第348話 ボーナス屋、映画鑑賞する14
明けましておめでとうございます。
――『オリンポス大迷宮』 カオスステージ(笑)――
開戦のゴングが鳴った。
だが、それにすぐに反応できた者は人も神も含めて少なかった。
無理もない。
一部を除き、此処に居る殆どの者達は安全地帯で大爆笑しているであろう三位一体の厄介神2柱によってこの混沌とした戦場に放り込まれたのだから。
そんな中、2柱の神だけは全く動揺することなく開戦と共に動き出した。
『フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!小さく脆弱な者共よ!貴様らが此処に至るまでの道程で得た力がどれ程のものか、我らに見せてみよ!!強者ならば我等と同じ至高の力を、弱者ならば永久の敗北を与えてくれよう!!我等は神!!貴様らの創造主にして世界の管理者なり!!』
神アナンシは悪ノリしていた。
ドサクサに神々の代表のようなポーズをとり、乗り気ゼロの神々をも後に引けない状況へと引き摺りこんでいく。
何故に別の神話体系の神がこの現状を勝手に取り仕切っているのか、テメエ元凶の癖にドヤ顔してんじゃねえ、てか貴様をフルボッコしてやるぞ、等と他の神々が心の内で叫んでいるのにも気付きながらもアナンシの暴走は続く。
『――――我等が眷属を倒し、我等神々をも倒してみろ!!脆弱な“人”の底力を見せてみよ!!我が名はアナンシ、天空の創造主にして豊饒を司りし神なり!!』
神オーラ全開だった。
自分が神であるという事を誇示する為か、アナンシは普段は抑えている神オーラを派手な演出をしながら放出し、見上げている者達の心を大いに刺激していった。
ちなみに、『デメテル大迷宮』組の為に用意していた偽デメテルは神パワーで処分済みである。
「―――――見よ、同士達よ!我等の女神が絶望の闇に囚われておられる!我らの手でお救いするのだ―――――!!」
「「「うおおおおおおおおおおお!!オッパイィィィ~~~!!」」」
真っ先に動いたのは『デメテル大迷宮』組だった。
心を粉砕されてしまって真っ暗になりながら泣いている自分達の女神の姿を目にし、闘志にニトログリセリンを注いだかのように爆発していた。
そしてカオスな戦場を変形合体魔導バイクが爆走、巨大変形ロボが召喚された支援型変形ロボと合体してから発進、ゴスロリ銃撃聖女が神々に一斉砲火、深緑の戦士がアナンシに必殺キック、エセ忍者は消失、オッパイ教団が聖歌で広域殲滅魔法、筋肉はメタリックな巨大筋肉に変身、etc、etc……。
世にも奇妙過ぎる光景がそこにあった。
(((何、アレ?)))
この時、意図せずして他の『大迷宮』組の心は1つになった。
当然だろう。
ファンタジーな世界で純粋培養されてきた者にとって、“アレ”は幾らなんでも異質過ぎるのだから。
「ち、父上、あそこに居るのはまさか……」
「メネラオス王?随分と奇抜な格好を……呪われたのか?」
それに加え、各国の王族や貴族達は奇怪過ぎる集団の中に知っている顔があるのに気付き、彼らの身に一体何が起きたのかと目を丸くしていた。
無理も無い。
以前出会った時は威厳溢れる立派な王様だったのが、今では「おっぱい!」を連呼する変態集団の教祖に変貌しているんだから驚かない方がおかしい。
だが、今は暢気に驚いている暇は無かった。
『GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
『ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
開戦のゴングが鳴ると共に、今まで動きを停められていた各神々の眷属達も一斉に動き出す。
ヘファイストスの眷属『豪ナル紅の化身』はマグマのブレスを吐き、ヘスティアの眷属『烈火の神霊』は咆哮を上げ1000人近くはいる挑戦者達の精神を委縮させていく。
『――――出でよ!オリンポスに集いし眷属達よ!』
そしてアナンシの更なる悪ふざけが暴走する。
背後から「貴方、オリンポスの神じゃないでしょ!」と、弟の頭を鷲掴みにしている女神がツッコんできたがそれでも止まらない。
アナンシがパチンと指を鳴らすと同時に、広大な戦闘舞台に次々と敵が出現する。
『ウォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!』
空から全能神の眷属である黄金の大鷲が現れる。
主人が長期不在のせいで暇を持て余しているのか、アナンシの召喚にもノリノリで応じたようだ。
『ヒヒィィィィィィィィィィン!!』
水飛沫と共に巨大な駿馬、海神の眷属が現れる。
競馬の守護神でもある脳筋神の眷属はやっぱり馬だった。
ちなみに、馬の眷属の後ろからは可愛いイルカの群れが付いてきている。
ピンクイルカもいて、かなり戦い辛い敵だった。
『ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
大地を大きく揺らしながら、巨大な豚がやってきた。
未だ長姉に慰められ続けている豊饒神の眷属である。
ちなみに、頭が単純なので今回もヘルメスやアナンシに絶賛騙され中である。
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』
両目を真っ赤に光らせながら、月の女神の眷属である巨大メス熊が現れる。
あの爪に捕まったらきっと生きて残れないだろう。
『『ゴッケェ~~~~~!!』』
コッコ団にライバル登場か!?
