第387話 ボーナス屋、極地でティータイム♪
――死と冬の大陸――
気が付くと、俺は薄氷の上に立っていた。
辺りを見渡せば、何故か俺のすぐ横で何故か椅子に座って優雅にお茶を飲んでいるウルがいた。
ティータイムセットが乗ったテーブルもすぐ傍にあり、思いっきり寛いでいるのがみてとれる。
イケメンなだけに凄く似合う光景だ。
「――――戻ってきたようですね?」
「人が大変なことになっているのに随分と優雅だな?というか、何処から出したんだ、そのティータイムセット?」
「不思議なポケットの中に常備しています。神々の必需品です」
「ドラ〇もんか!」
有名なネコ型ロボットの未来道具は神様は全員持っているっていうのかよ。
絶対、何処かの誰かが流行らせたんだろ!
「それはそうと、色々とプレゼントを貰ったようですね?」
「ああ、まあな。って、あっちで俺が何してたのか知ってたのか?」
「神ですので――――と言いたいところですが、此処へ来る前に冥府に居る彼女達を問い詰めて吐かせました。まさか、君がそこに転がっている方々の被害者だったとは驚きです。運命とは苛酷ですね♪」
ウルは視線を俺の足元に転がっている“包み”に向けながら笑みを零し、中身の残っていたお茶に口を付けた。
“包み”――――大きな風呂敷の中身は勿論お土産のイザナギとイザナミの神夫婦だ。
どうして日本でお馴染みの風呂敷で包んでいるのかについてはツッコまないでほしい。
きっと常人には理解できない女神様達の感性だから。
「今頃、高天原は大変でしょうね、助けませんけど」
「アマテラス様には頑張ってもらうしかないな!」
「ツクヨミ殿にも、ですね。それで、体の調子は如何ですか?」
「ん……!」
言われて初めて俺は体に全く違和感が無い事に気付き、自分が人間を辞めたという実感が今一つない事に若干の戸惑いを覚えた。
けど、体型や見た目に変化が無い事には安堵した。
だって、人間として生まれて16年間人間として生きてきた俺としてはいきなり人間とはかけ離れた姿に生まれ変わるのにはそれなりに抵抗感がある。
雲を突き抜けるほどの巨人になった日には――目立ち過ぎて世界中の人々の注目を常時浴び続けるから――羞恥心で死にかけてたかもしれない。
他には全裸系も嫌だ!
「あまり実感が沸かない、という顔をしてますね。それは貴方の「人間卒業は嫌だ」という本能が無意識の内に力の多くを抑えてくれているせいでしょう。体感だけで実感するのはまだ難しいでしょうから、まずはステータスで確認したらどうですか?」
「ああ、そうしてみる!《ステータス》!」
【名前】『ボーナス屋』『奇跡の神子』大羽 士郎
【年齢】16 【種族】超神族(バグキャラ)
【職業】現人神(Lv1) 天地無双(Lv1) 勇者王-神-(Lv1) 【クラス】人間を辞めし者
【属性】無(全属性)
【魔力】20,000,000/20,000,000
【状態】正常(完全健康体)
【能力】超神魔法(Lv5) 森羅万象術(Lv5) 無双武術(Lv5) 神闘気術(Lv5) 超神術(Lv5) 天上天下絶対革命 無限吸収 万象昇華 智慧と愛の守護女神 真全能眼 万物創造 神罰太陽 眷属生誕 神域創造 超神の双翼 終焉之王 理不尽覇王 豊饒之御力 魂魄支配 天焔の守護神 勇者の敵は皆の敵 光の超神剣 貫く超神光 真・戴冠石 黒龍王鞭ヴリトラ 超神雷霆 光煌く神弾 真・金剛杵 超神弓イチイバル
【加護・補正】物理攻撃無効化 魔法攻撃無効化 精神攻撃無効化 全属性無効化 全状態異常無効化 全能力異常無効化 絶倫 万能遺伝子 常時万全体 不老不死 極限思考 完全詠唱破棄 超直感 根源の因子 限界皆無 神ハンター 魔王ハンター 竜滅者 龍王殺し 魔獣殲滅者 無双勇者 悪魔殲滅者 呪詛殲滅者 大量虐殺者 浄化大神 最強生産者 黄泉返り 救世主 理不尽 超克者 昇神者 破壊者 元・人間 現人神 大魔王(剣聖)の弟子 試練に打ち克った者 神々の契約[ハニヤス、アヌ、ヌアザ、ダヌ、ルー、オモイカネ、弁財天、カヤノヒメ、ヘカテー、ペルセポネ、ヘル、イシス、スカアハ、イザナミ、コッコくん、インティ、サルタヒコ、アメノウズメ、クロウ・クルワッハ、ゼウス、ウル、オシリス、ルギエヴィート、クー・フーリン、ヘスティア、デメテル、アルテミス] 創造神タカミムスビの仮契約 龍王ヴリトラの契約 龍王凌龍の契約 スライム大帝スラ太郎の契約 神之言ノ葉 職業補正 職業レベル補正
【BP】10000
一体、何処からツッコめば良いか分からない。
二つ名が増えてるし種族がアレだし、魔力は遂に1000万の大台に突入しているし、能力も沢山進化しているし増えてるし、補正もとんでもないことになっているし、エトセトラ。
この《絶倫》とか要らないんだけど!
