第408話 ボーナス屋、召喚する!
――宇宙――
俺は呆然と立ち尽くしていた。
「どうして……どうして……」
〈主、現実を見て下さい〉
〈お気持ちは理解できますが、今は現実を受け入れて下さい。そうしなければ事態は悪化します〉
頭の中でソフィアちゃんとウルの声が聞こえてくるが、今の俺にはそれが空しく聞こえていた。
だって、そんな言葉だけじゃ目の前の現実を前にショックを受けている俺の繊細な心は決して癒されもしなければ、復活もしないのだから。
〈お前の何処が繊細なんだ?チートに図太いだろ? by決死行中のスサノオ〉
ツッコむ気力は無いが、頑張ってツッコんでみる。
お前には言われたくはない!
〈やば!見つか……ギャアアアアアアアアアアアアア!! by終焉のスサノオ〉
……二度と出てくるな。
「何処まで化け物なんだ、お前は……」
少し離れた場所で魔王が呆れながら何かを呟いている。
間違いなく、現在のこの状況に呆れ果てているんだ。
攻撃の手を緩めてしまう程に。
『いや、呆れ果てているのは我らの方であるぞ?』
『いい加減、その遠回しな責任転嫁は止めなさい。ググダグダです』
……ですよね~。
俺はスイッチを入れ直し、今の状況を再確認する。
まず俺、ウルと合体して理不尽モードを継続中、ソフィアちゃんのサポートも問題無しだ。
〈速報、増援部隊の第一陣が到着しました。敵に苦戦しているスラ太郎の援護に入ります〉
スラ太郎、夢かもしれないけどピンチだったらしい。
そこにダーナ大陸からの増援が到着、視線を動かさずに遠視してみると派手にアニマル達がロボット少女達と戦闘を開始している。
なんだか見覚えのある毛色のサーベルタイガーやら、ビル並みに巨大な天馬が頭の上に何かを乗せながら大暴れを開始している。
あ、ヒューゴ達も発見!
人間を辞めてるっぽいけど気のせいかも知れないので取り敢えず無視だ。
『現実を受け入れなさい』
はい、受け入れました。
取り敢えず、地上の魔王軍については放置しても大丈夫そうだ。
映画が1本出来そうな大バトルが始まっているが、俺が介入したらそれこそカオスにしかならなそうだから、俺は俺で目の前の事に集中する事にする。
「おい化け物!お前は一体何をやらかした!」
魔王は未だに呆然としながら俺の事を罵ってくる。
隙は作ってないとはいえさっさと攻撃してくればいいのにと思いつつ、俺は自分の周りに居られる方々を見渡した。
『無茶苦茶です。神界の最奥に居る我々を力ずくで召喚するなど常軌を逸しています』
『……』
『待っているつもりが喚ばれてしまうとは……』
無言で硬直している性別不詳神、ツッコみを叫び続ける女神、呆れ果てている男神(?)の3柱の神々が俺のすぐ横に居る。
日本神話最古の神にして宇宙の根源を司る別天津神――天之御中主神
征服・統治を司る男神にして創造神である別天津神――高御産巣日神
生産・生成を司る女神にして創造神である別天津神――神産巣日神
天地開闢の際に現れたという5柱の別天津神の内の上位3柱、造化三神が全員そろって俺の目の前に召喚された。
はい、召喚したのは俺です。
ソフィアちゃん達のサポートもあって思いっきり召喚したら、既に契約している神々以外にも大勢の神々、それもかなり古くて強そうな神々が出揃ってしまった。
日本神話からは、
『天照大神です。愚弟が何時も御迷惑をお掛けしております』
『月読命。以下同文』
三貴子の内、日本の主神のアマテラス様と弟のツクヨミ様が召喚された。
スサノオは何故か居ない。
『愚弟は(丁度今)天岩戸に逃亡しました』
天岩戸は俺の召喚を回避できるチートスポットらしい。
バカはほっといて次!
『母殺しで有名な火之迦具土神ことカグツチです!』
『それの死体から生まれた建御雷神だ!神器はねえぞ!』
『『『その他一同!』』』
燃えているのと轟いているのと、有象無象が一杯いた。
いや、召喚され過ぎだろ!
日本神話だけでもこれって!
あ、うちの担任教師が親に睨まれている……。
次、中国!
『儂は盤古じゃ。世間では宇宙開闢の神と呼ばれておる』
『最高神の玉皇大帝である、玉帝と呼ぶがよい』
『伏羲だ』
『女媧よ』
『神農。そしてその他一同だ』
『『『おい!!』』』
次、インド!
