第347話 ボーナス屋、映画鑑賞する13
執筆時間が無い……
とりあえず、今年最後の更新です。
――オオバ王国 秘密の離宮――
長かった映画もいよいよ終盤に入ってきたようだ。
オリンポス大陸上空に突如出現した100層構造の山、アレなんて創〇山?(ネタ古い?)
「……コレ、100%あいつ等の道楽だよな?」
「何度潰しても自分達の欲望を貫き通しているわね。ここまで来ると清々し……いいえ、やっぱり腹立たしいわ!何よアレ?何でまた日本人が召喚されているのよ!30人も!それも問題児ばかり!」
「明らかに本命は1人なのは丸分かりだけどな。それ以外は捨てモブ」
「詳細を説明します。バカ神がアポロン様を何時ものように誑かし、『アポロン大迷宮』に召喚陣を設置させました。それによりバカの希望する条件に合った、日本のとある学校の生徒をクラスごと召喚したのです。1人のいじめられっ子が異世界でカッコいい勇者になり、逆にいじめっ子達は異世界で制裁を受ける。所謂テンプレ展開を仕組んだようです。そして犯人であるバカは高見の見物です」
「「「……」」」
完全に悪神か邪神だな、アイツ。
「――――更に今回、ヘルメスは好奇心のままに召喚された日本人と同数のソル帝国人を日本へと逆召喚しました。「新作『異世界人、日本へ行く!』連載希望www」と、バカは意味不明なセリフを残しています」
「何やってるんだアイツ……。てか、本当に意味不明だな」
誰に向かって「連載希望」とか言ってるんだ?
2度も言うが本当に意味が不明だ。
それよりも、不幸にもヘルメスの戯れに巻き込まれた被害者達は大丈夫、なのか?
「――――日本へ逆召喚されたのはソル帝国皇帝が運営する『帝国学園』の高等部士官コースの生徒です。召喚された日本人と同人数の1クラス全員が入れ替わるように日本へと送られました。生徒の中には平民出身者以外にも、名門貴族や皇族出身者もいたので、現在、帝国上層部は大混乱に陥っています。尚、表の日本社会で異世界の存在を明かすと天津神全員がキレるということで、送られた生徒達の姿は入れ替わりに召喚された日本人に見えるように細工されています。ですので日本の方も少々混乱してますが、公には集団記憶喪失で処理されているようです」
つまり、召喚された日本人はコッチでも本当の姿で認識されているが、逆に日本へ逆召喚された異世界人は入れ替わった日本人に見られているという訳だ。
手の込んだ悪戯だと思うけど、考えによっては日本に行った異世界人が路頭に迷う心配がなくなる訳だから悪くな……訳がない!そもそも逆召喚なんかするなって話だ!
「余談ですが、日本ではスサノオ様が大爆笑しています。アマテラス様はストレスが溜まって天岩戸に籠ろうとして神界高天原地区はパニックのようです。そのせいで天津神側はバカの捕縛に動けないようです」
嫌な余談だな!
知らないところで日本がピンチじゃないか!
ツクヨミ様は何してるんだ!?
「何といえばいいか、シロウの世界も大変だな?」
「神って、存在する意味あるの?」
「旦那様、お茶が入りました」
あー
ステラちゃん達も、度重なる毒映像を見すぎたせいで良くも悪くも耐性ができてきたのか、もう派手に驚かなくなってるよ。
ユニスちゃんに至っては、何も無かったみたいにお茶を淹れてるし……
「悪夢の映画最終章が始まるみたいよ?」
「もうカオスしか言えないものが始まるのか」
俺はお茶を飲みながらいよいよ始まる混沌とした戦いに目を向けた。
というか、ここからはリアルタイム映像?
