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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
異界の七大魔王編Ⅴ―ガンドウ大陸の章―
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第369話 ボーナス屋、ちょっとピンチになる

――ガンドウ大陸 大和『天つ宮殿』――


 巫女姫にルパンダイブしようとした魔王は地面に埋まって動かなくなった。


 うん、心臓はまだ動いているし、頭も潰れていないから生きてはいるな。


 やっぱ、自分より年下の子供をスプラッタな姿にするのは人として基本的に嫌だし、このまま強制契約でもしておいた方が平和的だよな♪



「く…………」


「ん?」


「曲者だあああああああああああああああああ!!」



 俺が魔王を戦闘不能にして安堵していると、なんだか回りにいる大勢の人達が一斉に武器を構えて俺に襲いかかってきた。


 あ、もしかして、俺、不法侵入者ってなってる?



「《ストップ》!」


「「「??????」」」



 取り敢えず、意識を残して兵士さん達は停止して貰った。


 中にはジャンプして空中で停止している人もいるけど、問題無いから放置しておく。


 おっと、ガル助達や薺さんも呼ばないと!



「――――御無沙汰しております。光葉様」


「貴方は……もしかして、常盤の大社の薺殿ですか!数年前に筆頭巫女様といらした!」


「はい、今は二級戦巫女を努めさせております。今回は光葉様に危機が迫っていると知り、こちらの士郎様に御無理を言って同行させていただいたところであります」



 薺さんのお蔭で俺への疑いは取り敢えず晴れた。


 巫女姫ちゃんと面識のある薺さんが一緒に居てくれて良かった良かった。


 さてと、俺は気絶中の魔王に服……じゃなくて、強制契約でも仕掛けておくか。


 どんな内容にするかな?



『ます―――――』


『――――――動くな』



 俺が魔王に近付こうとした時、ミニ・ソフィアちゃんの声よりも早く、凶刃が俺の喉元に突きつけられた。



『それ以上、魔王に(・・・)近付くな。妙な真似をすれば、お前ではなく他の者達が死ぬ』


「――――士郎様!その妖怪が私達を……」


『――――――黙れ』



 振り返ればこの場に居る人間全員が、両手が鎌になったイタチに喉元を凶刃を突きつけられて身動きが取れなくされていた。


 あ、兵士達を停止させたままだった!



『――――何も喋るな。力も勝手に使うな。お前は大人しく我らの言うとおりにしていればいい。そこの小さいのもだ』



 多分、この妖怪は日本では結構メジャーな「カマイタチ」ってやつだろう。


 俺やミニ・ソフィアちゃんの警戒網を潜り抜けて喉元に鎌を突きつけるって、もしかしなくても魔改造されまくったチート妖怪だろうな。


 けど、なんだか魔王を敬っているようには見えないな。


 というより、何処か捻くれた様な感じがするんだけど。



『――――勇者、魔王にかけた術を全て解け。此処より半径10㎞圏内の全ての生物の動きを封じろ』



 鎌から毒々しいオーラを放ちながらカマイタチは俺に脅迫してくる。


 無茶苦茶な要求だが、明らかに俺なら可能だと確信した上で言って来ている。


 もしかすると、このカマイタチは魔王が創った妖怪じゃなくて、黒幕側が送り込んだ使い魔なのかもしれない。



『――――下手な考えはするな。この鎌は“勇者”に対して絶対不敗の結果を齎す。勇者である以上、お前は絶対の逆らえない』



 アンチ勇者装備かよ。


 勇者に対して絶対に負けない武器とか、それ、何てドチートアイテム!



