第409話 ボーナス屋、VS常闇の魔王⑤
銭湯描写が相変わらず下手なせいで遅くなりました。
魔王マルス戦はこれで終わり(?)だと思います、多分。
魔王は叫んだ。
「――――来い、天空神。断罪神。始神。復讐神。死神。創造神。月神。太陽神。剛神…………九天応元雷声普化天尊―――――ッ!」
直後に不特定複数の神気の豪雨が降ってくる。
俺は反射的に召喚した全ての神々を自分に合体させた。
そう、全員をだ。
〈無茶キター☆ by男神一同〉
異世界ルーヴェルトに巨大過ぎる何かが誕生した。
通常では有り得ない程までに圧縮された神気、それらただ存在するだけでは世界の均衡を容易く崩壊させるものであったが、幸いにも両者ともに高次元の知性により制御され、むしろ世界と調和するが如く美しい状態を作り上げていた。
1人は白銀色のマントを纏い純白の軽い鎧に身を包んだ白き勇者、1人は黒曜色のマントを纏い金の装飾を施された漆黒の鎧を纏う黒き魔王。
彼らの手には原型から遠ざかった両手剣と双剣が握られ、両者は感情を消し去ったかのように静かに対峙していた。
「「……」」
両者は互いに無言のまま視線を交わす。
一見すればファンタジー映画の終盤、勇者と魔王の一騎打ちのシーンだが実際にはそんな生易しい言葉で片付けられるものではなかった。
不特定多数の神々と合体した彼らは存在そのものが最終兵器、その力が無駄無く解放されればこの世界どころか近隣の時空さえも巻き込む未曽有の時空災害を起こしかねない、それが現在の彼等である。
数では圧倒的に優る白き勇者、対する黒き魔王は1柱1柱の質で勇者を上回る。
果たして、彼らが動いた時、世界に待っているのは破滅か、それとも―――――
〈早よ動け! by男神一同〉
「「五月蠅い」」
両者は同時に武器を振るった。
ただし、狙いは互いに目の前の相手ではなく時空を超えた、現世よりも高次元に存在する神界に居る傍観者達である。
〈アンギャアアアアアアアアアアア――――ッッ!! by色々〉
邪魔者は消えた。
と同時に両者ともに動いた。
「「―――――ッ!!」」
この日、銀河の1つ……か幾つかを飲み込む大爆発が発生した。
数多くの惑星小惑星が一瞬にして蒸発……を通り越してエネルギー体となり、暴嵐の如く荒れ狂いながら他銀河を浸蝕していく。
だが、何者かの加護があるせいか、生命が存在する太陽系だけはこの暴嵐による消滅を回避していた。
「あああああああああああああああああああああああああああああ―――――ッッ!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――ッッ!!」
周囲への配慮を考えているのか不明だが、両者は手加減など一切なしに戦い続けていった。
何隻ものUFOが運悪く巻き添えを喰らったが、加害者たちは一切気にも留めなかった(笑)
*此処から先は長くなるので簡潔に纏めます。(作者が駄目なんじゃない。彼奴らがドチート過ぎるせいだ!)
1、惑星1つを飲み込む稲妻の大豪雨が銀河に降り注ぐ。(この時点で既にアウト!)
2、1分の1スケール(地球世界基準)のブラックホール×100発生!(色々とアウト!)
3、時空の歪みから高次元生命体大量発生。(過剰労働中の時空神卒倒!)
4、魔王の斬撃の一部――勇者が避けた分――が高次元の皆さんに超被害。
5、新時空、爆☆誕!(勇者が創った)
6、肉弾戦も含めた大バトル!
7、異次元の邪神&悪神が巻き添えで大量虐殺ぱーと2☆
8、『神器』が最終形態(?)に変形、そして大激突!
9、大激突の瞬間、不思議空間の中で両陣営の神々が総力戦開始。
10、中々決定打が出ない!←今ココ
*これだけ無遠慮に戦っていますが、不思議と世界の均衡は崩壊していません。
「ハァハァハァ……!」
「チッ!化け物がぁ……!」
「それは……こっちの……セリフだ!!」
俺達は戦い続けた。
精神世界みたいな不思議空間では契約している神々が今も死闘を繰り広げているせいか、俺達に注がれる力は何割が下がったがそれは些細な問題だ。
だって、あの魔王、ドチート過ぎる!
