第29話 ボーナス屋、ドラゴンを狩りまくる
緊急事態だ!
俺達は今、野生のドラゴン軍団に追われている!
「何なんだこりゃぁ~~~~~~!?」
「お兄ちゃんも早く逃げて~~~~!!」
とにかく逃げる!!
1匹だけならまだしも、10匹以上は無茶過ぎる!
というより、そもそもサイズがこの前のベルクドラゴンより明らかに大きいぞ!?
何てドラゴンだ!?
【ファイヤードレイク ♂】
【分類】竜型魔獣
【用途】肉以外の各部位は武器・防具の素材、肉は食用(普通)
【詳細】主に火山地帯に生息する竜種。
マグマの中でも活動ができるほど火属性に対して強い耐性がある。
成体には例外なく体内に魔石があるため永年素材目的で狙われているが、戦闘力が高い為失敗する事が多い。
鱗の硬度は竜種の中では中の上、総合的な強さは中の上である。
火山地帯では群で活動する場合が多い。
何か、どっかで聞いたことのある名前だな?
って!強さはベルクドラゴンより上ってマズイだろ!!
しかもデカいし、飛んでるし、数多いし!!
『『ギャォォォォォォォォォォォォ!!』』
わ~~~~!!
ファイヤーブレスだ~~~~~!!
「ロ、《ロックウォール》!!!」
後方一面に岩壁を出現させて炎を防ぐ。
けどこんな壁、炎は防げても飛んでる奴にはあまり意味ないな。
「――――――――――来たぞ!!」
『ギャォォォォォォォォォォ!!』
「こうなったら力任せに、《ウェイト》!《ウェイト》!!《ウェイト》!!!」
壁を飛び越えてきた1匹のファイヤードレイクに加重魔法をかけまくった。
すると、3発目でズドンと地面に墜落した。
よ~~し、この魔法は効果があるみたいだな!
「おい!どんどん飛び越えて来たぞ!!」
「とにかく全部落とす!ケビン、一緒に加重魔法をかけまくるんだ!ヒューゴ達も落ちた奴にとにかく水の攻撃魔法をぶつけ続けろ!」
「はい!!」
「わ、わかった!!」
火には水!
とにかく、逃げるとしても少しでも弱らせた方がいいよな!
「「《ウェイト》!《ウェイト》!《ウェイト》・・・・・・・・・!」
「「「《水の矢》!!」」」
俺とケビンで空にいるファイヤードレイク達の重量を数倍に上げていき、重量に耐えられなくなった奴からズドン、ズドンと墜落していく。
あ!先に墜落した奴の真上に連続で墜落した!
あれは圧死したかもな?
「ふう、これで全部墜落したな!」
「でも、何匹か立ち上がろうとしてるし、お兄ちゃん達の魔法もあんまり利いていないみたい!」
「じゃあ、《ホール》(大)!!」
ファイヤードレイク達の真下に巨大な穴を出現させて落としてやった!
どうなったか覗いてみると、数匹は圧死してるっぽかったがほとんどはまだ生きていた。
ヤバ!またファイヤーブレスを放とうとしてる奴がいる!
どうするどうする!?
「―――――――そうだ!生き埋めになれ!!」
俺は《土術》で周囲の土を土砂崩れのように大穴に流し込んでいった。
よし、これならブレスは怖くないぜ!!
「埋まった埋まった♪」
「・・・・倒したのか?」
「・・・何かさあ、あんまり戦ったって感じがしないのは俺だけか?ほとんどあいつだけで倒しちゃったぜ?」
俺の背後でヒューゴ達がボソボソとなにか呟いてる。
確かに俺も、最初はビビったけどあんまり戦ったって感じはしなかっ・・・・・
『ギャォォォォォォォォォォ!!』
って、埋めた穴からドラゴンの首が出た~~~~~!!
『ギャォォォォォォォォォォ!!』
また出た~~~~~!!
