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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
異界の七大魔王編Ⅶ―ワクワク大陸の章―
408/465

第393話 ボーナス屋、黒幕(?)と戦う

――狭間の世界――


「え?」



 クロウと共に勢いよく出発した直後、俺の前の前には黒コートのオッサンが立っていた。


 いや、オッサンという程老けてないけど若くも無い。


 青年とオッサンの丁度境目って感じの男が俺達の前に立ちはだかり、今にも攻撃を仕掛けようとしている。



「残念だが、お前達は此処で足止めだ」



 なんかブリザードを連想させるほど冷たい感じの声を突きつけられたけど、俺は特にビビることなく目の前の男に質問を投げかけた。



「あのう~、お宅が魔王さんですか?」


『ゆるいな』


「違う」



 目の前の男は魔王じゃなかった。


 なら、ギリギリ行き違いになったってことか。


 そして俺を足止めしようとする目の前の男、間違いなく敵だな。


 俺の直感も「さっさと片付けないと後々超厄介!」ってさっきから訴えているし!



『……士郎、一応言っておくが注意しろ。あの男、只者じゃない。戦闘力とは別に、全身から嫌な臭いが漏れ出ている』



 クロウも真剣な目付きで男を威嚇している。


 これはもう速攻で倒すしかないな!



「――――ズドン!」



 向こうが動くよりも速く、先ずは大爆発!


 紅蓮色の爆炎が男の全身を飲み込んでいった。



「おお……!スゲエ威力!」



 敵だから手加減抜きで魔法を放ったらあら不思議、男どころか狭間の世界そのものを紅蓮一色に染める大爆発が発生したのだ。


 これ、冗談抜きで星の1つを余裕でボン!できるんじゃない?


 地上じゃ絶対に使えないな。



「――――で、この威力で無傷と」



 暫くは消えないかと思っていた爆炎は唐突に消えて、そこには無傷の男が白い片手剣を握った状態で立っていた。


 マジで?



「恐ろしい力だな。まともに受けていれば魂諸共消滅していたのだろうが、当たらなければ問題は無い」



 男は冷たい視線を突き刺してくる。


 人間を辞めちゃった俺の攻撃を防ぐとか、この男、どんな化け物なんだ!


 と心の中でツッコむ暇も無く男は斬撃を飛ばしてきた。



「うお!速っ!」



 俺はすぐにクラウ・ソラスで対抗し、嵐のように襲い掛かる斬撃を防ぎつつ攻めてもいく。


 クロウも何か危険を感じたのか参戦し、男に向けてブレスを連射し、それに対して男は空いている手からも剣を出し2本の剣で迎撃していく。


 その動きは『大魔王』程じゃないけど、明らかに戦い慣れた達人クラスのものだった。



「せいや!」


「重いな。だが、対応できない程じゃない」


「マジで!」


『やはりこの男、只者じゃない!動きもだが、全体的に人間離れし過ぎている!』


「もしかして人間卒業生!?」



 現在、超音速も軽く超えて光の速度に達しようとしています。


 俺は呼吸と同じようでやっているけど、相手の男の汗1つ流さずにこの速度と力に付いてきているし、関節の動きとかが変な方向に動いたりして凍てて人間とは思えない。


 人間の気配を纏っているけど人間じゃないかと思ってしまう。


 けど、それをクロウは否定する。



『いや、俺の“眼”から見ても間違いなく人間だ。基本的なスペックはお前の方が圧倒的に上の筈だが……って、これは!』


「クロウ?」


「余裕があるとはいえ、余所見は禁物だ。小僧!」


「冷たっ!」



 クロウの驚愕の声に思わず振り向いた隙に男の剣が俺の脇腹を掠った。


 ダメージはそれ程じゃなかったけど、掠った箇所が真っ白に凍り付き、更には傷口を中心に凍結箇所が全身へと広がり始める。


 俺は気合で氷を溶かし傷口も瞬時に塞いで全身凍結を防いだ。



(今の俺の体を凍らせる――――『神器』か!)



