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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
奴隷救出作戦編
34/465

第32話 ボーナス屋、元奴隷の調査を始める

――港町ヴァール 騎士団詰所――


 領主の館(城)のすぐ隣と言うよりはほとんど一部に近い形で騎士団の詰所は建っていた。


 詰所の周りには映画とかに出てくるような美形の騎士達や、騎士達が乗る上品な毛並みの馬達の姿があった。


 俺達は執事さんの案内で詰所の中に入り、騎士団長がいる部屋へと入った。



「――――――こちらが騎士団長のヴィレム殿です。」


「騎士団長のヴィレム=ハイドフェルドだ。」



 騎士団長は(多分)30代半ばの金髪の男だった。


 ああ、いかにも騎士って感じだな?


 マントとか服装とか凄く似合ってる!



「初めまして、シロウ=オオバだ!」


「私はロビンです。」



 俺らも笑顔で自己紹介を済ませた。


 ロビンくんは今の立場が立場なので家名は伏せたようだ。



「例の奴隷商達の捕縛に協力してくれた者達だな?不思議な魔法(・・・・・・)で我々騎士団に協力してくれるそうだが、どのような魔法を使うのだ?」



 どうやら既に話は通っているみたいだ。


 あのオッサン、最初から騎士団の仕事を手伝わせる気だったのか。



「実際にやりながら説明するけど、執事さん、この人は信用できるんだろ?」


「はい、ヴィレム殿は決して秘密を他人に漏らすような事はしません。このヘンリクが保証いたします。」


「なら、よし!」



 そしていつも通りに説明タイムだ!


 毎度の事だが、俺の能力を見せた時の反応はみんな同じだよな。


 なお、団長にはいつも通りに《ステータス》や最近見つけた隠し補正を全部で4つ交換させて以下のようになった。



【名前】『アンデクスの烈剣』ヴィレム=ハイドフェルド

【年齢】34  【種族】人間

【職業】騎士団長(Lv1)  【クラス】シングルファザー騎士

【属性】メイン:火 サブ:土 風 雷

【魔力】9,200/9,200

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv1) 剣術(Lv3) 槍術(Lv2) 盾術(Lv2) 体術(Lv3) 鑑定

【加護・補正】物理耐性(Lv3) 魔法耐性(Lv1) 精神耐性(Lv2) 火属性耐性(Lv2) 不撓不屈 職業補正 職業レベル補正

【BP】105pt



 職業は“騎士”じゃなくて、ちゃんと“騎士団長”になってるな。


 【クラス】を見る限り、何だか訳アリのようだな。


 後で知ったんだが、団長は下級貴族の出身で領主のオッサンとは子供の頃からの付き合いらしく、若い頃は一緒に大暴れした時期もあったそうだ。



「おお!これが俺・・・私の強さの情報か!」


「とりあえず、口の堅い信用できる騎士にも使ってみたいんだけど――――――――」


「それなら私が直々に鍛えている優秀なのが3人いる!あいつ等なら口が堅いし信用もできる!すぐに呼ぶから待っていてくれ!」



 そう言うと、団長は部屋を飛び出していった。


 そして数分後、団長は二十歳前後の若い騎士3人を部屋に連れて来た。


 内訳は男1人に女2人・・・って、男はともかく若い女騎士を直々に指導!?


 何かちょっと羨ましいぞ!



「この3人が我が騎士団の有望株だ。右から順にダニー、シンディ、リア。3人とも何れは俺に代わって騎士団を背負えるほどの逸材で信用もできる。ほら、お前らも挨拶しろ!」


「は、はい!自分はダニー=シュミットと言います!ど、どうぞよろしくお願いします!!」


「私はシンディ=フォス、よろしく。」


「私はリアです。孤児なので家名はありません。よろしくお願いします。」



 ちょっと緊張気味のダニーは金髪に紺色の瞳のどちらかというと草食系の印象がある青年だ。


 逆にシンディの方は何だかプライドが高そうというか、とにかく気が強そうな感じの桃色の縦ロールヘア・・・いやドリルか?


 最後のリアは3人の中で一番背が低い、赤身のある茶髪に青い瞳をした大人しい感じの子だ。


 孤児だって言ってたけど、まさかまたもや落胤なんてオチじゃないよな?



「確かに彼らなら大丈夫ですね。シロウ様、この方々は領主様も信頼している騎士達です。シロウ様の秘密を他言する恐れはありません。」


「そうか、なら安心だな。」



 まだ会うのは今回で2度目の執事さんだけど不思議とその言葉は信用できる。


 それにこれは勘だが、この3人とは長い付き合いになりそうな気がする。



「じゃあ、早速始めるか!」


「「「???」」」



 3人が何が始まるのかと頭を傾げるのを見ながら、俺は再度能力を起動させた。


 なお、俺の能力を見て仰天する3人の顔を、横にいた団長は大爆笑ながら見ていた。


 おい、あんたも似たようなものだったんだぞ?