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――『オリンポス大迷宮』 カオスステージ(笑)――
『あらあら?これは大変なことになったわね♪』
月の女神であり、狩猟や豊饒も司る『オリンポス十二神』アルテミスは優しい笑みを浮かべながら周囲を見渡していたが、その美しい瞳は全然笑ってはいなかった。
その証拠に、つい数秒前までアルテミスと戯れていた可愛い動物はビクッと怯えており、夜空に浮かぶ月も鋭い光を放っていた。
『……あの男、またやってくれおったな』
真っ赤に燃え続ける玉座に座っていた『鍛冶神』ヘファイストスも、眉間に皺を寄せながら今回の主犯に対して怒りを滾らせている。
『ウフフフフフフフフフフフフ♡』
美の女神アフロディーテは世界中の男達を虜にする美貌と超次元最終兵器をブルルンを見せつけながら怪しく微笑んでいた。
この状況を楽しんでいるようにも見える。
『ヘラクレス!!貴様、何故此処に居る!?』
『フハハハハハハハハ!!この様な楽しい催しを俺が逃すとでも思ったか!!』
『アレス!貴様も!!』
『ハハハハハハハハハ!!ヘルメスも粋な事をしてくれる!!』
『英雄神』ペルセウスは突如として自分の目の前に現れた2柱の厄介者に困惑していた。
1柱は先日倒され神界で復活を待っている筈の『軍神』アレス、もう1柱はペルセウスと同じ『英雄神』である巨漢ヘラクレスだった。
正直なところ、ペルセウスはこの2柱が苦手だった。
主に脳筋なところが。
『ぬおおおおおおおおおおおおおお!?何じゃこりゃああああああああああああああああああ!!』
『そこ!暑苦しい!!』
更に脳筋なポセイドンはもっと苦手だったが。
『……………………………………………………もうイヤ』
『デメテル!しっかりしなさいデメテル!!』
精神のHPがゼロになったデメテルは膝を抱えていた。
大地の女神なのに、今は暗闇の女神のようだ。
妹を励ますヘスティアもご苦労様です。
『共犯者アポロン、何か我々に言うべきことは無いのですか?』
『え?俺も同罪!?』
『無論、有罪です。後でネメシスが待っていますのでご覚悟を。もっとも、その前にアルテミスの私刑が待っていますが』
『え!?』
処女神であり知恵と勝利の女神であるアテナは、肩に眷属のフクロウを乗せた姿でアポロンに無慈悲の判決を下していた。
アポロンの方は、さっきから背中に双子の姉の厳しい視線が痛いほど突き刺さっていて生きた心地が無さそうな様子である。
『ウフフフフフフフフフフフ。久しぶりに綺麗な血の華が咲かせられるわね♪』
困惑する神々が多い中、アフロディーテはこの状況を純粋に楽しんでいた。
一般的には美の女神であるが殺戮を好む戦の女神でもある彼女は、久しぶりに流血沙汰を楽しめると内心喜々としていた。
ある意味では、『オリンポス十二神』最強は彼女なのかもしれない。
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一方、『大迷宮』挑戦者達は神々以上に困惑していた。
それはもう、想定外すぎる展開にファンタジーの住人達の頭はショート寸前になっていた。
「な、何だこれは!?」
「我等はヘスティア様の眷属と戦っていたのでは!?」
『『『イィ~~~!!』』』
「―――ッ!何だ、あの奇怪な集団は!?」
『ヘスティア大迷宮』に居た大勢の皆さんは突然の状況にパニックを起こしていた。
特に、『デメテル大迷宮』からやってきた世にも奇妙な敵集団は比較的正常な精神を持つ者達には(悪い意味で)刺激が多過ぎた。
奇声を上げる真っ黒軍団や、この世界に不釣り合いな格好をした格闘家集団、サイボーグ、etc、etc……。
折角、さっきまで連携が取れていた『ヘスティア大迷宮』組は一瞬でバラバラになってしまっていた。
『ハハハハハハハハハハハ!愉快愉快♪』
三位一体の1柱、バカ3号のアナンシはその光景を楽しそうに見ていた。
彼の地元であるアフリカの皆さんがこの光景を見たらどう思うのだろうか?
少なくとも良い感情は持たないと願いたい。
「……敵が止まった?」
「一体、何が起きたの!?」
「う~む、どうやらヘファイストス様にも想定外な状況のようじゃな?というか、ヘファイストス様の周りにおられるのは、まさか『十二神』の方々か?」
「そのようです。これ程の神気、生きている間に目にする事ができるとは……」
『ヘファイストス大迷宮』組も困惑していた。
ようやくヘファイストスの眷属を1体倒し、残るは眷属1体とヘファイストス本人となった直後に起きた異変困惑すると同時に警戒もしていた。
(トゥ、トゥーラは、よ、余が護るる!)
特にコミュ症のゼノ王子は想い人のトゥーラを守ろうと、必死に頑張っていた。
頑張れ、ゼノ王子!
