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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
異界の七大魔王編Ⅵ―死と冬の大陸の章―
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第379話 ボーナス屋、苦戦する

――死と冬の大陸 魔王城前――


『――――肉塊になれ!!』


 外野の迷惑な干渉のせいで一気に戦闘モードに入った『軍神』ルギエヴィートは殺気を周囲にばら撒きながら俺に斬りかかってきた。


 俺は即座に回避し、持っていたブリューナクで横から突き刺す。



『当たるか!』


「うわっ!!」



 ブリューナクは避けられ、更には柄を掴まれて俺の体は持ち上げられ、氷壁に向かって投げ飛ばされてしまう。


 轟音と共に俺の体は氷壁に叩きつけられ、全身に若干の痛み(・・・・・)が走る。


 普通の人間ならこの時点で即死じゃないか、というくらいの衝撃を受けた筈なのに、俺の体には擦り傷がちょっと付いただけだった。



『は!鋼よりも硬い此処の氷に叩きつけられてもその程度か!どこぞの脳筋並に頑丈だな!』



 (ルギエヴィート)、めっちゃ嬉々としてるよ。


 戦い甲斐のある獲物を見つけて血潮が沸騰しちゃっている、そんな顔をしているよ。


 アレは間違いなく戦闘狂、戦う事が好きで好きでたまらないピーな人種(神種?)に違いない。


 俺みたいな人間が長時間付き合ったら危険な奴だ!



〈お前みたいな人間は1人しかいないけどな☆ by某・神〉



 喧しい!そして誰だ!?


 なんてツッコむ暇も無く、敵の第二撃が襲い掛かってきた。



『フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!』


「クッソ~!やったるわ!!」



 俺は後ろの氷壁を蹴り、接近するルギエヴィートに自分から突っ込んで両手の武器を振るい、同時に無詠唱の上級攻撃魔法を10発同時に放つ。


 大空洞の中に幾つもの爆音が反響し、俺の武器から放たれた光は乱反射を起こして肉眼では直視できない光景を作りだしていった。



『良いぞ良いぞ!!あの龍達よりも戦い甲斐があるぞ!!もっと、もっと楽しませろ!!』


「うおおおおおおお!!魔法が全然効かないだと~~~~~!?』


『フハハハハハ!!この剣は魔法を斬り消滅させる力があるからな!!』



 ご親切に自分の武器の特性を教えてくれる敵さん。


 まあ、教えて貰わなくても調べればすぐに分かる事なんだけどな。


 兎も角、ルギエヴィートには魔法が殆ど通じなかった。


 攻撃魔法が斬られるのは当然として、《加重》を始めとする補助魔法も悉く斬られていく。


 何時もの様にステータスをリセットしようにも、俺が加速すると向こうも加速して来るので能力を使う隙が作れなかった。


 更に時間を停止させても……



『俺は停止世界でも戦えるぞ!!』


「マジで!?」



 なんと、時間を止めただけでは奴は止められなかった。


 更に更に、これも何時もの様に全魔力を吸収しようとしたら、奴は瞬時に持っていた剣を腰にぶら下げていた別の剣と入れ替えてそれを無効化させた。



『こっちの剣は相手の体力と魔力、精神力を強制吸収させる!!その手は俺には効かん!!』



 第2の剣もチートだった。


 同じ吸収の力同士反発し合い、結果的には相殺された。


 奴には吸収系の力も効かなかった。



「なら――――ッ!」



 次は《破壊波動》だ。


 下手をしたら今居る大空洞も破壊しちゃいそうだが、その時はその時だ。



『この剣は創造の力を宿す!破壊の力などバターも同然だ!!』


「マジか!」


『そしてこっちは破壊の力を持つ剣だ!!』



 《破壊波動》を相殺する創造の力を持った第3の剣、そして破壊の力を持つ第4の剣がクラウ・ソラスの一撃を押し返そうとする。


 何度も進化を繰り返し、その度に強化されている筈の俺のクラウ・ソラスが押されているという事実に俺は驚きを隠せなかった。


 コイツの武器、もしかしなくても魔王か誰かに魔改造されているのか!



〈ああ、されているな。 byタケミカヅチ〉


〈強者を斬るほど強くなるようになってるな。 byフツヌシ〉


〈高位の龍族を斬ったせいで進化したようだな。 by摩利支天〉



 観戦中の軍神達は武器に興味津々のようだ。


 成程、すぐそこで氷漬けにされている龍族2名を倒したせいで、魔改造された奴の剣は更にパワーアップしたという訳か。


 けど、それだけで俺のクラウ・ソラスやブリューナクと同等以上になるものなのか?


