第318話 ボーナス屋、宇宙で戦う
――天空大陸上空――
俺と魔神アドラメレクとの死闘は熾烈極まるものだった。
――――俺の蹴りで雲が割れた
――――アドラメレクの拳撃に天が轟き
――――俺のクラウ・ソラスの一閃で海が消し飛び
――――アドラメレクの焔が山々を熔かし
――――スラ太郎のビームが大陸を貫通し
――――俺とアドラメレクの衝突が大陸を白く染め上げる太陽を生んだ
――――スラ太郎自身が大陸を貫通した
って感じで今も戦いを続いている。
本当は何時も通りにペナルティ&リセットで無力化させたかったけど、向こうも俺の情報を事前に手に入れていたのか、異次元に逃げ込んだりするなどして上手く避けていた。
まあ、黒幕が今までと同様に『創世の蛇』なら同じ手を何度もやられないように手を打ってくるのは当然だけどな。
けど、俺の能力全てにはまだ対抗できないようだ。
その証拠に、《真・神代之真眼》で奴の能力や補正を幾つか奪えている。
耐性系はまとめて貰い、能力の方も《魔神眼》や《烈嵐》を奪ってやった。
『グハハハハ!!まさかここまでとはな?数百年ぶりに魂が燃え滾ってきたぞ!!誇れ!!貴様は人の身でありながら本気の『魔神』と対等の域に達している!!』
「それはどうもっと!」
『ム!』
俺はアドラメレクの真横に蹴りを入れる――――と見せかけて、真下からブリューナクを放つ。
そしてその直後に、ファ〇ネルで全方位から攻撃する。
『そんな蠅など効かん!!』
アドラメレクが片手を振るとファン〇ルは次々に破壊されていった。
まだ沢山あるから問題ないけどな?
『……ほう?どうやら貴様の仲間が出来損ないの魔王を倒したようだな』
更に戦いを続けていると、アドラメレクは嬉しそうに敵側の勝利を告げてきた。
その言葉に嘘は感じられないが、何で嬉しそうなのか謎だ。
それに気になることも言っていたな?
出来損ないの魔王?
『邪魔な契約者が消えた今、俺が現世に留まれる時間はそう長くはない。だが、それまでは枷を外して戦うことができる。この意味は解るか?』
笑みを浮かべながら話しかけてくる。
つまり、それって……
『これが俺の真の姿だ!』
「テンプレ的展開!?」
アドラメレクはテンプレを守る魔神だった!
一瞬で変身を完了させ、アドラメレクの背後には普通は直視できない光を放つ太陽が、奴自身は全身金ピカ男になっていた。
まるで羽の生えたエル〇ランだな。
ただし、あれは悪サイドだけど。
『星と共に宇宙の塵となれ!!《猛き陽炎よ銀河を滅せ》!!』
アドラメレクから巨大なエネルギーが迫ってきた。(ちなみに今は思考を超加速中だから景色が止まって見えるぜ!)
けど、奴から《光属性無効化》と《火属性無効化》、《空属性無効化》を奪っている俺には効果が……いや、光や炎は無効化できるけど、それによって生じた衝撃やら圧力までは無効化できない。
それが狙いか!
けど、それも……スラ太郎?
『ピピィ~!』
「へ?」
『何!?』
思考加速OFF!
スラ太郎が勝手に俺の前に飛び出した!
そしてアドラメレクの攻撃――約1000万度の炎のエネルギー――を正面から受けて吸い込み始めた。
なんか他のエネルギーも吸収してるっぽいけど。
『グハハハハハハハハハ!!俺の超広域殲滅攻撃を喰っただと!?何だ、そのふざけたスライムは?』
「……スラ太郎だよ」
『ピィ!』
なんと、スラ太郎は俺の想定を越えた進化を遂げていたようだ。
アドラメレクも凄く上機嫌に笑っている処を見ると、どうやら気に入ったらしい。
『面白い!!貴様を喰らった後は、その珍奇なスライムの相手をしようじゃないか!』
「俺に勝てたらな?」
『随分と余裕だなあ?まさか、俺の手札がもう尽きているとでも思っているのか?』
既に俺には奴から奪った《光属性無効化》、《火属性無効化》、《空属性無効化》があるから奴の持つ属性による攻撃は効かない。
効果があるとしたら間接攻撃位だけど、その辺はスラ太郎もサポートしてくれるから問題無い。
それは奴にも分かっている筈だが、まだ奥の手を隠し持っているという事なのか。
『貴様は、無属性攻撃への耐性は持っているのか?』
その手があったか!
