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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
番外編?
43/465

第41話 バカ皇子、生まれ変わる?後編

前回の続きです。


――滞在1日目 夜(第5話の後)――


 大混乱だ。


 全員焼死の危機を避けたはいいが大混乱だ。


 暗殺者の言葉でみんな大混乱だ。


 中には勝手に帝都に帰ろうとする者もいるほど大混乱だ。


 何だ、選ばれた精鋭部隊じゃないのか!?



「――――――何!精鋭部隊じゃないのか!?」


「・・・皇子、出立の前にも言ったはずです。今回の出兵に選ばれた者達の大半は、軍内部で問題を起こした者ばかりだと。そもそも、私を含めた騎士団員の多くは実戦経験の無い者ばかりです。ステラ王女率いる部隊を相手にするには無謀すぎます。」


「じゃ、じゃあ・・・・・!」


あの男(ダニール)の言うとおり、私達は帝国・・・・正確にはエーベル殿下の一派に嵌められたのでしょう。元々上層部や一部の貴族達にとっては汚点でしかない私達を“名誉の戦死”という扱いで切り捨てる事ができ、敵国の第二王女も同時に葬れるのです。帝国にとっては有益な話でしょうね。」



 何ということだ・・・・・・・。


 俺の心は教会での一件(・・・・・・)で既に深手を負っていたのに、さらに追い打ちが来るとは・・・。


 大丈夫だ、俺は皇子として凛とした態度を取らなければ!!




--------------------------


――滞在2日目(第6話の辺り)――


 この日は昨日の事で俺達の空気は酷く淀んでいた。


 そういえば、朝からロビンや一部の兵達の姿が見えないが何所に行ったのだ?



--------------------------


――滞在3日目――


 その日はまだ薄暗い時に起こされた。



「腑抜けども!さっさと起きて走り込みだ!!」


「「「――――――!!??」」」



 俺達は理由もわからず、村長に無理矢理起こされて走らされた。


 待て、何で俺が田舎の村長の命令を聞かなければならないんだ?


 反論したら更に走らされた。



--------------------------


――滞在4日目――


 今日も朝早くから起こされた。


 騎士団の面々は昨日の俺みたいに反論したが、まるで野生の竜種のような迫力で黙らされてしまった。


 ロビンや平民出身の兵達の一部は農作業で強制訓練は免除らしい。



「ほれ、終わったら復興の手伝いだ!!」



 訓練の後は村の復興、慣れない力仕事に全身が悲鳴を上げた。



--------------------------


――滞在5日目――


 今朝は朝早くから逃亡を図る者が大勢いた。


 俺も森に逃げ込もうとしたら、空から槍が飛んできた。


 剣も飛んできた。


 斧が飛んできた。


 岩が飛んできた。


 丸太が飛んできた。


 馬に乗った村長が槍を片手に飛んできた。


 俺達は空を飛んだ。



--------------------------


――滞在6日目――


 剣だ。


 剣が来る。


 剣が俺の頬を掠った。



「どうした!お前達が握っている剣は飾りか!!」


「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」



 訓練は日に日に激しくなっていった。


 今日は武器を使った訓練、村長はあからさまに殺気を放っている。


 剣先が消えて見える。


 あ、俺の髪が切れた・・・。



「ヘタレども!!日没までに一本当てるまで休みなしでいくぞ!!」



 俺には分かる。


 村長にとって俺達は皇子でも貴族でもないのだ。


 あの目は・・・あの目は・・・!




----------------


――滞在7日目(第11話の辺り)――


 馬。


 馬。


 馬。


 馬。


 とにかく馬だ。


 馬が俺を引きずっていく。


 怖い・・・村長が怖い・・・。




-------------------


――滞在8日目(第24~27話の辺り)――


村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・村長怖い・・・・・・・・・・・・










 ・・・・え、温泉?


 よし!


 俺達も行こうではないか!!


 ん?壁の向こうにも誰かいるのか?


 怪しい者かもしれないから確認しなければ!!



