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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
異界の七大魔王編Ⅶ―ワクワク大陸の章―
422/465

第407話 スラ太郎、無双?

――常闇の秘境――


『ピィ!』


『ピピィ!』


『ピィ~~~!!』


『ピッピ!』


『ピィ!』


『ピ!?』


『ピィ!』


『ピィ~!』


『ピィ!』


 暗闇に包まれた森に沢山のスラ太郎の鳴き声が響き渡る。


 その周りには魔王の軍門に下った者達の屍(?)が転がっており、それらも数秒後には血の一滴も残さず無くなっていった。


 ポイ捨て厳禁、自然を大事にするスラ太郎だった。



「……サミジーナ様が敗北しました」



 スラ太郎が一杯の森の中で、無表情な闇精霊レリエは淡々と戦況を告げていた。



「まさか!サミジーナ殿が……!」


『チュン!』



 それに驚愕するのはサミジーナと同じ魔王四天王のバーニスとチュンコだった。


 ダークエルフからゴッドエルフ(黒)に進化したバーニスと普通のスズメが超雀神に進化したチュンコは数で勝るスラ太郎×???に悪戦苦闘しながら、サポート役に徹しているレリエから告げられた戦況報告に目を丸くする。



「相手は龍神……クロウ・クルワッハです。ラウム様、バシン様、オセー様も敗北。レラージュ様は一次撤退に成功し、戦線を立て直すとのことです」


「やはり、敵も一筋縄ではいかないようだな。ジャッキーは?」


「今も敵スライムと交戦中です。根性で戦っています」



 カンフーなウサギさんことジャッキーは未だ頑張っていた。


 普通ならとっくにスラ太郎のご飯になっている筈なのにまさかの長期戦突入、魔王城を崩壊させた後は場所を移しながら、地形を変えながら激戦を続けている。


 まあ、それでも敗北の未来しか待っていないのだが。



『『『ピィ!』』』



 そして彼等もまた、沢山のスラ太郎に囲まれ絶賛大ピンチであった。


 これ、スラ太郎だけで全部終わるんじゃないの?



『『『ピィ~~~!』』』


「――――!来るか!」



 いっぱいのスラ太郎は一斉に《超次元砲∞》を発射しようとしていた。



「仕方ありません。此処は私がやりましょう」


『『『ピィ!!』』』


「失礼」



 神も瞬殺なスラ太郎の超次元砲の前にレリエが動いた。


 周囲の空間を不規則に歪曲させながら迫る無数のエネルギー体の前に彼女は立ち、何故か頭の上にチュンコを乗せながらたった一言だけ唱えた(・・・)



――――原初に闇に戻れ(テ・ボ・マ・テ・マキ)



 闇が世界を包み込んだ。



『『『ピ?』』』



 超次元砲は消滅し、スラ太郎達は何時の間にか何も存在しない無の世界へと放り込まれていた。



――――始まりへと還りなさい



 それは一瞬の出来事。


 スラ太郎達は何が起きたのか理解が出来ないまま闇に飲み込まれてゆき、その姿は雄々しく可愛いものから、何処にでもいるような小さなスライムへと成り果てていった。


 《原初の闇の理(テ・ボ・マ・テ・マキ)》、効果「強制退化」。


 それがレリエの持つ深淵級固有能力の力であり、これは進化し過ぎた生物に程絶大な効果を発揮する、まさにスラ太郎のような存在には最も有効なチート殺しの1つだった。


 この能力により、沢山のスラ太郎達は強制的に士郎と出会う前に最初の姿、ノーマルスライムへと退化させられ、その過程で進化に用いられた力の全てがレリエの手元へと流れていき、それはそのまま彼女の自由に消費する事が出来るようになる。


 勿論、退化しちゃったスラ太郎の数だけ。


 何それ、チート!



「終わりました。沢山エネルギーが手に入りましたので、早速、皆様方の強化・進化に使用したいと思います」


『チュン!』


「御見事。チュンコ、ドヤ顔は止めろ」



 チュンコのドヤ顔はさて置き、レリエによって残る魔王四天王3人を含めた魔王の臣下達は恐るべき魔改造を施される事となる。


 もっとも、別の場所ではスラ太郎(本体(オリジナル))が魔王軍を着々と捕食していき、微々ではあるが着実に力を増しているので絶対的優勢にまではならなかった。







--------------------------


――シャムス王国 某・廃都市――


 魔王城から遠く離れたとある廃都市。


 此処は数十年前までは七千人以上の人々が暮らすシャムス王国内でも有数の都市だったが、当時治めていた領主の悪政や飢饉、疫病などの度重なる不幸により滅んだ。


 今ではならず者や行き場の無い者達が隠れ住む場所だったが、この場所に目を付けた魔王マルスにより外界から完全に隔離され、今では魔王が召喚したり創造した多種多様な種族や、大陸各地から攫ってきた者達が暮らす魔王直轄都市となっていた。


