 王城・大広間――


 さて、今俺の目の前には日本人の勇者が1人居る。


 今は何処で何をしているかは不明なバカ神トリオの悪ふざけによってこの世界にクラスまるごと召喚されたオリンポス大陸の勇者、白井泰雅だ。


 彼の活躍は大上映会を開いて観賞、途中からバカ神の悪ふざけがエスカレートした挙句、魔王まで乱入してきたから俺達も参戦して敵勢も美味しく戴いたので今も鮮明に覚えている。


 ソフィアちゃん情報によれば自力で日本に帰ったと聞いている。


 一緒に召喚されたクラスメートの方は、今は絶賛贖罪活動中のようだけど。



「あのう、僕は何で此処に居るんでしょう?」



 そして勇者だが、現状が把握できていないようだ。


 さっきまで日本に居たのに、気付いたらこの王都のど真ん中に立っていた。


 けど、日本とこの国……というより異世界ルーヴェルトと地球世界の間は現在、時空神達の展開している障壁によって移動不可能な状態になっている筈だ。


 それなのに世界を越えて此処に現れたというのは、あからさまに作為を感じる。



「大方、俺と組んでラスボス(仮)を倒して欲しい神様か何かだろ?テンプレ的に」


「ラスボス!?(仮)って何!?」


「今、この世界に怒り狂ったラスボス(仮)な『魔神』が進攻中なんだよ。それに対抗する為に、今急いで戦力を集めている処なんだけど、そこに君が現れた。きっと神様の陰謀だ。ちなみに俺は人間辞めちゃった日本人の勇者でこの国の王様です。説明終わり」


「棒読み過ぎるよ!それに人間辞めたって!?」


「勇者は強くなると人間辞めちゃうんだよ。不本意だけど」



 本当に不本意なんだよ。


 最後は強制だったし。



「……そっちも大変だったんだね」


「わかってくれるか、同士!」



 俺と勇者くんは固い握手をした。


 召喚勇者は何処も大変なんだよ!


 あのバカ神トリオに振り回されたりとか!



「――――けど、いきなり召喚されちゃったから、家に連絡しないと皆心配するよ」



 話が弾んで、そのまま参戦の返事を貰うところまで進んだところで勇者(たいが)くんは日本に置いてきた家族や仲間が心配になったから一旦帰宅したいと言ってきた。


 うん、当然の意見だ。


 だけど、今は時空神達が頑張っているから一時帰宅は無理なんじゃないのか?


 それ以前に、この世界の外にはラスボス(仮)が……



(マスター)、地球世界とルーヴェルト間を結ぶ裏ルートの構築が完了しました。《盟主》を気にすることなく日本に行けます」


「ソフィアちゃん!」



 問題は一発で解決した。


 まるで家の前に敵が攻めてきているのに、抜け道を通って街に遊びに行けるような構図だ。


 しかも今回の敵はラスボス(仮)、端から見れば有り得ない構図だな。


 というかソフィアちゃん優秀過ぎ。


 時空神達、ドンマイ☆



「じゃあ、ラスボス(笑)戦前に帰省しようか!」


「気のせいかな?文字が一部変わってない?」


「気のせいだよ♪」



 勇者くんこと泰雅のツッコみはサラッと流して、俺達は日本への帰省へと向かった。


 俺としても、念の為に自分の目で日本の様子を確認しておきたかったし、ラスボス戦前には各地を回っておくのはお約束だしな。


 その間、ラスボス(笑)には世界の外側で怒り狂っていてもらおう。



「えげつない……」


「人間、そんなもんだよ」


「人間辞めたって言ったよね!?それに勇者だよね!?」


「……ダークヒーローっているだろ?」



 最近の俺は色々とぶっ飛んできているから、その辺はスルーしてほしいな。


 えげつないのは、色々と毒されてきているせいもあるし。



「ダークヒーローってそんなんじゃないと思うんだけど……」


「もっともなツッコみはいいから!」



 さあ、日本へ行こう!









--------------------------


――日本 東京――


 率直に言おう。


 こっちでもラスボス(?)が今にも降臨しようとしていました。



「そんな、さっきまではこんな事が無かったのに……!」



 俺の隣で泰雅も戦慄している。


 無理もない。


 彼がオオバ王国に強制召喚されてから現在までは1時間も経っていないのに、戻ってみたら空一面に変な波紋が立ちっぱなしだし、一般人には視認できないけど時空の歪みがあちこちに発生しているし、野良猫どころかネズミもGの気配も無いし、地面の下から大量の死霊が現代アートみたいに湧きだし続けているんだからな。



「取り敢えず浄化!」



 精神衛生上良くないので資料は全部浄化してやったけど、直ぐに湧いてくる。


 まるで地獄の釜の蓋が開いたみたいだな。



〈イザナミさんが居なくなったからじゃね?  by神〉


〈怖いのが居なくなったから黄泉の治安が急悪化しました。 by神使(犬)〉



 まだ復活していなかったのかよイザナミ!!


 それとも、旦那と一緒にコッコくん達の胃袋の中にいるのか!?



「ソフィアちゃん?」


「……」



 振り返ってソフィアちゃんに訊ねようとすると、ソフィアちゃんは光速を超えて視線を逸らした。


 コッコくん達の胃腸はどんな魔窟に進化しているのだろうか?


 間違ってもラスボス(真)にはならないでほしい。


 そんな事を考えていると、空から不気味な呻り声が聞こえ始めてきた。



――――ヴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛…………!!