『―――――やれ』



 冷たい殺気を込めた声でカマイタチは俺に命令してくる。


 従わないと1人ずつ殺すといった意思が伝わってくる。



「……」


『―――――やれ(・・)


「……」


『……そうか』



 俺が沈黙を通していると、カマイタチは目を細めながら「まずは1人目だ」と仲間に合図を送った。


 そして巫女姫ちゃんの付き人Aの首が切り落とされようとした。




『――――ガウ!』




 が、首を失ったのはカマイタチAだった。


 カマイタチAは首をガル助にガブリと食われて息絶え、残った胴体は氷漬けになって床に転げ落ちた。



『!?』



 俺を脅迫していたカマイタチは唖然とし、冷静沈着だった顔は乱れ隙が生まれた。


 その隙を俺は見逃さなかった。



「ウンディーネ!シルフィード!」


『溺死させればいいんですか?』


『窒息死?ねえ、敵は皆窒息死でイイよね?』



 俺の召喚で久しぶりに水の精霊王と風の精霊王が登場、なんか笑顔で物騒な言葉を漏らしてきた。


 俺に召喚される=殺人って思われてないよな?



『―――――――精霊王!』


『吹き飛べ~~~♪』


『グ!アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――ッ!?』


『『『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』』』



 シルフィードは最初から全力全開!


 一瞬で全てのカマイタチを空の上に吹き飛ばし、抵抗の隙も与えずに両腕をサクッと切り落とした。



『鎌が無いカマイタチはただのイタチですね。溺れなさい』


『『『!!!!!』』』



 そしてウンディーネが出した巨大な水球に飲み込まれ溺れた。


 この間、約2秒!


 カマイタチ達はピクリとも動かなくなって地面に落とされた。



「ふう、ちょっと危なかったぜ!」


『勇者ちゃ~ん!はい、戦利品の呪われたアイテムセットだよ!』



 シルフィードはカマイタチのヤバそうな鎌を纏めて俺の前に置いた。


 改めてみてもヤバいとしか思えないオーラを放っている。


 実際、鑑定したらかなりヤバい代物だった。



悪神の勇者殺し(ブレイブ・スレイヤー)(鎌)】

【分類】妖鎌(呪)

【属性】無

【魔力】6,000,000

【ランク】SSS

【品質】高品質

【詳細】悪神アンラ・マンユの悪意と呪詛が込められた、全ての勇者を殺す為の武器。

 『勇者』という概念に対し絶大な力を発揮し、『勇者』のあらゆる力を切り裂き、『勇者』を不老不死・不滅に関係なくこの世から抹殺することができる。

 即効性の猛毒と呪詛が込められており、『勇者』は直接触れただけで毒と呪いに汚染され、生命力や耐性を無視して強制的に戦闘不能に陥る。

 この鎌を装着した宿主は、『勇者』に対して実力差に関係なく半径1m以内に接近されるまで決して気付かれる事無く接近することができ、隠密系能力を2段階以上上昇させる。

 『勇者』はこの武器を破壊する事は不可能である。

(*宿主を失うと勝手に動き回ってあらゆる生物を殺し回る機能が仕掛けられている)

 ただし、『勇者』でない者に対しては強力な呪われた武器レベルの力しか発揮できない制約がある。



 勇者を暗殺する為だけのチート武器だった。


 しかも勇者には壊せないという、厄介な機能付きでだ。


 直ぐに殺されず脅迫されていたのが不思議なぐらいだ。


 ただし、勇者じゃないシルフィード達やガル助に対しては無力だったようだけど。



「運が良かった……のか?」


『う~ん、多分、勇者ちゃんと契約している神が――――』


『シルフィード!』


『あ、ヤバ!これ秘密だった!』


「おい、今何か言おうと……」


『バイバ~イ♪』


『失礼します』



 なんか気になる言葉を漏らして精霊達は帰っていった。


 シルフィードが言いかけた言葉、あれは一体……



「巫女姫様!お怪我はありませんか!?」


「は、はい。私よりも貴方の方は大丈夫ですか?」


「私達は大丈夫です。それよりも巫女姫様は……」



 カマイタチが全滅し、辺りは再び騒がしくなった。


 ドタバタと宮殿の奥からは大勢の人々が集まってきて、他の場所を警護していた兵士達も大声を上げながら集まってくる。


 うわあ、また槍とか向けられてひと波乱が起きそうだな。


 あ、停止させたままの兵士達のことを忘れてた。


 てか、兵士の殆どが気絶している。


 完全に無抵抗の状態で死の危機に瀕していたのがよっぽど怖かったのかもしれないな。



「さてと、取り敢えず後始末を……ガル助?」


『ガウ?』



 俺はカマイタチAの死骸を食べているガル助に視線を向ける。


 視線の先では、宮殿の中で氷漬けになっていたカマイタチAの死骸を鎌も残さず平らげているガル助の姿があった。


 おい、呪われた武器なんか食べて大丈夫なのか?


