表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
異界の七大魔王編Ⅶ―ワクワク大陸の章―
426/465

第411話 ボーナス屋、攻める!

――士郎が創った世界――


 時は少しだけ遡る。


 悪意の坩堝と化した世界の中心で、クラークは涼しそうな表情をしながらも自身の中で荒れ狂う《盟主》の力の一端(・・)を抑え続けていた。



『……そう長くは持たないか』



 自分達の主たる7柱の《盟主》、その1柱である『悪神』アンラ・マンユを一時的に自身に降ろしたクラークは、この状態が長くは続かない事を覚悟していた。


 地球世界の神話の中で語り継がれている神々の中でも最高位の存在である《盟主》の力は極めて膨大、神代でも他の神々が封印することでしか(・・・・・・・・・)始末できなかった神の1柱をその身に宿す事など通常は自殺行為も同然、人間から「神人」へと進化したクラークでも危険極まりない行為であった。


 だが、この程度のリスクを負わなければ目的――魔王マルスの収穫(・・)を達成する事は不可能に近かった。


 ましてや、彼らの最大の生涯の1つである士郎が居るその場でやるとなれば可能性はゼロに等しい。


 己の命を賭さなければ決して目的を達成することは出来ないのだ。


 そしてその結果、命を賭した買いもあり、本命である魔王マルスはアンラ・マンユの「化身」に飲み込まれ、順調にその体をアンラ・マンユ本体の“器”として取り込まれていった。



――――眷属……クラーク・ガーランド………



『……《盟主》!』



 クラークの脳裏に重圧のある声が響く。


 その声の主こそ《盟主》――『悪神』アンラ・マンユだった。



――――異物ガ……善神ノ器ガ我ガ仮初ノ身ヲ…………忌マワシキ異物ヲ…消セ……



『――――御意』



 底なしの怨嗟が込められた言葉に耐えながら、クラークは主の命に承諾した。


 そしてその意を受け取ったのを最後にアンラ・マンユの声は聞こえなくなった。



『……本体に劣る化身とはいえ、あの悪意の奥底に落ちても消えないか。大特異点(イレギュラー)



 坩堝の中で巨大な影が蠢き出す。


 それは星をも飲み込むほどの巨大な黒き蛇、クラークに降りたアンラ・マンユの一部にして「絶対悪」の概念そのものであった。


 蠢く大蛇は士郎が創造した世界を浸蝕――汚染しながらある一点に風穴を穿つ。



『少しばかり、絶望を味わってもらうか。《幻影之邪神(シアエガ) 》、《堕落之邪神(イゴールナク)》』



 クラークは穿たれた風穴に向けて右手を掲げ、2体の異形を生み出す。


 それは人間が創りし神話を基盤に生み出された「作られし神」だった。



彼の世界(ルーヴェルト)()け』



 一言だけ告げられると、異形の神×2は風穴の向こう側へと飛び込んで消えていった。


 紛い物の神とはいえ、異形の神々の力は並の上級神さえも超えるように作られていたが、クラークにとっては星1つ滅ぼすまでにはいかない――向こう側にはクロウ・クルワッハやスラ太郎が居るから実質不可能に近い――までも、多少の(・・・)悲劇や惨劇といった意趣返しが出来ればという程度の気持ちで放ったのだった。



『……』



 そしてクラークの視線は風穴からアンラ・マンユの化身へと移る。


 正確には、その巨大な胴に。



『封から解放された《盟主》の力に抗うか。だが――――』



――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!



 大蛇(アンラ・マンユ)の叫びが世界を震撼させる。


 そして大蛇は螺旋を描くように動きだし、その巨体は螺旋の中心に吸い込まれるようにして消えてゆき、残ったのは巨大な黒真珠のような物体だった。



『取り込まれる事は無くとも、そこからは決して出ることは叶わない牢獄。お前達が居るのは、時間も空間も現世から切り離され、仮に出てこられたとしてもその時には全てが終わっている。消すのは後だ。今はそこでのんびりと抗っているといい………ッ!!』



 言葉を言い切ると同時に胸を抑えるクラーク。


 《盟主》を下ろした事による負担は確実に彼の心身を蝕んでいた。


 だが、それに構う事無くクラークは動き続ける。



『……《霊魂創造(ソウル・クリエイション)》ッ!!』



 クラークの全身から禍々しい力が拡散しする。


 それらは彼らの周囲で結晶化し、幾千万もの卵となって宙に漂った。



『――――散れ』



 そして彼の合図と共に卵達は四方八方と散っていき、1割弱は異形の神が通っていった風穴を通ってルーヴェルトへと消え去っていった。



『これでいい。残るは……何?』



 淡々と作業を進めていくクラークだったが、不意に背筋を刺すような悪寒に襲われ、彼は反射的にその方向へと振り返った。



――――ビシッ!