『……サラスヴァティ!』
『死ね!』
創造神ブラフマーは弁財天先生に罵ららている。
そしてそれを生暖かい目で見守る4本腕の神様。
『我は世界を維持する者――――ヴィシュヌ』
インド神話のトップ3の内2柱が召喚された。
本当はこれに破壊神も加わる筈だったようだけど、最近殺され続けているせいで復活までにはもう暫く時間がかかるようだ。
頑張れ、シヴァ。
『……』
巨大な“何か”が俺達を見下ろしている。
巨人のようなシルエットのようなものが見えるが、実際には実態を持たないソレは興味深げに俺達を見下ろしていた。
〈カオス。原初の神々も召喚されましたか……〉
俺の中でウルが若干引いている。
ギリシャ神話からはオリンポス十二神よりもずっと古く偉い神様が他が召喚された。
その筆頭がこの神、世界の始まりに存在した原初神カオス、その実態は謎だらけだ。
『最後に顕現してから幾星霜、私を再び召喚する器が現れましたか』
『愛を感じます(笑)』
同じく原初神でもある母なる神ガイア、そして愛……というか性愛の神エロスも召喚された。
エロスは軍神の子供という説もあるけど違ったようだ。
ギリシャ系からは他にはプロメテウスとエピメテウスの兄弟や、運命の女神さん達が召喚された。
『勇者よ!亀を返してくれ!』
「却下!」
あと、酒神ディオニュソスがカメの返還を求めてきたけど全力で断っておいた。
次、エジプト!
『『ヘリオポリス九柱神』が筆頭、創造神アトゥムです』
〈ボッチだったからオ〇ニーで神生んだ奴だぜ♪ byちょっとだけスサノオ〉
『……帰ります』
「スト~ップ!!」
バカのせいで強力な戦力が帰っちゃうところだった。
『……引き籠りたいです』
『姉上!!誰か、この女神押さえて!!』
天岩戸事件まで勃発しかけてる!
あのバカ、あとで総攻撃を仕掛けてやる!
〈全面的に協力しましょう〉
ウル、サンキュー!
で、エジプト勢は他にも沢山召喚されている。
『……大気の神、シューである』
『……湿気の神、デフヌトです』
『この2人、さっきのでショックを受けていますね。ああ、私はネフティスです』
『イシス』
『セト、以下略』
『くぉら!!』
『『おい!!』』
家庭内の確執が目立つ神々だな。
次はアステカ!
『只今絶賛ニートの創造神オメテオトルだよ!』
『……ウィツィロポチトリです。助けて下さい』
『このケツァルコアトルを呼んだのは貴様か?契約の対価は何処だ?』
『愚かな。テスカトリポカを召喚するとは…………ゲ!』
アステカ神話の創造神はニートらしい。
その他の神々も神格は高そうだけど訳有りそうなのばかりだ……って、よく見たら大魔王の下僕も混ざっている!?
そういえばツクヨミ様もディオニュソスも下僕!
他にもバビロニア神話のマルドゥクとか、大魔王の犠牲者さん達が結構な数召喚されている!
〈死に物狂いで召喚に割り込んできたようですね。何処か哀愁のようなものを感じます〉
〈主に『大魔王』と戦って欲しいようです〉
死亡フラグの押し売りですか。
勿論、断る!
俺の超直感が尋常ではない危険を告げているんだ。
人間だけど人間と呼びたくない何かになって、気紛れでとんでもないことをしでかすのだと。
『その予想は……残念ながら当たっています。彼の者は、神々(われわれ)の理解を超えた存在となりました』
俺の考えに同意してくれるのは神聖さMAXの神、ゾロアスター最高神、善なる神の筆頭であるアフラ・マズダー様だ。
インドではヴァルナという別の最高神として信仰されているけど、俺としてはこっちの名前の方がしっくりと来る。
後ろに控えている7柱の神々、通称『不滅の聖性』が「この方はアフラ・マズダーである!」と威嚇しているのもあったけどな。
他にも北欧神話からはフレイとフレイヤの豊穣神兄妹うあ運命の女神姉妹、あとはスラブとか俺も知らないマイナーな神様一同が大勢召喚された。
ハッキリ言って神オーラの密度がヤバイ!
『一番濃いのはお前だけどな!』
「誰だ、今言った奴!」
『『『……』』』
この中で超神の俺が一番ヤバいらしい。
『サラスヴァティ……』
『大羽君、先生が許可するのでこの創造神を魔王と一緒に抹殺しなさい。それで世界はまた1つ救われます』
「先生……」
『落ち着け弁財天!』
『場を弁えろ。先程からヴィシュヌ殿が睨んでいる』
『儂の鹿が……』
ブラフマーと七福神ズは空気を読んでほしい。
そして鹿など知らん!
「兎に角、全員契約!!」
『小僧、身の程を――――』
『驕るなよ若――――』
――――ちょっとお待ちください――――
「よし!契約完了!」
『『『…………(調子に乗りました)』』』
〈……時間が無いとはいえ、容赦ないですね〉
〈主、魔王がキレそうです〉
召喚した全ての神との契約は完了した。
現実時間にしてほんの一瞬の出来事だったが、反抗的だった一部の神々を説得させるには十分な時間だった。
同時に、殺気から呆然としていた魔王を苛立たせて爆発させるのにも十分な時間だった。
「―――――来い――――」
召喚し過ぎ!
戦闘再開は次回から!