 自分で言うのもなんだけど、俺の武器はどれもドチート過ぎて1つだけでも世界を滅ぼせるんじゃないかと思うんだよな。



「―――――で!残る4本も只の剣じゃないんだろ!神剣なんだから!」


『ハハハハハ!!無論、残りの剣にも各々異なる力が宿ってある!だが、それを素直に教えるほど俺は甘くは無い!どこぞの脳筋と違ってな!』


「チ!」


『が、1つだけ教えてやろう!俺の剣は全て《破壊不可能》だ!!』



 剣の刃が俺の頬を掠めた。


 軽く切っただけなので血は少ししか流れなかったが、何時もなら瞬時に治る筈なのに傷口は数秒経っても塞がらなかった。


 これは破壊の剣の効果の1つといたところか。



『楽しい、楽しいな!!』


「俺は全然楽しくない!!」


『フハハハハハハハ!!そう言っていられるのも今の内だ!!すぐに俺の「闘争」の力がお前の精神を力ずくで浸蝕し、内に秘めた闘争本能を解放させて戦いを楽しめるようにしてくれる!!さあ、誰の邪魔も入ら無いこの場所で、2人で楽しもうじゃないか!!』


「嫌、だよ!!」



 100人の分身を生み出し一斉に攻撃する。


 それぞれ違う攻撃を出せば対応は出来ても隙は出来るだろうと思ったのだ。


 だが、その考えは甘かった。



『ハハハハハハ!!多対一か!?これも面白い!!踊れ、我が分身達!!』



 8本の剣が――――否、奴の握っている1本以外の7本の剣が宙に浮かんだと思ったら、各々に意志が宿っているかのように勝手に動き出して俺の攻撃を切り裂いていった。


 なんだか血に飢えた獣のように見えるのは気のせいじゃないだろう。


 奴の武器、あの8本の剣は魔剣や呪いの剣みたいに自我が宿っているに違いない。



〈……宿ってるな。 byタケミカヅチ〉


〈あの剣を打ったのは何処のバカだ? byヘファイストス〉


〈何と禍々しい意志でしょう。 byブリュンヒルデ〉


〈どこぞの『剣聖』なら足で踏みつけて下僕にしそうだけどな。 byクー・フーリン〉



 俺は分身達も含めて健闘した。


 だが、時間が経過するとともに奴の戦闘能力が上昇していくから中々決定打が打てなかった。


 ソフィアちゃんが居ないとこうも苦戦するのか、俺は!


 これでも大魔王の地獄を乗り切ったのに!



〈あれ、地獄と言っても実は甘口だから! byガネーシャ〉



 ……。


 俺は諦めないぞ!


 今ある能力だけで奴を――――ルギエヴィートを倒す!


 宙を蹴り、氷壁を天井を蹴りながら俺は力をふるっていった。



『楽しい!楽しいぞ!!これ程の快感はあの男以来、いや、それ以上だ!!』



 ルギエヴィートからとんでもない量の闘気が噴出した。


 火山噴火の如く溢れ出す奴の闘気は周囲の景色を真っ赤に染め上げ、狂気の世界を作り上げていった。


 というか、俺の気のせいじゃなければ大空洞の体積が広がっているような気がするんですけど!?



〈空間拡張……いや、創造か。 byオモイカネ〉



 先生!


 何で現役教師で俺の担任のあんたまで高みの見物をしているんですか!!


 それは兎も角、奴は大空洞の広さを自由に変えられるようだな。


 きっと深い意味は無く、戦いを楽しむ為にやっているんだろう。



『さあ!もっと!もっとだ!!』


「ゲゲ!!」



 ルギエヴィートが大増殖した!


 それだけじゃない、持っていた剣の1本の形状がクラウ・ソラスと瓜二つになった。



「模倣……!!」


『ハハハハハハ!!そうだ!!』



 第5の剣の力は模倣、相手の武器屋能力を模倣(コピー)する力のようだ。


 チートのオンパレードだな!?



『フハハハハハハ!!中々良い剣だな!オラッ!!』


「オオオオオオオオオ!!」



 ルギエヴィート×???から一斉に極太ビームが発射される。


 俺は取り敢えずクラウ・ソラス(本物)で吸収しながらブリューナクで迎撃していくが、1体だけでも鬱陶しいルギエヴィートは増殖したらそれに比例して更に鬱陶しくなり中々片付けることが出来ない。


 その後、更に2本の剣の能力が判明し、第6の剣は対象の力を封じる封印の力、第7の剣は回避不可能な絶対必中の力を持っていた。


 正直言って鬱陶しいことこの上なかったが、俺は「闘争」の力に汚染される事無く戦い続け、奴の戦闘技術を急速に吸収していく事で、戦闘開始から10分が経つ頃には勝負は拮抗し、少なくとも一時も追い詰められる事は無くなった。


 それに対し、ルギエヴィートのテンションは更に上昇したが。



『最高だあああああああああああああああああ!!戦いの中で成長し、俺の技を盗んでいく!!貴様こそ、俺が求め続けていた好敵手だああああああああああ!!』


「誰が好敵手だ!!」



 ちなみに、鬱陶し過ぎるので《神滅雷霆》をぶっ放したが奴は死ななかった。


 大火傷や大出血は負わせたが、奴は痛みにすら快感を覚えるらしく、全身黒焦げになっても止まることなく襲い掛かってきた。


 そして、そんな(ルギエヴィート)のステータスは以下の通りだ。



【名前】『西の戦闘狂』ルギエヴィート

【年齢】――  【種族】神

【職業】軍神  【クラス】戦闘狂という名の隠れドM

【属性】無(全属性)

