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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
番外編?
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第39話 暴れん坊王女、レベルアップする

また予約ミスで一時間遅くなってしまいました。

とりあえず、今回はステラちゃんを含めた王国側のお話です。

――ファル村西部 王国軍駐屯地(仮)――


 フィンジアス王国の騎士、フィリス=L=ハリソンの朝は早い。


 日が昇り始めると誰よりも早く起き、素早く身支度を整えて外にでる。


 最初はテント暮らしだったのが、村長一家や建築の心得のある部下達のお蔭で今では小規模ながらも駐屯地が出来上がっている。


 最初は寝泊まりできる場所と、馬達を管理する小屋をいくつか造るだけだったのが、村長一家の熱意に押されて予定以上に立派な建物が出来上がっている。


 最近では村の中に誰でも利用できる温泉が出来た事から、衛生面を含めてもかなり快適な環境が出来上がっている。



「ハッ!ハッ!ハッ!」



 フィリスが起きてから外で最初にする事は、日課となっている剣の鍛練である。


 毎日の手入れを欠かさない愛剣を何度も振って基礎を徹底的に磨いていく。


 ―――――――騎士たる者、少しでも基礎を怠るべかず。


 代々王族を守護する騎士の家系であるハリソン家の家訓をフィリスはしっかりと守っているのだ。



 剣の鍛練後、次は魔法の鍛練である。


 フィリスは優秀な魔法使いの母を持ったこともあり、魔法の才にも恵まれ、母から直々に指導を受けてきた事もあって騎士団の中でも高い評価を受けてきた。


 だがそれも、ファル村に来てからは何の意味を持たないと思い知らされた。


 ファル村に来た最初の日、村人達から“勇者”と呼ばれた異世界の少年(大羽士郎)に呆気なく敗北し、その直後にはファリアス帝国第一皇子率いる軍に囲まれ、さらにはその中に潜んでいた暗殺者によって危うく主君もろとも焼死する危機に陥った。


 その際に見た暗殺者や勇者の魔法の数々は、魔法に関して母親から英才教育を受けてきたフィリスにとってかなりのカルチャーショックだった。


 あまりに大規模で圧倒的、そのどれもがフィリスの常識を悉く覆してきた。


 さらにその後、主君である王国の第二王女ステラと共に村の教会で勇者から《エフォートエクスチェンジャー》によるボーナス交換を受けたフィリスは危うく間抜けな声を出しそうになるほど驚かされた。


 王女の前だったのでどうにか平静を保ったが、その時に手に入れた魔法はあまりに便利、あまりに高性能な代物ばかりだった。


 以後、フィリスは時間を見つけては、士郎から個人的に異世界の魔法に関して教授してもらっている。



「―――――ふう、では本日も確認してみますか。《ステータス》!」



 フィリスは魔法の鍛錬の前に自分のステータスを確認する。



【名前】フィリス=L=ハリソン

【年齢】19  【種族】人間

【職業】騎士(Lv4) 魔法使い(Lv4) 補佐官(Lv3) 【クラス】鍛え直す騎士

【属性】メイン:水 サブ:風 雷 空 闇

【魔力】23,600/23,600

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv3) 防御魔法(Lv1) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv4) 水術(Lv3) 風術(Lv1) 雷術(Lv1) 空術(Lv2) 闇術(Lv1) 剣術(Lv2) 体術(Lv1) 千里眼 鑑定

【加護・補正】魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv2) 水属性耐性(Lv2) 火属性耐性(Lv3) 海神リルの加護 職業補正 職業レベル補正



 この10日間ほどで魔力が元の4倍近くまで増えていた。


 今ではもう驚かないが、当初、士郎から教えてもらった魔力を上げる修行法の効果を見た時のフィリスは、自分達は今まで何をやっていたのだと思わずにはいられなかった。


 さらに昨日、この数日、士郎が村人以外の少年達と何かをやっているのが気になって王女と一緒に話しかけてみたら、どうやら新しいボーナスを発見したらしいと、勧められるままに交換した〈職業補正〉と〈職業レベル補正〉の効果を1日試してみた結果、たった1日だけでさらに魔力が上がったのだ。



