第395話 ボーナス屋、上陸する
――ワクワク大陸 ナールン帝国――
俺達は異世界ルーヴェルトに戻り、行き違いになった魔王が暗躍しているワクワク大陸に下りた。
そこは一面が灼熱地獄な、地平線の向こうまで砂塵の大地が広がる大砂漠地帯だった。
「暑いっていうより熱っ!!」
『魔法を使えばいいだろ』
熱いのは即解決した。
指をパチンと鳴らすだけで周囲は快適空間に早変わり、砂漠の地獄のような熱さともサヨウナラだ。
ホント、魔法は便利だな♪
『しかし、随分と出口がずれたようだな?』
「そうみたいだな」
辺りを見渡せど魔王どころか人影1つ見当たらない。
子供が見ても此処は無人地帯だと即答するだろう。
つまり、来る場所を間違えました、と。
『……あの男が《転移》を妨害する仕掛けを残していたのかもしれないな。奴の口振りからも、魔王を逃す時間稼ぎをしていたようだし』
「くっそ~!」
『今回は向こうにしてやられたな。奴は最初から戦うつもりも勝つつもりも無かった。最初から適当に時間を稼いだら逃げるつもりで策を用意していたんだろう。戦えば瞬殺される力量差でも、あれ程の魔力と能力があればそれ位の事は可能という事だ。良い勉強になったな』
「お前、他人事みたいに……」
『奴の術中にまんまと嵌ったのはお前だろ?いくら家族の事を言われたからといって、戦闘中にああも緩んだら駄目だろ!』
「お前だった緩んでたろ!」
『……さあ!魔王を狩りに行くか!』
「おい、誤魔化す――――」
直後、俺達の頭上を特大破壊光線が轟音とともに横切った。
『――――ピィ!』
そして轟音に混じって聞こえてくるのは凄く聞き覚えのある鳴き声だった。
「『スラ太郎!!』」
スラ太郎だ!
俺達のスラ太郎が金色に輝きながら世紀の大決戦を繰り広げていたのだ。
戦っている相手は無論、魔王の側近であるあのスライムだ!
『ピィ~ピィ~ピピィ~!!』
虹色に輝く敵スライムは両脇に巨大な光の手を出現させ、それを某ライオンなスーパーロボの必殺技みたいに構え、周囲の空間を震撼させながらスラ太郎に狙いを定めている。
おいおい、その天国地獄な必殺技は何処で覚えたんだ?
『ピィ~ピィ~ピピィ~!!』
同じ技をスラ太郎も……って、スラ太郎のをコピーしたのかよ!
スラ太郎、一体何所でそんな必殺技を覚えたんだ!
〈――――あの龍王の影響を受けたようです〉
「うわ!ソフィアちゃん!」
突然、ソフィアちゃんの声が頭に響いて来た。
〈すみません。すぐに連絡をしたかったのですが、外部からの妨害を受けてしまい遅れてしまいました。解析の結果、『悪神』アンラ・マンユの眷属神が契約者を通じて干渉してきた事が判明しました〉
「契約者……」
間違いなくクラークの事だな。
〈そして報告ですが、ワクワク大陸の魔王に敗北した残るもう1人の魔王がダーナ大陸西部の地上に突如出現し、1万体以上の魔獣と共に侵攻を開始しました〉
「何だって!?」
『……俺達が足止めされている間にか。どうやら、俺達が此の大陸の魔王を追う事も読んだ上での策だったようだな。向こうで足止めしている間にこっちの魔王を逃がし、ついでにその魔王にさっき降したばかりの残りの魔王を使ってダーナ大陸を攻めさせたか、それとも奴自身がそうしたのか……どちらにしても、俺達があのままこっちに来ることも呼んでいたんだろうな。こっちの魔王を無視してあっちの魔王を倒しに戻らないと確信した上で。仮にダーナ大陸に戻ったとしても、その間にワクワク大陸の魔王が何かをする。分身を使って同時に潰す手もあるが、その場合の策も打ってるかもしれないな。奴からはそういう人間の臭いがした』
クロウは名探偵なポーズをとりながら淡々と語っていく。
そう言う臭いがしたなら先に言って欲しいと思うのは負け惜しみか?
