第377話 ボーナス屋、謁見する
お久しぶりです。
死と冬の大陸編開始です!
――ガンドウ大陸 大日本共和国――
ガンドウ大陸の魔王を倒した翌日、俺は再度ガンドウ大陸に来ていた。
ただし、来たのは大和や常盤ノ国ではなく、近年GDPが絶賛上昇中の『大日本共和国』、その首都である『名古屋』。
何で俺が日本で住んでいる県の県庁所在地の名前が首都名になったかに関しては、建国した人が異世界トリップした愛知県民が、此処が異世界であるということを利用して堂々と名付けたのが原因らしく、共和国内には明らかにここ100年以内にトリップした異世界人が名付けたと思われる地名が大量に乱立していた。
首都の隣に大阪があったり、沿岸では長州と薩摩が土佐を挟んで並んでいたりと、何の冗談かと思いたくなる地名があり、しかもこれらは都道府県名で、更に詳しく紐解くと秀吉、西郷、松陰、竜馬といった、明らかに日本の偉人達の名前と思われる市町村名が乱立している。
日本人、好き勝手し過ぎだろ!
「士郎も他人のことを言えないけどね~♪」
「……唯花、一体幾つケーキを食べるんだ?」
「一杯♡」
俺と向かい合う形で席に座っている唯花は、本日4個目のケーキを幸せそうに食べていた。
他の席ではアンナちゃん達が同じ様に幸せ中をしながら甘味を楽しんでおり、俺は壮龍にミルクを飲ませながらその光景を見ていた。
此処は名古屋(異世界)の繁華街にある若者に大人気なケーキ屋のカフェテラス、俺は此処で家族サービスという名の刑罰を科せられていた。
「士郎様、このみるふぃーゆというお菓子美味しいです!」
「こうして甘味を楽しむのは何時以来でしょうか。士郎殿……いえ、陛下の御厚意には感謝します」
昨日我が家にやってきた光葉ちゃんと薺さんも一緒だ。
2人は普段着らしいものを持ち合わせていという事情から、主に唯花が張り切って2人の服装をデザインして、それを元に俺のチートで(下着以外の)衣服一式を揃えて着ている。
そして何故かアンナちゃん達の服も作る事となり、現在の彼女達は現代日本風の街の中でも違和感のない現代ファッションを着用中だ。
巫女服も良いが、こういう服も似合うと思うのは俺だけじゃないだろう。
「それにしても、ついに士郎の嫁が10人の大台に達したわね。あのクエストもようやく達成>」
「いや、まだ達成になっていない。達成条件が「告白」だからな」
「しちゃえば?」
「昨日会ったばかりなのにできるか!というか、昨日、あんなに怒っていたのにそのセリフ……」
「女心は変わり易いものなのよ♪私達、もう仲良しだから」
「早いな!」
婚約者ズはすっかり2人と打ち解けているらしい。
男の俺にとって、女性は永遠に未知の生物なのかもしれない。
「それにしても、この国って本当に日本にそっくりよね。建築様式もだけど、普通に電気が通っているし、日用品も豊富だし、家電製品も(科学と魔法を組み合わせたものが)かなりあって日本と間違えそうになるわね。首都なんか名古屋だし」
「だよな~」
道路には普通に自動車――化石燃料は未使用のエコカー――が走っているし、地面の下には地下鉄が何本も走っている。
現代日本と比較すればやや遅れている部分も目立つが、一見すれば日本と見間違えてしまうほどの技術力だ。
ソフィアちゃんによれば日本からトリップした日本人達が気合を入れて文明を強制レベリングさせたそうだけど、気合入れ過ぎだろ!
なんか東京タワーもどきや通天閣もどきまであるんだけど!