 神様超えちゃった俺に傷を付けただけでなく凍らせた事実から、俺は直感に頼らなくても男の持っている武器が『神器』であると見抜いた。


 最初は業物にしか見えなかったことから《隠形術》の類で武器の存在感などを隠蔽していたんだろう。



〈――――士郎、奴のステータスを見ろ!ついでに武器もだ!〉


〈クロウ!〉



 少し引き攣ったような声が頭に響く。


 クロウはあの男のステータスを視たらしく、俺にも見るように促してきた。


 俺は思考を加速させながら目の前で剣を振るう男のステータスを直視する。



【名前】『第七の眷属』『終焉幾千(サウザンド・ルイン)』クラーク=ガーランド

【年齢】230  【種族】人間

【職業】創霊術帝(Lv87) 神滅之武聖(Lv70) 暗躍の王(Lv79)  【クラス】超越者

【属性】無(全属性)

【魔力】8,740,030/9,999,999

【状態】正常

【能力】深淵大魔法(Lv5) 武聖武闘術(Lv5) 聖魔霊術(Lv5) 神匠術(Lv5) 幻影之偽神(シアエガ) 堕落之偽神(イゴールナク) 境界の管理者(ロード・オブ・ボーダー) 言霊之王 魂魄創造(ソウル・クリエイション) 異能創造(スキル・クリエイション) 神霊眼 覇者奮迅 霊薬精製 星海の革命(コズミック・レボリューション) 運命の調(ノルン・ベル) 死相返し 一夜の快夢(ワンナイト・チャーム) 契約の神茨(ソーン・オブ・コントラクト) 万象複製 魔剣サモセク 氷凍の雄刃(アルマッス) 神聖円盤(ダンダ・チャクラ)

【加護・補正】物理耐性(Lv5) 魔法攻撃無効 精神耐性(Lv5) 全属性耐性(Lv5) 全状態異常無効 全能力異常無効 完全詠唱破棄 並列思考 神速回復 神速再生 不老不死 悠久の記憶 暗躍する者 密偵の王 魂魄の創造者 魔道の匠 神の眷属 魔王の親 口達者 暗殺者 指導者 複製者 教育者 超克者 神滅者 悪魔殲滅者 魔王殲滅者 巨人殲滅者 魔獣殲滅者 竜滅者 龍ハンター 天魔ハンター 職業レベリング 悪神アエーシャマの契約 冥王ハデスの加護(+3) 無限神ウロボロスの加護(+2) 悪神アンラ・マンユの加護(+2)混沌王アポフィスの加護(+2) 天界神アメノトコタチの加護(+2) 魔神バロールの加護(+2) サマエルの加護(+2) 最高神ダグザを支配

【BP】――(封印中)



 俺は言葉を失いかけた。


 目の前の男――――クラーク=ガーランドは俺の予想を超えるチート存在だった。


 魔力が約1000万なのもそうだが、多過ぎる能力の種類、以前から気になっていた敵側のレベルの存在、複数の『魂の武装(スピリット・ウェポン)』、神の加護・契約、そして《最高神ダグザを支配》という内容。


 ダグザと言えば、俺が持つ『神器』の中で未だに『魂の武装』にもならずに持て余している『ダグザの魔釜』の名前にもついているダーナ神族の神様だ。


 最近は色々あって忘れがちだったけど、俺の目の届かない場所で敵の魔の手に堕ちていたようだ。


 俺は驚愕しながらも、クロウに言われてた奴の持つ剣の方も注視する。



【魔剣サモセク(+39)】

【分類】魔剣(滅龍神器・魂の武装)

