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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
異界の七大魔王編Ⅳ―オリンポス大陸の章―
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第358話 ボーナス屋、見届ける2

大迷宮編、どうしてこんなに長くなったんだろう?


――『オリンポス大迷宮』 カオスステージ(笑)――


 ジャイアントなスラ太郎の《一撃潰殺(スライム・プレス)》が魔王×2をドスンと潰した――――かに見えた。



『ふざけた!』


『真似を!』


『ピッ!?』



 スラ太郎が3枚に斬られた。


 魔王×2は禍々しいオーラを纏った身の丈ほどある大剣でスラ太郎を斬ったのだ。


 どうやら魔王と一緒に武器も進化していたようだ。


 それは兎も角、さらばスラ太郎。


 次回からは君のポストはブレイくんが受け継いでくれるだろう。



『『『ピィ!』』』



 ゴメンなさいブレイくん。


 スラ太郎は不死身でした。


 ジャイアントなスラ太郎×3に増殖してボヨヨ~ンと跳ねていた。


 これには誰もがビックリだ。



『ピィ!』


『ピピィ!』


『ピィ~!』



 スラ太郎×3は何処かへと去って行った。


 あのサイズで一体何所へ向かったのだろうか?



「「「……」」」



 何とも言えない沈黙がその場を包んだ。


 一部にスライムらしき物体をポケットに押し込んでいる者もいた気がするがきっと気のせいだろう。



『消えよ勇者!《奈落黒嵐波(ゲイル・オブ・タルタロス)》!!』



 魔王達の反撃が始まった。


 テュポーンを吸収した魔王はテュポーンの力も使い勇者達に対して猛攻を仕掛けていき、前衛に出ていた者達の半数を後方へと吹き飛ばしていく。


 更に某RPGシリーズのジゴ○パークやビッグ○ンのような技もタイミングよく出してくるので、勇者達は数で圧倒していながらも苦戦を強いられていた。


 最初の2分だけは。



「《孤月双雷閃》!!」


『ガ―――――――ッッ!!』



 タイガの斬撃で魔王Aの両腕が切り落とされる。


 戦闘能力が格段に上がった魔王だったが、神様達に容赦なく鍛えられたタイガと、彼を支える仲間達の敵ではなかった。


 彼らだけではない。


 このカオスステージ(笑)にまで辿り着き神々の最終試練を乗り越えた者達の前には、幾ら達人級の戦闘能力を持つ魔王でも雑魚テュポーンを取り込んだだけでは全員を倒すまでには至らなかったのだ。



「海の男の根性を見せるっすー!!《海王怒涛千撃鉄槌(サウザンド・アビシャル・ストローク!!」



 ミルトスの拳が怒涛の連撃を放ち、魔王×2の頑強な鱗を次々と破壊していく。



「マスター、今です!」


「うん!《聖母が育む光樹の森(ライト・フォレスト・フル・バインド)》!!」


『『!!』』



 ニケの魔法により地面から光の樹木が芽吹き、それらは魔王×2を飲み込み拘束しながら急成長をしていく。


 10秒と掛からずにカオスステージ(笑)は光り輝く森と化した。



『《黄龍双爪十字斬》!!』


『ガハッ!!』



 龍人(ドラグーン)から龍族(黄の氏族)に進化したレヴァンは動きを封じられた魔王Bの胴体を両手の爪で引き裂き、光の森に赤黒い血の雨が降り注いだ。



『オオオオオオオッ!!《奈落魔龍之息吹(ブレス・オブ・タルタロス)》!!』


「停まるワン!」


『――――ッ!!』



 脳筋神を倒したら何故か巨乳美少女になったワッコの《狗神之咆哮(エレメント・ハウル)》が炸裂し、魔王Bの特大のブレスは氷柱のように凍り付き砕け散った。


 一瞬動揺する魔王Bにワッコの仲間と戦友達が一斉攻撃をする。



「《爆閃豪雨矢(サウザント・ノヴァ・アロー)》!!」


「ホホホホホホ!飯綱(いづな)達よ、行くのじゃ!」


「うおおおおおおおお!《飛翔極光超克剣(エクストリーム・オーロラ・セイバー)》!!」


「潰れろ!!《霊王槌天砕撃(エレメンタル・メテオ・インパクト)》!!」


「《轟雷烈火暴嵐(ブレイズ・ブリッツ・テンペスト)》!!」


『グオオオオオオオオオオオオオ――――――ッッ!!』


「蜂の巣にしちまえ、グングニル!!」


『ガハッ―――――――!!』



 魔王Bは勇者達のフルボッコに為す術もなく命の灯を散らそうとしていた。


 だがそこへ、主君の危機を救おうとする者達が駆け付けた。



『陛下――――ッ!!』


『おのれ人間どもめ!!』


『『虚無の秘石』よ、その力を解放せ―――――』


海神蹂躙(パトリムパス)ちゃん、ファイヤー♡」


『ギャアアアアアアアアアアア―――――ッッ!!』



 主君を助けようとした配下3人は、ゴスロリ聖女――『デメテル大迷宮』組のあの聖女――の対空砲火の餌食となった。


 尚、魔王の配下が使おうとした『虚無の秘石』とは、1日5回だけどんな魔法や能力も完全無効化することが出来るアイテムだが、結局使われることなく戦場に落とされたのだった。