〈――――兎に角、緊急事態につきそちらへの応援は遅くなりそうです。今の処はコッコ団の皆さんや、ヒューゴさん達やバカ皇子さん達が魔獣の殲滅に動いてくれているので被害の拡大は抑えられていますが、魔王が《転移》で移動しているので倒すには最低でも1時間弱は必要です〉
「そんなにか……。じゃあ、それまでは俺達だけでって、スラ太郎ぉぉぉぉぉ!!」
『おおっ!綺麗な流れ星だな!』
ソフィアちゃんと話している間位にも上空ではスライム頂上決戦が続いていた。
スラ太郎が特大の流れ星を数百個も出したり、敵スライムが不思議空間から1000台近い砲台を出現させて一斉砲火したりと、常識人が見たら発狂間違いなしの光景が繰り広げられ、地平線の向こう側からは老若男女の悲鳴が聞こえてきた気がした。
『ピピピピピピピピピピィ~~~!!』
ラッシュラッシュ!
1万は優に超えるだろう燃える拳が避ける隙間も与えるかと言わんばかりに敵スライムに襲い掛かる。
『ピピィ~!!』
それを敵スライムは全方位をバリアで覆い、スラ太郎の拳の猛襲を全て跳ね返していく。
同時に大規模魔法を放とうとする。
『ピィ~~~!!』
空に立体状の魔方陣が出現し、そこから黒い稲妻のようなものを放つ巨大な球体を放った。
『ピッピピィ~!』
対するスラ太郎は体の一部を変形させ、超特大の金属バッドを出現させて襲い掛かる稲妻の球体を場外ホームラン(銀河の果て行き)にした。
うわあ、スラ太郎が真っ赤に燃えてる。
どこのスポ魂だよ。
〈……スラ太郎は某・龍王に英才教育と称して日本のアニメを視聴させられていました。その中には某ロボットアニメやスポ魂アニメもあり、スラ太郎達は熱心に観て必殺技の参考にしていました〉
『某・龍王……奴か』
「あの野郎……俺のスラ太郎に……」
妙にアニメな必殺技が多いと思ったら、原因は奴か。
後でお仕置きだな!
〈逃げるよ~♪ by元凶☆〉
逃げられると思うなよ?
『おお……!異空間から超巨大剣を出したぞ!』
そうこうしている間に頂上決戦は終盤に入ったようだ。
スラ太郎は不思議空間から巨大な光の剣を出現させた。
まんまサン〇イズだな。
というか、あの剣が内包しているエネルギー量がシャレになら無い程超高密度なんだけど!
〈……太陽系を吹っ飛ばせるエネルギー量ですね。この星1つなんて一溜りもありません〉
「おぃぃぃぃぃぃぃ!!」
『まあ、こっちに当てないだろうけど、その他は……消えたな』
「スラ太郎~!無茶するな~!」
俺の叫びも空しく、必殺ブレード(仮称)を掲げたスラ太郎は敵スライムへ突撃し、対する敵スライムは《転移》を使って姿を消す。
その後をスラ太郎も《転移》で追って2匹の姿はこの星の上空から完全に消えた。
そして数秒ほどが経ち、突如として空が眩い光で覆われた。
「『うわあ~……』」
〈スラ太郎の必殺剣と敵スライムの魔導反物質エネルギー砲が衝突し、銀河の一部に穴が穿たれました〉
「銀河レベルの被害!」
〈さらに余剰なエネルギーを敵スライムが吸収し、必殺技を放って隙が出来たスラ太郎にぶつけました〉
「スラ太郎!!」
『けど生きてるな?』
〈はい。危機一髪のところで今度はスラ太郎が攻撃を吸収、そのエネルギーも活用して《不思議幻想 》を発動させて異次元の彼方からスライムの神々を召喚しました。スラ太郎、《神戦士》―究極神形態―になります!〉
「何!その変身!」
もう肉眼じゃ見えないから《真全能眼》で戦いの様子を見ると……うわあ、スラ太郎のバックに変なスタンドが出ているよ。
真上に居るゴール〇ンスライムみたいなのがスライムの神か?