確かに俺には無属性に対する耐性が無いっていうより、《無属性耐性》や《無属性無効化》を持っている人は今まで見たことが無い。
無属性って、無効化不可能な属性なのか?
『気付いたようだな?だが、もう遅い!宙よ、我が陣となれ!!』
「!!」
『お前も知っているだろう?耐性や無効化といったものはあくまで攻撃に対して効果を成すものだ。そうでなければ、己に転移や回復を使うことが出来ないからなあ!』
周囲の空間が歪み始めた。
これは、結界!?
――――ピロロ~ン♪
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『速報:能力制限領域発生』
アドラメレクの能力《神域創造》により半径1光年の宇宙空間内での全ての固有能力の使用が制限され始め、同時に無効化系補正も一時的に封じられました。
《神域創造》は無属性に属する能力であり、また攻撃系能力ではないので無効化はできません。
惑星ループラ内は他の神々の力により影響は受けていませんが、この領域内にいる限り、アドラメレク以外の固有能力は使用ふ…か……の………ザザザ……
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マジでか!?
って、《真・叡智之化身》も早速制限されてるじゃないか!!
あ!《真・応報之絶対真理》も使えなくなってる!!
そして折角手に入れた無効化3点セットも!
『グハハハハハハハハハ!!さあ、俺の時間が限られている内に決着といこうじゃないか!!』
「ヤバイ!?」
俺は焦った顔をしながら奴から離れた。
俺の能力って、固有能力ばっかなんだけど!
もしかしなくても、今までで一番の大ピンチ!?
俺の有利性が消えた!?
最初に逆戻り!?
『焼き付くせ!《紅炎の鉄槌弾》!!』
「クラウ・ソラス!!」
俺は反射的にクラウ・ソラスを振るい迎撃する。
また天地を震撼させる大爆発が発生し、なんか沢山の流れ星が地上に向かって落ちていった。
その後も俺とアドラメレクの攻防は続き、月が欠けたり彗星が消し飛んだりもした。
今気づいたけど、俺、いつの間にか宇宙にいるんだな。
「ん?」
月が真っ赤に大炎上したところで俺はふと気付いた。
俺はさっきからクラウ・ソラスやブリューナクを普通に使ってはいるけど、これって領域効果の影響を受けていないということか?
『魂の武装』は固有能力に分類されない?
じゃあ、他の武器は……いや、武器だけじゃなく、他にも固有能力だと思いこんでいた能力は……!
あ、また形勢逆転……♪
『余所見をしているとは意外と余裕だな?《紅く溶けゆく世界》!!』
真上から(数十万度の)炎が降り注いできた。
自分の周りで色々熔けている中、俺は心を落ち着かせていった。
アドラメレクには俺が油断して余所見をしているように見えた――余所見をしたのは事実だけど――ようだけど、だとしたらそれは大きな勘違いだ。
既に勝利の方程式は完成したのだ!
『楽しみもそろそろ終わりだ!《炎天の魔槍》!』
アドラメレクは直視したら即失明しちゃうほどの光を放つ槍を出現させ、俺に向かって構えた。
普通なら戦慄するか恐怖でパニックを起こしそうになる状況だが、俺は「凄そうな槍だな~」と思っても戦慄も恐怖も感じなかった。
『――――死ね!!』
「金剛杵!!」
『グアッ!?』
俺の手に握られた武器がクラウ・ソラスから金剛杵に入れ替わった直後、アドラメレクのを中心とした空間に強烈な放電現象が発生する。
よし!
金剛杵も問題無く使える!
これで俺の勝利は確定した。
『グッ……!卑怯神インドラの武器だと!?ダーナの連中以外の武器も持っていたのか!?』
「え?ステータスで視てたんじゃないの?」
『あんな《神眼》の紛い物と、貴様が奪った俺の《魔神眼》を一緒にするな!』
つまり、アドラメレクは《ステータス》で俺のステータス情報を視た訳じゃないということか。
《魔神眼》で視たって言ってたから、《ステータス》で視れる情報と《魔神眼》で視れる情報の内容は大きく異なるみたいだな。
この戦いが終わったら検証してみるか。
今は目の前の敵を倒す事に専念だ!
「飛べ!ファ〇ネル!!」
『またその蠅か!無駄だと言って――――』
俺は数百機のファン〇ルを四次元倉庫から発射させる。
そして「何時か、ガン〇ム本体も造ってやるぞ!」と思いつつ、俺は似非エ〇ドランなアドラメレクに向かって指をさしながら叫んだ。
「《雷霆》、一斉掃射!!」
スラ太郎も大活躍!
主人公も大暴れ!
次回更新は火曜日の予定