 振り返った先で、彼は巨大な黒真珠も重い亀裂が走るとを目にした。



『……』



――――ビシビシッ!



 クラークの両手に剣が握られ、周りには高速回転する100枚の円輪(チャクラム)が出現する。



『……これでも、時間稼ぎにすらならないか』



 涼しそうな表情が崩れ、クラークの顔には苛立ちとも畏怖とも受け取れるものが浮き上がっていった。


 心身を蝕まれているからか、それとも向こうが度を越えて理不尽すぎたからなのか、その光景だけで彼の平常心は崩壊されていく。


 それに比例して、彼の武器達の力は加速度的に増大していく。


 その力は2柱の『悪神』、絶対悪を司るアンラ・マンユと、暴力を司る彼の神の眷属神アエーシュマそのものだった。


 数値にして2000万を超える、下手をしたら最高神2柱分の魔力を注ぎ込まれた武器達は、まるで生きているかのような暗い輝きを放ちながら獲物に牙を剥く。



――――バリンッ!!



 そして、黒真珠が砕けると同時に無数の(やいば)が獲物に向かって一斉に襲い掛かった。


 直撃すれば(・・・・・)例外なく時空ごと抉られた後に消滅する刃が誤差0.1秒未満で獲物に届こうとした―――――筈だった。




『ゴッケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッッ!!』




 未曾有の成長(進化)を果たし、更には御主人様の恩寵をどっさりと貰ったばかりのチビッ子達の憧れ(アルティメット・ヒーロー)が飛び出して来るまでは。


 そう、邪魔だからとクラーク本人が別世界に放り込んだまま放置していた、敵側にとっては死亡フラグ満載の超次元最強のニワトリ、コッコくんが帰ってきたのだ!



「行け~!コッコくん!!止めのファイナルアタックだ!!」


「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!ツッコむ処が多過ぎだろがああああああ!!うちのウサギが見たらまた暴走しちまうだろがああああああああ!!」


「知るか!GOコッコくん!」


『ゴケ!!』


「ちょっとは知れよ!!」



 背中に大興奮の勇者と魔王を乗せた状態で。


 彼らはアソコから無事に脱出してきた。


 現世とは時間も空間も切り離された場所だろうとも、彼らはコッコくんと共にその理不尽(ルール)を一撃粉砕して帰ってきたのだ。



『ゴケゴケ~~~!!』



 神々しく輝きながら一直線に飛ぶコッコくん。


 クラークから放たれた無数の牙も防ごうとすらしないで直進を続けていく。


 本当なら時空ごと消されている筈なのにコッコくんはかすり傷ひとう負っていなかった。


 いや、多少の羽毛は抜け落ちる被害は与えていた。


 これは余談だが、コッコくんの羽毛で作った布団で寝ると幸せになります。



『巫山戯た者達だ。だが!』



 クラークが動く。


 自分に向かって突撃してくるコッコくんの横に回り、魔剣と円輪、そして悪神達の力で彼らに猛攻を仕掛ける。



――――《無間悪刃地獄(インフィニティ・イービルブレイド・ヘル)



 禍々しい暴力の嵐がコッコくんに襲い掛かった。







--------------------------



 はい、すっかり人間卒業に慣れつつある士郎です。


 このままだと神卒業とかもしてしまいそうで怖いです。


 え?話し方がおかしいから止めろ?分かりました。



「クラーク……!」


「あのオッサン、あんなに強かったっけ?」


〈複数の神格……《盟主》アンラ・マンユと眷属アエーシュマと合体しているようです。とうとう、アンラ・マンユの封印まで解けてしまいましたか。まだ完全ではないにしろ、眷属に己の一部である“化身”を与えるまでは力を取り戻しているようです。ですが、あれほどの力に人間が……いえ、人間でなくとも耐えられる生物は殆どいません。痩せ我慢しているようですが、彼もこのままでは心身ともに力に飲まれてしまうでしょう〉