--------------------------


――滞在9日目――


女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・女怖い・・・(以下略)



--------------------------


――滞在10日目――


 グスッ・・・!


 俺は理解した。


 俺は次期皇帝でも偉大な皇子でもない。


 虫だ。


 蛆虫だ。


 何の取り柄のない蛆虫だ。


 誰にも期待されていない、餌に群がる汚い虫けらなんだ。




-------------------


――滞在11日目――


 うう・・・。


 今日の俺はとにかく泣きたい。


 泣きたいんだ。


 何でかって?


 それは村長による地獄の日々の中、次第に結果を出し始める者が現れだしたからだ。


 いや、才能を開花し始めていると言った方がいいのかもしれない。


 最初は俺と一緒に反発していた連中の中には、少しでも(伝説の英雄である)村長に誉められた途端に別人のように変わり、今では積極的に地獄の訓練に参加して力を付けてきている。


 それに引き換え、俺はハッキリ言って器用貧乏だ。


 剣と魔法、両方とも人並み以上の才能があるがそれだけだ。


 剣術は体術がまるで駄目なせいもあってか実戦に向かず、魔法は防御魔法が壊滅的だ。


 政治の才もなく、戦闘の才も中途半端、地獄の訓練の日々を過ごしても結果が出せない。


 うう・・・・・・グスッ!


 泣きたい、情けなくても今は泣きたいんだ・・・・・・。


 ・・・・・・母上に会いたい。




-----------------


――滞在12日目(第38話の辺り)――


 ・・・・・・グスッ!


 夕方、今日も俺は民家の影に隠れて泣いていた。


 その後も温泉に入っても元気になれず、1人で村の中をさまよっていたら何やらパーティが開かれていた。


 成り行きで俺も参加することになり、肉汁の溢れ出す焼いた肉をのせた皿を渡されたがとても食べる気分にはなれなかった。



「元気がないの?」


「元気がない時はお肉を食べると良いよ!このお肉、一杯食べると元気になるって大きいお兄ちゃんが言ってたよ?」



 俺が情けなく泣いていると、何度か会ったことのある子供が慰めにやってきた。


 ハハハ、こんな子供に慰められるとは・・・。


 だが、そこで俺はとある違和感に気付いて2人に聞き返し、さらにおかしな事になったのでその場にいた全員のステータスを確認し驚愕する。


 信じられない事に、ここにいる子供のほとんどと、俺の側近であるロビンは俺の異母弟妹だった!



「兄ちゃん、どうしたの?」


「どこか痛いの?」



 他意のない、弟と妹の純粋な言葉に俺の涙腺は一瞬で崩壊した。



「・・・うぉぉぉぉぉぉぉ!!」



 俺は思わず目の前の弟と妹を両手で抱きしめた。


 それはこの数年間、もしかすると十年近く誰にもできなかった、俺の愛情表現だった。


 こんな、こんなに素晴らしい家族が、こんなに近くにいたとは!?


 こんなに優しい言葉など、もう何年も聞いていない気がする。


 帝都にいる弟妹達にも言われた事のない優しい言葉、今の俺には神の声にも聞こえる。


 俺はさっきまでとは違う、別の意味の涙を何時までも流し続け、その夜は深夜になっても眠ることができなかった。


 こんな惨めな兄に優しい言葉を言ってくれる弟妹達、特にロビン、お前はこの事を知りながらずっと俺の傍で助

けてくれていたんだな!(注:違います。)


 この日、俺の心はまるで暗雲が一瞬で晴れたかのような感動に包まれた。


 そう、俺はこの日を境に生まれ変わったのだ!


 帝国の次期皇帝ではなく、偉大な皇子でもない、弟妹を愛する1人の兄に生まれ変わったのだ!



 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・ゴホッ!



 明日、そう明日から何か新しい事を始めよう!


 古き俺は死に、新しい俺になるのだ―――――――――――――――!!!






さて、バカ皇子はどのように変わるのでしょうか?

次回も番外編、今度は敵サイドです。


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