「――――『超神族』って!?」
「『神族』を超えた何か、という意味のようですね。納得です」
1人優雅に納得するウル様。
「納得できないのは俺だけ?」
「精神的にはデメリットだらけかもしれませんが、現実的にはメリットも多いですね。私のような『神族』とは異なり、契約者が居なくても現世でやりたい放題できるようです。勿論、良識の範囲内での話ですが」
「それは普通に暮らす分には問題無いってことか」
「そうですね。普通に生活するだけならば、全く問題はありません」
「《不老不死》ってあるんだけど?」
「仮にも神を超えた存在なので、気合で理想の年齢で老化を止めることは出来るでしょう。これからは永遠に近い付き合いになりそうです」
「はあ……これからは俺も神殺しの連中に狙われるのか」
「超次元レベルで無用な心配ですね」
〈それ、超同感! by神一同〉
「どういう意味だよ!」
神々の間では俺はどんな怪物扱いになっているんだ!
というか、まだ外野は居たのか!
「――――ところで、貴方は先程から何か重要な事を忘れていませんか?」
「重要な……あ!氷漬けの龍族!!」
色々あってすっかり忘れていた重要事項!
俺はそもそも人間を卒業する為に此の大陸に来たんじゃない。
龍王の依頼で消息不明になった龍族2名を救助しに来たんだった!
ヤバい!
もしかしなくても、《盟主》の分身の襲撃の際に魔王と一緒に消えたんじゃ……というか魔王もどうなったんだ!?
あと他にも忘れている事が……
「どうし―――――は!何だか、何もかも都合よく解決している予感がする!」
「してますよ?」
慌てかけた俺だったが、唐突に頭の中に問題は無い様な直感が湧いてきた。
これが超直感か!
そしてこの直感をウルは肯定した。
「あちらをご覧下さい」
「――――あ!」
ウルが指差した方を見ると、そこには球体状の結界に護られながら宙に浮かんでいる2体の龍の姿があった。
どちらも気を失っているが全身の何処にも傷跡は残っておらず、流れている魔力も正常なものだった。
「貴方達を助ける際に一緒に安全圏まで転送しておきました。彼らを捕えていた氷も貴方が彼女を無力化した時点で融けだしていたので全員無事に助けることができました。あとは貴方の意識が“向こう”に行っている間に治療を施しておきましたので命の心配はありません。これで依頼は無事に達成ですね」
「ウル様ファインプレー!!」
本日のMVPは文句無しでウル様で決まりだ!
「いえ、契約可能な相手が居なければ此処まで現世に鑑賞することは出来ませんでした。基本、私達は現世で人助けさえもする事が出来ませんから」
世界に関係なく神々の制約は厳しいのですと、ウルは苦笑を交えながら遠慮がちに告げた。
直接助けたのは自分ではあるが、手柄は契約者である俺であると言っているのだ。
「――――それと、他にも何か忘れている事は?」
「え!他にもあったっけ?」
「……」
ウルは顔を引き攣らせて固まった。
え、俺、今何か言った?
「―――――ヴリトラ」
「あ!」
俺は刮目した。
そういえば、一緒にこの大陸に来たはずのヴリトラの姿が全然見えない。
一体、何時から居なくなったんだ?