 それを誰が拾ったのかは―――――不明である。



『グハッ!!』


「――――終わりだ」


『……お前は、確かミザールを倒した勇者だな?それ程の力を有していながら、まだ(・・)人間であり、且つ人間の中に居るとはな……』


「何が言いたい?」



 魔王Bの喉元に勇者テリーの蒼剣が突き出される中、魔王はテリーを見て何処か憐れむような目で苦笑した。



『過ぎた力は身を滅ぼし、仮に滅びなかったとしても力を持ちすぎた人間は人間としては生きられなくなる。この世の大半を占める脆弱な人間共がお前達が人間である事を許さないのだからな。どんなに綺麗事を並べようとも、人間は強過ぎる者を恐れ、妬み、忌避する生き物だからな。お前達はいずれ、守ったものによって破滅することになるだろう』


「……確かにそれは一理ある。この世界は決して優しいばかりではないという事を俺は知っている。けど魔王、それは過去の話で未来じゃない!」


『……何?』



 最後の悪足掻きか、魔王は言葉でテリー達を追い詰めようとするが、テリーは微塵も動揺することなく反論した。


 既に別の意味での地獄を味わってきたテリーに、魔王の語る「現実」の言葉は刃にはならなかった。


 その後も言葉の攻防が繰り広げられるが、テリーは勿論のこと、他の勇者達も心を折られる事は無かった。



『――――そうか、そこまで言うのなら……戯言でないと言うのならば!!』


「「「!!」」」



 魔王Bから禍々しい魔力が噴出し、その現象は離れた場所に居た魔王Aにも起きていた。


 その魔力は魔王×2を拘束していた光の樹木を熔かしてゆき、それを見たテリー達は魔王の首を斬りおとそうとしたが、魔力が鎧のようにテリーの剣から魔王を守った。



『『《冥気魔装(ハデス・フォース)》!!』』



 魔王×2の姿が一瞬で変化し、ドラゴンから大柄の龍人(ドラグーン)に近い姿となった。


 一部から「最終形態☆」という声がしたが、誰も聞いてはいなかった。



『『早々に止めを刺さなかったこと、己の死をもって後悔するがいい!!』』



 魔王×2のから放たれる覇気が勇者達を突風の如く襲い、彼らの体は一瞬硬直してしまう。


 その一瞬の隙を、魔王×2は見逃さなかった。



「しまっ――――!」



 テリーが反応した時には魔王×2は数百人に分身して彼らの首を斬りおとそうとしていた。


 このままでは死ぬ。そう思った時だった。



『『『ピィ!!』』』


『―――――ッガ!?』


「スラオ!!」


『ピィ!』



 それを救ったのはスライム達だった。


 大小無数のスライム達が、一瞬ではあるが光の速度を超えて魔王達に突進、分身を1つ残らず消滅させたのだ。



「え!もしかしてプルちゃん?」


『お姉ちゃん、大丈夫~?』


「エル!?」


『ピィ♪』



 テリー以外にも、スライムを連れた勇者は予想外の展開にビックリしていた。


 そして、沢山のスライムが「かかってこいや!」と挑発するように跳ねている中で、何処か神々しい且つ雄々しいオーラを放た金色のスライムが居た。



『ピィ!!』


『な、何者だ……!?』


『ピピィ!!』


『ブレイ、だと……?』



 緊急速報、魔王はスライムの言葉が通じていた!


 一部のスライム愛好家から妬まれそうなスキルである。


 それはさて置き、勇者達を助け魔王に大打撃を与えたのは、今はもうこの世に居ない3柱の神を殺し、「ゴールデンブレイブスライム」から「ジェネシスブレイブスライム」に進化したブレイくんだった。



『ピッピピィ~!』



 ブレイくんは翔んだ!



『ピィ~!』



 そして空の彼方へと去って行った。


 さよならブレイくん、また会う日まで。



『……とんだ邪魔が入っ――――』


「はあああああああ!!」



 訳が解らないと顔を顰める魔王に勇者達が襲い掛かる。


 気のせいかもしれないが、ブレイくんから小さな勇気を分けて貰った彼らは最早魔王に対して恐怖を感じていなかった。



『――――クッ!私としたことが油断を!だが、それでも負けはしない!!』


「いや、勝つのは俺達だ!!」


『何!?』



 全員が全力全開!


 魔王×2も圧倒する覇気で魔王に攻めていった。


 魔王も負けじと愛剣を揮い、数で攻めてくるスライム達にも後れを取らずに攻撃を繰り出していく。


 圧倒的な数の差を前に互角に近い戦いをする魔王は本当に強かった。


 だが、戦いが続くにつれ魔王の心に小さな“迷い”が生まれ始めていた。


 そしてその“迷い”が小さな、だけど決定的な隙を生み出し、戦いの勝敗を決める事となった。



「うおおおおおおおおおおおおおお―――――ッッ!!」


『『グアアアアアアアアアアアア!!わ、私はここで負ける訳には――――――!!』』


「これで!!」


「終わりっす!!」


『止めだ!!』


「「「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」



 背中合わせの魔王×2は、勇者達の最後の一撃を避けることも、防ぐこともできず全身で受け、その衝撃と閃光に飲み込まれていった。




『『わ…た…しは―――――――――――――――――』』




 閃光に飲み込まれる瞬間、魔王は一滴の涙を流しながら何かを呟こうとしたが、その言葉は最後まで紡がれる事は無かった。


 そして閃光が収まると、そこに魔王の姿は無かった。



「……勝った?」



 誰かが訊ねるように呟いた。


 沈黙が彼らを包み込むが、すぐに破られた。



「「魔王に勝ったぜ!!」」


「「「――――!!」」」



 次に口を開いた双子の粋の良い声に、その場に居た全員の顔が歓喜に色に染まった。



「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」


「「「勝ったあああああああああああああ!!」」」



 勇者達は一斉に歓声を上げた。


 長かった『大迷宮』攻略の末、彼らはオリンポス大陸の魔王を倒したのだった。









ようやく魔王を倒しました。


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