第368話 ボーナス屋、魔王を叩く
――ガンドウ大陸 大和――
俺は結界で皆を守りつつ、気配を消しながら遥か真下にある幽霊船に向かってクラウ・ソラスとブリューナクで爆撃した。
真上にはお天道様が浮かんでいたお蔭もあり、光の力をたっぷりチャージして撃った一閃は幽霊船の周りに漂っていた怨霊やら妖怪やらを一瞬で消滅、幽霊船も跡形も無く吹っ飛ばした。
「よし!」
『さすがですますたー!』
幽霊船が吹っ飛んだのを確認し、俺はガッツポーズをとる。
だけど油断はしない。
テンプレ的に、あれだけで魔王が死ぬとは思えないからだ。
そして、今回もテンプレ通りとなった。
『ますたー!』
「ああ!」
俺の視線の先で、どす黒いオーラを纏った少年が雲の上に立っていた。
なんだか平安時代みたいな恰好をしているな。
一言で例えるなら悪の陰陽師だ。
「本当に子供なんだな?」
『せんとーのーりょくは、てんくうたいりくのまおうよりもうえです!ますたーのてきじゃないですけど!』
ステータスを視ると、確かにあの魔王は今までの魔王よりは強い様だ。
【名前】黒覇王院 信長
【年齢】13 【種族】魔人
【職業】魔王(Lv50) 妖使い(Lv50) 交換師(Lv50) 【クラス】マセガキ魔王
【属性】無(全属性)
【魔力】7,620,000/8,000,000
【状態】正常(*思考誘導)
【能力】魔王之魔法(Lv5) 闘気術(Lv5) 属性術(Lv5) 魔王之武術(Lv5) 錬金術(Lv4) 悪魔呪術(Lv5) 隠形術(Lv5) 祈祷術(Lv3) 浄化 擬態 千里眼 鑑定眼 装備創造 妖魔創造 等価交換 禁忌指定 歪曲世界 魔改造 絶対強奪 魔星の狩衣
【加護・補正】物理耐性(Lv5) 魔法耐性(Lv5) 精神耐性(Lv4) 全属性耐性(Lv5) 全状態異常無効化 全能力異常無効化 高速再生 高速回復 完全詠唱破棄 万能遺伝子 魂魄防壁 危険察知 不老不死 絶倫 早熟 幸運 百発百中 魔人の本能 創られし魔王 転生者 巫女の攻略者 夜の覇王 妖怪の主 闇の魂 (*思考誘導) (*常時監視) (*自動自爆) 無限神ウロボロスの加護 魔神バロールの加護
【BP】-211
名前を突っ込んでいいか?
何だよ「黒覇王院 信長」って!?
厨ニ病になった戦国武将みたいな名前じゃないか!
『ますたー!まおうは《わいきょくせかい》でますたーのこうげきをふせぎました。じゃまなしょうへきとかはこっそりかいじょしたので、つぎはくうかんをはかいするこうげきをしてください。あと、あのまおうはたにんのもちものやちからをうばいます。むやみにせっきんするときけんです!』
「あ、大丈夫!逆に奪ってやったから♪」
『さすがです!ますたー!』
ミニ・ソフィアちゃんが俺の能力を阻害する障壁の類を一掃してくれたお蔭で、魔王の危険そうな能力は粗方奪う事が出来た。
今更だけど、他人の能力を一方的に奪うのってえげつないよな。
まあ、俺は見境なく奪ったりはしないからセーフということで。
『ますたー!まおうはこんらんしています!』
俺の能力を奪おうとしていた魔王は、逆に自分の能力が奪われている事に気付いて慌てていた。
なんか、ちょっと涙目になっている。
別に弱い者いじめをしている訳じゃないけど、魔王が小さいから胸がチクッとするな。
『ますたー!このままとどめをさしましょう!』
ミニ・ソフィアちゃんは首を斬るジェスチャーをしながら言ってくる。
いやいや、敵とはいえ、見た目が子供100%の首をチョンするのは流石に……って、悩んでいる間に魔王が叫びながら攻撃してきた。
魔力のデカさにものをいわせた対空砲火だ。
「俺のスキル返せ~~~~!!」
やや悲嘆の籠った声が聞こえてきたが、無視して攻撃の全てを吸収する。
地上に直撃したら大惨事な攻撃も、クラウ・ソラスを通して俺の中に吸収されていく。
上級を通り越した魔法とかも放ってきたけどそれも吸収、妖刀っぽいのを出して攻撃してきたけどそれも吸収、呪いも吸収、全方位から全属性攻撃してきたけどこれらも全部吸収していった。
「…………」
魔王、呆然。
あらゆる攻撃が1つも通じなくて言葉も出ない様子だ。
ぶっちゃけ、俺としてはテュポーンの方が強かったというのが本心だ。
ステータス上はかなりハイスペックだけど、スペックの高さに振り回されて使いこなせていないんだろう。
多分、巫女さん達との性活にばかり力を注いでいたせいで戦闘の修業は殆どしていないのかもしれない。
ブレイくんに倒された天空大陸の魔王よりは確かに強いみたいだけど、今の俺の敵じゃないな。
〈人間辞めた奴より人間離れしてるとか(笑) byスサノオ〉
なんか五月蠅い声が聞こえてきた。
後で奥さん達に通報しておこう。
「もう終わりか?」
「!」
魔王はビビっていた。
よく見ればブルブルと震えている。
というか、俺のステータスを視れば実力差は直ぐに分かると思うんだけど、視てないのか?