「ヴリトラは何処!?」
「……海底で冬眠していました。今は貴方の国に転送してあるので起きている筈です」
「冬眠……」
寒いのが苦手だからって冬眠するとは……。
あいつ、なんだか出会った時から龍とは別の生物に変わり始めている気がする。
「分かっているとは思いますが、忘れていた事を後で謝罪する事をお勧めしておきます。流石に彼女が哀れです」
「うん、後でお酒でも持っていくよ」
「彼女はザルを通り越してワクに近いですよ?」
「あ~。強めの焼酎とか強めの酒を買っていくか」
瓶じゃなくて樽単位でになりそうだけどな。
「しかし、これからは貴方達は大変ですね」
「ん?」
ウルに淹れてもらった紅茶を飲みながら、俺は今後について話し合っていた。
今回の一件、魔王の方は存在自体があまり知られていないので何の問題は無いが、後から出てきた《盟主》の分身についてはこのままでは終わらないだろうというウルは言った。
なにせ極地の半分を消滅させただけじゃなく、未遂とはいえ俺達が今居るこの惑星そのものを消滅させようとしたのだ。
この世界ルーヴェルト側に居る神々も今まで通り静観していられなくのはまず間違いないだろうと、ウルは真剣な面持ちで俺に話していく。
「――――ダーナ神族やオリンポス十二神は当然として、天空大陸で隠居している龍神やワクワク大陸に眠っている善神も確実に動き出すでしょうね。久方ぶりに神界は荒れそうですね」
「世界滅亡のカウントダウンが始まったからか?」
「カウントダウンというよりフラグですね。皆で力を合わせて圧し折ろうと頑張る事になりそうです。けど、その前に貴方は今回の依頼人に彼らを送り届けなければなりませんよ?」
「あ、ああ、そうだな」
結界の中で眠っている2人の龍族を一瞥しながら俺は肯いた。
世界の命運よりも、今はしっかりと仕事をしなさいって事ね。
「そして彼女の事も」
「……」
ウルは横を一瞥しながら、何処か他人事のように呟いた。
俺達が座って挟んでいるテーブルのすぐ横、そこにはウルの結界に護られながら気を失っている魔王を見る。
引き籠り魔王は色々と立て続けにショッキングな事があったせいか、自己防衛の為に完全に気を失っている。
俺は再びウルに視線を向けるが、彼の表情から読み取れるのは拒否権の無い1つの決定事項だった。
「俺が……面倒を見ないといけないのか」
「幸い彼女がこの世界で出した死人はゼロです。やったことも自己防衛以外には魔法の独自研究に魔法具の開発、貴方の国に居る技術畑の方々の中でなら彼女も真っ当に生きていけるかもしれません。もっとも、変われるかどうかは本人次第ですが」
「……」
魔王城の鬼畜過ぎる罠の数々、そして俺とヴリトラを阻んだ大規模結界、正確に難はあるものの、確かにこの魔王の能力は有益な面も多い。
と言っても今は能力ゼロだけど。
「彼女が望むのなら、貴方の力で種族を変更させる事も可能でしょう。ただし、命を操作するという行為の意味を十分に理解した上でやる事です。強大過ぎる貴方の力は、容易に人々の人生を変えてしまうのですから」
「ああ、分かっている」
チートも度が過ぎれば禍になると言いたいんだろう。
今までだって、俺のチートが原因で人生が大きく変わった人達は沢山いる。
婚約者ズとか、ロビンくんとか、ヒューゴ達とかな。
「それと、女性を連れての帰宅は――――地獄でしょうね」
「……分かってるよ!」
「御愁傷様です。《絶倫》が早速役立ちそうですね」
「余計なお世話だ!」
神の憐憫の眼差しに俺は泣きそうになりながら叫んだ。
多分、向こうはソフィアちゃん経由で一部始終を把握している筈だ。
それこそ、「また……」と呆れ半分怒り半分な顔をしながら。
「さて、私もそろそろ神界に戻らないといけませんね。好奇心旺盛な方々に詰め寄られるでしょうが、私のような存在が現世に長期滞在するのは善くありませんから」
「そうか。そっちも大変みたいだな」
「ええ。此処へ来る前も、一部の方々から「御馳走さまでした」と言われまして……」
「……」
意味については効かない。
同じ男としての良心が傷付くから。
「……これで送り込まれた『魔王』も実質あと2名ですね。ワクワク大陸と、そしてダーナ大陸」
「きっとテンプレ魔王か色物魔王のどれかだろうけどな」
「そうですね。ただ、気を付けてください。残る『魔王』は今までとは一線を画す者であると考えられますので。聞いた話ではワクワク大陸の方にはテュポーンに並ぶ怪物、『邪の龍王』が送り込まれているそうなので。そしてダーナ大陸の『魔王』もまた、少々手強い『神』が強制的に契約させられているらしいと、知り合いの神託の神が仰っていました」
「つまり、残り2人は色物じゃなくてテンプレ系か」
「そのようですね。少なくとも私の探知を防ぐ程度のチートを保有しているのは間違いないでしょう。そして行き当たりばったりな行動はしない冷静な判断力と知性も兼ね揃えている筈です。攻める場合は万全な備えをした上での方が賢明です。貴方は未だ、今の自分に慣れていないので」
「分かった。慢心はしないよ」
「……それでは、良い夜を」
ウルはパチンと指を弾くと、ティータイムセットと一緒に俺の目の前から消え去った。
残ったのは俺と、ウルが消えた後でも結界で護られている龍族と魔王の3人だけだった。
「取り敢えず、ステータスの検証は後にしてまずは龍仙国だな!」
俺は3人と一緒に龍仙国へと転移した。
そして保護した龍族の引き渡しと依頼達成の手続きを含めた手続きをした後、俺は魔王を連れてオオバ王国の離宮へと帰宅した。
そこに地獄があったのは語るまでも無い。
〈神な勇者は『夜の帝王』になった! byスサノオ〉
ウル「穴の空いた大陸も直しておきましたよ」
士郎「GJ♪」