 呪われないのか?



『ゴケ!ゴケ!』


『キュキュ♪』


『ニャア!』


『ワン!』


『カマ、オイシイ!』


「……お前ら、今まで何処に隠れてたんだ?そして、何で躊躇いなく呪われた鎌を美味しそうに食べているんだ?」



 そして振り返ると、今の今まで何処に居たのか、アニマル達がカマイタチ達と呪われた鎌をバクバクと食べている光景が広がっていた。


 いやいやいや、何で呪われた武器を平然と食べていられるんだ?



『ますたー!みんなはすでに《のろいむこうか》をもっています!あと、あののろいのかまののろいは、ゆうしゃいがいにはふつうにつよいのろいでしかないのでしぬことはありません!わたしがたべてもえいようにしかなりません!』


「いや、サイズ的に食べられないだろ?それに、あいつらはそこまでチートじゃ無かっただろ?」


『ますたー!ますたーはてきからうばってきたのうりょくを、あまるたびにみんなにてあたりしだいにふりわけていましたよ?まおーとか、てゅぽーんとか、そのたおおぜいとか、いろんなてきからうばったのうりょくをがるすけたちにもあげてました。わすれたんですか?』


「あれか~!」



 そういえば、今まで倒した魔王とか、この前倒しまくったテュポーンの群から奪ってストックしておいた能力とかは唯花達に渡してもかなり余っていたから、コッコ団とか、ヒューゴ達とか、色んな連中に配っていたっけ?


 あの時にガル助達は呪いも平気になっていたのか~。



『わすれるくらいならじちょうしてください』


「次からは忘れないよ」



 多分な。


 さてと、今度こそ魔王を……



「俺、復活!」


「ゲ!」



 魔王は自力で復活した。


 今回の魔王は、本当に頑丈だな。



「お下がりください!あの少年は、魔王です!」


「「「え!」」」



 薺さんは巫女姫ちゃんを庇いながら前に出た。


 それに対して魔王は、スマイルを見せながら2人の巫女を指差した。


「――――君達を迎えに来たよ♪」


「《グラビティ》!」


「プギャ!?」



 俺は再度、魔王を地面の下に沈めた。


 だが、これでもまだ魔王は倒れなかった。


 能力とかは転移する時にリセットしたし、ペナルティも与えたのにとんでもないタフさだ。



「ググググ……!俺は、どんな障害があっても夢を諦めない!出でよ、俺の眷属達!」



 能力は使えないはずなのに、魔王の周りに大小無数の魔方陣が出現した。


 よく見ると、魔王の着ている陰陽師風の服が淡く輝いている。


 あの服の力か?



『ますたー!』


「ああ、分かってる!皆、戦闘だ!」


『ガウ!』



 前菜を食べ終えたガル助達が俺の周りに集まって戦闘体勢に入る。


 状況においてけぼりのその他の皆さんも遅れて戦闘体勢に入り、直後に魔方陣から大量の妖怪が出現した。

 日本の妖怪だけじゃなく、中国や西洋の妖怪も大集合だ。



「行け!邪魔するものを蹴散ら――――」


「《神滅雷霆(弱)》!」


「ぴぎゃあああああああああああ!?」



 まあ、大半はこれで消し飛んだけどな。


 さあて、今度こそ決着を付けるぞ!







 カマイタチ、折角チートアイテムを持っていたのにアニマル達のご飯になってしまいました。

 余談ですが、アニマル達は士郎がテュポーンから回収した能力《悪食吸収》を貰っているので、呪われたアイテムや悪霊でもお腹を壊さず食べられます。妖怪だってエサです。


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