第415話 ボーナス屋、お見合いする(強制)
――オオバ王国――
「陛下、今すぐお見合いをしてください!」
「ハイィィィィィィィ!?」
ある日の朝、というか地球世界だとクリスマスイブの早朝、俺の筆頭秘書官はとんでもない事を言ってきた。
簡潔に纏めれば、俺のハーレムを更に増やせと。
「現在、我が国にはルーヴェルト中から多種多様な民族が移住してきています。中には陛下に命を救われ異常に忠誠心の強い者達や、最早宗教団体の如く陛下を崇拝している者達、隙あらば下剋上を狙う者達など、思想はどうあれ新天地での生活を望む者達が多く集まってきています」
「そうだな。それがどうしてハーレム増大になるんだ?」
「ハッキリ言いますと、陛下の婚約者はダーナ大陸出身者に偏り過ぎています。陛下は納得できないでしょうが、民からすればダーナ大陸出身者ばかりが優遇されていると見られても仕方がない状態です」
「あ~、確かにな」
俺の婚約者達、日本人で幼馴染の唯花、俺をこの世界に召喚したファリアス帝国皇女のアンナちゃん、リアル姫騎士のフィンジアス王国王女のステラちゃん、メイドで元暗殺者な人狼族のユニス、ゴリアス国のロ……女王のミリアムちゃん、貴族令嬢のユリアちゃん、モーブ王国王女のリスティアーナ、俺の能力から生まれた美少女ソフィアちゃん。
唯花とソフィアちゃん以外は全員がダーナ大陸の出身者だ。
俺が最初に召喚されたのがダーナ大陸だから仕方がないと言えばそこまでだが、そんな事情は民衆には関係ないんだろう。
特に差別を受けてきた人達には無用な不安を与えるかもしれないな。
「そういう訳でお見合いをしてください。そしてダーナ大陸以外の各大陸出身者から最低1人ずつ妃を選んでください。ああ、ちなみに正妃は唯花様かソフィア様のどちらかにしてください。異世界人が正妃なら出身大陸別の格差意識を抑えることができますので」
この世界の出身者を正妃にしたら、出身大陸による優劣――正妃と同郷の人達が遊具されているという誤解――が生まれるかもしれないという懸念からの提案だった。
まあ、あくまである程度の予防策らしいけど。
というかソフィアちゃんは地球世界人になるのか?
「――――お見合い開始は本日正午を予定しています」
「直ぐじゃないか!!」
「逃げられないよう、ソフィア様と共に直前まで隠していました。申し訳ありません。こうでもしなければ逃亡される恐れがありましたので」
絶対にドタキャンはさせませんよと、目が語っている。
俺、これ以上嫁が増えたら背中を刺されるんじゃないのか?
「唯花様達は全員了承しています。特に唯花様は「心の広い王妃になります!」と言って……」
「それ、本当に唯花か!?」
知らないところでキャラチェンジしていないか?
いや、唯花は昔は内向的だったしおかしくは無い……か?
「……分かった。取り敢えずするだかしてみるよ」
「御理解ありがとうございます。では、正午までに本日分の書類全てを片付けましょう!」
「本当、容赦ないな!」
そんな訳でクリスマシイブに関係なく今日も俺は多忙だった。
あ、壮龍にクリスマスプレゼント用意しないと。
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――お見合いその1「皇 光葉(ガンドウ大陸大和出身)」――
「……予想はしていたけど、光葉ちゃんも俺を?」
「はい!不束者ですがよろしくお願いいたします!」
「もう決定なんだ……」
お見合いが始まって約20秒で婚約が決定した。
まあ、ずっと同じ屋根の下で暮らしていたし、それほど違和感も無いからいっか。
「じゃあ、俺と結婚してくれますか?」
『セリフの順番が逆じゃない?』
「だ、誰だ!」
『今回のお見合いの審判をしにきた女神、須勢理毘売命よ。不埒な婚姻は天に変わって許さないわよ!』
なんか審判まで現れた。
というか、この女神は大国主の正妻さんじゃないか!
『今回のお見合いは神界の神々も多大に関心を持っています。ですので神として恥ずかしくない態度で視合いなさい。さもなくば、我が夫のようになりますよ?』
「……」
審判が脅迫してきたよ!
あんたの旦那がアレなのはあんた自身にも問題があるからだろうが。
「退場!」
『あ、ちょ……汚い……!?』
そんな訳で女神様には退場して貰った。
秘技!《強制退場》!