「それで、今日は政府に手紙を届けて終わりなの?」
「まあ、今日はそうなるな。細かい政治のやり取りは連合加盟国の人達がやる事になっているし、取り敢えず今回は他大陸の国家を治める人達にファーストコンタクトをするだけにしておくよ。本気で信じてもらう為にサプライズも込めてな?」
「他の国も?」
「ああ。ガンドウ大陸の中でも影響力のある国には一通りな。常盤ノ国は昨日済ませたから、今日はこの国以外には神国天照と月読国、与羽根国、八咫ノ国、五天連合国、あとは龍仙国と天草ってとこだな」
「大変ね。私達はこっちでショッピングしているから頑張ってね♪」
「おい……」
「主、御武運を」
「ソフィアちゃんまで……」
俺に反論する権限はない。
したら最後、俺に明日は無い、気がするからだ。
「はあ、じゃあ俺は1人で公務を頑張るとしますか!」
婚約者ズが観光を楽しんでいる中、俺(+背中に壮龍)はガンドウ大陸各国の中枢を《転移》で移動しながらダーナ大陸代表としての職務を全うしていった。
最初は今居る大日本共和国の国会議事堂(*外見名古屋城+姫路城)に移動し、定例議会が始まる数秒前に派手な演出をしながら登場し、俺が他大陸からやってきた事をアピールする。
見た目がこっちの人間と大差ないので常盤ノ国の時みたいに正面から行っても門前払いは確実だから、多少は無茶をしたのだ。
「なああああああああああああああああああああああ!!」
「こ、これわあああああああああああああああああ!?」
『フハハハハハハハハハ!!我が名はヴリトラ、“魔”の龍を統べし始まりの龍王――――――』
「初めまして。此処はガンドウ大陸の政府中枢ですか?」
インパクトをプラスする為にヴリトラも一緒に連れたので議員さん達はビックリ仰天、大統領も腰を抜かして絶句した。
俺はあたかも間違って此処に来たように見せながらトコトコと大統領の下へとゆき、預かっていた書状をポンと渡す。
「ダーナ大陸連合の王達からの親書です。既にこれと同じものを常盤ノ国にも渡しています」
「「「―――――!!」」」
隣国が他大陸の使者と接触している事実を敢えて伝えておくことも忘れない。
仲の悪い隣国が莫大な利益を独占するかもしれないと思わせ、早急に対応させる為だ。
どの国も美味しいものは出来る限り独占したがるしな♪
「―――――では失礼します」
『フフフフフ……この地の氏族ともよく話し――――』
「《転移》!」
ヴリトラが余計な事をしない内に俺は次の国へと転移した。
余談だが、この一歩間違えれば犯罪者扱いされない強引な俺の行動はテレビの生中継で全国放送されたこともあり、国民の多くがニブルヘイム大陸に次ぐ新大陸の発覚に大興奮、色々あって告発される事も無く有耶無耶にされていく事となる。
背中におぶっていた壮龍に関してはカメラの死角だった為、誰もツッコまなかった。
ダーナ大陸からの使節団を乗せた船が大陸近海に現れるのはこの約1週間後のことだった。
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――ガンドウ大陸 龍仙国――
最後に訪れた国では沢山の龍族がスタンバイしていました。
この国――――龍仙国は龍族がワンサカと居る龍の為の国家。
当然、国民の大半は龍族であり、生まれ付きハイスペックな彼らは俺達が到着するよりも前に俺達の行動を先読みして待ち構えていた。
『……お待ちしておりました。異界より召喚されし勇者、大羽士郎殿。黄王宮にて、我が王がお待ちしております』
初老のような雰囲気を纏った茶色い龍(東洋系)はヴリトラに乗った俺を見るなり頭を下げて挨拶をした。
その背後にはその他大勢の龍――全員東洋系の胴長龍――達が控えていたが、彼らは大きく分けて3つのグループに分かれていた。
1つは初老の龍と同じように頭を下げる礼儀正しいグループ、2つ目は頭は下げつつ訝しむような視線を向けているグループ、そしてあからさまに敵意を向けている血の気の多そうなグループだ。
それ以外には興味が無さそうな雰囲気の者や、面白そうに見ている者もいた。
「え~と?」
『……あの者等の事はお気になさらずに。宮殿へは私がご案内致します。申し遅れました。私は濃雅と申します。お見知りおきを』
俺は周囲の視線が気になりながらも、今は言われたとおり無視しながら黄王宮へと向かった。
途中、若い龍族が俺に対して不意打ちしようとしたが、他の龍族の皆さんが音も立てずに取り押さえたので気付かないふりを通した。
そして着いたのが山の中腹部に建てられた中国風の宮殿だった。
琥珀に似た不思議な石材が使われている宮殿からは、千年単位の時の流れを感じさせる何かが醸し出されていた。
というか、フルサイズの龍が普通に通れるって広すぎだろ!
『ほう、中々風情のある宮殿だな?』
ヴリトラはこの宮殿が気に入ったようだ。
先頭を歩く濃雅さんは嬉しかったのか「ありがとうございます」と返事をし、表情も若干和らいでい
た。
そして、俺達は宮殿の最奥に到着し、そこには威風堂々を体現した龍が居た。
『よくぞ来た。勇者、そして魔龍の始祖――――』
『………黄龍の直系か』
そこに居た黄色い龍の第一声に、俺を乗せていたヴリトラは目を細めながら呟いた。
互いに初対面のようだが、ヴリトラも目の前の龍の事を知っているようだ。
『我は『黄の龍王』――――凌龍。貴殿らの訪問、龍仙国一同歓迎しよう』
龍王登場!