「自殺行為の強化技か。狂戦士(バーサーカー)かよ」


〈攻撃、来ます〉



 突撃一直線のコッコくんの横に回ったオッサンの攻撃が俺達を襲う。


 物凄い衝撃が襲い掛かり、辺り一面にコッコくんの羽毛が飛び散った。


 そして攻撃の嵐は止む事無くその後も絶え間無く続いていった。


 けど、コッコくんはピンピンしている。



『ゴケゴケ~!』


〈コッコくんは貴方(しゅじん)が無事である限りはどんな攻撃も致命傷にならないようです。例え世界が消し飛んでも生き残ります。更に、御2人が乗っている影響なのか、コッコくんの能力が一時的にですが急上昇、比喩ではなく無敵に近い状態です〉


「コッコくん凄過ぎ!!」


「うちのウサギ、確実に対抗心燃やすだろうな……」



〈チートニワトリVSチートウサギ! 何という胸アツ展開ktkr☆ by男神の生き残り〉



「「……」」



 俺と魔王は別の悪神を静かに葬った。



『ゴケ!?』


「コッコくん!」



 その直後、コッコくんは大ダメージを受けてよろめいた。


 見ると、オッサンが武器を融合させて必殺技のようなものを連発し、血は流れていないが、コッコくんに打ち身のような怪我を負わせていた。


 これにはコッコくんも反撃開始、トサカビームを超速連射していった。



〈恐ろしい男です。己の命など微塵も顧みず、捨て身で私達を屠るつもりです〉


「そういや、彼奴はプライベートなことは一切語らなかったが、自分の命の事なんか二の次三の次のような雰囲気があったな。心底主人に忠誠を誓っているってことか」


「狂信者?」


〈狂信者とは違うでしょうが、その事については終わってから考えましょう。今は他世界にこれ以上の影響が及ぶ前に、彼に引導を渡す事が優先です〉


「ああ、そうだな。コッコくん、もう少しだけ頑張ってくれ!攻撃は取り敢えず吸収の方向で!」


『ゴケ!』



 コッコくんがオッサンの力を吸収し始めたのを見計らい、俺は能力を起動させる。



【ボーナス・レボリューション:起動】



 デザインは変わっても使い慣れた感じが消えないA4サイズのモニターを操作していく。



【個体名:クラーク=ガーランドへの干渉がブロックされています】



 案の定、俺の干渉に対する妨害があった。


 此処は力押しで排除!



【対抗措置として《善神の権能》を使用。全ての妨害を排除に成功しました】


【警告!クラーク=ガーランドのBPが封印されています。強制解放しますか?】


【Yes/No】



 勿論、Yesを選択する。


 そしてBPが表示される。



【クラーク=ガーランド 残りポイント:951pt】



 結構あった。


 オッサン、悪人の筈なのにどうやってこれだけのポイントを貯めたんだ?


 気にはなるが、今はオッサンのステータスをリセットする事にする。


 ペナルティも与えたかったけど、ポイントがマイナスじゃない以上は諦めるしかない。



【警告!現在の状態で強制オールリセットを行った場合、対象と融合している神性存在との均衡が崩れ対象の魂魄は消滅します!】



 何!?



【強制オールリセットの前に特殊ボーナス〈魂の浄化〉及び〈聖なる魂の保護〉を推奨します】



 後味が悪いのは嫌なので迷わず実行する。


 結果、オッサンのBPは一瞬でゼロになった。



『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――ッッ!!』』』



 随分と野太い悲鳴が聞こえてくるが作業を続行する。


 強制オールリセット、実行!



【強制オールリセットが成功しました】


【対象の加護を強制排除、契約も強制破棄しました】


【職業レベルがリセットされた事により対象の全ステータスが大幅に下がりました】


【加護と契約の破棄により対象に融合していた神性が排出されます】




――――――――ッッッッッ!!!!




 直後、鼓膜を破るかのような轟音と共にオッサンが爆発した。


 ……あれ?

















【名前】『第七の眷属』『終焉幾千(サウザンド・ルイン)』クラーク=ガーランド

【年齢】230  【種族】神人

【職業】悪神の眷属  【クラス】搾り滓 New!

【属性】闇 空

【魔力】1,000/9,000,000

【状態】瀕死

【能力】――

【加護・補正】――

【BP】9999(MAX)



 アエーシュマはメガテン版をイメージしました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