 そして魔王に代わりこの治めているのは、魔王の妃(妾?)の1人であり、現在妊娠中(・・・)の吸血鬼エルネスティーネだった。



「うぷ!悪阻(つわり)が……」


「ティーネ様!」


「大丈夫です!暫くすれば収まりますから!」



 多くの侍女(出産経験者)に支えられながら、エルネスティーネは他人よりも強い悪阻と悪戦苦闘していた。


 魔王に召喚されたその夜、あの翌朝まで続いた大仕事の成果により新しい命を授かった彼女は当然のことながら妊娠の経験が無く、初めての妊娠でパニくっていたのを魔王の庇護下に入った女性達に支えられながら治政を行っていた。



「妊娠がこれ程大変だったなんて知らなかったわ。貴方達が居なかったら訳も解らず混乱した挙句、力を暴走させて破滅していたでしょうね」


「そんな事はありません!ティーネ様には陛下がおられるではないですか!」


「陛下はティーネ様のお体を心配なさっていました。私達が居なくとも、破滅する事は無かったでしょう」


「フフフ……そう言ってもらえるだけで嬉しいわ」



 侍女達の言葉にエルネスティーネ(以後ティーネ)は顔を綻ばせる。


 吸血鬼という種族は比較的閉鎖的で人間を見下す傾向にあるが、彼女の場合はこの数ヶ月の間にあった濃厚な経験により価値観が大きく変更、今では人間以外の種族にも偏見を持たない懐の広い女性となっていた。


 更に言えば出会いがアレだった魔王とも今では良好な関係をもっており、彼女の懐妊も心から喜んで生まれてくる子供達の為により一層頑張るようになった。


 今進めている“計画”も、自分の家族や庇護下にある者達の将来を考えた上でことだった。



「――――「私達は所詮は少数派(マイノリティ)」でしたか。幾ら強い力を持っていても、数の差で滅びる。『勇者』に討伐される。個人ではなく集団として、組織として強くなる必要がある。フフフ……なんだか魔王とは思えない発想ね」


「確かに、まるでお伽噺の英雄みたいですね。ですが、よくよく考えれば納得のいく考えです。陛下は既に多くの神々を倒し配下に加えていますが、それはあくまで一対一、多くてニ対一です。原初の物語に出てくるような最高位の神が束となって戦う事になった場合、陛下達でも苦戦は必至ですから」


「私達を護りながらなら、尚更不利よね。仲良くなるとまではいかなくても、敵対するだけ損と周りに思わせる国を創ろうとしているのよ。今は『勇者』を含めた“世界の大半”から敵意を向けられているけど、将来的には魔王だから、異端だからと安易に狙われないようにしているんでしょうね。強いのが彼や重臣だけなら各個撃破で攻めればいいと考える者が大勢出てくるでしょうけど、それでは済まない国を造れば、攻めてもデメリットが多くなれば必然的に面倒事も減るわ。賢い為政者なら下手にハイリスクハイリターンな考えは起こさないでしょうしね」


「それでも攻める者達は出てくるでしょうね」


「そういうのは欲が強いだけのバカだけです。現実的な政治家や商人は勝たなきゃ大損するだけの魔王討伐には余程の事が無い限り手を出さないでしょう。思想的に嫌悪はしても、実益の方を選ぶ方が合理的と考えるでしょうから」


「私達には理想的ですが、きっと茨の道ですね……」


「そうね」



 侍女から渡されたコップの水を飲み干すと、エルネスティーネは部屋の窓から外を眺めた。


 魔王城周辺で起きている戦いはこの部屋からもハッキリと見える。


 特に魔王と『勇者』――――マルスと士郎の戦いは派手すぎてこの都市の住人全員が観戦中だった。



表だって動く(・・・・・・)までは悪役を熟さなければいけないとはいえ、彼も損な役割よね。主人と世界を騙さないといけないのだから」


「あの『勇者』の……意志を持った能力の網も誤魔化せてるでしょうか?」


「その辺りは大丈夫。確かに『勇者』の力は深淵級ばかりだけど、幸い未だ混沌級には至っていないわ。多くを犠牲にして獲得した準混沌級(・・・・)の防護能力は破られる事は今は(・・)有り得ない。心配なのはむしろ……」



