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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
異界の七大魔王編Ⅴ―ガンドウ大陸の章―
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第374話 ボーナス屋、宙を穿つ!

――常盤ノ国 首都セイラン『叢雲ヶ丘宮(ムラクモガオカキュウ)』――


 陰でミニ・ソフィアちゃんがサポートを受けながら俺は黒い木の一斉砲火を全て吸収、そのまま空いた手で握っていた愛剣(クラウ・ソラス)で黒い木本体目掛けて振るった。


 大量の魔力を注ぎ込んで500m以上にまで伸びた刀身で“依代”がいる場所を避けつつ、尚且つ黒い木の大事な部分(・・・・・)を断つように横に振り両断した。



「よっし♪」


『――――!ますたー!まだです!!』


「!」



 ミニ・ソフィアちゃんが驚愕しながら声を上げ、直後に黒い木に異変が起きる。


 雲の上まで伸びた黒い木の大部分は突如として蛇の様にうねり始めたかと思うと、幹全体から数えきれないほどの大量の触手を伸ばし、まるで網を編むかのように幹全体に絡まり続け、その全体像はこの国の首都を飲み込まんとする、異形な盲目の大蛇へと変貌していった。



「出たよ。第二形態……」


『てきもてんぷれをまもってますネ!』



〈俺にもあるぞ! byカグツチ〉



 もう驚く気にもなれない敵の第二形態の法則。


 この世界ではボス級の敵は必ず第二形態を持っているのがお約束になっているようだ。


 そして今回の敵はそれだけじゃ終わら無い様だ。



「あ!切り株の方も!」



 幹の方だけじゃなく、切り株の方にも変化が起きた。


 俺に斬られた断面から全身真っ黒な巨人の上半身が生えてきて、その手には触手―――蔓が幾つも巻き付いた巨大な杖が握られており、地面からはさらに多くの根が出現した。


 あれ、何てアルラウネ?



『我ラガ敵――――――殲滅スル!』



 敵意の籠った声が俺だけでなく首都全域に響き渡る。


 周囲の気配にも注意してみれば、宮城の外では大勢の人々が阿鼻叫喚となって逃げ惑っているのが感じられる。


 そりゃあ、突然首都のど真ん中に大怪獣が2体も出現したらパニックにもなるよな。



〈俺が斬られたらもっとパニック! byカグツチ〉



 そうだな!


 お前が斬られたら、血とか肉から神が大量発生して神話が大混乱になるからな!


 というか、父親に殺されたのにどうしてお前は生きているんだ?


 そして何より、黙ってろ!



『――――《七色ノ終焉》!』


『JAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』



 巨大暗黒アルラウネ(?)の杖から7色7本の光線が放たれ、暗黒大蛇からは色んな色が入り混じったような禍々しいブレスが放たれる。


 物凄く体に悪そうだから今度は吸収せず、空間をちょいと捻じ曲げて攻撃の軌道を逸らし、光線は暗黒大蛇に、ブレスはアルラウネ(?)に命中させた。


 そして響き渡るのは敵の絶叫。


 暗黒大蛇の体は強酸を浴びた様に溶け出したり、砂になって崩れたり、マグマの様に燃え上がりながら溶け出したりと、デカすぎる巨体はかなりグロい感じに崩れていった。


 アルラウネ(?)の方は全身がブクブクと煮えた水飴の様に泡立っていったが数秒で元に戻った。



『クダラヌ真似ヲ。浸蝕セヨ――――』



 暗黒大蛇が絶叫している中、アルラウネ(?)は杖を振るうと同時に不思議な黒い空間は展開していった。



『ますたー!《しんいきそうぞう》ふるぱわーです!』


「わかった!」



 俺はアドラメレクから奪った《神域創造》を使い、宮城を含めた首都全域を俺の力が最大限に使える絶対領域にへと作り変えていき、それにより敵の不思議な黒い空間は俺を飲み込む前に呆気なく霧散して消滅した。


 これは後で判明した事だが、この時のアルラウネ(?)が放った黒い空間を広げる技は、飲み込んだ空間をこの世界とは別の次元に作り変えるもので、あの時俺が《神域創造》で強制的に力を上書きすることで防がなかったら1分もかからずに常盤ノ国全域が、十数分でガンドウ大陸全域がこの世界から完全消滅していたそうだ。