「・・・これ、部下全員にも持たせたら凄い事になりますよね?」



 フィリスは苦笑しながら呟いた。


 フィリスは知らないが、実は昨晩の内に主君であるステラ王女がこっそりとその事を士郎にお願いしに行っていたりするのである。


 図らずも今日、身分を問わずステラ王女一行は色々凄い事になる。



--------------------


 フィンジアス王国第二王女ステラは頭を悩ませていた。


 原因は王国に潜入している部下からの定期報告だった。



「・・・まさか、こんな短期間で王国の情勢が変わるとはな。」


「かなり用意周到に計画していたのでしょう。黒幕にとってはステラ様もヴィクトリア様も同じ捨て駒に過ぎなかったのでしょう。」


「姉上は国家反逆の容疑で拘束、各大臣を含めた重鎮達の半数近くが更迭、末弟のレックスが王太子だと!?しかも軍や騎士団の指揮系統も大きく再編され、私の知らぬ者達が何人も指揮官になっている。あとひと月も経てば、最早私達の知る王国ではなくなっていても可笑しくはない。」


「確かに、否定はできません。」



 会議を行っている一室が重い空気に包まれる。


 数日置きに届く部下からの報告は、回数を重ねるたびに深刻なものになっていった。



「早く手を打たなければならない!」


「ですが、我々だけでは無理です。王国軍そのものを相手にする可能性が高い以上、今の戦力では余りに無謀です。」


「心配するなフィリス。その為の策は考えてある。」


「「「?」」」


「フフフ、すぐに分かるさ。」



 ステラは意味深な笑みを浮かべ、その場で部下達の疑問には答えなかった。




-----------------------


~ステラちゃんサイド~


 私達が会議を終えて外に出ると、暇そうに私を待っているシロウがいた。



「あ!待ってたぜ、ステラちゃ~~~ん♪」



 相変わらず軽い口調の士郎だが、これにはもう慣れたから何も言わない。


 最近では村人達にもこの呼び名が浸透しつつある。


 流石に部下達は呼ばないのは喜ぶべきだろう。



「待たせてすまない。会議が少々延びてしまった。」


「別に気にしないぜ?それよりも、今日のことはみんなにも話したのか?」


「いや、これからだ。」



 これからやる事は、私が以前からこっそりとシロウと一緒に考えていた計画だ。


 今の私達に足りないもの、それを補う為の少々危険も伴う計画だ。



「とりあえず、関係者以外には他言無用ってことを伝えておいてくれれば俺は構わないぜ?」


「分かっている。私達にとっても、お前の能力が漏れる事は不利益に繋がるからな。」


「――――――ステラ様、もしやシロウ殿の能力を他の者達全員に?」


「そうだ。」



 流石はフィリス、中々鋭いな。


 私自身が体験した時から考えていた。


 あの時はバカ皇子(ヴィルヘルム)がいた事もあって頼めなかったが、日を改めてコッソリ頼んだら引き受けてくれた。


 もちろん、いろいろ条件付きではあるが。



「ハ~~イ!みんな順番に並べよ~~~♪」


「まずは第1、第2小隊からだ!さっき説明したとおり、望むものを待っている間に考えておくようにしろ!」



 ともあれ、シロウの“ボーナスタイム”が始まった。


 私が率いている騎士団と兵達は私を含めると全部で215人、既に恩恵を受けている私とフィリスを除いてもまだ213人もいる。


 少しでも早く進む様にと、説明する際には全員にどんなボーナスが欲しいのか考えるように言っておいた。


 実際に経験している私とフィリス以外、最初は半信半疑だったようだが、中には最初の日にシロウに呆気なく敗北した経験から納得してくれる者もいた様なので大きな混乱はなかった。



