第34話 ボーナス屋、ドラゴンを渡しに行く
新キャラ銀耀くん、今のところ本作品にのみ登場する予定です。
まだ日本にいて異世界から来た友人達に魔法や剣の修業をつけてもらっていた頃の話だ。
言い方はあれだが、異世界の友人達の中に約1名のバカがいたんだが、そいつはとある銀色の龍王と契約をしていた。
俺も修業中に何度か会った事はあるが、そいつもバカ同様にバカだった。
だけど実力は本物らしく、俺より年下なのに魔力も含めたスペックがマジで高かった。
その龍王の名は“銀洸”、毎週月曜日と水曜日(+木曜日も?)には朝から(人間の姿になって)コンビニでマンガ雑誌を買っている姿を何度か見かけたことがある。
日本のサブカルチャーにハマりまくっている変な龍王だ。
(作者同時連載中の「黒龍の契約者」参照)
「・・・お前、もしかしなくても銀洸の弟か?」
「うん、そうだよ~♪」
やっぱりか。
あいつも人間の姿になっていた時は銀髪の少年だったからな。
兄弟がいたのか。
ああ、龍族は全員が《人化》って能力があって自由に姿を人間に変えられるんだよ。
同じ龍でも、龍族と竜種(魔獣)とじゃ全く別の生き物らしい。
人とゴリラが違うのと似たような感じだろう。
「お兄ちゃんも、もしかしなくても兄上の友達なの?」
「・・・ああ、一応な。」
あいつ、兄上って呼ばれてるのか。
さすがバカでも龍王だな。
「で、一緒にいるのがお前の契約者か?」
「そして同級生~♪」
「仲良しだよね♪」
性格までそっくりな兄弟だな。
それはそうと、ルチオの『大魔王の玄孫』って・・・?
ルビで『剣聖』ってあったけど、明らかに大魔王の方が目立って嫌な予感しかしない。
「ルチオはどこの国に住んでたんだ?」
「アメリカ!」
「2人はどうやってこっちに来たんだ?」
「え~とね、昨日、こっそり世界と世界の狭間を探検していたら誰かが悲鳴をあげてこっちに無理矢理召喚されるのを見かけたから追いかけて来た!」
「何!?」
召喚だって!?
俺がアンナちゃんに召喚されたみたいに、他にも異世界人が来てるのか!?
「けど、途中で見失っちゃった。」
「それで何で奴隷になってたんだ?お前達ならこの世界の悪党なんかイチコロだろ?」
「え~、怖いよ~。」
おい、今のあからさまに棒読みだったぞ!
「帰ろうと思ったらお腹が空いちゃって、そしたら知らない人にご飯をくれるって言われてついて行ったら・・・。」
そのまま奴隷にされた、か。
知らない人についていくなって親に教わらなかったのか?
「すぐ逃げなかったのか?」
「気が付いたら暗くなってたし、帰るときは時間も移動すれば平気かな~と思って泊まっちゃった♪」
「おい!」
時属性があるんだから一日前に戻ることもできるだろうけど、奴隷商の店で一泊って・・・。
危機感なさすぎじゃないのか?
まあ、何があっても生き延びそうな気もするけどな。
いや、まだ6歳だしそんなことを考えるのはよそう。
それにこれ以上は話が長くなりそうだ。
詳しい話はまた後にしよう。
「じゃあ、また後で話を聞きに来るから大人しく待ってろよ?」
「「は~い!」」
さてと、とりあえずは団長に報告しに行ってくるか。
その前に病気の子用にベッドと薬だな。
俺は未だに話がまとまっていないロビンくん達の元に戻った。
まだ続いてたのかよ。
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ロビンくんと騎士トリオと一緒に団長に調査の報告をした。
たなみに、チビ皇子のルドルフはロビンくんが抱いたままだ。
「・・・なるほど、家出中の令嬢に聖国の教皇の孫娘、それに“火の民”か。何と言うか・・・・・・」
団長は複雑そうな顔をしている。
そして視線をロビンくんの腕の中でスヤスヤと寝ているルドルフに向ける。
「しかもルドルフ殿下までとは・・・。今日は徹夜になりそうだな。」
団長はため息を吐きながら呟いた。
だよね~、よりにもよって皇子様が奴隷にされていたなんて大問題だ。
今以上に奴隷商達の取り調べを徹底的にやらないといけないし、領主のオッサンと一緒に忙しくなるだろうな。
「もっと詳しく話を聞きたいけど病気の子もいるから後にした方がいいと思うぜ?」
「そうだな。とりあえず、続きは午後からにするか。」
「だな!俺達もこの後の予定もあるし、午後にまた来るぜ!」
と言うわけで俺とロビンくんは騎士団の詰所をいったん後にした。
なお、ルドルフは執事さんを呼んで領主の館で丁重に保護してもらうことにした。
さて、遅くなったけど、フライハイトさんにドラゴンを買い取ってもらうか!
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――港町ヴァール 『フライハイト商会』大倉庫――
そんな訳で早速来ました大倉庫!
商会の裏にある倉庫とは別に、港沿いにあったぜ!
何か学校の体育館より大きいんじゃないか?
それに地下もあるみたいだし。
「お待ちしていました。シロウ殿、ロビン殿!」
「お待たせしました。」
「いえいえ、私達も丁度準備が終わったところです。」
「何か、凄い数の人が集まってるな?」
倉庫の中には何だか筋肉ムキムキの男勢がわんさか集まっている。
何だこれ、漢祭か!?
