第328話 ボーナス屋、女神に救われる
女神☆降臨
“それ”は意志を持たない存在だった。
1つの“力”に組み込まれた、個としての名も意志も持たない機能に過ぎなかった。
“それ”は世界と繋がり数多の情報を収集・解析を延々と繰り返していた。
『主』に使われる度に成長していく“それ”は、集積した膨大な情報を元に人口知性に似た存在へと変化していった。
“それ”は『主』の力の影響を受け、また、世界中の魂に触れる事で進化し小さな自我を芽吹かせた。
“それ”の自我は『主』の魂に包まれながら健やかに成長していった。
ある日、より高みに進化した“それ”は世界の最奥の一端とも繋がり、そこで自身と―――嘗ての自分と同じく意志を持たない存在と出会った。
―――――その名は『深淵の叡智』
そして奇跡が起きた。
出会った2つの存在は共鳴、各々の存在を“個”として覚醒させた。
『深淵の叡智』は強い自我を得て『始原の神霊』へ、
“それ”は既にあった自我を成長させ魂を獲得し『智慧の女神』へと。
覚醒を果たした『智慧の女神』は『主』に対して恋をした。
そして、近くにありながらも触れ合えない現実に泣いた。
更に『主』に仇名す敵の力により2度に亘って『主』の役に立てなかった事に憤った。
だがそれ以上に、愛する『主』の力になりたいと、自身のより高みへの進化を望んだ。
そしてそれは起きた。
それは一時的に神の域にまで達した『主』の力の影響か、それとも同位存在である『始原の神霊』の助力によるものかは定かではない。
だが、彼女はその強い意志を貫くことが出来る存在へと進化した。
『智慧の女神』からより高い存在、『智慧と愛の守護女神』へと――――
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――ニブルヘイム大陸――
(男として)絶体絶命の中、俺の目の前に現れたのは長い桜色の髪をそよ風のように揺らした1人の少女だった。
『汚らわしき者達よ、主の前より消えなさい!《真愛之清風》!』
『FO~~~~~!?』
少女の放った光り輝く風が変態巨人達を一掃した。
そうか、異性からの無効化できるのは男からの攻撃だけだったな。
誰かは知らないけど、良い所に女の子が………ん?
「……“主”、だと?」
『はい!私は主の力から生まれ、主の為に命ある存在へと進化した『智慧と愛の守護女神』ソフィアです!こうして直に主と顔を合わせる事ができ感激です!』
「ええええええ!?」
まままままままさかかかかかか!!??
ソソソソ、ソフィアって、もしかしなくても《叡智之化身》のソフィア!?
また誰かが何かやらかしたのか!?
〈擬人化キター! by男神一同〉
〈チッ! by女神一同〉
違うようだ。
『今までお役に立てなかった分、ここからは私が頑張ります!どうか主はここで休んでいてください!』
「あ、ああ……」
『では、行ってきます!』
ソフィアちゃんは優しく微笑みながら告げると、背中から白い光の翼を広げて魔王達の射る方へと飛んでいった。
一方の魔王は、何故か異常なほどまでにソフィアちゃんに対して敵意を向けていた。
『邪邪邪…邪道―――!!綺麗で可愛い清純乙女キャラは邪道よぉ~~~!!Sっ気の欠片の無い女は私の天国には入れないわよ~~~!!』
知るか!
お前の価値観など理解したくもない!
『黙りなさい!我が主を汚そうとした罪、その存在を持って償わせます!』
『腐、腐腐腐……!面白いことを言うわね?ぽっと出キャラが魔王を倒せるほど世の中は甘くないわ!さあ、立ち上がりなさい!私の下僕達!』
『『『FOOOOOOOOOOOO!!』』』
『行きなさい!!』
吹っ飛ばされた変態巨人達が立ち上がってソフィアちゃんに特攻してきた。
それに対し、ソフィアちゃんは右手人差し指を変態巨人達に向ける。
そして指先から光が放たれる。
『《智慧之庭園》!《光明之神手》!《虚空演算》!悪しき存在に憑かれし者達よ、真の姿へと還りなさい!』
ソフィアちゃんの無双タイム開始!
極地がソフィアちゃんの不思議空間に飲み込まれ、特攻中の変態巨人達は全身を不思議な光に包まれて光の帯に分解され始めた。
『『『OOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』』』
そして中から何か出てきた。
悪霊の呻き声に似た声を発しながら真っ黒ヘドロな物体が現れ、その謎物体も黒い帯に分解されていく。
そして黒い帯は光の帯の渦の中から取り除かれ、光の粒子に包まれると光の帯に変わり宙ぼ彼方へと飛んでいった。
残った光の帯は地上へと集まってゆき人型を形成、数百人の普通サイズの人へと変わっていった。
全裸じゃなく服付きで。
『あああ!!私の下僕達が!!イケメン達が~~~!!』
『あとは貴方だけです!』
『許さない!《暗黒加速波動砲》!!』
怒りに燃える魔王はソフィアちゃん目掛けて特大魔法陣を展開、そこから真っ黒な特大破壊光線を発射した。
『―――解けよ!《世界ヲ解キシ智慧》!』
空から桜色の光がシャワーとなって大陸中に降り注ぐ。
魔王が放った特大破壊光線はソフィアちゃんに届く事無く光の粒子に分解され拡散、展開されていた魔方陣もジグソーパズルのようにバラバラに砕け散り、光の中に溶けて消滅していった。
その光景に魔王の顔はショックを隠せない様子だった。
『そんな――――!!』
『終わりです!呪われ汚れし者よ、汝のあるべき姿へ戻りなさい!』
『――――ッキャアアアアアアアアアアアアアアアア!!??』
魔王が悲鳴を上げ、それと同時に全身が桜色に光りだし始める。
そして全身から白と黒の光の帯が飛び出し、それらはソフィアちゃんの手元に集まって2つの球体に形成されていく。
光の帯が抜け続けるにつれ魔王の魔力が急速に小さくなっていくのが感じられる。
どうやら、ソフィアちゃんは魔王から力を奪っているようだ。
『《森羅解放》!』
魔王は爆散した☆
それと同時に大陸全土から光が消え、それに伴って俺とコッコくんが原因の真夏の日差しも治まり大陸には再び極寒の風が吹き始めた。
〈ソフィアちゃんは魔王を倒した! byアポロン〉
〈ソフィアたん萌え~♡ by某神〉
〈ソフィア~☆ by某神〉
〈ソッフィ~ア!ソッフィ~ア!ソッフィ~ア! by某神〉
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〈ケッ! by女神一同〉
〈お掃除、Death☆ byネメシス〉
そして外野は静寂に包まれた、らいいな。
次回更新は月曜日か火曜日の予定です。