「スセリヒメ様、大丈夫でしょうか?」
「平気平気♪」
邪魔者を旦那の下へと送り、俺は光葉ちゃんとランチを食べながら楽しいお見合いを過ごしていき、最後には俺御手製の婚約指輪を渡して終了した。
後日、光葉ちゃんの実家に呼び出されてひと騒動があるのだがそれはまた別のお話し。
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――お見合いその2「高坂 薺(ガンドウ大陸常盤ノ国出身)――
2人目は戦うリアル巫女の薺さんだ。
そして例の如く、第三者というか神が勝手に同席していた。
「誰?」
『面白そうだから来た八幡神……」
「退場」
日本じゃ結構大手な神様だったが強制退場して貰った。
そして念の為に国全体を対神用結界を施しておき、お見合い会場も何重にも結界を張って駄神達が暇潰しに来ないよう完全防御態勢にしておいた。
「じゃあ、始めようか」
「そうですね」
そしてお見合いは順調に進み、特に性格の不一致みたいな問題も無かったのと、神話系の雑談でかなり盛り上がったこともあって俺はあっさりと求婚、無事に婚約を結ぶことができた。
尚、薺さんに婚約を申し込んだ直後にクエスト『ハーレムを作ろう!』の達成が告げられ、報酬として持ち運び可能なマイホームをゲットしたんだけど、同時に新クエスト『ビッグダディになろう!』が出てきて俺も薺さんも顔を真っ赤にした。
子供を10人以上作れとか……
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――お見合いその3「メルセデス(天空大陸 旧・舞の国出身)――
3人目は何時ぞやの生贄少女(*313話&321話参照)のメルさんだ。
なんか高級車のような名前だけど、そこはツッコまないでくれ。
「シロウ様に救われた日から幾星霜、再び会える日を願っておりました。民の為、私の為に私は私の全てをシロウ様に捧げます」
「ちょ!何脱いでいるの!?」
お見合いが始まって1分も経たない内にメルさんは脱ぎ始めた。
なんか冬なのに薄着だな~と思ってたら、脱ぎやすい様にワザと薄着をしてきたらしい。
「今は亡き私の祖国では伝統的なお見合いの作法です。初対面の男女でも体を重ね合わせれば互いの相性を理解し合える由緒ある方法です。私の母も、王であった父に全てを捧げて妃となりました」
「それ、単に既成事実を作っているだけだよね!?」
天空大陸の女性は肉食系が多かった。
小麦色の肌をのぞかせながらメルさんは俺に迫ってゆき、そのまま優しく押し倒そうとする。
何、このプレイ!?
「私の全てをお見せします。作法は王族の義務として学んでおりますので決して不快にはさせません」
「いや、だからちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「さあ、シロウ様もお脱ぎください♡」
俺、まさかのピンチ!
そして数十分後、お見合いは無事に終わり結果は保留となった。
何があったのかは御想像にお任せする……いや、しないで。
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――お見合いその4「モフモフ少女達(オリンポス大陸ラウルス公国出身)」――
4人目以降のお見合い相手に俺の笑顔は硬直した。
「入国したら此処に案内されたワン!」
「ん?ちょっと臭う……?」
「あ、あのう……国王様?」
俺の目の前に居るのは3人の獣人の女性だった。
犬の獣人に狐の獣人、そしてレッサーパンダの獣人が困惑したように部屋に立ち尽くし、俺はこの御見合いを計画した主催者にむかって大声でツッコんだ。
「勇者じゃねえかああああああああああああああああああああ!!」
俺の4人目の……4組目のお見合い相手はオリンポス大陸の勇者達だった。
ワッコ、フォル、ダリアの3人が+1名と一緒にオリンポス大陸を出たことは知っていたが、まさか俺の国に来るとは予想していなかった。
これはソフィアちゃんに緊急連絡して……
〈ソフィアです。現在、半日休暇の為留守にしております。御用のある方はピッ!という音が――――〉
「留守電!?」
まさかの留守電だった。
そしてお約束というべきか、足りなかった+1名が部屋の扉を蹴破って飛び込んできた。
「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!俺の中に何してくれとるんじゃあああああああああああああああああ!!」
「「「ニロス!?」」」
「何、この茶番!?」
その後、勇者VS勇者の大バトル――とはいっても俺の圧勝だが――が繰り広げられ、お見合いどころではなくなったので強制保留という結果になったのだが、俺は直感的に彼女達とは縁が無いんじゃないかと感じている。
実際に俺の直感が当たるかどうかは今のところ不明だが。
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――お見合いその5「ファイザ(ワクワク大陸サハビア王国出身)――
「クッ!殺せ!」
「出合い頭に一国の王に言うセリフがそれか?」
嘗てオークに襲われていた女戦士(*396話参照)がどうして此処に?
