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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
番外編Ⅸ
315/465

第305話 女神教師、頑張る

 リクエストのラストです!

 今回は日本に居る女神様達のお話しです。


――日本 名古屋市――


 『七福神』の紅一点、弁財天は名古屋の高校教師である。


 昔は結構売れていた女神だが、昨今は若者の信仰心が薄れているせいか、今では大手から景気の厳しい中小の神にまで落ちてしまった。


 神界だけでなく現世でも活動する神々にとって、現世での資金源は信者達や神職・僧達からの御賽銭等が中心だ。


 だが、最近は『七福神』のユニット名だけでは収入が怪しくなっている弁財天、ユニット内でも大黒天や恵比寿のツートップに知名度と収入で負け続けている。


 だから彼女は働く事を決意した。


 女教師弁財天、今日も彼女は日本の高校で次代を担う若人達を教育している!



「……」



 弁財天は次代を担う若人達を教育している!



「……」



 弁財天は次代を担う若人を…………



(……居ないんだけど?)



 ……え?



(次代を担う若人、殆ど居ないんだけど?)



 えええ!?



(殆ど、出席してないんだけど?



 …………(現状把握中)。


 弁財天は音楽教師だが、偶に臨時で古典の授業を受け持っている。


 そして彼女は2年生のあるクラスの担任もしている。


 だが現在、彼女のクラスは一種の学級崩壊寸前の状態にあった。



「……出欠をとります。相川さん」


「はい」


「……」



 最初からアウトだった。


 普通に返事をした「相川さん」、彼女は……式神だった。



(陰陽師……)



 「相川さん」は平安時代から続く陰陽師一族の末裔だった。


 不定期で仕事の入る彼女は、時折身代わり用の式神と入れ替わって仕事に出掛けているのだ。


 彼女は今日で1週間も身代わり出席をしている。



「――――さん、服部さん」


「はい」


「……」



 「服部さん」もアウトだった。



(忍者……)



 「服部さん」は忍者だった。


 彼は《分身の術》を使って出席日数を稼いでいた。


 だが、成績は赤点スレスレだった。



「――――鈴木さん」


「はい」


「……」



 弁財天は溜息を思いっきり吐きたくなった。



(影武者……)



 「鈴木さん」として返事をしたのは別人だった。


 裏社会の住人である「鈴木さん」は、家庭の事情で影武者に登校させていた。



「――――二ノ宮さん」


「……はい」



 弁財天は引き攣りそうになった。



(中身が……)



 「二ノ宮さん」は中身(・・)が別人だった。


 彼の体の中に居るのは、異世界人の魂だった。



(ロキ……!!)



 犯人はすぐに分かった。


 最高位の女神の1柱である彼女の力を駆使すれば、大抵の犯人の特定など造作もないのだ。



(34人中、26人が分身や別人って何!?)



 彼女の受け持つ生徒の内、過半数が訳アリ出席だった。


 大半が分身や影武者による身代わり出席、残りは中身が違ったり憑依されていたりなど、濃かった。


 弁財天は頭が痛くなりそうだった。


 今の世界の状況を考えれば無理も無いとも言えなくはない。


 だが、これは酷すぎた。



(他のクラスも……)



 そしてこれは、彼女のクラスだけではなかった。


 それどころか、日本各地で起きている教育現場の危機だった。



(緊急召集よ……!)



 弁財天は現状の打開を決意した。


 女神教師弁財が本気になった瞬間だった。





--------------------------


――某居酒屋――


 弁財天には行き着けの店がある。


 昼は食堂、夜は居酒屋として営業する、やたらとメニューが多いことで知られる変わった店だ。



「大体!分身してまで出席日数と単位を稼ごうとするのが間違っているのよ!進学したいだけなら大検にしろってのよ!」


「カヤノ……もうかなり酔ってるわよ?」



 女神達は居酒屋に集合していた。


 周りには仕事帰りのOLもいるせいか、女神達の存在は違和感無く溶け込んで……ん?



「じゃあ、そっちも?」


「ええ、うちのクラスの生徒全員が異世界に召喚されちゃって、入れ替わりにロボ……身代わりの魔導人形が来てるのよ。記憶や性格が100%コピーされているせいで、周りは誰も気付いてないわ」


