第2話 ボーナス屋、初戦闘する
「とにかく、アンナちゃんは中で隠れていろ!」
「で、でも・・・・・!」
「大丈夫だ、一応勇者みたいだからな!」
(仮)が付いてたけどな。
アンナちゃんを教会の中に隠し、俺は兵隊達がいる村の中へと出ていった。
「貴様!怪しい奴、何者だ!?」
兵隊達の前に立ちはだかると、兵達はあからさまに警戒して剣や槍を俺に向けてきた。
まあ、中世ヨーロッパっぽい異世界に現代日本人は嫌でも目立つよな?
「え~~と、名乗る程のものじゃないけど、とにかくお前ら近所迷惑だから国に帰ってくれない?この村の人、すっごく迷惑してるし。正直、俺も迷惑してるんだよな?」
「何だと!!」
兵、と言うより甲冑1は俺に剣を突き付けながら叫ぶ。
いきなりだったから、決め台詞とか思い浮かばなかったんだよな~~~。
すると、リーダーらしい馬に乗った甲冑騎士が甲冑1を制して黙らせ、俺の方を向く。
「・・・・面妖な格好をしているが、帝国の者か?」
「違います!」
「なら、帝国の味方をしている?何か取引でもしたのか?」
「いや~~~、助けてと言われたからとしか言えないな。それに、どう見ても苦しんでいるのはこの村の方みたいだし、そんな所で戦争されても俺だって迷惑なんだよな!」
「・・・・・・・・・」
俺の話に理解が追い付かないのかリーダーさんは黙り込んだ。
というか、今の声女だったよな?まさか王国の王女だとか言わないよな?
「ステラ様!第2王女であるあなたが、あんな怪しい男の言葉を聞く必要はありません!!」
「え、王女なの?それってバラシテいいのか?」
「ああ――――――!!」
「遅いって!」
甲冑1は慌てて口(?)に手を当てるがもう遅いって。
てか、いきなり甲冑着たお姫様と会うって、展開速すぎだろ!?
「ステラ様、奴が何もかは分かりませんが、姫様の事を知られた以上は村人ともども捕える必要があると思います。今ここで姫様が出陣した事を知られるのはマズイかと・・・・・・!」
「ふむ、確かに貴殿の言うとおりだな。」
甲冑2の進言に姫騎士は納得している様子、なるほど、正体は隠しての進軍か。何らかの作戦中と言う訳だな。
姫騎士ステラちゃんが合図を送ると、兵隊達は村中に散らばって村人たちの捕縛に動いた。
「おい、やめろって!」
「黙れ!貴様も大人しく捕まれ!」
うわ!甲冑1がさっきの失言のミスをどうにかしようと必死になってるぜ!
後ろ以外、完全に包囲されちゃってるし・・・・・
取り敢えず、ステラちゃんも含めて強そうな奴のステータスを調べてみるか!
【名前】『戦姫』ステラ=W=フィンジアス
【年齢】16 【種族】人間
【職業】王女 【クラス】暴れん坊王女
【属性】メイン:光 風 サブ:水 火 雷
【魔力】8,500/8,500
【状態】正常(ちょっと我慢)
【能力】剣術(Lv3) 槍術(Lv3) 体術(Lv2) 結晶の宝剣
【加護・補正】物理耐性(Lv2) 光属性耐性(Lv2) 銀の女神アリアンロッドの加護
【名前】ブレット=バスカヴィル
【年齢】23 【種族】人間
【職業】騎士 【クラス】伯爵のバカ息子
【属性】メイン:火 サブ:土 風
【魔力】1,100/1,100
【状態】正常
【能力】剣術(Lv1)
【加護・補正】――
【名前】フィリス=L=ハリソン
【年齢】19 【種族】人間
【職業】騎士 【クラス】魔法騎士
【属性】メイン:水 サブ:風 雷 空 闇
【魔力】6,900/6,900
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv3) 防御魔法(Lv1) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv4) 剣術(Lv2) 体術(Lv1)
【加護・補正】魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv2) 水属性耐性(Lv2) 火属性耐性(Lv3) 海神リルの加護
う~~ん、ツッコんだ方がいいのか?
上から順にステラちゃん、甲冑1、2のじゅんだが、甲冑1は見た目通りの雑魚っぽいな。「伯爵のバカ息子」ってハッキリ出てるし、それに対して甲冑2は優秀だな。多分、こいつはステラちゃんの側近か何か何だろうな。「魔法騎士」って職業じゃないのか?
しかし、ステラちゃんの「暴れん坊王女」って、どんなお姫様なんだ・・・・?それに「ちょっと我慢」って?
「貴様!何をニヤついている!?」
「別にニヤついてないぜ、『伯爵のバカ息子』くん?」
「き、貴様!!何でその名を・・・・!?」
「ほう、ブレットの事を知っていると言う事は、王国の情報に少しは精通しているようだな?」
「いや、ちょっと知ってるだけだぜ、『暴れん坊王女』さん?」
「「「――――――――――――!?」」」
あ、みんな唖然としてるな。甲冑の奥が透けて見えるみたいに分かるぜ!
あ、何人か視線を逸らしている。言っちゃマズかったか?
「フ、フフフ・・・・・貴様を消す理由ができたみたいだな・・・・?」
「あ、もしかして気にしてた?」
「―――――――ステラ様、ご指示を!」
「うむ、奴を捕えろ!!」
怒りの籠った声でステラちゃんは兵達に指示をだし、同時に自分も馬に乗って俺に襲い掛かってきた。
うわ!バックに炎みたいのが見えるな・・・・・!