雷で星々を消し飛ばしていった俺が言う資格は無いかもしれないけど、普通にブラックホールを大量発生させるし、異次元に封印されていた別世界の邪神とかを片手間に瞬殺して経験値をゲットしていくし、存在ごと吸収しようとしたら同じく吸収系の能力で相殺して来るし、武術とかも普通に達人級を超えていてなかなか致命傷を与えることが出来なかった。
もう今までの魔王は何だったのかって話だが、そんな奴でも《盟主》の呪い(?)か何かに縛られているのが不思議だ。
〈魔王を縛っている力は混沌級以上であると推測されます。無限神もより、呪縛に対して常時無尽蔵のエネルギーが供給されている為、魔王でも解呪は困難なのでしょう。ダミー情報が散乱されているせいで正確な情報は未だ不明ですが、あの魔王は《盟主》に対して敵対意志を持っている可能性があります〉
何?
あの魔王、『創世の蛇』さんに創られたのに敵対しているのか?
実は善い人?
〈詳細は不明です。深淵級に至っている私達の能力でも神速解析が出来ない事から、攻撃系以上に強力な防御系能力により干渉を防いでいると推測します。ですが《盟主》と敵対している場合、向こう側の目を警戒して従っているフリをしている可能性が高いです。下手に此方に友好的な態度をとれば、先日の死と冬の大陸の一件のように《盟主》が干渉してくる可能性が極めて高いので〉
鬱陶しい呪いのせいで不自由しているってことか。
〈あとは、単純に主が嫌いであることも考えられます。コッコくんとスラ太郎も含め、私達は彼らの行動を妨害しましたので。盛大に〉
〈ピ?(呼んだ?)〉
スラ太郎……。
〈魔王の目的は別として、今は彼等を倒す事に専念するべきでしょう。ただし、中途半端に倒そうとすれば横槍が入る恐れがあるので、殺すつもりで倒しましょう。きっと死にませんので〉
〈ピィ!〉
〈可能であれば彼の呪縛を解呪してしまいましょう。そうなれば、例え後から邪魔が現れようとも問題は無くなります。多分〉
〈おい!〉
そんな会話が戦いの最中で行われた。
今の処は横槍が入る様子はないが、このまま戦いが長引けばどうなるかは分からない。
何よりあの魔王との戦いは精神的に辛くなりつつある。
地上の方も未だ戦いが続いているようだし、此処はアレは使うしかない!
(《勇者の敵は皆の敵》!!)
仲間全員の力が限界以上まで上がり、更には仲間の数だけ俺が強くなる俺のチート。
これを発動させるのとほぼ同時に魔王も何か能力を発動する。
俺の勘だと向こうも切り札を使ったようだ。
だが、俺は知らなかった。
この能力、今の俺が使うととんでもないことになるということに……
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――某・異世界――
同時刻、ルーヴェルトから遥か遠くの時空に存在する世界で、クラーク=ガーランドは勇者と魔王の戦いを監視していた。
《盟主》の加護もあり向こう側には一切気付かれる事無く監視していた彼だったが、戦いが激しくなるにつれて表情が険しくなっていった。
「……」
その額に冷や汗が流れる。
「想定外なのは想定内だが、これは……」
異常という言葉すら甘く感じられるほどのドチートぶりにクラークは引いていた。
元より魔王を人外ならぬ神外の域に到達させるのが彼の予定だったのだが、幸か不幸かマルスは予想を遥かに超えた進化を果たしていた。
だが、同時に幾つもの疑念が生まれる。
「何時の間に、あれだけの神格と契約した?」
特に気になるのはマルスが召喚した神々、その全てが既に契約がなされており、同時に彼らの力はクラークの持つ情報上でのレベルを優に超えていた。
彼が知る限りマルスが契約していたのは魔王城に居たマイナー神達を除けば4柱だけだった。
ウラノスやヤマといった有名且つ高位の神は居なかった筈だった。
「……」
クラークの目が細くなる。
200年以上も様々な世界で暗躍していた彼の頭脳がこの疑念が意味する答えに辿り着くのに時間はかからなかった。
「力を得過ぎた若造は反旗を翻す。これも想定内だ」
そして彼は思考をある場所へと繋げ、同時に目の前に門を出現させる。
繋ぐ場所は言うまでも無く、あの場所である。
「―――――収穫」
クラークの全身を一瞬で禍々しい何かが包み込むと、彼の身体は門の向こうへと吸い込まれて消えていった。
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――士郎が創った世界――
俺の聖剣(?)が魔王の双剣を斬った。
「え!」
俺の蹴りが魔王の鳩尾に見事に決まった。
「ボゲブフッッ!?」
「……は?」
目の前が赤く染まる。
魔王の鎧が見事なまでに木端微塵に砕け散り、口から大量の血を噴き出した魔王は動揺に満ちた目で俺を睨んでいた。
そして激痛が走っているにも拘らず、刀身を失った双剣を振るってくる。
「アジ、ダハーカ――――ッッ!!」
『『『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』』』
振るわれた剣の切り口から鼓膜を貫く方向と共に3つの龍の咢が飛び出し、呪詛と怨嗟を撒き散らしながら俺に襲い掛かる。
攻撃の外見からして邪龍神の一部を顕現させているように見えるが、俺の感覚の通りなら奴自身と合体している他の神々も混ざっているんだろう。
おまけに標的を殺すまで消えない設定が付いているっぽい!