「商会に所属している解体の解体職人や力仕事の得意な方々です。何せ、ファイヤードレイクを10体以上も解体して査定するので人手がいるんです。」
「まあ、確かにそうだな。」
あの数と大きさだ。
腐らないうちに全部解体するには最低でも数十人は必要だろうな。
「ご安心ください。全員、秘密を漏らすような事はしない信用に足る者達ばかりです。」
「そうか!じゃあ、さっそく頼むぜ!」
俺とロビンくんは四次元倉庫からファイヤードレイクをドンと取り出した。
まずは2体だ!
「「「おおお!!」」」
ドンと出すと倉庫内に歓声が上がった。
よ~し、どんどん出すぞ!
「ほい!さらに2体追加!」
そしてどんどんファイヤードレイクを出していく。
ロビンくんが10体目を出した辺りからは驚く声もあがらなくなった。
驚愕を通り越して呆れられてるのかな。
「これで全部だぜ!」
「こ・・・これは・・・!」
「まさか、全部成体のファイヤードレイク・・・!?」
「嘘だろ・・・・!?」
「これを全部倒したってのか!?」
「これは大仕事だな・・・・。」
「つーか、何所から出した!?」
どうやら、助っ人の皆さんは情報をしっかりと飲み込んでいなかったみたいだ。
俺達の前には大量のドラゴン、これ全部を解体して査定するにはどれだけ時間がかかるんだろうな?
なんてことを考えていると、助っ人の1人が何か驚いたようにファイヤードレイクの1体を指差しながら何か騒ぎ始めた。
どうしたんだ?
「―――――――――じゃないか?」
「まさか――――――――!」
「だが、しかし――――――!」
何だか他の助っ人達も騒ぎ始めたな。
なんかさらに別の個体も指差し始めたな。
あれって確か、俺やヒューゴが首を斬った個体じゃなかったっけ?
フライハイトさんも呼ばれてるな?
あ、こっちに来た!
「シロウ殿、どうやらファイヤードレイクの中に別種が混ざっていたようです!」
「ええ!?」
「正確にはファイヤードレイクの亜種なのですが、通常のファイヤードレイクよりも生命力が強くて心臓を潰すか首を斬るかしないと倒せないファイヤードレイクの中でも稀少な個体のようです。」
「もしかして、首を斬った2体とか?」
「はい、たまたま竜種に詳しい元冒険者の解体屋がいたので気付く事が出来ました。」
マジで!?
どうりで生き埋めにしたのにしぶとい訳だ。
結果的にとは言え、正しい方法で討伐できてたんだな。
「とりあえず、お2人にも《鑑定》で見てもらえれば分かると思います。」
「じゃあ、試しに見てみるか?」
「そうですね。」
俺達は首無しのファイヤードレイクの亜種に近づいて《鑑定》を使ってみた。
【ジオ・ファイヤードレイク ♂(死亡)】
【分類】竜型魔獣
【用途】肉以外の各部位は武器・防具の素材、肉は食用(美味)
【詳細】ファイヤードレイクの亜種。
通常のファイヤードレイクよりも生命力が強く、また、火属性以外にも土属性にも耐性がある。
鱗は通常よりも強度が高いだけでなく、磨けば宝石のように美しく宝飾品の材料にもなる。
肉も通常よりも上質な脂肪分があり、栄養も豊富で超高級食材にもなる。
また、体内には高純度の魔石を宿している。
とにかく宝の山みたいだな。
鱗は宝石にもなって肉は超高級食材、俺もヒューゴもとんでもないのを狩ったみたいだな?
「いやはや、シロウ殿といると驚いてばかりですね。今までの常識が紙屑のように思えてきますよ。」
確かに常識はずれな事ばかりしてるよな。
それはそうと、助っ人達は解体を始めたみたいだな。
「お~!凄い光景だな?」
「ええ、私も竜種の解体を見るのは数年ぶりですが、何度見ても迫力があります。」
テレビでマグロや牛の解体とかは見たことあるけど、こっちはもっと凄いな!
身の丈ほどの大剣みたいなのを軽々持ってるし、何だかよく分からない道具もたくさんあるな。
見ていて飽きそうにないけど、これは1時間や2時間じゃ終わりそうにないな。
「これ、当たり前だけど大仕事だよな?」
「この数は異例中の異例ですので、今日は徹夜になるかもしれません。本当ならもっと人手が欲しいところですが、これ以上となると外部の者を呼ぶことになるので・・・・」
流石にそれは困るな。
外部に漏れたら必然的に俺達の事を探られるだろうし、あくまで秘密裏に買い取ってほしいからここは皆さんに頑張って貰うしかないか。
ちなみに、解体にかかる経費は大丈夫なのかと効いたら、解体した素材を高く売るから問題ないと笑って答えてくれた。
流石商人、儲ける気満々だな。
「――――――解体は大分かかりますが、査定自体は夕方頃には済ませておきます。」
「じゃあ、夕方頃にまた来るぜ!」
「はい、こちらでお待ちしています。」
夕方頃か。
元奴隷達の聴取とかが終わるのもその頃だな。
俺とロビンくんは裏口からコッソリと出て海沿いの通りに出た。
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――港町ヴァール 海岸通り――
「そういえば、そろそろ昼だな?」
「ですね。何か食べてから村に戻りましょうか?」
「賛成~~♪」
さ~て、何を食べるかな~~♪
屋台巡りもしたいし、酒場で食べるのもいいな!
あ、アンナちゃんやステラちゃんにお土産を買って行こうかな?
「ヒャッハ~~~!!」
「おい!どうしたんだよ兄貴!?」
「武器屋で変な武器買ってから様子がおかしいぞ!?」
「ヒ~~ハ~~!!」
「わ~~~!お前もか~~~!?」
・・・・・・何か見覚えのある武器を振り回してる連中がいるな?
ま、俺には関係ないか。
次回は日曜日更新予定です。