「ち、父上!どうして此処に!?」
「エ、人違イデスヨ?私ハ通リスガリノ冒険者デスヨ?」
『レノスと同じ匂いがするの~!』
「兄様~!」
「あ、コラ!!バレルだろ!」
「もうバレてるよ!」
『アフロディーテ大迷宮』組は違う意味で困惑していた。
元・ボッチ王子パーティと、陰から見守っていた家族+αパーティがドサクサに再会を果たしていた。
家族や臣下にストーキングされていたと知って、レノスは大ショックです。
そんな彼の頭上を可愛いマスコットは暢気に飛んでいるせいか、意外と空気は和んでいて平和です。
だが、油断してはいけない。
彼らの命を、美と殺戮の女神が今も狙っているのだから。
「「ヘルメス、やらかした~!」」
「……マスター、私に策があります!諸悪の根源を倒しましょう!」
「え!?ウィズ、何をするの?」
「現状況における、この上ない正義です!」
『アテナ大迷宮』組は反応がバラバラだった。
双子はハイテンション、執事少年は変なスイッチがON、魔法少女はオロオロ、チビッ子達は大はしゃぎ、大勢のモブは呆然、といった感じである。
「マッチョっす!マッチョが増えたッす!ココは地獄っすか!?」
「ミルトスの貞操は私が守るわ!カモン!ノーマルの敵!」
「何を言うとる!夫殿を守るのはワラワの役目じゃ!」
「フフフフフ、これが片付いたらお楽しみよ、ダーリン♡」
「みんな、何言ってるっすか!?」
「「「ちっくしょおおおおおおおおおおお!!」」」
『ポセイドン大迷宮』組はモテ組が賑やかで、非モテ組が喧しかった。
筋肉地獄に真っ青になる夫の為、ここぞとばかりに女性陣が気合を入れており、その光景を目にした非モテ組は嫉妬を燃やしているのだ。
というか、他の大迷宮サイドからも嫉妬の声が上がっているのは気のせいだろうか?
「どうなってるワン!?敵がみんな止まってるワン!?アルテミス様が真っ黒に見えるのは気のせいワン!?」
「……いや、俺にもハッキリと見えるぞ。真っ黒い何かを放っているアルテミス様が」
「見えるわね」
「怖い!」
「もしかして、睨まれているのはアポロン様?」
「ああ!毎度姉貴に迷惑かけている愚弟神か~!」
「ニロスは神に対して不敬過ぎるワン!」
『アルテミス大迷宮』組は、真っ黒なオーラを放っているアルテミスにビビっていた。
それも無理はない。
通常のオーラでさえ並の人間を卒倒させたりショック死させる威力があるのに、それが真っ黒になったら命の危機を感じてしまうのだから。
アルテミス様、このままでは無差別大量虐殺事件が発生してしまいます!
「け、景色が変わった!?」
「あの人達は何なの?さっきの声は――――――」
『ヘルメス大迷宮』組は普通に困惑していた。
ただし、貴族令嬢はどさくさに紛れて元・奴隷少年の手をガッチリと掴んでいて、表情も幸せそうだ。
流石はあのバカ神の『大迷宮』で生き残ってきただけはあり、随分と逞しくなってきたようだ。
将来はツンデレ恐妻になるのかもしれない。
「あ!こんな時に!」
「時間切れだよ!」
『ゼウス大迷宮』組は美青年から童顔少年になっていた。
どうやら能力で一時的に肉体を成長させていたようである。
けど大丈夫、さっきまで戦っていたペルセウスは脳筋どもの相手で忙しいので能力の再使用に必要な時間は十分に稼げるぞ!
ついでに回復も済ませておこう!
「……アポロンが絞められてる!!プロレス!?」
「胸デカいな~」
「アルテミス様強エエエエエエ!!」
「一体、これはどういう状況なの!?」
「ん!」
「タイガ様、あの胸を見てはいけません!!見るなら私のを!!」
『アポロン大迷宮』組は平常運転のようである。
ただ、女の武器がそれほど豊かじゃない女3人は神話級の女の武器を前にうろたえているようだ。
大丈夫、君達のはこれから成長するから!
「ヒャア~~~!!滾ってきたぜ~~~!!」
「「「HYAHHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」」」
「「「オッパイ!オッパイ!オッパイ!オッパイ!オッパイ!」」」
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『デメテル大迷宮』組は……(省略
あ、デメテルが現実逃避を開始した!
ヘスティアよ、世界の安寧の為に頑張って妹の正気を取り戻して!
〈時間になりました!最終ステージ『大☆混☆戦』を開始します!〉
〈Let’s Party☆〉
困惑する当事者達をよそに、空気を読まない開戦のゴングの音が鳴り響いた。
比喩ではなく本当に。
豆知識:アルテミスとアポロンは“兄妹”とされることが多いですがこれはローマ神話での解釈だそうです。元祖ギリシャ神話ではアルテミスが1日早く生まれているので“姉弟”が正しいそうです。(古代ローマでは、双子は先に生まれた方が兄または姉だそうです)