「―――――で、次は小隊長さんか。何が欲しい?」


「私は最近視力が弱くなっている気がするのでそれを治す薬か強化する力を。それと、最近―――――――」



 第1小隊は問題なく全員終わったか。


 しかし、小隊長が眼を患っていたとは知らなかったな。


 私ももっと部下をよく見るようにしなければ。



「次は第2小隊の人~~~!」


「魔法で!!」


「絶対魔法で!!」


「凄い魔法で!!」


「カッコいい魔法で!!」



 第2小隊は平民出身者の構成だったな。


 魔法を使える者は貴族や王族に偏りがちだから憧れているのだろう。


 私も最近まで魔法は使えなかったからその気持ちは理解できる。



「次は第3小隊~~~~!」


「惚れ薬を!」


「遠くが透けて見える力を!」


「ハァ、ハァ・・・異性に変身する魔法が――――――」


「ステラちゃ~~~~ん♪」


「貴様ら~~~~~!!」



 全く、今後は本当に部下をしっかりと見ておかなければ!


 しかし、一応とは言え、皆しっかりと考えていてくれるのは助かるな。


 これなら数刻もかからずに終わりそうだ。



「あのう・・・料理のレシピはありますか?」


「姫様の御召し物を綺麗にする魔法はありますか?」


「殿下が元気になる薬を・・・。」



 ・・・・・・。


 給仕の者達には苦労をかけ過ぎたようだ。


 ちゃんと自分の為になるのを選ぶように説得しなければな。



「―――――モフモフのぬいぐるみを・・・」



 待て、何故私の秘密の趣味を知っている!!




----------------------


――ダーナ大陸のどこか(岩山)――


 シロウのボーナスタイムを終えた私達は―――――――――――――



『ギャォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』


「「「わあああああああああ!!!」」」


「逃げるな!陣を崩さず、連携して戦え!」



 私達は、竜種(ドラゴン)と戦ったいた。


 先日、シロウ達がファルの森の洞窟で発見したという“謎の扉”、どうやら使う鍵によって違う場所に繋がるらしく、私達は鍵の1つを借りて実践訓練に利用させてもらっている。


 ちなみに、今戦っているのは竜種の中でも下位のロックドラゴン、岩石に覆われた表皮を持つ竜種の中では鈍足な空を飛べない種だ。



【ロックドラゴン ♂】

【分類】竜型魔獣

【用途】爪と牙は武器・防具の素材、肉は食用

【詳細】岩石の表皮に覆われた 岩山などに棲む竜種。

 総合的な能力は竜種の中でも下位だが、その爪と牙は岩石を簡単に削る程の強度を誇る。

 メスの個体は繁殖期になると周囲の岩石に擬態し、オスが外敵から護る習性がある。

 個体によって違うが、表皮の中に一際脆い部分があり、そこが弱点でもある。

 また、物理攻撃にはある程度強いが魔法に対しては耐性が低い。



 爪による攻撃にさえ注意すれば私達にも十分倒せる。


 何より、ロックドラゴンの特性上、訓練の相手としては最適の相手だ。


 まず、必ず弱点があるのであとはそれを上手く見極めればいい。


 つまり、実戦における各自の洞察力を鍛えられるのだ。


 次に、魔法に対して弱いので、後衛をしている者達には魔法の標的に最適だ。


 特にボーナスで魔法が使えるようになった者達には試し打ちにもなる。


 まあ、いきなり実戦は厳しいだろうが、元々私達は戦争のために帝国に来たのだ。


 下位竜ぐらいで怖じ気ついてもらっては困る。



『ギャォォォォォォォォ!!』


『ギャォォォォォォォォ!!』


『ギャォォォォォォォォ!!』


『ギャォォォォォォォォ!!』



 ・・・まあ、相手が1匹だけならな。


 さすがに群れを相手にするのは厳しいか。



「ステラちゃん、俺の助けいる?」


「いや、私も戦うからまだ必要はない!」



 私はクリスタルセイバーを抜き、苦戦気味のところへ助太刀に入る。


 その後、結局はシロウの助けも少しだけ借りてロックドラゴンの群れを倒した。


 勝った直後は皆歓喜に沸いたが、その後すぐに次の敵が現れた。



『ギャルルルルルル・・・・・。』


「ア、アイアンエッジドラゴン!!」



 しかも、ロックドラゴンよりも格上の中位竜、額の刃物のような角が特徴のアイアンエッジドラゴンだった。


 私の知識が正しければ、確かゴリアス国に生息するはず。


 ならば・・・・・・



「ここは、ゴリアスだったのか・・・!」


「ステラ様!今はそんなことを言っている場合ではありません!!」



 ム・・・そうだった。


 魔力の残量が厳しいが、それは戦場ではよくあること。


 ロックドラゴンと同様に倒してくれる!



