第37話 ボーナス屋、また悪魔を倒す
医務室に来たぜ!
中にはいると医者はいなかった。
きっとひと段落して休憩にでも入ったんだろう。
「お~~いたいた!」
「・・・あ、さっきのお兄ちゃん!」
部屋の隅に並べられた木製のベッドの方に行くと、たまたま起きていたリーナが俺に気づいた。
他の子達は大人しく寝ているみたいだな?
今はリーナにだけに用があるから起こさないように注意しよう。
「風邪は平気なのか?」
「うん・・・、お医者さんがくれたお薬を飲んでから寝たらスッキリしたみたい。」
「そうか、よかったな♪」
ステータスを確認すると確かに風邪は治ったみたいだ。
ちょっと治るのが早い気もするが、きっとまだ初期症状だったからとか、あとはこの世界の薬の効果だろう。
だが、やっぱり呪いはまだかかったままだ。
今のところは命に係わる問題はなさそうだけど、解呪しておくに越したことはない。
だけど解呪用のポーションはフライハイトさんに使ったから今は持っていない。
ここは俺の能力で何とかしてみるか!
あ、でもリーナのポイントは使わないぜ?
まだ5歳のリーナは多分ポイントが少ないだろうしな。
ここはレベルアップでポイントが貯まっている俺のを使うか。
「・・・お兄ちゃん、何してるの?」
「ヒミツ♪」
俺はリーナに背中を向ける様に隠れながら《エフォートエクスチェンジャー》を起動した。
あ、別に隠す必要はなかったか?
まあいいや、とりあえず「解呪」をキーワードを入力して検索っと!
〈解呪魔法〉 20pt
〈解呪ポーション〉 10pt
〈呪術(Lv1)〉 5pt
・
・
・
結構絞れたな。
ここは普通に〈解呪ポーション〉だろうけど、何だかまた呪いとかに関わりそうだからな。
その度にポーションを交換するのもなんだし、ここは〈解呪魔法〉にするか。
よし、取得!
これで残りは95ptだ。
「リーナ、ちょっとおまじないかけるから目を閉じていてくれるかな?」
「・・・おまじない?」
「そ!」
「うん、わかった!」
リーナは俺の言葉を素直に信じて目を閉じた。
呪いを解くのはこれで2度目だけど、また悪魔が出てくるかもしれないから見せない方がいいよな。
出てくる可能性は低いけど、もし出たら瞬殺するぜ!
「《解呪》!」
うお!?
思ったより魔力の消費が大きいな?
特殊魔法だし、俺の適正レベルだとこれくらい消費するのか。
「ん・・・・・・!」
あ、リーナの体から黒い靄が出てきた!
これが呪いの本体だな!
『オオオ―――――――――』
「《焼却》!!」
『ギャッ!!』
よし、瞬殺!!
誰がリーナに呪いをかけたのか知らないが、これでとりあえず大丈夫だろう。
「目を開けていいぞ!」
「・・・変な声が聞こえたような気がする。」
「気のせいだろ?」
「ん・・・何だかまたスッキリした感じがする。」
どうやら解呪の影響が出てきたようだ。
ステータスを確認するか。
【名前】リーナ=レーベン
【年齢】5 【種族】人間
【職業】なし 【クラス】貴族令嬢 家出娘
【属性】メイン:水 サブ:風 氷 雷
【魔力】6,300/6,300
【状態】疲労(微)
【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv3) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv3) 精霊術(Lv3) 調合術(Lv1)
【加護・補正】魔法耐性(Lv1) 精神耐性(Lv1) 水属性耐性(Lv2) 氷属性耐性(Lv1) 呪い耐性(Lv1)
よし、どうやら無事に呪いは解けたみたいだ!
能力とかが増えているのは呪いがなくなった影響だろうな。
けど、なんか初めて見る能力があるな?《精霊術》?