 黒雲の中で巨大怪獣が蠢いているようだった。



「あ、なんか爬虫類っぽいのが」


「蛇の神獣です。《盟主》の眷属の1体が雲の中を北上しています。アレ以外にも計53体の神獣が世界各地を移動、その内15体は交戦中です」



 誰と?とは聞かないでおこう。


 俺は空気を読める勇者なのだ。



〈勇者(人外)だろ♪  by大国主〉



 空気読まない神が出たよ。


 というわけで通報しておきました。


 奥さん達に。



「……今、何か変な声がしなかった?」


「気にしなくてもいいよ。雑音だから。ダンジョンでも聞こえただろ?」


「……うん」



 半分納得できていない泰雅には悪いけど、今は少しでも時間を節約したいから先を急がせてもらう。


 俺達は不安げに空を見上げる大衆の間を移動しながら泰雅の自宅へと向かい、その途中途中で死霊や妖怪を退治したりしていった。


 驚いた事に、俺が軽く魔法や能力を使う度に泰雅はそれを見様見真似で覚えていった。


 流石俺と同じ勇者、凄いチートを持っているな。



「僕よりも勇者王さんがチート過ぎだよ!どうしたら半年ちょっとでそうなれるの!?」


「いや、神や魔王を倒している時点でお前も人外だから!」


「主はそういう星の下に生まれてきたので仕方ありません。しかし、敢えて言うなら、この国で最も有名な夫婦神が元凶です」


「神様~~~!!」


「あ!その神様夫婦は只今死亡中だから!」



 正確にはコッコくん達のお腹の中だけど。


 泰雅が発狂しかけるほどの俺のチートについては置いといて、俺達はようやく彼の自宅の前に辿り着いた。



「ここが僕の自宅だよ。今は僕の家族以外に、向こうから一緒に連れて来た仲間も一緒に暮らしてるんだ」


「家族公認で同棲中か!頑張れ!」


「何を!?」


「主も頑張りましょう!」


「ナ、ナニヲ!?」



 泰雅の自宅はごく普通の一戸建て住宅だった。


 両親の稼ぎがそこそこ良いとかで2年前に新築にしたばかりだそうだが、端から見れば最近出来たばかりにも見えるほど手入れが行き通っていた。


 というより――――



「……この家、魔改造(・・・)されてね?」


「うっ……!」


「されています。小惑星が墜ちてきても壊れない程度には強度が増しており、シロアリ対策もバッチリです。余程の事が無い限り、このまま放置しても最低1万年はもつでしょう」


「世界遺産狙えるな!」


「いや、狙ってないから!なったら凄く恥ずかしいから!」


「内部も圧縮空間になっています。風呂場には山奥の秘湯に繋がる扉が設置されており、裏口はどこ〇もドアになっています。屋根に設置されている太陽光パネルも発電効率が異常なまでに上げられ、電気料金はほとんど発生しないようになっています。水道も地方の美味しい水が出るように――――」


「やりたい放題だな!」


「ちゃ、ちゃんと設備費とかは普通にお金を払ってるから!買ってから強化してるから!温泉も美味しい水も合法だから!ど〇でもドアは……多分、大丈夫だから……」


「あ、うん。どこで〇ドアは……まあ大丈夫だな」



 からかうのは此処までにしよう。


 俺も俺でやりたい放題していたし、それに比べたら泰雅のはず~と自重している方だろう。


 大所帯のようだし、中を拡張するくらいは仕方ないだろうし。


 家族は驚いただろうな。



「御両親はハイタッチして驚喜しました」


「……」



 ソフィアちゃん、一々俺の心の疑問に答えなくてもいいから。


 ほら、泰雅が顔を真っ赤にして俯いているから。



「…………どうぞ、中へ」



 羞恥心に襲われている泰雅は俯きながら玄関の扉を開けようとする。


 その時だった。


 俺の全身の細胞と魂魄が一斉に危険信号を放った。



(マスター)!」


「分かってる!」



 ソフィアちゃんが叫ぶよりも早く俺は臨戦態勢に入った。


 少し遅れて泰雅もドアノブから手を離して俺の横に後退、全身を闘気で覆って、手には名匠が鍛えたと思われる剣が握られていた。


 ちなみに俺は何時も通りの神器尽くし装備だ。


 そう、たった今、この家の中に“敵”が出現したのだ。



「ソフィアちゃん」


「敵性体がこの家の中に出現しました。龍脈を経由した超神速移動を行ったようです」



 ソフィアちゃんの額から冷や汗が零れ落ちる。


 それは、彼女の超チートな――未来さえも見通せる――探知網を掻い潜る程の存在(てき)がすぐ近くに現れた事を意味していた。


 しかし、何で此処に?



「……泰雅。家の中に家族は?」


「家族は全員留守だと思う。けど、僕の仲間は……」



 泰雅の顔に不安の色が浮かぶ。


 扉の向こうからは悲鳴も戦闘音も聞こえてこない。


 不気味なほど静かだ。



「ソフィアちゃん、敵の正体は?」


「問題ありません。ガッチリ調べ尽くしました!」


「ガッチリ?」



 ギラッと光った!


 ソフィアちゃんの秘密のスイッチ(?)が入ったのか、両目がギラッと光ったのを俺達は確かに見た。


 気になるけど触れないようにしておこう。


 ソフィアちゃんは俺の心を読んでいるのいないのか、右手を出してその上に1枚のモニターを出現させ、其処に日本史の教科書で見たことのある人物の肖像を映し出した。



「これが、今回の“敵”の正体です」








さあ、“敵”の正体は誰ぞや?


 1、織田信長(第六天魔王)

 2、菅原道真(天神)

 3、平将門

 4、崇徳天皇

 5、西郷隆盛


犯人はこの中にいる!



2015/12/16 誤字修正


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