 まだ大きくないお腹を撫でながらティーネの顔が僅かに曇る。


 彼女は魔王の力を疑ってはいない。


 例え相手が神をも超えた『勇者』が相手だとしても騙し続け、必ず勝つと信じている。


 だが、それでも不安の全ては拭えない。


 『勇者』よりも危険な要素がまだあるからだ。


 そしてその要素を排除するのが魔王の“計画”の第一段階でもあった。



(『勇者』達を糧にすればきっと……)



 窓の外から魔王が本気を出すのが見えた。


 契約した邪龍神と合体し、『勇者』側に動揺を与えているのがハッキリと目に映る。


 本来の計画では『勇者』との戦闘は異世界での用事を済ませた後になる筈だったが、ずれてしまった以上は今此処で片付けるしかなかった。



「彼の事を頼みましたよ。レリエ」



 共に戦えない事に苦しみながらも、彼女は自分と同じく魔王を慕っている闇の精霊へと想いを届ける。



『ピ?』


「ええ、貴方も一緒………に?」


『ピ?』


「……」



 部屋の時間が停止した。


 外を一望できる窓の傍で、スラ太郎がポヨヨ~ンと浮いていた。


 スラ太郎、何故此処に?



「スラミじゃないですよね?色が……まさか、陛下の敵?」


『ピィ!』



 スラ太郎は「魔王達を倒しに来たよ!」とポーズをとる。


 どうやら敵を捜していたらうっかりこの場所に来てしまったようだ。



「そんな!」


「まさか!ありえません!!」


「外界から完全に隔離されている筈なのに……時空神でさえ認識できないのに!」


『ピ?』



 部屋の中は途端に大パニック!


 絶対安全の筈の場所に敵が現れたのだから当然である。


 一方、スラ太郎は「あれ?ここ敵地じゃないの?」と、無い首を傾げていた。


 スラ太郎、君の辞書には不可能という文字は無いんだね♪



「あ、でも可愛い……?」


『ピ?』



 1人の侍女の零したセリフにスラ太郎は反応する。


 その後、この一言が切っ掛けでスレ太郎にちょっとしたトラブルが発生するのだった。



『ピ?』








--------------------------


――常闇の秘境――


 魔王城から山1つ越えた先にある湿地帯では、やはり沢山のスラ太郎が魔王の配下と戦いを繰り広げていた。


 ただし、他の場所と異なり、此処ではスラ太郎の方が劣勢となっている。



『ピ……ピィ……!』


『――――ターゲット捕捉。アンチスライムレーザー発射』



 傷だらけのスラ太郎に無数のレーザーが襲い掛かる。


 レーザーを撃ったのは近未来の女性軍人を思わせる容姿をした人形兵器(・・・・)だった。



『ピィ!』


『ターゲットの敏捷の急上昇を確認。光速モード始動。作戦コードD-08へ移行する』


『『『ピ!?』』』



 全身を光に変え動き出すスラ太郎に対し、人形兵器は無表情のまま同じく光速での移動を開始した。


 その後も戦闘が続き、沢山のスラ太郎は人形兵器達(・・・・・)の攻撃に悪戦苦闘、何匹かが戦闘続行不可能状態へと陥り、徐々にスラ太郎達が追い込まれていった。


 相手が人形兵器(ロボット)だとしても普通はスラ太郎に敗北は無い。


 なら何故劣勢になるのか?


 それは――――



『ピピィ~!』


『警告。当機は対神性系スライム種用戦闘自動人形『スライムキラー003号』。神格を保有するスライムとの戦闘に特化した機体です。当機の計算により本体(オリジナル)以外の仮称:分裂体スライムの勝率は9.43%。これ以上の戦闘は無意味であると判断し降伏をお勧めします』


『『『ピィ~~~!!』』』


『理解不能。交渉は不可能と判断。これより作戦コードZ-01へと移行する。全機、全ターゲットの殲滅を開始せよ』


『『『了解(ラジャー)』』』



 1000機近くある人形兵器達はこれまでの敵の無力化から殲滅へと行動内容を変更し、一斉にスラ太郎達へと攻撃を開始する。


 あらゆるスライムを殲滅する事に特化した人形兵器、魔王マルスが最初にスラ太郎の存在を認識してすぐに創造した、ドチートなスライムを倒す為だけに存在する意志無き人形兵器達により、沢山のスラ太郎達は次第に追い詰められていった。



『ピ、ピィ~~~!』



 沢山のスラ太郎、まさかの大ピンチ!


 果たして、皆のスラ太郎はこの危機を乗り越える事ができるのだろうか!?


 ……続く!!




〈とかいって最終的には勝つんだよな?  by斉天大聖〉


〈……だな!  by死にかけのスサノオ〉






 次回は主人公のターン!

 ドチートを炸裂させて召喚されたものは……?

 次回「ボーナス屋、やらかす☆」



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