【精霊術(Lv3)】
・精霊の力を借りて様々な現象を起こす魔法。精霊魔法とも呼ばれている。
・通常の魔法と違い、誰にでも使える魔法ではないため使える者は少ない。
・基本的には自分と同じ属性の精霊のみ使役できないが、適正レベルが高いか、精霊と直接契約を結ぶと他の属性の力も使役が可能になる。
精霊か~~!
俺はまだ会った事はないけど地球にもいるらしいな。
どうやらレアな能力のようだ。
もしかして、呪いをかけられたのってこれが原因なのか?
「あ・・・!」
「どうした?」
「・・・精霊さんの声が聞こえる!」
俺には聞こえない声が聞こえるようになったようだ。
この様子だと、ついさっきまでは呪いのせいで聞こえなくなっていたみたいだな。
「へえ、精霊と友達なのか?」
「うん、お外のお話とかしてくれるの。」
「そうか、だったら今日はちゃんと寝て、明日から精霊と仲良くお話ができるように元気になろうな♪」
「うん!」
何だか童話とかに出てきそうな笑顔だな。
最初は口数が少なそうだったけど随分明るくなったな。
さて、これ以上はやる事はなさそうだし失礼するかな?
「じゃあ、俺はもう行くから。」
「・・・また来るの?」
「ん~~~、とりあえずは明日か明後日にもう一度は来るかもな?」
「・・・そうなんだ。」
あれ?何でそんな目で見るんだ?
何だか変なフラグが立ちそうだ。
言っとくが俺はロリコンじゃないぞ!
「ま、とにかく無理はするなよ?」
「うん、バイバイ。」
俺はリーナに手を振りながら医務室を後にした。
さてと、みんなと合流するか!
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「じゃあ、呪いは無事に解けたんですね?」
「まあな!けど、この国じゃ呪いとかやる奴が多いのか?なんかフライハイトさんの時みたいに悪魔っぽいのが出たぜ?」
「一応、法律上は禁止されてるんですけどね。」
ロビンくんは複雑な顔をしながら答えた。
禁止されていても、陰でやる輩が多いのはどの世界でも同じなんだな。
ちなみに俺達は騎士団の詰所を後にして、フライハイト商会の大倉庫に来ている。
目的は勿論、ドラゴンの代金を受け取りにだ!
「本当にこの子達が竜種を狩ったの・・・?」
「まさか・・・。」
ちなみに解放されたばかりの皆さんも一緒だ。
これから向かう場所と粗方の事情は説明済みだ。
勿論、他言しないように何度も年を押してある。
ヒューゴとケビンのお母さんとジャンのお母さんは、自分の息子達がドラゴンを狩ったという話が信じられないようだ。
この世界の常識じゃ、ドラゴンは例え子供でも人間の子供に倒せる存在じゃないから疑うのは無理もない。
まあ、とにかく俺達は大倉庫に到着した。
「フライハイトさん、どうも~!」
「おお!無事にご家族は解放されたみたいですね?」
「俺のじゃなく、ロビンくん達の家族だけどな?」
「分かっていますとも!初めまして、私はフライハイト商会の代表を勤めています、ウツ=フライハイトと申します!」
フライハイトさんは後からついてきたお母さん達に笑顔で挨拶していった。
あらら、何だか挨拶だけで驚かれているな?
後で知ったんだが、フライハイトさんは俺が思っているよりもず~と有名な大物だったようだ。
「解体はまだ終わっていませんが査定の方は完了しています。」
フライハイトさんを先頭に倉庫の中に入ると、そこにはバラバラに解体されたドラゴンの群れが・・・グロッ!
「「うわ~~~ん!!」」
年少妹組は泣き出した。
そりゃ解体中のドラゴンて普通に怖いよな。
しまった、また失敗した!
「お兄ちゃ~ん、怖いよ~!」
「嘘付け!」
あ、案外余裕そうなのもいるな?