銀洸やヴリトラ以来に続く、この世界で3人目の龍王で、今までで一番真面そうな奴だ。
これぞ龍王(王道)って感じだな!
『……時折、知っている視線を複数感じると思ったが――――1人はお前だったか』
『如何にも。最後に帝釈天に倒されて以来だった貴殿が“奴ら”によってこの世界に送り込まれた時は少々焦ったが………そして、創造主から解放された事実には驚愕を禁じ得ない。貴殿の契約者――――ダーナの神々に選ばれ、召喚されしこの者は、一体何者だ?』
龍王――――凌龍は目を細めながら俺に視線を向ける。
異物を見るような不快な視線じゃなく、どちらかというと興味深げな、「どうしてこうなった?」とツッコみしたさそうな視線だった。
『――――南方の大陸でも龍神――――ククルカンが首を傾げていた。「アレは本当に人間か?」、とな。貴殿の契約者は神の眼でも看破できぬ存在のようだな。且つ、悪意も持たず、この世界に新たな変化の波を立ててつつ、不和を齎す存在を悉く排除してきたその手腕、実に興味深い。良い契約者を持ったな、ヴリトラよ』
『フフフフ……当然!俺の契約者は数多の苦難の末に出会った、至高の伴侶なのだからな!』
「おい!誰が伴侶だ!」
『フフフフ……照れるな♪』
「照れてない!!」
このロリ龍王(人化時)、何て事を言いやがるんだ!!
誰もお前を伴侶にするとは言っていないぞ!
『――――成程、過去と共に良識と理性も捨てたようだな。同じ龍族として嘆かわしいことだ』
そうです!
ヴリトラの話を真に受けないでください!
『さて、本題に入るとしよう』
『待て。その前に俺とシロウの馴れ初―――――』
『――――此処へは親書を届けに来たということか。良かろう。その親書、確かに受け取った』
『聞けよ!』
ヴリトラを無視し、俺と凌龍は手早く話を進めていった。
俺が今まで出会った龍王と違い、極めて理知的な凌龍は王様らしい雰囲気を微塵も崩さずに俺の話を聞いてゆき、俺から親書を受け取ると、何時の間に書いたのか不明な書状を俺の目の前に出現させて「彼の大陸の王達に渡しておいてくれ」と言って渡した。
どうやらずっと俺達の行動を監視していたらしく、予め必要な書類などを用意してくれたようだ。
ソフィアちゃんが一緒だったら事前に気付けただろうけど気にするだけ無駄だな。
『――――さて、此処からは少々私事も含めた話になるが、宜しいか?』
一通りの話が終わると、凌龍は少し畏まったような顔で訊ねてきた。
どうやら相談事があるらしい。
部屋の隅ではヴリトラがいじけていたが誰も気には留めなかった。
「それで、相談というのは?」
『うむ。貴殿は『死と冬の大陸』という地を御存じか?』
知っている。
俺が今居るこの惑星の南の極地にある極寒の大陸、それが『死と冬の大陸』だ。
あまりに厳しい環境のせいもあって人間は1人も住んでおらず、人間以外の種族も極寒の環境に適応した獣人の集落が幾つかあるぐらいだ。
『そうだ。以前は龍族も少数ではあるが暮らしていたのだが、やはり時代の流れには逆らえないのか今では誰も暮らさなくなった。若い者にしてみれば何も無い大陸よりも未知の世界を渡る方が好きらしい。特に最近は“銀”の者達に毒される者が多く、この国も地味に少子高齢化が進みつつある』
「銀?ああ……」
『そう、あの“銀”だ』
凌龍は一気に疲れた様な顔になった。
それはさながら、ドラマに出てくる疲れた中間管理職の男のようだった。
“銀”――――あのバカの一族は他の龍族の皆さんに多大な迷惑をかけているのがよく解る一面、だな。
『それはさて置き、先日、彼の大陸に異変が起きたのは知っておるな?』
「ああ、魔王、だろ?」
あの大陸で異変と言ったら魔王の件しかない。
『その通りだ。この世界に出現して以降、我等はそれとなく監視をしていたのだが……』
「何かあったのか?」
『……今から4時間前、彼の大陸を監視していた者との連絡が途絶え、調査に向かった者も2時間前に消息を絶った』
