第345話 ボーナス屋、映画鑑賞する11
――オオバ王国 秘密の離宮――
あの後、更に酷いシーンが幾つも流れていった。
性転換攻撃をしてくるオカマやら、全身包帯の侍、某・悪忍者集団モドキ、殺しても何度でも現れる狂った少女モドキ、ショッ〇ー、真っ白な怪盗さん、ビックリなシリーズの悪魔モドキ、etc……。
あまりの酷さに、予め知っていた俺と唯花でさえ絶句してしまう。
あのバカ神共、原作者達に土下座して謝罪しろ!
いや、世界に謝罪しろ!
「……いよいよ最下層に到着するみたいよ?」
「ラスボスは一体……って、今度はス〇2とバー〇ャかよ!!」
ラスボスの部屋の扉が開くと、そこには有名格ゲーキャラの紛い物達が勢揃いしていた。
某妻子持ちの金髪さんや、秘密組織に造られたサイボーグまでいる。
そしてその奥にいたのは、本来のこの大迷宮の主であるデメテル様の偽者を抱き抱えたラスボスの魔王だった。
「……蜘蛛?」
「え、蜘蛛……って虫ィィィィィィィ!!」
唯花は悲鳴を上げながら部屋から床を転がっていく。
ラスボスの魔王は人間と雲が合体したような、顔はイケメン男の姿をしていた。
「――――主、あの者はロキとヘルメスの悪友である神アナンシです。どうやら他の2柱が動けないので、代理でラスボスをしているようです。ノリノリです」
「そうだった、バカ3号がいたんだった……」
「性質の悪い三位一体ですね。百害どころか億害はあります。そして一利はありません」
ソフィアちゃんにまでハッキリと言われまくったバカ3号はノリノリでラスボスらしいセリフを吐きまくったと思ったら、不意に戦いに待ったをかけた。
「あ、ここでか!」
ここで大迷宮合体が始まった。
って、アレも全部あっちに行っちゃうのか?
ただでさえ無理ゲーな展開なのに、あの部屋に居る全員が他の大迷宮で頑張っている人達の所に行ったら…………何、この超カオス?
「……そして最後の『大迷宮』か」
「最後は『アポロン大迷宮』です。ただ、彼の迷宮の主はバカ1号の口車に常に唆されているので……」
「え!何、その不安なフラグ?」
「…………始まりました」
「その間は何?」
既に超カオスなのに、更にカオスになるというのか。
嫌な予感がピークに達しそうになる中、映画は最後の『大迷宮』のパートへと変わった。
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――『アポロン大迷宮』――
『アポロン大迷宮』がソル帝国西部に出現して間もない頃、『大迷宮』には他の大迷宮と同じ様に各地から一攫千金を狙う沢山の冒険者や商人達が集まり、以前は無人地帯だった場所に新しい町が誕生するまでの賑わいを見せていた。
店が幾つも開き、宿もでき、各ギルドの支部や出張所が並び、大迷宮を出入りする冒険者達が互いの成果を自慢しあったり情報を交換したりする光景が町の各所で見られていた。
だが『大迷宮』出現から1ヶ月以上が過ぎた現在、『大迷宮』の周りにできた町にはひと月前の活気が嘘のように暗い空気が漂っていた。
「うひょ~!ビキニアーマーとかマジであんのかよ!?」
「おい、そこの姉ちゃん!俺らと楽しいことしようぜ♪」
「たっぷり遊んでやるよ!」
「キャハハハハハハ!」
簡易な造りの冒険者ギルド出張所。
そこで3人の少年達は今日も女性冒険者にちょっかいを出すなどの問題行動を起こしていた。
「おいクソガキども、勝手に他人の女に手を出してるんじゃねえ!ガキは帰ってミルクでも飲んでろ!」
「ウルセエよ雑魚!!」
「グハッ!!」
「ギャハハハハ!大の大人が石ころみたいに転がってやんの!マジウケる~♪」
「チートがねえ雑魚のくせにデカイ面してんじゃねえよ!つーか、死ね!」
3人の少年は好き勝手な暴言を吐き散らしていく。
彼らは毎日ここに来ては問題を起こし、止めに入った者には暴力をふるって黙らせ、それ以外にも自分達の言う事を聞かない者や気に入らない者にも暴力をふるって重傷を負わせている。
彼らの暴挙はギルドだけに納まらない。
店では無銭飲食は勿論のこと、素材の買取では相場の数倍の額を請求、セクハラetc……
彼らは自分の力に酔いしれ、街でも大迷宮でも好き放題に暴れていた。
「ねえねえ、この宝石超キレ~♡」
「ちょ!これって、ダイヤじゃない!?ピンクダイヤ!!」
「欲しい~!!」
「ねえねえねえね、これって幾ら?安くしてくれるわよね?というかタダよね?毎日良い素材を町に売ってあげてるんだから?」
「い、いえ、それは……」
「タダよね~?」
好き放題しているのは少年3人だけではなかった。
町では大勢の10代の少年少女達が商人を強請ったり、冒険者達に暴行、それを見て嘲笑ったりなど、周囲から侮蔑される行為を繰り返していた。
「異世界マジサイコー!俺ら、このまま王様になるんじゃね?」