ロビンくん、妹達に抱きつかれて困ってるな。
ちょっと羨ましい。
「おやおや、小さい子には刺激が強すぎましたな。気がつかず申し訳ありません。」
「あ、あのう、まさか本当にこれ全部を息子達が・・・!?」
目の前に広がる光景に唖然となりながら質問するのはジャンのお母さん。
これだけの数のドラゴンを目の当たりにしても、まだ半信半疑のようだ。
「だから本当だって何度も言ってるだろ!」
「おい、直接止めを刺したのは俺だろ!誇張するなよな!」
「お兄ちゃん、正確にはお兄ちゃんとシロウさんだよ?」
「うっ・・・!」
「お前も誇張するな!!」
盛り上がってるな~~♪
あれ?
解体されている鱗とか牙とかとは別に、何か紅い石がたくさんあるな?
「あの紅い石は何なんだ?」
「あれは魔石です!」
「魔石?」
「ええ、一部の魔獣の体内にある魔力の結晶で、純度が高いほど高額で取引されている石です。亜種も含め、全てのファイヤードレイクから採取できました。」
ああ、そういえば《鑑定》の情報にもそんなことが書かれてたな?
ゲームとかにもよく出るアイテムだったっな。
高額で売れるのか、ラッキー♪
「どれも高純度の魔石なので、全て高額で買い取らせてもらいます。」
「おお!全部で幾らになるんだ!?」
確か軽く見積もって1億は下らないんだっけ?
単純計算で13億以上、今回は秘密裏の買い取りだから1~2割安くなるとしても10億は下らないな。
けど、より稀少なジオ・ファイヤードレイクも混ざってたし、実際はどれくらいになるか予想できないな。
「先に説明したとおり通常よりも安い買い取りになりますが、どの個体も腐敗がまだ始まっていないのでかなり上質な素材が採れているので互いに満足できる値段を付けさせていただきました。」
どうやら早めに持ってきたのが功を奏したみたいだな。
普通は倒してから買い取りまでは、どうしても運搬で時間を浪費するから多少の腐敗は避けられないんだろう。
それに対し、俺達は四次元倉庫に入れて持ってきたから普通より鮮度がいいんだろう。
「ファイヤードレイクは1体が1億5000万D、11体で16億5000万Dになります。ジオ・ファイヤードレイクは少々迷いましたが、1体で3億D、2体で6億Dとさせていただきます。」
「合計で22億以上!?」
高っ!!
値引きしてこの値段て・・・!
てか、ジオ・ファイヤードレイクが普通のファイヤードレイクの倍の値段!?
「さらに魔石ですが、どれも質が良く、かなりの大きさなので全部で10億Dになります。」
「そんなに!?」
いやいや、幾らなんでも高すぎないか!?
総額32億5000万Dって、魔石とかってそんなに高価なのか?
あ、よく見たら一際デカい魔石があるな。
あれのせいか?
「―――――白金貨3枚、大金貨2枚、金貨5枚になりますが銀貨などにも両替することもできますが、どうしますか?」
「・・・ああ、とりあえず白金貨1枚分を金貨や銀貨に替えておいてくれ。」
流石に金貨や大金貨だと買い物する時には大きすぎて不便だからな。
というより、そんなデカい金を使う機会なんかあるとは思えないしな。
「では、これで全額になります。ご確認ください。」
フライハイトさんから大金の入った皮袋を受け取って中身を確認する。
うわあ、マジで白金の貨幣が入ってるぜ!
う~ん、何に使うかな~?
幾らかは村の復興に寄付して、残りはヒューゴ達と山分けか?
ヒューゴもジオ・ファイヤードレイクを1体止めを刺してるし、最低でも3億以上はあいつ等にはいくな。
「なあ、分配なんだけど・・・・・え?」
振り返ると、ヒューゴ達だけじゃなくご家族の皆さんまで頭から煙を出したまま固まっていた。
ええ!?
「・・・買い取り金額を聞いた時点で意識が飛んだみたいですよ?」
「マジ?」
ロビンくんは苦笑しながら教えてくれた。
どうやら聞いた事もない金額に頭がショートしちゃったみたいだ。
あ~~~、とりあえずは村に帰るか?
悪魔ビビ、某貴族との契約でリーナに憑りつくも、士郎によって瞬殺されてこの世を去る。享年201歳。