 余談だが、3人の職業は“騎士”で団長の“騎士団長”は“騎士”の上位職らしい。


 職業についてもいろいろ研究してみる必要があるな。



【騎士(Lv1)】

 防御力微上昇 精神力微上昇


【騎士団長(Lv1)】

 防御力小上昇 体力小上昇 精神力小上昇 部下経験値微上昇

 (追記:騎士より派生した上位職)



-------------------


 ボーナス交換が終わった後、執事さんは屋敷の方へと戻っていった。


 身元不明の()奴隷は詰所の中の医務室ので全員治療を受けている最中だった。


 案内してくれた騎士3人組(トリオ)の話によると、奴隷にされていた人達は最低限の食事を与えられ、数日に1度は水で体を洗わされていたが、元奴隷の中の、特に貴族などの富裕層出身者達は環境の変化もあって心身ともに酷く弱っているらしく中には発熱などの症状がある者もいた。


 医務室には騎士団専属の医者以外にも領主のオッサンが呼んだ町医者も何人か集まっていて幼い子供や症状の悪そうな人を優先的に診察している。


 最初は医務室の中で調査するのかと思ったが、既に医務室の中は人で満杯だったのですぐに医者達に追い出されて仕方なく医務室の近くにあった休憩室で待つことになった。



「お待たせしました。こちらにお連れするように言われたのですが?」



 しばらく待っていると女騎士の1人が小さい黒い髪の子供抱きかかえながら俺達の所にやってきた。


 その後ろには何人かの子供が女騎士の背後に隠れるようについてきていた。



「は、はい!お疲れ様です!!」


「ダニー、もう少し騎士らしくシャキッとしなさい!若手筆頭のあなたがそんなのでは、他の団員達への模範として失格ですよ!」


「わ、分かってるよ、シンディ!あ、この子達は後は自分達が引き受けるので、持ち場に戻って結構です!」


「はい!後はよろしくお願いします!」



 女騎士が抱いていた子供をダニーくんが受け取ると、女騎士は軽く頭を下げて自分の仕事へと戻っていった。


 へえ、この草食系に見えるダニーは若手筆頭なのか?


 確かにステータスは結構優秀だったな。



【名前】ダニー=シュミット

【年齢】19  【種族】人間

【職業】騎士(Lv1)  【クラス】鈍感モテ騎士

【属性】メイン:風 雷 サブ:火 水 氷 時

【魔力】6,900/6,900

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv3) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv3) 剣術(Lv3) 槍術(Lv1) 盾術(Lv2) 体術(Lv2) 彫金術(Lv1) 鑑定

【加護・補正】物理耐性(Lv2) 魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv4) 風属性耐性(Lv2) 雷属性耐性(Lv2) 毒耐性(Lv2) 軍神オグマの加護 職業補正 職業レベル補正

【BP】29pt



 職業は“騎士”だけだったけど、魔法の才能もあるみたいだからケビンの時みたいに“魔法使い”がすぐに増えるかもしれないな。


 【クラス】については気にしなくていいよな?


 きっと文字通りのテンプレキャラなんだろう。



「え~と、この子達がまだ身元が分からない子供達です。」


「全員子供なんだな?」



 ダニーくんが抱きかかえている子供は大体1歳か2歳みたいだし、他の子供も大きい子でも10歳位にしか見えない。全部で8人か。



「事情を聴いた先輩の話によると、この子達はどうやら家を離れて遊んでいる所を攫われたらしく、自分達の住んでいた村の名前は知っていてもそこがどこの国あるのかまでは知らないようです。多分、地図にあまり名前の載る事もない地方の小さな村の出身だとは思うんですけど、どうやらここが帝国である事も今まで知らないみたいで、教えた途端に怖がり始めたようです。」


「・・・村どころか自分の名前も言えなさそうなのもいるけどな。他の奴隷にされていた人達の中には外国の人達もいたんだろ?その人達にも知ってる人はいなかったのか?」


「いえ、どうやら大きな町の出身者ばかりらしく、地方の村の名前にまで詳しい人はいませんでした。」



 まあ、そうだろうな。


 俺だって、日本の市町村の名前なんかそんなに知らないし、知ってても地元に近い町かニュースで話題になった町くらいだ。


 ましてここは異世界、日本と違って民衆の得られる情報はかなり少ないだろう。


 なら、こいつらの住んでいた村の名前を知る人がここにいなくても不思議じゃないよな。



「・・・なら仕方がないか。じゃあ、その一番小さい子から始めるか!」



 という訳で、まずはダニーくんが抱いている子供から調査開始だ!


 さっきから大人しいけど寝てるのか?



「悪いけど、そのまま抱いていてくれるか?」


「は、はい!」


「だから少しは・・・・・!」



 そこのドリル、小さい子が怯えるから大きな声で怒鳴るのはやめろよな?


