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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
異界の七大魔王編Ⅳ―オリンポス大陸の章―
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第352話 ボーナス屋、映画鑑賞する18

――『オリンポス大迷宮』 カオスステージ(笑)――


『ピ?』



 それに最初に気付いたのは「女帝のスライム(エンプレススライム)」のエルちゃんだった。


 御主人様のレノスと一緒に眷属(鷲)を倒した後に現れた鍛冶神ヘファイストスを他のパーティと合同で倒そうとしていた最中、別の場所から何かが飛んでくるのに気付き、咄嗟に横に避けた。



『ピ!?痛~い!』


『ピ?』


『……あれ?』


『ピピィ?』


『うん、僕、スライムだよ。名前はプル!』



 落ちてきたのは『アテナ大迷宮』組に居た進化したスライムのプルくんだった。



『ピィ、ピピィ!』


『へえ、君はエルっていうんだね!』


『ピィ!』



 進化してもスライムなので互いに言葉が通じるらしく、1人と1匹は簡単に自己紹介を済ませる。


 その直後、遠くから大きな爆発音が聞こえてきた。



『うふふふふふふ!もっと、もっと綺麗な赤い血を私に見せなさい?』


「やかましいぞ、GBBA(ジェノサイト・ババア)!!全裸が好きならヌーディストビーチに行け!」


「イシュタルやカーリーと百合バトルでもしてろ!!《ダーク・サウザンド・インパクト》!!」



 音源元では双子が美の女神と大バトルを繰り広げていた。


 魅了モードから全裸バトルモードにチェンジしたアフロディーテは年齢不相応な戦闘力を発揮する双子との大バトルに恍惚の表情を浮かべている。


 よく見れば(フェン)飛龍(バーン)(ルージ)も一緒に戦っており、少し離れた場所では杖を掲げた少女(ニケ)や戦場を走り続ける女性(ナナ)の姿もあった。


 プルもさっきまであそこに居たそうだが、アフロディーテの本気パンチで此処まで飛ばされたらしい。



『ピピィ!』


『うん、お姉ちゃん達は最強なんだよ!僕も最強になるために戦ってるの!』


『ピィ!ピッピピィ!』


『そっか~!エルのお兄ちゃんも最強なんだ~!』


『ピィ!』



 傍から見れば実に微笑ましい光景だったが、そこに蛇のようにうねった竜巻が横切った。



『うわ!?』


『ピィ!?』



 さらにその直後、空から流星群が降ってきた。


 戦場は大混乱に極みに至ろうとしていた。



『ピィ~!ピィ~!』


『わ~!大変だ~!』



 ビックリしたエルは高速回転しながら飛び跳ね、人型をとっていたプルもビックリしてスライム形態になって同じように飛び跳ねた。


 プルの視線の先ではアフロディーテとニケ達が空中大バトルを繰り広げており、双子は降ってくる流星を避けるどころか片手で掴んでアフロディーテに投げつけたり蹴り飛ばしたりし、アフロディーテも驚異の胸で流星を弾き飛ばしている。


 ナナはウィズの指示を受けながら矢を撃ち、ニケはオリジナル魔法を複数同時発動させて流星群に負けない光景を今も創り上げていた。


 けど、見た目的にはアフロディーテのド派手神術の方が強そうであり、プルの目にもニケ達が劣勢のように見えていた。


 つまり、勘違いをした。



『ピ!お姉ちゃんを助けないと!』


『ピィ!ピピィ!』



 エルも自分の仲間達を見て同じ事を叫んでいる。


 エルの視線の先では、レノス達とヘファイストスの戦場に何故かポセイドンとヘラクレスが追加されていた。



『ハハハハハハハ!!乱戦とは愉快ぞ!!見よ、海神奥義《海地大激動(デュアル・ディザスター)》!!』


『おう、ヘファイストス!ついでに助太刀するぞ!!(あ、後で新兵器を見繕ってくれ!)』


『帰れ!!』



 ヘファイストスを大激怒していた。


 だけどその怒りはスルーされて大乱戦、レノス達は一気に大ピンチに陥ってしまう。



『ピィ!ピピィ!』


『うん!皆を助けないと!友達を一杯呼ぼう!』


『ピィ!』



 プルとエルの心は1つになった。


 2匹は同時にスライム限定能力《スライム大召喚》を発動し、この場所に取り敢えず凄く強い同族(・・・・・・)を召喚した。


 それは愛の力(?)だったのか、とんでもない同族(スライム)を召喚してしまった。



『ピィ!ピピィ!』



 勇ましいオーラを纏ってスラオ参上!



『ピピィ!』



 黄金の光沢を輝かせてブレイくん登場!



『ピィ!』



 救いを求める声にスラ太郎くん降臨!


 ここに最強過ぎるトリプルスライムが集結した!



『ピピィ~!ピィピィ!』


『皆を助けたいんだ!力を貸してください!』


『『『ピィ!』』』



 同族の頼みを彼らは二つ返事で了承した。


 そして話は前回のラストに戻る。







--------------------------


 大暴走なアナンシの前に最強スライムトリオが現れた!



『『『―――――ピィ!』』』


『…………………………………え?』



 それを見たアナンシの思考は一瞬停止した。



『………………………………………………』



 そして滝のような汗を流す。


 腐っても神であるアナンシは、すぐに自分に死亡フラグが立ったことを瞬時に悟ったのだ。


 神々の間でも最近話題の最強スライム、彼らが目の前に現れた事が意味するものは、アナンシ達の悪ふざけに最終幕(フィナーレ)だ。



『ピピピィ~!』



 スラ太郎が不思議な発光現象を起こしながら飛び跳ね、カオスステージ(笑)全域を不思議な光で包み込んでいった。


 発動すれば本人にも何が起きるか分からないスラ太郎の能力《不思議現象(ワンダー・ワンダー)》である。


 さあ、一体何が起きるのか?