変にシュールな光景だな。
ああ、急速チャージして特攻したよ。
『敵もスーパー〇イヤ人みたいになってないか?ていってたら、デカい手が出たぞ!』
「って、石破〇驚拳……だと!リアルで(しかもスライムが)やるなんて……!!」
〈激突します!〉
この日、異世界の銀河の中で沢山の尊い星々が跡形も無く消滅した。
〈仕事増やすなよ! by天空神一同〉
後日、ハードにブラックな仕事の山に宇宙も司る方々が大勢過労で倒れたとお土産を片手にやってきたウルから聞く事になる。
何柱もの最高神やら創造神やらが留守にしていたせいで神様達の限界を超えてしまったらしいのだが、俺はフルーツ詰め合わせセットとウイロウを人数分贈って誤魔化すのだが、それはまた別の話だ。
〈頑張れ、兄貴! byスサノオ〉
〈召喚!義妹ズ! byツクヨミ〉
他にも些細な兄弟喧嘩があったらしいがその辺は割愛する。
〈スラ太郎が押し勝ちました!〉
「よっしゃあ!」
『あいつ、この戦いに勝ったら何に進化するんだ?』
銀河を吹っ飛ばした大激突をスラ太郎が制し、戦いは一気にフィナーレへと突入した。
『なんか増殖したぞ!』
「……可愛いな!」
大激突を制したスラ太郎はテンションがさらに上がったのか、嬉しさのあまりに100万匹に大増殖した。
何も無くなった銀河の一角でポヨヨ~ンとしているスラ太郎達の光景は何気に可愛い。
そして、スラ太郎達は止めを刺す為に動いた。
〈来ました!《超勢零勢 》です!〉
『……えげつねえ!』
そして押し負けた敵スライムに100万匹スラ太郎が一斉に襲い掛かる。
そのド迫力な光景は――――――――正直怖すぎた。
〈そしてトドメの《一撃滅殺 》!〉
「おお!!」
『あちゃ~!』
〈勝利です!〉
なんかとんでもない衝撃波を放ちながら、ついに、ついにスラ太郎は魔王の側近である敵スライムに勝利した。
一瞬、UFOみたいなのが衝撃波に飲まれて消えたような光景が見えたけど気にしない。
こうして、俺達のスラ太郎は大勝利を収めたのだった。
『処で訊くが、あの100万匹のスラ太郎はどうするんだ?』
「え!」
勝利の余韻に浸っている中、クロウは俺に現実を突きつけてきた。
『お前の王国で、スライムを100万匹養えるのか?神すら食べちゃうようなのを?』
「え!」
『敵を倒して更にパワーアップしたスラ太郎に、更にイザナミやイザナギを食べさせたらあれ以上に増殖したりするんじゃないのか?』
「え!」
『というかスラ太郎、お前よりも強くなってるんじゃないのか?』
「え……それは……」
『どうするんだ、御主人様?』
「……」
現実とは何時も無常だった。
この数秒後、スラ太郎×100万は大勝利に浮かれながら俺達の真上に転移して来るのだが、その時の俺には負債の山が降ってくるようにしか見えなかった。
一気に増えたスラ太郎、これどうすんの?
〈まあ、頑張れ! byヌアザ〉
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――神界――
「……」
「あ!ボロ雑巾発見!」
「王様何してんの~?」
「……」
同時刻、散々な目に遭った某・最高神はボロボロの姿で神界の外れに放置されている処を通りすがりの暇神達に発見され、その後、慌ててやってきた医神ミアハの治療により感知したのだった。
後日、お父さんの医神ディアン・ケヒトと殺伐とした親子喧嘩をするのだが割愛する。
よかったね、最高神♪
「納得いかん!」