 もっとも、俺の能力(チート)と、ミニ・ソフィアちゃんの解析能力のチートコンボの前では無力だったけどな。



『――――何!?我ノ《黒ノ神域》ヲ―――――ッ!?』



 敵は戦慄、自分の力が破られるとは思ってもいなかったらしい。


 けど、敵が戦慄している間にも俺達の攻撃は続いている。


 俺が展開した『神域』では、俺の力で“敵”以外は決して傷付かないように設定しており、更に嘗て天空大陸の一件でこの能力の元の持ち主であるアドラメレクがやったように敵の能力も弱体化させる効果――正確には敵意を向けた者の能力を敵意に比例して弱体化させる効果――を使っているので、アルラウネ(?)だけでなく、一緒に取り込んだ暗黒大蛇も見る見るうちに弱体化して巨体も収縮していった。



『――――かいせきかんりょう!ちょっとふざけたとらっぷがなだれのようにおそってきましたができました!ますたー、ますたーのじんきにかいせきでーたをあっぷろーどしておきます!おわりました!』


「仕事速いな?」


『えっへん!』



 ミニ・ソフィアちゃん、ドヤ顔!


 本体も何所かでドヤ顔をしているんだろうか?



『余所見トハ余裕ダナ?』



 敵に余所見をされているのに苛立ちながらアルラウネ(?)は俺を呪殺するように睨んできた。



『コノ程度ノモノ、直グニデモ―――――』



 アルラウネ(?)の周りが黒く淀み始める。


 弱体化されたにもかかわらず、まだこの神域を浸蝕するだけの力をまだ持っているようだ。


 だけど、俺ばかりに目を奪われていると危ないぞ?



『――――――ッッガ!!』



 突然、アルラウネ(?)は苦悶に満ちた悲鳴を上げた。


 同時に、暗黒大蛇の方も断末魔のような悲鳴を上げ始めた。



『JAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――――――ッッ!!』



 味方の攻撃を受けて既に致命傷とまでは言わないまでも、かなりの重傷を負っていた暗黒大蛇は死より恐ろしい出来事に遭っているかのような悲鳴を上げながらのた打ち回っていた。


 俺の神域に守られているお蔭で幾ら暗黒大蛇が暴れても地上への被害はゼロだ。



「お~!皆張り切ってるな~!」



 俺の目には暗黒大蛇をフルボッコしているアニマル達の姿が映っていた。



『ゴケゴケェ~!(殺神ビーム!)』


『ゴケゴケ~!(コーチンデストロイヤー!)』


『ゴケッコ~!(シャモキーック!』



 ニワトリ達が明らかに威力がおかしい攻撃をしている。


 まるでマ〇ダをゴ〇ラやキン〇ギドラが抵抗する隙も与えずにボコっているような光景だ。


 あ、今どきマ〇ダは古いか。



『イエーイ!《降り注ぐ光神の涙(シャイニング・メテオ・スコール)》!!』



 アリアもその小さな図体と比べても反則過ぎる大魔法を連発、空から閃光を放つ流星群が降り注いできて暗黒大蛇だけでなくアルラウネ(?)も一緒にボッコボコにしていく。


 1回の進化でどんだけパワーアップしてるんだ?


 これも巫女姫ちゃんのモフモフパワーか?



〈俺もモフモフしてほしい。 byカグツチ〉


〈巫女姫が焼死するから止めろ! byツクヨミ〉



 ……。


 頑張っているのはニワトリ達だけじゃない。


 ガル助達もアルラウネ(?)に対して(ある意味ではエゲツない)攻撃をしていた。



『キュキュキュキュキュキュキュキュ!』


『ガウガウガウガウガウガウガウガウガウ!』


『ワウワウワウワウワウワウワウ――――バフッ!』


『ニャニャニャニャニャニャニャニャ!』



 齧っていた。引っ掻いていた。


 まるで農家の人達が丹精込めて育てた野菜がある畑を掘り返し作物を喰らう害獣の如く、ピョン吉やガル助達が物凄い勢いでアルラウネ(?)の体――――根を食い荒らしている。