【魔力】6,734,000/8,999,999

【状態】大興奮 超快感 強制強化(ドーピング)

【能力】軍神之大魔法(Lv5) 軍神之御力(Lv5) 神術(LV4) 軍神之武術(Lv5) 軍神之闘気術(Lv5) 戦眼 戦場の高揚(バトル・スピリット) 戦乱招来 無法暴君(ルール・ブレイカー) 眷属創造 絶対粉砕(アブソリュート・ブレイク) 勝者の戦利品(プライズ・ギビング) 戦の必定(ルール・オブ・ウォー) 戦神八刃(ななしのけん) 不破契約

【加護・補正】物理耐性(Lv5) 魔法耐性(Lv4) 精神耐性(Lv5) 全属性耐性(Lv5) 全状態異常無効化 全能力異常無効化 完全詠唱破棄 超速再生 超回復 悠久の記憶 不老不死 不撓不屈 強制強化 神の威光 戦闘狂 戦場無双 戦場の覇者 常識の破壊者 軍神の執念 剣身一体 神ハンター 天魔ハンター 悪魔滅札者 魔王ハンター 龍ハンター 討滅者 魔王の護衛 軍神 無限神ウロボロスの支配

【BP】5390



 軍神なだけあって戦闘特化なステータスだ。


 戦いに集中しているので各能力の詳細までは視てないけど、大体は名前だけで解るものばかりだ。


 《戦神八刃》というのが奴が使っている神剣の暫定名称なのだろう。


 せめて、あの剣さえどうにかできれば一気に勝負を付けられるんだけど、《真・神代之真眼(レジェンド・アイ)》は能力は奪えても武器は奪えないし、それ以前に奴の封印の剣で“眼”は現在封印されている。


 他にも《幻想召喚術》や《神域創造》も封印されていて、これ以上は一撃も奴の攻撃を受ける訳にはいかなくなっていた。



『―――――血だ!!貴様の血をもっと見せろ!!強者の血を俺に味あわせろ!!』


「断る!!」


『これも避けるか!!』



 奴の眼は完全にイッていた。


 最早話し合いで決着を付けられる状態じゃなくなり、どちらかが倒れるまでこの戦いは止まりそうになかった。


 どうする!?


 このままだと延々と戦い続けることになる。


 ソフィアちゃんが居ない今、俺が自分で勝利の方程式を編み出すしかない。


 まずは考えるんだ。


 魔法は駄目、吸収も駄目、リセットも隙が無いから駄目だ。


 魔法は兎も角、他の能力は最低限の時間と動作が必要である以上、特に俺の一番の能力(チート)である《真・応報之絶対真理(ネオ・トゥルース・リウォード)》は1秒も休ませてくれない奴の前では殆ど使えそうになかった。


 せめて、無動作(ノーモーション)で使えれば……そう、触れたり剣で斬っただけで発動するような………………あ!



「――――ッ!」



 俺は思わず両目を見開いた。


 そうだ、何時も通りの手順でやる必要なんてなかったんだ。


 いや待て、それならあの手も使えるんじゃ……!



『ハハハハハハ!!何か良い手でも思い付いたようだな?なら、それを俺に見せてみろ!!今すぐに!!』



 俺の表情を読んだのか、ルギエヴィートは俺が妙案を思い付いた事を鋭く見抜いた。


 どんな手でも真っ向から相手してやるって態度に俺は思わず苦笑しつつ、先程思い付いたばかりの名案をすぐさま実行した。


 成功するかどうかは分からないが、今はこれに賭ける!



「―――――行くぞ!!」


『ああ!!来い!!』



 ルギエヴィートの周りに7本の剣が円を描くように並び、奴の手には破壊の剣が握られている。


 真っ向から受けて立つつもりのようだ。


 それに対し、俺は応じると言わんばかりに笑みを浮かべ、両手に持っていた剣と槍に力を注いで振るった。



「――――防げるものなら防いでみろ!!ブリューナク!!クラウ・ソラス!!」


『フハハハハハハハハハハハハ!!どんな攻撃も斬り裂いてくれる!!』



 クラウ・ソラスから白い斬撃が飛び、ブリューナクからは5本の光線が放たれ、それらは一直線に標的であるルギエヴィートへと向かって行った。


 そして予想通り、真っ向から俺の攻撃を打ち破ろうとしている奴は自慢の8本の剣を巧みに操り、紅い闘気を纏わせながら振るった。


 今まで通りなら吸収の剣で俺の攻撃は魔力ごと吸収されるか、直接攻撃を斬ったり破壊したりして打ち破られる―――――筈だった。




―――――バキンッ!!




『――――――――あ?』


 その光景に、ルギエヴィートは目を丸くした。


 それは当然の事だった。


 奴が俺の攻撃に対して剣を振るった直後、奴の剣は―――――《破壊不可能》な筈の7本の剣(・・・・)は粉々に砕けたのだから。



「―――――成功♪」







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