【属性】無

【魔力】∞

【ランク】――

【品質】最高品質

【詳細】英雄イワンが邪龍ゴリニチを倒した時に使用した魔法の剣。

 普段は持ち主の体内に同化し、使用する時には手から飛び出す。

 ありとあらゆるモノを両断し、それは魔法等も例外ではない。

 生み出された当初は万物を両断する魔剣だったが、現在は龍(竜)を殺す事に特化した『滅龍神器』へと進化し、更には現在の使用者により強化された事により龍だけでなく神も両断できる恐るべき剣へと変貌した。



氷凍の雄刃(アルマッス)(+28)】

【分類】魔剣(神器・魂の武装)

【属性】氷

【魔力】∞

【ランク】――

【品質】最高品質

【詳細】天界で鍛え上げられ聖騎士(大僧正)チュルパンに与えられたとされる氷の剣。

 斬った対象を凍結させ、最後は跡形も無く粉砕させる恐るべき魔剣である。

 本来は金色の朝日の如き輝きを持っていたが、現在の使用者により改良が加えられ氷の如き色へと変貌している。

 その力は進化の一途をたどっている。



 武器もチートでした!


 しかも片方はクロウのような龍族の点滴である『滅龍神器(ドラゴン・スレイヤー)』、もう片方の剣も途轍もなく厄介そうだ。


 今まで倒してきた魔王なんかよりも圧倒的に強いんじゃないのか?



〈クロウには相性が悪いんじゃないか?〉


〈悪いな。あの剣には強さに関係なく龍族に致命傷を与えられる力が宿っている。即死は無いが、何度も受けると色々と厄介だぞ、アレは!〉



 同じく思考を加速させているクロウは僅かだが焦っている。


 それだけ、奴の持っている剣がクロウにとっては凶悪すぎるという事なんだろう。


 しかも神も一刀両断にできるみたいだから俺も他人事じゃない。


 というか一刀両断って、普通に一撃KOだろ!



〈お前は死なないだろう。例え世界が滅んでも〉



 何を言ってるんだ何を!