「30人も王様とか多過ぎね」
「バ~カ、女子は王じゃなくて妃だろ。俺らの!」
「あ、そうだった!俺のバカ~(笑)」
少年少女達は異世界人だった。
『アポロン大迷宮』の第10階層が攻略されると同時に、何時の間にか開いていた隠し部屋にあった召喚装置が起動し、31人の日本人の少年少女がこの世界に召喚された。
だが、召喚された彼らは1人を除いて全員が問題児だった。
彼らの多くは召喚の際に得た強大な力ですっかり増長し、今では町中の嫌われ者集団にまで堕ちていた。
「けどよ、あの雑用係が居なくなったせいで買物とか面倒になったよな。自分で持つとかねえし!」
「あのクズ、死んでも俺らに迷惑掛けやがって。ホント、救いようのねえクズだな!」
「なあ、これから奴隷でも買いにいかねえか?」
「女!美少女の奴隷がいいぜ!!」
「つーか、この国って奴隷っているのか?」
「いなけりゃ、無理矢理作ればいいんだよ!」
「そりゃそうだ!」
「「「ギャハハハハハハ!」」」
人の目も耳も気にせず、彼らは好き勝手なことを喋り散らせていた。
この世界では自分達は最強無敵、誰も止めることはできないと思いあがっているのだ。
「――――てか、ステータスがあるとかゲーム過ぎ!ここって実はゲームの世界じゃね?」
「今更だな?だったら、俺ら神じゃね?」
「チートだからあながち間違ってねえかもな?」
周囲から敵意の嵐がきていることなど微塵も気付かず、彼らはその後も町で好き勝手していく。
この世界に来た当初は元の世界に帰りたいと喚き散らせていた彼らだが、自分達にチートがあると知って以降はこの世界の住人を下等生物のように見下し、信頼や思いやりなど人同士の営みの中では欠かせないものを日に日に捨てて行った。
「俺TUEEEEEE!!」
彼らはこの世界では誰よりも強いと信じきっている。
しかし、それは所詮何の根拠もない彼らの妄想でしかなかった。
何時までも俺TUEEEEが続くわけがなかった。
因果応報という言葉のとおり、そう遠くない未来に――――というか数日後には今までのツケを清算することになる。
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――オオバ王国 秘密の離宮――
「……またバカ召喚?」
「なんで日本人が一杯いるのよ!しかも全員問題児!」
今までの『大迷宮』も癖が強かったが、此処も此処で癖がある。
ついひと月前に勇者召喚がキッカケで大国の1つが潰れたのに、同じ大陸でまた召喚が行われるってどういうこと?
しかも、全員問題あり過ぎで現地人に大迷惑な高校生とか!
大魔王の奥さんが事後処理をしてくれたんじゃないのか!?
〈頑張りました☆ byロキ〉
〈数百年ぶりの大仕事でした!(アポロンチョロすぎ♪) byヘルメス〉
〈クソゲー級のクソ難易度でした(笑) byアナンシ〉
こいつら、こんな時だけ神スキルを……
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――『アポロン大迷宮』 第50階層――
町で30人の召喚者達が好き勝手に暴れている頃、外界とは時間の流れが大きく異なる――階層によって異なるが、外界の200~500倍――『アポロン大迷宮』の中では1組のパーティが大迷宮中層部の大ボスと戦っていた。
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
「ト・ド・メだあああああああああああああああああああああああ!!」
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――』
全身が血塗れでありながらも微塵も戦意を失っていない巨狼に、1人の少年が刀で止めを刺す。
急所を正確に貫かれた巨狼――――第50階層の番人である『深き闇の底の光狼』は階層全体を震撼させるほどの断末魔を上げながら絶命した。
「ハァハァ……!」
「うおっしゃああああああああああ!!」
「倒した!私達で倒したのよね!?」
「やりましたわ、タイガ様!」
「ん!」
「兄ちゃんスゲー!」
ボスが絶命し僅かな沈黙が過ぎた後、少年の仲間達は歓声を上げながら彼の下に集まり、自分達のリーダーである彼を揉みくちゃにしながら称えていく。
少年は顔を紅く染めながら仲間達と勝利を分かち合い、暫しの休息をした後、ボスの死と同時に出現した階段を下りて次の階層へと向かった。
少年の名は白井泰雅、テンプレ好きな神の気まぐれによって現代の日本からこの世界に召喚された《勇者》である。
ヘルメス「いじめっ子といじめられっ子の同時召喚&いじめられっ子の成り上がり、マジテンプレwww」
ロキ「処刑にこうご期待www」
アナンシ「良い仕事しましたwww」
*2015/11/12 「白井大河」を「白井泰雅」に変更。