4時間前というと、俺が共和国で婚約者ズと別行動をとり始めて直ぐの頃だな。
俺がソフィアちゃんと離れた間に事件が起きたということか。
『我は制約上、この地を安易に動く事は出来ぬ。だが、彼の大陸で消息を絶った者達よりも腕の立つ者は、今は濃雅を含めて数名しか居らぬ。国の守りを考えるとこれ以上は人手を割く事は出来ぬのだ。勇者士郎殿、我が名において貴殿に依頼を出したいのだが、宜しいか?』
死と冬の大陸で消息不明になったのはかなり強い龍族だったらしい。
それが2人とも消息を絶ち生死も不明、調査隊を派遣したいがそれだと国の守りが手薄になり凌龍も何らかの理由で国外に出る事が出来ない。
だから代わりに行ってもらいたい、という訳か。
「原因はやっぱり魔王か?」
『大元は、な。だが、直接手を出したのは魔王ではないだろう。臣下達が消息を絶つ直前、微かではあるが神気を感じた。十中八九、魔王と契約を結んでいる神格の誰かであろうな』
「また魔王と神のセットか」
天空大陸ではアドラメレク、ニブルヘイムではウル、オリンポス大陸ではテュポーン(?)、ガンドウ大陸は……アレ?いなかったな。
まあ、いいや。
兎に角、今度の魔王も神とワンセットで間違い無い様だな。
どの道は魔王は全員倒す予定だし、引き受けても問題は無いよな?
『引き受けてもらえるか?』
「ああ。その代わり、報酬は貰うぜ?』
『無論だ。依頼達成時には、相応の報酬を用意させよう。貴殿が望むのならば、我は貴殿と契約を結んでも構わん』
同胞の命が掛かっていることもあるからか、凌龍は報酬をケチる気は微塵も無い様だ。
「分かった、その依頼、確かに引き受けた」
こうして俺は凌龍から『死と冬の大陸』にいる龍族2名の救助の依頼を引き受けると同時に、5人目の魔王の下へ向かう事を決めたのだった。
ところでヴリトラ、いい加減にいじけるのは止めろ!
*追記
現時点での士郎のステータス
【名前】『ボーナス屋』大羽 士郎
【年齢】16 【種族】人間
【職業】神狩士(Lv68) 勇者-極-(Lv73) 神の代行者(Lv63) 【クラス】異界の勇者王
【属性】無(全属性)
【魔力】7,290,000/7,290,000
【状態】正常(完全健康体)
【能力】大魔王流勇者之魔法(Lv5) 勇者之属性術(Lv5) 剣聖流勇者之武術(Lv5) 勇者之闘気術(Lv5) 隠形秘術(Lv5) 祈祷術(Lv5) 幻想召喚術 生命契約術 真・応報之絶対真理 絶対吸収 万象昇華 智慧と愛の守護女神 光の神魔剣 貫く神光 戴冠石 黒龍王鞭ヴリトラ 神滅雷霆 真・神代之真眼 万能なる生成者 金剛杵 光煌く魔弾 断罪太陽 眷属創造 神域創造 魂喰之王 彩嵐の双翼 千変化 破壊波動 絶望波動 次元崩壊 終焉魔炎
【加護・補正】物理耐性(Lv5) 魔法耐性(Lv5) 精神耐性(Lv5) 光属性無効化 闇属性無効化 火属性無効化 風属性無効化 土属性無効化 空属性無効化 時属性無効化 他全属性耐性(Lv5) 全状態異常無効化 全能力異常無効化 精力増強 完全健康体 神速再生 神速回復 思考加速 完全詠唱破棄 危険察知 柔軟な肉体 神殺し 魔王殺し 竜殺し 龍王殺し 魔獣ハンター 最強勇者 悪魔殲滅者 呪詛殲滅者 浄化皇帝 最強生産者 黄泉返り(笑) 救世主 超克者 破壊者 大魔王(剣聖)の弟子 試練に打ち克った者 土神ハニヤスの加護(+3) 豊穣神アヌの加護(+2) 銀腕神ヌアザの加護 母神ダヌの加護 太陽神ルーの加護 知恵神オモイカネの加護 七福神弁財天の加護 漬物女神カヤノヒメの加護 冥府神????の加護 鶏神コッコくんの加護(+4) 太陽神インティの加護 道祖神サルタヒコの加護 芸能神アメノウズメの加護 創造神タカミムスビの加護 龍神クロウ・クルワッハの契約 最高神ゼウスの契約 龍王ヴリトラの契約 万能翻訳 職業補正 職業レベル補正
【BP】688