 俺だって、死ぬ時は死んじゃうよ……多分。



「――――随分と余裕だな。小僧」


「うおっ!」



 魔剣が俺の顔をスレスレに横切った。


 俺達の思考よりも速く加速した奴は俺の頭を横に両断しようとしたが、俺はそれを紙一重に避けながらクラウ・ソラスで斬り返す。


 クロウも続けて攻撃するが何故か神回避されてしまう。


 総合的には俺達の方が圧倒的に上の筈なのに、何故か奴は俺達と対等に戦えている事実に俺は不審に思

う。


 考えられるとすれば加護の補正が効いているか、詳細を見ていない奴の能力のどれかが奴自身のスペックを俺と同等レベルにまで引き上がているかだが、多分両方だろう。


 ルギエヴィートのようなドチート能力なら納得がいく。


 もう何がチートなのか分からなくなってきたな。



「まあ、それでも俺が勝つけどな!」


「!」



 俺は更に速度を上げて奴を翻弄していく。


 知覚させる余裕も無い程のレーザーの嵐をお見舞いし、同時にファ〇ネルも発射させて奴の攻撃のリズムを崩す様に攻め続けていく。


 そして十数秒ほどは奴も善戦して俺のファン〇ルを何機か破壊し、もう龍神さえ超えちゃったクロウの鱗を何枚か削っていったが、ついにその勢いが減衰していった。



「―――チャンス!」



 俺はクラウ・ソラスを双剣モードに変形させ、ついでに1000人くらいに分身してから一斉攻撃を放つ。


 だけど、つい「チャンス!」と叫んじゃったのが行けなかったのか、攻撃は一撃も当たる事は無かった。



「―――――!」


『幻―――ッ!?』



 俺達の攻撃を一身で受けた(クラーク)は幻だった。


 さっきまでは確かに実体もあったし氷のように冷たい気配だったあったにも拘らず、俺達が本物だと思っていた奴の体は蜃気楼のように揺らぎながら静かに消えていく。


 どうやら俺達は奴の術中に嵌められたようだ。



『……奴自身の言うとおり、魔王を逃がす為の時間稼ぎか。ソフィアを同行させていなかったのが失敗だったな』



 舌打ちしながら、クロウは奴の幻があった場所を睨んだ。


 クロウの言うとおり、あの男は俺達と本気で戦う気など始めから無く、俺達をこの場所で足止めするのが目的だった。


 というか、奴自身が最初に「足止めだ」って言ってたしな。


 俺も正直に戦わずにスルーしておけば良かったのかもしれない。


 俺達の標的はあくまで魔王だし。



「クソッ!」


『どうする?』


「……魔王の方を追う。スラ太郎が心配だしな」


『だな。今頃、加勢されてピンチになっているかもしれない。まあ、飼い主と同様に死なないだろうが』


「失礼だな!兎に角行くぞ!」



 俺はプンスカしながらクロウに背を向けて異世界ルーヴェルトへと向かい、その後を「スマンスマン♪」と呟きながらクロウが追ってくる。


 スラ太郎を信じてない訳じゃないけど、只でさえ魔王側のチートスライムに苦戦しているのに、そこにチート魔王が加勢したら勝敗とは関係なく苦戦するのは目に見えている。


 というか、ワクワク大陸が消し飛んでしまうかもしれない。


 最悪、星がガリッと削れてしまう。


 俺としてはそっちの方が心配なんだよ。


 そんな訳で俺達は一路魔王の居るワクワク大陸の方へと向かった。



「……」



 と言いたいところだが、俺達を嵌めてくれた相手を黙って見逃すほど俺は甘くはない。


 姿も気配も完全に消しているようだけど、俺の前では無意味だ。




「《超神雷霆(ケラウノス)》!!」




 狭間の世界に俺の声が響くのと同時に、猛々しい破壊の雷光が世界を襲った。


 ちなみに出力100%、地上では絶対に使えないから試し撃ちには絶好のチャンスだ。


 なんか時空神の皆さんからクレームが来ているけど無視だ。



『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――ッッ!!』


「ん?」



 奴さんの悲鳴が聞こえるかと思ったら、何か知らないオッサンの悲鳴が聞こえてきた。



『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――――――!!』



 何度も聞いても知らないオッサンの声だ。


 もしかして、関係無い人を巻き添えにしちゃったか?



『士郎、止めろ!!』



 クロウが声色を変えて怒鳴ってきたので俺はケラウノスを止める。


 雷光が止んで視界がハッキリすると、俺の目の前にはやや深手を負った奴さんことクラークと、神オーラを全開にさせた知らない光るオッサンがそこに立ち、オッサンは満身創痍と言った様子で今にも死にそうな呻き声を漏らしていた。


 このオッサン誰、と思ったが、俺の口が開くよりも先にクロウがオッサンの名前を叫んだ。



『―――――最高神(ダグザ)ッ!!』



 俺の鼓膜を破りそうな声でクロウは叫んだ。


 それに対し、クラークはやはり冷たい声で俺達を見つめながら口を開いた。



「残念だが、私には都合の良い“楯”がある。そう簡単には、俺は殺せない。さあ、次はどうする?」



 神を楯にする男クラーク、何て奴だ。


 だが、あいつは未だ気付いていない。


 どんなにチートになろうとも、どんなに便利な楯を持っていても、俺達にはそれすらも無視するドチートがあるといいうことを――――なんてな♪


 まあ、人質(神質?)を回収しつつ、さっさと片付けて魔王を倒しに行くとするか。













〈【緊急速報】ルー、帰ってきたぞ(笑)  byヌアザ〉



 空気読めよ、神。


 お前の身内の問題だから!








オグマ「あ!」

ブリギット「パパ!?」

ミディール「あれ、何やってんの!?」

オィングス「無様(笑)」


 (ダグザ)の子供達は目を丸くしていた。

 だけど助けません。



 次回は水曜日更新予定!


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