それにしても、現実でこのセリフを2度も聞けるとは不思議な気分だ。
事実は小説より奇って本当だな。
「父上に命令されたのだ。御家復興の為に他大陸の若き王に嫁いでこいと。王子を孕むまで家に戻る事は許さない、と」
「クソ親父だな!」
彼女の家は衰退している国の中でも更に衰退の危機にある武門の家だった。
だが、過去の名声に縋るだけの一族に嫌気が差した彼女は剣1つだけを持って家を飛び出し、魔獣を狩ったり賞金首を捕まえたりしながら食い扶持を稼いでいたが、ちょっとした手違いの末にオークの群に遭遇し俺に助けられたとのこと。
そしてその日の内に大陸全土が一変、怪獣大戦争が起きるわ、王族が再起不能になるわ、魔王が大陸を矯正統一するわで大混乱。
腐っていても家族が心配になった彼女は実家に戻るとそこには魔王に反抗しようとするバカ親父の姿があり、色々あって彼女と俺が面識がある事を知ったバカ親父は娘を使って俺を懐柔し魔王を貶めようと馬鹿な事を企みはじめたそうだ。
これには彼女は言葉を失う程呆れ、心配して損したと再び家を飛び出そうとしたが、そこで悪知恵の働くバカ親父の罠に嵌ってしまい、移住者に紛れ込ませてこの国に送り込まれ、気付けば何故か俺のお見合い相手にされていたらしい。
このまま実家の悪巧みに利用されるくらいならば――――で、最初のセリフに至ったようだ。
「まあなんだ。頑張れ!お見合いは無しってことにしておくから……」
「いや、このまま進めて欲しい」
「え!何、この急な心変わり!?」
「まだ出会って二度目だが、貴……陛下の人柄は何となく察する事が出来た。身内の程度を量りきれなかった私がいうのもなんだが、陛下は男性としての魅力に溢れ、善き王になる器であると思う。こんな家庭事情さえなければ普通に求婚を申し込みたいほどに」
「え!」
どんな因果が働いたのか、俺の知らない間に彼女のハートは陥落していたらしい。
魅了系の能力なんて持っていないのに、どうしてドンドン美女や美少女が集まってくるのだろうか。
急な話に俺はすぐに返事を出すことができず、取り敢えずこれも保留とした。
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――お見合いその6「スクルド(ニブルヘイム大陸出身(?)」――
『新時代に向け、自分の未来を作りに来ました!』
「女神じゃねえか!!」
運命を司る三姉妹の末妹さんまでやってきた。
今更だが、この御見合いを主催したのは何処のどいつだ!
『神の相手は神が一番ですよね!それとも姉様達の方が好みですか?』
「……」
俺はどう答えればいいのか分からなかった。
どちらかと言えば年の近い女性の方が好みだけど。
『時の女神は永遠の二十歳なので大丈夫です!』
「心を読まないで!」
そして此処から更にお見合いは激しさを増していった。
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――お見合いその7「アグネス&カリス(オリンポス大陸旧アウルム王国出身)」――
「王国をモフモフ天国にしますわ!」
「身も心も陛下とモフモフに捧げますわ!」
「久しぶりに会ったと思ったら何言ってんだ!」
大魔王の奥さんに滅ぼされた亡国の王女姉妹がハートを燃やしながらやってきたり……
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――お見合いその8「女神一同(神界出身)」――
『御久し振り……でもないですね。『冥王』ハデスの元妻のペルセポネです。再婚活をしていたらお見合い会の募集チラシを見て来ました。バツイチはお嫌いですか?』
《盟主》の奥さんまでやってきたよ。
これって、嫉妬したラスボスが攻めてくるフラグじゃないのか?
『私もそろそろ婚活しようかと思って……』
「いやいや!ヘスティア様は処女神でしょ!!」
『別室にはアテナやアルテミスも来てるわよ?』
「まさかの処女神オールスター!?」
神話の設定上結婚できない筈の女神様達までやってきた。
誰だ、女神様達まで集めたのは!
『嫁入り道具には愚兄達を用意してあります』
「ちょ、ヘルさん!?」
何時の間にか兄弟を〆たらしい冥府の女神までやってきた。
彼女と結婚した場合、もれなくバカが義父になります……って、要らねえよ!
その後、アヌ様やフレイヤ様など、美人どころの女神様達が何柱も集まってきて本当に大変だった。
一体誰がこの御見合いを仕組んだのか、全部秘書官が仕組んだのかと疑ったが誰も答えを教えてはくれなかった。
ちなみに、ケネスさんは婚約者が3人――幼馴染、学院の後輩、同僚の3人――いるらしく、来年には結婚予定だそうだ。
リア充め!
次章までは少しばかりお時間を頂きます。
出来るだけ早く再開できるよう努力します。