『んべし!?』


『ドハッ!?』



 答え――――バカ神×2が強制召喚された。



『……ロキ!ヘルメス!?』


『え……?あ!ま、まさか!?』


『ヤベエ!!神話級の死亡フラグが立った!!』



 この世に災厄を齎す三位一体(トリプルバカ)が此処に集結した!


 腐りに腐った神は神、彼らは即座に自分に死亡フラグが立った事を悟った。



『『『…………』』』



 互いに視線をかわす三位一体、彼らの全身はナイアガラにも負けない勢いの汗が流れている。


 そんな彼らを見つめるのは最強トリプルスライム。


 彼らは目の前の神々と戦う気満々だ!



『ピィ~~~~~!!』



 ブレイくんが跳んだ!


 溜めも無しで1000m以上の高さまで跳んだブレイくんは、真下のステージ全域に向かって光のシャワーを降らし、ステージ上にいる神以外の全て(・・・・・・)を完全回復させた。


 そして更に、先に発動したスラ太郎の《不思議現象》との相乗効果により、苦戦を強いられている多くの者達に奇跡を齎していった。



『ヤベエ!此処から脱出できねえ!』


『『何だと!!』』



 ついでにバカ神達の逃亡も阻止した。






--------------------------


――???――


(うぅぅ………僕は……死んじゃったの……?)



 気が付けば何も無い闇の中をタイガは漂っていた。


 どうして自分が此処に居るのか記憶を思い返し、軍神アレスとの戦いで暴走してしまい、一時は対等に戦えたが、全力を出したアレスの一閃に胸を貫かれ―――――



(あれが神……怖い、怖いよ………)



 アレスの圧倒的な力はタイガのトラウマを呼び起こしていた。


 日本に居た頃、同級生から力で蹂躙され虐められ続けていた頃の恐怖を思い出したのだ。


 最初は抵抗し説得もしたが、圧倒的な力の前には無力だった。


 どんなに正しい事を言っても、弱かったタイガがいっては全く無意味だったのだ。



(怖い…怖いよ……)



 全身が恐怖で振るえる。


 イジメが怖い。暴力が怖い。アレスが怖い。戦いが怖い。死ぬのが怖い。


 だが、何故かそれらの恐怖は彼の心を壊すほどの力を持っていなかった。


 そんな事より(・・・・・・)も、もっと怖いものが今の彼の中にはあった。



(みんな…………)



 イジメよりも、暴力よりも、神よりも、死よりも、大事な仲間達と離れ離れになるのが何よりも怖かった。


 剣を握ったことも無かったタイガを一から鍛え上げてくれた、一人っ子のタイガにとっては実の兄も同然の存在であるネストル。


 大迷宮の中でキングオーガに殺されかけている処を助けた、タイガにとって可愛い妹のような存在であるニッサ。


 タイガに魔法のことを教えてくれた、タイガを実の兄のように慕ってくれるミロン。


 何故か何時も睨み合っているけど、タイガが道を間違えそうになったり心が折れそうになる時には必死に彼を支えてくれたアンジェリカとパルテナ。



(――――嫌だ!!みんなの所に戻りたい!僕は、死にたくない!!)



 例え、またアレスという存在と戦う事になるとしても、恐怖に全身を支配されることになるとしても、彼は仲間の下に帰りたいと心の底から願った。


 いや、願いはそれだけではない。



(もっと!もっと強くなりたい……!)



 臆病者のままでもいい。ヘタレと呼ばれてもいい。カッコ悪くたっていい。


 だけど、仲間を残して1人だけで死ぬ弱い男でいるのは嫌だと、仲間達と共にに居られる男になりたいと、自分を曲げない強い男になりたいと魂の奥底から願った。



(強く、なりたい――――――ッッ!!)



 その時、何処からともなく眩い光が降り注いできた。



(何、この光……温かい?)



 不思議な光に包まれ、タイガは不思議な感覚に襲われる。


 まるで自分の中にあった何かが外れた様な、何かが変化して様なそんな感覚だった。


 そして、それとは別にタイガが今いる場所にも変化が起きていた。



『――――ほう?この位相(・・・・)に人間が来るとは珍しい?』



 突如、何処からともなく不思議な声が聞こえてきたのだ。


 男のようにも女のようにも聞こえるその声は、タイガのことを面白がるように話しかけてきた。



(だ、誰!?)


『己の名を告げず、我に名を問うとは随分と……否、これも時代か。よかろう、心して聞くがよい。我が名は――――天之御中主神(アメノミナカヌシ)である』



 声の主は日本最古の神様だった。







--------------------------


――オオバ王国 秘密の離宮――


「なんか凄そうなのが出た!」


「というか、死亡フラグ立っても実況を続けているわよ。あのバカ神……」


「ここまで来ると、逆に尊敬してしまうな」


 士郎は日本最古の神様にビックリし、唯花は絶体絶命の状況でも実況を続けるロキやヘルメス達に呆れ、ステラは逆に感心していた。


 スラ太郎の登場については何故か誰もツッコまない。


 だって、スラ太郎だから。



(マスター)、どうやらスラ太郎の能力の影響で他の方々にもイベントが発生したようです。チートフェスティバルです」


「マジで?」



 自分の存在意義がなくなるのではと、士郎は地味に焦ったのだった。


 それに対し、唯花は冷静にツッコんだ。



「焦るなら、さっさとやればいいでしょ!」


「ハイ、そうですね」







ヘルメス「折れろ!俺の死亡フラグ!」


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