【アイアンエッジドラゴン ♂】

【分類】竜型魔獣

【用途】武器・防具の素材

【詳細】ゴリアス国内の山岳地帯にのみ棲息する竜種。

 全身を鋼のように硬い鱗などに覆われ、物理攻撃はほとんど無効化される。

 額から生えた角は鋼以上の強度を誇り、名剣の材料になるとして有名である。

 鉱石を好んで食べる個体が多く、胴体からは純度の高い金属の角が生えている。

 非常に稀だが、オリハルコンの角を持つ個体もいる。

 肉はとても不味く、食べられたものではない。




-------------------------


――ファル村――


 私達はボロボロになって帰ってきた。


 結果的には誰も死なせずにアイアンエッジドラゴンに勝てたが、倒せたのはほとんどシロウのおかげだった。


 アイアンエッジドラゴンはロックドラゴンとは比較にならないほど強く、特にあの防御力の前には私の剣技はほとんど意味はなかった。


 さらに攻撃も強く、鋭利な角や爪による攻撃は恐ろしく、予め魔法で強化などをしておかなければ何人もの死者が出ていた。


 全身の角から放たれた雷攻撃も厄介だった。


 致命傷を受けた者はいなかったが、未だに軽い麻痺が残っている者も少なくはない。



「じゃあ、俺はこの辺で!」


「ああ、今日は色々世話になった。また今度もよろしく頼む。」


「オッケ~♪今度はファイヤードレイク狩りにいくか!」



 後ろから悲鳴が上がった。


 ファイヤードレイクか、1体だけで都市が一つ落ちると言われている種だな。


 さすがに私達でもキツイだろうが、シロウ達は13体も狩っているからな・・・。



「ステラ様、さすがにアイアンエッジドラゴンに苦戦した身で、すぐにファイヤードレイクと戦うのは無理かと。しばらく鍛えてからの方が賢明です。」


「ム、確かにそうだな。」



 実戦だけで強くなれるとは限らないからな。


 明日は基礎修行を中心にするか。


 あとは農作業の手伝いだな。


 その事を伝えたら、部下達は全員安堵の声を上げた。



「じゃあな、ステラちゃん!」


「ああ、また明日会おう。」



 シロウと別れ、私達は駐屯地へと戻る。


 皆疲れているだろうし、今日はもう早々に休ませるか。


 私も温泉で汗を流したいしな。


 しかし、今日は随分とレベルを上げる事が出来たな。


 もう一度確認してみよう。



【名前】『戦姫』ステラ=W=フィンジアス

【年齢】16  【種族】人間

【職業】王女(Lv18) 騎士(Lv18) 魔法使い(Lv15)  【クラス】暴れん坊王女

【属性】メイン:光 風 サブ:水 火 雷

【魔力】50/208,000

【状態】疲労(小)

【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv3) 特殊魔法(Lv2) 属性術(Lv3) 剣術(Lv3) 槍術(Lv3) 体術(Lv2) 結晶の宝剣(クリスタルセイバー) 鑑定 

【加護・補正】物理耐性(Lv2) 魔法耐性(Lv1) 光属性耐性(Lv2) 回復力上昇 銀の女神アリアンロッドの加護 職業補正 職業レベル補正



 ファル村に来たばかりの頃と比べると凄い伸びだ。


 今日だけで私のレベルは10以上も上がっている。


 おそらくフィリス達も似たようなものだろう。


 シロウや村長と比べるとまだまだだが、焦らずに力を蓄えていくとしよう。






次回はバカ皇子のお話です。


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