 昔、ドラ〇もんで見たどら焼きを虫食いの様に食い荒らしていくミニ〇ラを彷彿させる様な光景だ。


 瞬く間に敵の体は食い荒らされていき、一般的な植物と同じなのか、アルラウネ(?)本体は神域の浸蝕を続けられないほどまで苦悶していた。


 アルラウネ(?)は必死に抵抗するが、それもアニマル達の御馳走にしかならなかった。



『ますたー!しゅほーのよういです!』


「お、おう!」



 いけない、俺もうっかり呆然とするところだった。


 敵は大打撃を受けているようだが毎度お馴染みの再生能力のせいで、アニマル達が幾ら攻撃しても中々絶命する気配は無かった。


 決定打は俺がやるしかない。



「――――《万能なる生成者デミクリエーター》!」



 俺は能力を使い、所有している神器を魔弾(タスラム)を中心に融合させ、そこへ更に幾つもの魔法や能力も隠し味として加えていく。


 俺のイメージを元に俺の眼前にはファンタジー世界には不釣り合いな、SFな巨大ビーム砲が顕現した。


 タスラムとケラウノス、そしてブリューナクとクラウ・ソラスの力を結集させた巨大兵器、その力は紛い物の神のみを滅ぼす(予定)。



「――――全員離れろ!!」


『『『!!』』』



 俺が叫ぶと同時にアニマル達は瞬間移動したかのように敵から離れた。


 ちなみに、この時点で暗黒大蛇は空中でタタキ(・・・)になっていた。


 アルラウネ(?)の方も、害獣に食い荒らされた畑の作物の様に成り果てていた。


 ボス感0%。



『しょうじゅんほせいかんりょう、いつでもおっけーです!』


「――――発射(ファイヤッ)!!」


『――――――――――ッッ!!』



 俺の合図と同時に特大のビームが轟音と共に放たれた。


 雷をも超える速度で放たれたそれは、敵を抵抗する間も与えずに全身を飲み込み、そのまま一直線に空の彼方へと走っていった。


 圧倒的な力の蹂躙の中で、敵2体は断末魔を上げることなく光の中に消えていった。


 今回はどこぞのRPGのラスボスの様に第三形態になったり、死んだふりして復活なんかしないように《魂喰之王》――魂や精神体を捕食して己の糧とする能力――で邪念や魂の欠片も残さないようにしたのでこれで決着だ。



『てき、しょうめつをかくにん。せんとうしゅうりょうです!』



〈勇者は神モドキを倒した! byカグツチ〉



 ミニ・ソフィアちゃん+αが俺の勝利を告げ、(下手をしたら)ガンドウ大陸滅亡の危機は去ったのだった。



〈勇者は『神の因子』を1個ゲットした! by???〉


〈勇者は人間卒業にまた一歩近づいた! by斉天大聖〉



 やかましい!


 俺はまだまだ人間だよ!


 俺は最後まで絶対諦めない!



〈勇者は小惑星を48個破壊した(怒) by匿名希望の天空神〉


〈威力凄すぎ(笑) by名無しの雷神〉


〈余波で彗星の軌道がずれたぞ! by怒れる天空神〉


〈アチャー☆ byヌアザ〉



 …………。


 どうもすみませんでした!







--------------------------


――ワクワク大陸 シャムス王国――


 同時刻、北半球とは違い炎天下に曝されている南半球の大陸『ワクワク大陸』。


 その中にある周囲を自然の防壁に囲まれた伝統と宗教の国シャムス王国にその男は立っていた。



「……時間稼ぎにはなったようだな。だが、それだけしかできなかったか」



 周囲に怪しまれないよう現地の衣服を身に纏い、それに加えて他人の意識が自分に向かないように隠形していた男は、遠く離れた別大陸で起きた戦いの決着を感じ取っていた。



(皇祖神の因子を持つ者を依代に選んだが、それでも時間稼ぎにしか利用できないとはな……大羽士郎、たった1つの固有能力を得ただけで我等の大命を阻む障害に育つとはな。大特異点(イレギュラー)……いや、我らの大命に対する世界が生んだ「抗体的存在(勇者)」の可能性も出てくるか。ならば、地球側に居る同士に彼の身辺調査を本格的に行ってもらう必要もある。簡易調査では両親は事故で亡くなったというが、どうも気になる)



 街中を歩く人々は男の術により彼の存在を景色としか認識していなかったが、男の表情は活気に溢れている街には不釣り合いな、氷のように冷たく険しいものだった。


 男は街を抜けて街道も通っていない道無き道を北北西に進んでいき、人気の全く感じられない森の前にやってきて足を止めた。



「――――残る魔王コマはあと3体、南の極地のは出来損ないだが………」



 男は目を細めながら森の奥を見つめる。


 その森は地元の人間からは凶暴な魔獣が多く棲息し、中に入った人間の9割近くが生きて帰れないことから恐れられている魔境への入口だった。


 嘗ては森の入口近くにも小さな村落が存在していたが、それらも時代の流れや幾度も続いた魔獣の襲撃、そして住人の変死などにより30年以上も前に全て滅んでおり、今では無人地帯となっていた。


 変死に関しては森が保有する高密度の闇の魔力が人体に悪影響を及ぼしたのが原因だが、医者の居ない村落の住人達からすれば祟りのように考えられ、それもあってこの地には誰も近寄ることもなくなっていた。



「……良い具合に魔力が濃くなっている。この調子なら、今度は期待できるだろう……」



 氷のように冷たい声で呟いた男は森の中へと足を踏み入れていった。


 そして10秒と経たずに男の姿は森の奥へと消えていったのだった。































『―――――――ゴケ?(ん?)』


『ピ?』







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