『ますたーのステータスはわたしがいんぺいしているので、かみよりよわいひとにはきほんてきにはもじばけしてみえるんです』
視てないんじゃなくて視れないようだ。
能力を奪われ、攻撃が一切通じず、ステータスも視れない相手、マセガキなのを除いても十代前半の子供には結構恐怖、なんだろうな。
しかもこの世界とは違って基本的に平和な現代日本からの転生者、精神耐性は高くてもショックは大きいに違いない。
「何だ!一体何なんだよ!!何者なんだ!?」
「……勇者だよ(笑)」
ビビっている魔王に俺は笑顔で答えた。
「ゆ、勇者……!?俺が魔王だってだけでもツッコみどころ満載なのに、勇者まで居るのかよ!これって性質の悪い神の悪ふざけじゃないよな?北欧の悪神とか、ギリシャの盗賊の神とか、近所迷惑な日本の嵐の神とかの!?人間を弄んで高みで爆笑してるんじゃないのか?チートで浮かれていた俺にドチートな勇者をぶつけて絶望しているのをニヤニヤしながら見てるんじゃないのか!?」
「……」
「何か言えよ!」
ちょっと恐慌状態になった魔王は色々と喚き始めた。
惜しい!
確かに一部の神様達は高みの見物しているけど、北欧の悪神とかは既に逝って生まれ変わっているから黒幕じゃないから。
けど、今までの魔王とは違ってタダのバカじゃないようだな。
殆ど外しているけど、自分が黒幕の神に弄ばれている事に自力で気付けているようだし、もしかしたら話し合いが出来るかもな。
自爆されなければだけど。
「あ~、大人しく投降してくれるなら殺したりはしないぞ?ただし、攫った巫女さん達は全員解放して貰うけど」
「な!俺のハーレムを解散……だと!?」
「いや、ハーレム解散とか言ってないから」
魔王の目付きが一変した。
攫った巫女さん達を解放するよう伝えた途端、さっきまでビビっていたのが嘘のような強い目付きになった。
「……悪いが、俺は俺の巫女達を捨てる訳にはいかないんだ!俺達は、両想いなんだ!」
「いや、両想いって、普通は1対1で言わないか?そっちは明らかに1対多だろ?」
「俺達には愛があるから問題無いんだ!」
「巫女さん側がHENTAIなだけじゃないのか?」
「おねショタはHENTAIじゃない!」
「言い切ったよ!自分でおねショタって言ったよ!」
「ロリだってセーフのとしかヤッてない!」
「ロリは全部アウトだろ!」
「合法ロリだっている!」
駄目だ。
話が通じるかと思ったけど、魔王の巫女萌えが俺の予想以上に強過ぎて無理っぽい。
『ますたー!あのHENTAIをさっさとたおしましょう!』
ミニ・ソフィアちゃんはシャドーボクシングをしなが言ってくる。
魔王の頭を殴って潰せと?