これは避けてからザクッと――――
〈〈いえ、吸収してください!〉〉
ソフィアちゃんとウルの声が重なって聞こえ、俺は反射的に剣で攻撃を受け止め、今やダイ〇ンなど塵芥に等しい吸収力を解放させた。
するとあら不思議、さっきまでは吸収系は全て相殺されていたのに、アジ・ダハーカ+αは自分から飛び込んでいくかのように俺の剣に吸収されていった。
『『『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――ッッ!?』』』
「な!――――っせるか!!」
これには魔王も必死に抵抗するが、結果はあまりにも一方的な綱引きだった。
アジ・ダハーカの咢はあっという間に吸収され、そのまま出元である奴の折れた剣を通して他のものも根こそぎ吸収していく。
うお!何か色々と流れ込んでくる!
「ぐあああああ!手が――――!」
魔王は剣を捨てて吸収から逃れようとしているようだけど出来ない。
そうこうしている間に魔王の全身を覆っていた装備が消えていく。
魔力や体力も吸収されているけど、そこは互いに《神速回復》があるせいで中々ゼロにはなりそうにない。
というか俺の方が満杯です!
〈順調ですね。彼から抵抗力が急激に失われています〉
〈はい。お蔭で私もようやくアクセスすることができました。やはり彼の魔王は混沌級の能力を保有していたようですが、《勇者の敵は皆の敵》により主も擬似的に混沌級に至る事が出来た為に突破する事が出来ました〉
〈実際に体感してみると凄まじい能力ですね。《勇者の敵は皆の敵》、仲間全員の力を底上げする能力。そしてその「仲間」とは、契約を結び今現在彼と合体している私達も含まれるわけですね〉
〈はい。理不尽すら生温い、主のとっておきの「切り札」です!〉
俺の脳内で2人は大興奮(?)している。
どうやら俺はまたやらかしてしまったらしい。
ちょっと意識を自分の精神世界に向けてみると、そこではたった今吸収したばかりの連中を弁財天先生達が蹂躙し始めていた。
ウラヌス辺りはオリンポスの皆さんにフルボッコにされ、中国神話最強の雷神も限界突破した神達に押されている。
だけどアジ・ダハーカは別格で、此方側が有利なのは変わらないが火事場の底力なのか、そう簡単に倒されそうには無かった
〈主!余所見をしている場合ではありません!敵が動けない内に止めを!〉
「お、そうだった!」
時間にしてみれば1秒にも満たない余所見だったけど、目の前の魔王相手には秒単位での余所見は危険だ。
油断せず、一気に叩こう。
「終わりだ。魔王!」
「くっ!」
俺は魔王に止めを刺すべく、思考制御で《天上天下絶対革命》を発動させた。
これで、終わりだ。
『―――――――させぬよ』
チート発動!
1、仲間全員(神も含め)パワーアップ!
↓
2、合体している士郎も(合体パワーが)超パワーアップ!
↓
3、更に仲間の数だけ(神も含め)超超超パワーアップ!
↓
4、魔王の勝機消滅!
これってかなりヤバいんじゃね?
オオバ王国の国民全員も仲間の枠組みに入ったら……
《勇者の敵は皆の敵》、超チート!