バカ神と愚弟神の眷属であるレジェンドな鶏達が降臨した。
彼らは出来ればコッコ団と戦って欲しかった。
『フフフフ♡』
『……』
美神と処女神の眷属は不参加のようだ。
どうやら、彼女達の眷属はバカに呼ばれてくるようなキャラではないらしい。
というか、アテナ様の肩に乗っている眷属は白い目で他の神々の眷属を見つめているのは気のせいだろうか?
あと、今更ではあるが、この「カオスステージ(笑)」は火山や海、砂漠、草原、雪原等様々な環境が継ぎ接ぎに広がっており、移動するだけでも悲惨な目に遭う構造となっている。
「クッ!皆の者怯むな!陣形を組み直し、敵を分断させて戦うのだ!」
「「「おおお――――っ!!」」」
『ヘスティア大迷宮』組は復活し、数の多さを利用して眷属達を分断しようと動く。
地味に多彩な能力を持つ彼らの策は功を奏し、眷属達は広大な戦場にバラバラに散っていき、一方的な蹂躙という展開は避けられたかのように見えた。
『ウフフフフフフ、最初に私を楽しませてくれるのは誰かしら?』
美の女神、アフロディーテである。
既に露出過多な白い衣装を纏った美の女神は微笑みながら戦場のど真ん中へと舞い降りた。
ちなみに、神々の身長は一部の脳筋神とバカ神を除けば大体人間サイズである。
ただし、女の武器は神サイズである。
『さあ、始めましょう♡』
パサ、とタダでさえ少ない彼女の着衣の8割が地上に落ち、この世で最も美しい裸体がカミングアウトされた。
「「「―――――――――――ッッッ!!」」」
その絶世の美は男女問わず、その場にいた全ての人々の心を奪っていった。
特に男性陣からは真っ赤なナイアガラが……
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――ファリアス帝国 帝都タラ ファリアス宮殿――
「「「――――――――ッッッ!!」」」
バカ皇帝を始め、帝国貴族達の心もガッチリと掴んでいた。
約1名を除いては。
「――――ハ!リーゼロッテ、あれを見ちゃだめだ!!」
「―――――ッ!?え……ロビン!?」
チート化が進んで女神の“魅了”にすら高い耐性を持つロビンくんのハートは奪われなかった。
ロビンくんのハートは安くは無いのだ!
尚、この一件がキッカケでロビンくんの男としての株が急上昇し、その他男性陣の株がストップ安になったのは余談である。
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――オオバ王国 秘密の離宮――
当然だが、ドチートな士郎達の心も美の女神の手には落ちていなかった。
ただし、それでも1柱の女神の裸体を無修正で見ているのには変わらなかった。
「「「見ちゃダメ(です)!!」」」
「ギャアアアアアア!!目が、目がああああああああああああ!!」
士郎は嫁達に一斉に両目を物理的に攻撃されてしまった。
「問題ありません。《神速再生》で既に眼球は再生済みです」
ソフィアちゃんも攻撃していた。
その胸の内では、本気で肉体改造を行おうかと悩んでいたのは余談である。
士郎「バ〇ス!!」
唯花「あ、意外と余裕ね?もう一発やろう!」
士郎「ギャアアアアアアアアア!!」