ステラちゃん達は武器に魔力を流して襲い掛かってくる。なるほど、あれがこの世界の基本的な戦闘スタイルか?甲冑2の方は魔法を唱え始めているな。
とりあえず、魔力は俺の方が圧倒的みたいだし、適当に返り討ちにするか♪
「うおぉぉぉぉぉ!覚悟しろ!!」
「《岩の壁》!」
「「「グハッ!!??」」」
俺の周りに高さ2mほどの硬い岩石の壁が出現し、真っ向から突っ込んできた甲冑1達は壁に激突して即リタイア!
「ほう、魔法を使えるのか?しかも、始めて見る体系だな?」
「うおっ!」
今度は壁を馬で跳び越えるステラちゃんが俺に襲い掛かってきた。
「私の風の剣をくらえ!!」
風を纏った剣が俺に襲い掛かるが、俺はもっとすごいのを知っているので怯まないぜ!
「《加重》!あと《突風》!」
「何っ―――――ぐはっ!?」
俺は相手の体重を一時的に増加させる魔法を放ち、横綱位の重さになったステラちゃんはバランスを崩して馬から地面に落下し、馬は風で壁の向こうへ飛んで行った。
うん、どれも初級の魔法だけど魔力が多いと凄いな!
「――――ステラ様!?」
甲冑2の声と共に、壁の向こうから水の矢が飛んできた。
うわ、タイミング悪いな。ステラちゃんも巻き添えだぞ?
「えっと、水になれ!」
俺は《水術》で水属性の魔法を只の水に戻した。
《水術》は《属性術》の1つで、魔法系スキルだけど呪文とか魔法名の詠唱を必要としない、念じるだけで各属性を操れるのだ!
あ、ちょっと濡れちゃった♪
「うう・・・・・・これ程とは!」
「う~ん、取り敢えずはみんな動けないようにした方がいいよな?」
「貴様、何をする気だ?」
「え、お前らの拘束だぜ?え~と、まずは対象を捕捉して―――――――《泥沼の檻》!」
俺は《捕捉魔法》(補助魔法の1つ)で村に散らばった兵達の位置を捉えると、地面を泥沼にして相手の動きを封じる《泥沼の檻》を発動させた。
元々、これは『知り合いのバカ』が何かしたときに教えてもらった魔法なんだけど、いいよな?
「か、体が沈む・・・・・・!?」
「「「わぁぁぁぁぁぁ!!」」」
横綱級の体重で動けないステラちゃんは地面に沈んで行き、壁の向こう側からは兵達の悲鳴が聞こえる。
うん、取り敢えずこんなもんだろ!
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その後、俺は(属性術の1つである)《土術》を使って地面に埋まったままのステラちゃん達を1ヶ所に移動させた。
どうやら、家とかは壊れたけど死者は出なかったみたいだ。
「凄いです、王国兵をたった1人で倒すなんてさすが勇者様です!!」
「ありがとうございます!!」
「お兄ちゃんカッコいい!!」
俺はアンナちゃんを始め、村人達から感謝されている。
うん、結構いい気分だな!
まあ、それはそうと半分生き埋めの人達どうしよう?
「アンナちゃん、この人達どうするんだ?ここで皆殺しにしないとダメ?」
俺が冗談まじりに言うと、王国兵達は慌てだす。
この状態じゃ、抵抗できずにやられ放題だからな。
「いえ、私もそこまでは考えてなくて・・・・そうだ!村長さん、どうすればいいんですか?」
アンナちゃんは杖を突いて歩くお爺さんに相談する。
うわ、何か棺桶に足を突っ込んでそうな爺さんだな?
「そうだのう~~、普通は帝国兵に引き渡して褒賞を得るんじゃが、今は戦争でここに兵が来るのは村が戦場になる時ぐらいじゃからの~~~。かといって、ワシらが殺すところは子供達に見せたくないしの~~~~。どうしたものかの~~~~?」
“ワシら”って、自分で殺す気だったのか?怖!!
「待て!村長殿、私の身柄は自由にしてもいい、代わりに兵達を解放してくれないだろうか?」
「ステラちゃん?」
「ステラ様、何を言ってるのですか!?」
「――――この醜態、指揮官である私の責任だ。ここで大事な戦力を私のせいで失う訳にはいかない!どうだろうか、王国の王女の身柄なら兵達全員を見逃すだけの価値があるはずだ!」
「そうじゃの~~~~~?」
村長、さっきから語尾伸ばしているが、ちゃんと考えているのか?
あ、ステラちゃんの言葉で兵達が泣き出してるよ。甲冑1はまだ何か叫んでるけど・・・・こいつはきっとギャグキャラだな。
「あ、その前に・・・・・っと!」
俺はステラちゃんの顔を拝見してみる事にしてみた。
さて、甲冑の中は・・・・・・
「―――――――何を!?」
「うおっ!可愛い!!」
そこに現れたのは、長いブロンドの髪と青い目の超絶美少女だった。
そう言えば、歳は俺とタメだったっけ?
う~~ん、素朴なアンナちゃんもいいけど、こっちも捨てがたい!
「貴様、ステラ様をどうするつもりだ!?」
「いや?可愛いな~~と思っただけだぜ?」
「・・・・勇者様?」
「な、何を言っている・・・・?」
アンナちゃん、何か目が怖くなってるぜ?
ステラちゃんは少し顔が赤くなってるな、普段は言われてないのか?
と、そこに慌てた様子のおばちゃんがやって来た。
「た、大変だよう~!て、帝国兵が来てるよ~~~!!」
「何じゃと!?」
「何!?」
「マジで?展開早くない?」
何だ、この現実味のない急展開は?
いや、もしかしたら王女が来るのを知った帝国側が動いていたのかもしれないな。
けど、このパターンだと帝国の皇子とか出てきそうだな。
俺はアンナちゃんに案内されて村の外れまで移動した。