 それはそうと、この子やっぱり寝ているみたいだな?



「じゃあ、起こさないようにステータスを確認するか!」



 さて、どんな内容になるのやら。


 頼むから、また『皇帝の落胤』なんてオチは勘弁してくれよな?


 俺はダニーくんの腕の中で眠っている子供に《ステータス》を使った。



【名前】ルドルフ=R=ファリアス

【年齢】1  【種族】人間

【職業】皇子  【クラス】帝国の皇子

【属性】無(全属性)

【魔力】9,900/9,900

【状態】睡眠

【能力】――未覚醒――

【加護・補正】魔法耐性(Lv4) 精神耐性(Lv2) 全属性耐性(Lv4) 全状態異常耐性(Lv2) 契約者の器 万能翻訳 幸運 天空神タラニスの加護



 表示されたステータスを見た瞬間、俺やロビンくんだけでなく、騎士トリオもほぼ同時に硬直した。


 おいおい、落胤じゃなかったけど皇子だったよ!!


 能力はなぜか表示されないけど、ケビンと同じ無属性だし、何か1歳なのに魔力が多いし、何だかチートっぽい感じがしないか!?


 というか、何で皇子様が奴隷なんかにされてたんだ!?


 俺が混乱しそうになっていると、隣に立っていたロビンくんがハッとしながら口を開いた。



「そういえば、5日前に離宮が襲撃されて皇族が何人も行方不明になっているとフライハイトさんが言ってました!ルドルフ殿下が暮らしている離宮も、確か帝都に近い場所にあったはずです!」


「あ!!」



 そうだ!


 ついさっきフライハイトさんが言ってたじゃないか!


 だとすると、襲撃犯に攫われたこの皇子様はどういう訳か奴隷商の手に渡ったってことか・・・。


 奴隷商の奴、まさか奴隷の中に皇子が混ざっている事を知ってたのか?



「ちょ、ちょっと待ちなさい!!離宮が襲撃されたというのはどういう事ですか!?」



 ドリルが俺達に詰め寄ってきた。


 そういえば、襲撃事件のことはまだ帝都の一部の連中しか知らない事になってるんだったな。


 あ、ルドルフを抱いているダニーが顔を真っ青にしながら全身をブルブルと震えさせてる。


 そうだよな、この国の人間にしてみれば抱いているのが自分の国の皇子様だと知ったら・・・・いや、それでもビビりすぎじゃないか?



「ど、ど、ど、どうしよう!?自分、殿下を汚い手で抱いてしまいました!?お、お、落としたら大変だから誰か代わって・・・・・・!!」


「嫌よ!最後まであなたが責任をもって抱いてなさい!」


「わ、私は平民だし、孤児だからそんな資格はないから無理・・・!」


「ヒィィィィィィィィ!!」



 うわあ、ダニーくんが今にも泣きだしそうだ。


 ドリルとリアちゃんも顔を真っ青にしながらダニーくんのお願いを拒否してる。


 確かにこのままだと、間違って落としちゃいそうだな・・・。



「ロビンくん代わってあげたら?」


「そうですね。」


「あ・・・・!」


「ちょっと!平民風情が殿下に触れるなんて、何を考えてるの!不敬罪で投獄するわよ!!」


「いや~、この中じゃロビンくんが一番適任だと思うぜ?お兄ちゃんだし?」


「「「え!?」」」


「・・・・・・。」


「言ってなかったけど、ロビンくんは皇帝の実子なんだぜ?まあ、非公式だけどな?」


「「「―――――――――!!??」」」



 本当なら隠すべきなんだけど、執事さんや団長が信用してるから話しても大丈夫だよな?


 というか、これから長い付き合いになるかもだし、こっちの事情も少しずつ話していった方がいいよな。


 そんな訳で、俺は簡単にロビンくんの事情を説明した。


 すると、さっきまで強気だったドリルの顔をさらに真っ青になって倒れそうになった。


 ダニーくんに至ってはポカンとしており、その間にロビンくんは寝ているルドルフを静かに自分の腕の中に移した。


 ルドルフはよく眠っているらしく、全然起きるそぶりを見せなかった。


 ちなみに、ルドルフの容姿は赤みのある茶髪で目の色は(寝ているので分からないが)多分ロビンくん達と同じだろう。



「「「し、失礼しました!!」」」



 騎士トリオは揃ってロビンくんの前に膝をついた。


 ハハハ。ロビンくん困った顔をしてるな?


 その後、ロビンくんが騎士トリオに普通に接してもいいと説得するが、領主や皇族に忠誠を誓っているせいなのか、中々難航していた。


 その間、蚊帳の外の俺は暇なので他の子供達の調査を始めた。


 さ~て、さっさと終わらせるかな♪






 公の記録(・・・・)では、ルドルフちゃんは一番年下の皇子様です。

 なお、表向きには皇子は29人、皇女は34人となっています。


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