「俺は巫女達を守る!」
魔王が俺に指をさしながら宣誓した。
駄目だな、アレ。
もう話し合いが通じるような感じじゃない。
俺の後ろじゃガル助達が「出番?やっと出番?」な光り輝く視線を送ってくるし、薺さんに至っては石膏像みたいに硬直している。
ショックが大き過ぎたようだ。
「魔法が通じないならこれはどうだ!召喚!空対空ミサイル――――」
「《神威雷霆》、発射!」
コッソリ飛ばしていたファ〇ネルから神をも殺す雷が一斉に発射された。
そして魔王に直撃。
「@*&#H|<$―――――ッ!?」
気のせいじゃなく、前より威力が数段増している雷霆をくらった魔王は声にならない悲鳴を上げながら地上へと墜ちていった。
その後を俺達もついていき、魔王は人里から離れた、雪の積もった平原のど真ん中に墜落した。
「……ミンチ?」
一瞬、嫌な光景を創造したが杞憂に終わった。
雷霆の直撃を受けて雲の上から落下したというのに、魔王はまだ生きて立っていた。
確かに、今までの魔法よりも強敵なようだ。
「ゼハア!死ぬかと思った~~~!!」
真っ青な魔王は息を荒げながらそんな独り言を漏らした。
いや、普通は死んでるから。
軽く数十回は死んでるから。
何で五体満足で生きてるの?
「ハアハア!さっき、“ケラウノス”とかって言ってなかったか?そうか、あいつは大神ゼウスに召喚された勇者だったのか!」
いえ、《雷霆》はゼウスを倒して手に入れたものです。
召喚したのは俺の婚約者の1人です。
「くっそう!大手の神の加護とかチート過ぎるだろ!勝ち目無いじゃん!」
いいえ、加護じゃなくて契約です。
当のゼウスは、今スライムをやっています。
「……じゃあ、降参でいいな?拘束するぞ?」
「―――――!そうはさせるか!俺は、夢の巫女☆楽園で毎日イチャイチャするんだ!出でよ、ヤマタノオロ――――」
「《神威雷霆(弱)》!」
「……」
召喚した妖怪を瞬殺され、魔王は言葉を失った。
そして暫し、沈黙が続いた。
少しは話が通じるようになった……か?
「こ……」
「こ?」
「こうなったら、せめてプリンセス☆巫女だけでもお持ち帰りだ!」
『ますたー!まおうがてんいしようとしています!』
「な!やば……!」
俺はあの魔王の執念を見誤っていたのかもしれない、いや、執念というより、巫女にかける情熱をだ。
「プリンセス☆巫女」というのは大和の巫女姫の事だろう。
魔王は俺を倒すのを諦めて、巫女姫だけを攫って逃げようとしているようだ。
「じゃ、さいなら♪」
「させるか――――!」
左手に嵌めていた指輪を光らせて転移する魔王に対し、俺は素早く何時もの操作を行いながら同じく《転移》を使って後を追った。
相手が子供だからって油断し過ぎたかな。
--------------------------
――ガンドウ大陸 大和 『天つ宮殿』――
連日の雪が降り積もって白一色に染まった庭園には大勢の兵士達が警備をしていた。
彼らは主君である巫女姫を妖怪と、妖怪を率いる魔王から守るべく全国から集められた猛者達だった。
彼らは命に代えてでも巫女姫を守ろうと、今日も精神を研ぎ澄ませながら宮殿の警備に努めていた。
(ふう。私よりも民を守って欲しいのに……)
そんな彼らを、白装束を身に纏った巫女姫・光葉は悲しげな表情で見つめながら宮殿を移動し、他国の豪商との会食が行われる広間へと移動していた。
そして、そんな彼女の不意を突くようにそれらは彼女の眼前に現れた。
「プリンセス☆巫女姫~~~~♡♡♡」
「「「!!!」」」
突如として光葉の前に現れた魔王は彼女に向かってル〇ンダイブをした。
突然の出来事に、光葉も、彼女の付き人も、そして大勢いた兵士達もすぐに反応が出来なかった。
このままでは光葉の何かが魔王によってイートインされてしまう。
そう、思われた瞬間の事だった。
「この、どアホ!」
「ぷぎゃ!?」
魔王の真上に現れた士郎はブリューナクとクラウ・ソラスで彼の頭を殴り、床を突き破って地面の下へと沈めた。
大きな振動が宮殿の敷地外まで広がり、一番近くに居た光葉は床に尻餅をついてしまった。
「ふう、これで終了♪」
士郎はかいてもいない汗を袖で拭くような仕草をしながら呟いた。
それに対する周囲の反応はというと……
「「「ええええええええええええええええええええええええ!!??」」」
大絶叫である。
黒覇王院、死んだかな?