「私のところは忍者の子が多くてね。学校中が分身だらけよ」


「甲賀だからね」


「うちの所は、なんか異世界に召喚されたんだけど3分で帰ってきたのよ。チート付きで」


「3分って……ああ、あれか」


「あれね。そして生徒が好き勝手にチートを乱用していると」


「素行の悪い子だけじゃなく、普段真面目な子も分身してサボり気味なのよ」


「ああ……」


「ストレスが溜まってたのね」


「色々とハズれてしまったと」


「今はゲームの世界に入って遊んでいるわよ。親が居ない場所で自由を満喫しているわ」


「よっぽど勉強が辛かったのね。分からなくもないけど」


「でも、これはダメよ!悪質よ!」



 女神達は同じ悩みを打ち明けていき、どうするべきか相談しあっていた。


 テーブルにはビール瓶が既に何本も並んでいる。


 女神達の会話は次第に苛烈になっていく。



「禁止よ!禁止!」


「ええ!禁止ひょ!本当に非常時の人以外は原則禁止ひょ!」


「実際、サボる気で使ってる奴もいるんだから容赦は要らないわ!!天罰よ!!」


「ジャッジメントね!!」



 酒の力もあり、女神達はヒートアップしていく。



「……お客さん、神気漏れてますよ?」



 結局、バイトの少年に止められるまで女神達はヒートアップしていった。


 女神教師8柱が飲んだ酒、ビール大瓶(約630ml)23本、ウィスキー(1本700ml)10本、焼酎約7ℓ、中国酒9ℓ、その他洋酒13ℓである。






--------------------------


――翌日――


「はい!今日は25人欠席ですね♪」



 翌朝、ホームルームにて弁財天は笑顔で出欠をとっていた。


 だが、笑顔の弁財天とは裏腹に、生徒達は思いっきり動揺していた。


 当然だ。


 教室の中が空席だらけなのだから。



「それと皆さんに嬉しいお報せで。今日からこのクラスに編入生が来ました。今日は欠席の鈴木さん(・・・・)の遠縁の方なのでよく似ています(・・・・・・・)が別人ですよ。はい、入って来てください。山田さん(・・・・)♪」


「は……はい……!」



 「山田さん」は全身ガクブルだった。


 言うまでもないが、「山田さん」は昨日まで「鈴木さん」として登校していた“影武者”である。


 今朝登校したら速攻で弁財天に捕まり、どういう裏技なのか編入生にされてしまった。


 もう2度と「鈴木さん」の影武者にはなれないだろう。



「せ、先生!これって一体……!?」


「はい!ではホームルームは以上です♪」



 普通の生徒達の疑問を全部受け流して教室を後にした。


 彼女は音楽教師なので、急いで音楽室に向かわないといけないのだ。



「あのう……山田さん(・・・・)?」


「……」


鈴木(・・)さん(・・)、だよね?」


「……」



 山田さんは滝のような汗を流した。






--------------------------


――数日後――


「――――という訳で、ここに居る全員は補習です☆」


「「「……」」」



 土曜日の朝、教室には弁財天と25人の生徒がいた。


 生徒の方は一体何が起きているのか理解できていなかった。



「あのう、先生、何で僕らが補習を受けないといけないんですか?ちゃんと授業は受けてるし、試験も赤点は取ってませんよ?」


「そうですね。ここに居る皆さんは表向きは(・・・・)今まで欠席もしてませんし、成績も一部は危ないですが、留年の心配はありません」


「だったら何で俺らが土曜に集められてるんだよ!?」



 生徒の1人が怒鳴り声をあげた。


 他にも不満の表情の生徒がいる。


 だが、弁財天は微塵も引かなかった。



「でも、実際には皆さんは殆ど登校してませんよね?」


「「「!!」」」


「定期試験も受けてませんよね?」


「な、何のことですか?」


「分身」


「「「!!」」」


「式神」


「「!!」」


「影武者」


「「「!!」」」


「先生は最初から気付いてましたよ?」



 生徒達は驚愕を隠せなかった。


 みんな「何故バレた」という顔になっている。



「先生は何でも知っています。何故かこのクラスには忍者や陰陽師、殺し屋、宇宙人、マフィア、道士、魔女などが居ることもです」


「バカな!!」


「……え、宇宙人?」


「そして先生は神です」



 弁財天は神気を少し解放した。


 そして変身!



「め…女神、サラスヴァティ……!!」


『私は一教師として皆さんのこれ以上の勝手は許しません。今までサボった分、たっぷり補習を受けてもらいますね。ああ、ちなみにここはもう先生が創った空間なので、補習が終わるまで出られないわよ?』


「お、横暴……」


『尚、保護者の方には事前にお知らせして了承を貰ってますよ♪』


(それ、脅迫!)


(誰も神に逆らえないって!)



 生徒達は悟った。


 神の怒りからは何人たりとも逃れることはできないと。



『では、まずは古典から始めましょう!』



 弁財天は笑顔を浮かべながら教科書を開いた。


 彼女は女神、だが今は次代を担う若人を正しく導く教育者なのだ。



『そうそう、サボった分は倍返しでやりますからね♪』


「「「ヒィィィィィィィィィィィ!!」」」



 サボりの常習犯には容赦はしないよ☆









某神「大羽の分身だけ消えない!」

弁財天「え!?」


 士郎の分身ダブルくんは神にも消せませんでした☆




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