何か目が血走ってるし、スッゴク怒っている感じだ!!
「く、首を斬れ~~~~~~!!」
「おお!任せろ!!」
思わず叫んでしまった!
ヒューゴの奴、ファイヤードレイクの首に向かって特攻していったぞ!!
パキンッ!
「あ、折れた!」
良い音とともにヒューゴの剣は真っ二つに折れた。
やっぱ鱗の硬度がベルクドラゴンと同クラスだから物理攻撃にも強いみたいだ。
って、このままだとヒューゴがパクリと食われるぞ!!
そうだ、今こそ“あの剣”の出番だ!
「ヒューゴ!“あの剣”を使うんだ!!」
「―――――――――!わかった!《龍鱗剣ペンドラゴン》!!」
出た!とにかくカッコいい剣!!
刀身に龍の鱗のような模様の入ったヒューゴの『魂の武装』だ!
前に1度、修業中に出させてみたら、パワーにチート感があったからロビンくんには本当に危険な時にしか使わないように言われてたんだよな!
「イケェェェェェェェェ!!」
『ギャオッ・・・・・・・・・』
魔力を込めた一撃でファイヤードレイクの頭が飛んだ!
ホントに凄い剣だな!
「今だ!《勝者の簒奪》!!」
ヒューゴは血の噴き出すファイヤードレイクの首に向かって掌を向けると、ファイヤードレイクの首から炎のようなオーラがヒューゴに向かって流れ込んでいった。
おお!森にいた魔獣よりも凄い量のオーラだな!
あ、もう1匹の頭がヒューゴにブレスを吐こうとしてる!
「――――――――っく!《加速》!《重力剣》!」
『ギャオッ!?』
俺は素早く謎の剣を抜き、加速してもう1匹のファイヤードレイクの首を斬った。
土属性の中でも難易度が少し高い重力系の斬撃を受け、ファイヤードレイクの首は地面に転がった。
ふう、思わず魔力を一気に15万以上使ってやったぜ!
―――――――――ピカッ!!
え?
俺の剣が光ってる!?
「おい、お前の剣、なんかオーラ吸収してないか?」
ヒューゴも俺の剣の変化に気付いたようだ。
よく見れば、俺が斬ったファイヤードレイクのオーラを吸収しながら変形してるぞ!
何だこれ!?進化か!?
【無銘の謎の光の剣】
【分類】片手剣(魔法剣)
【品質】普通
【詳細】製作者も素材も不明の片手剣。
竜種のオーラを吸収して能力が一部覚醒した。
持っていると使用者の身体能力が中上昇する。
光属性の技が使えるようになる。
【値段】―――――
「・・・・何だか覚醒したっぽい?」
俺の手には、さっきまでよりも鋭さや光沢が若干増した剣が握られていた。
“一部覚醒”ってことは、今後もパワーアップするってことなのか?
まあ、とりあえずこの剣の事は後で考える事にするか。
さて、これからどうするかな?
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――ファル村――
とりあえず大量の荷物と一緒に村に戻って来たぜ!
え、どうやって荷物を運んだかって?
それは勿論、ケビンがロビンくん直伝の四次元倉庫に全部ぶち込んで運んだぜ♪
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
で、今回の成果をド~ンと見せたらみんな絶句したぜ♪
何てったって、村の広場に大きなドラゴンが全部で13匹もドンと置かれたんだから言葉を失うのも当然だ。
「・・・・・これ全部狩ったんですか?」
「ああ、ほとんど俺が倒したぜ!」
「一匹は俺だ!!」
「・・・出鱈目過ぎるな。ファイヤードレイクを1匹狩るのに、普通はどれだけの戦力が・・・・・いや、それよりも、山から離れた平地のこの辺りに何でこの数のファイヤードレイクがいたのだ!?」
「ああ、それなんだけどな・・・・・」
俺は戦闘後にケビンとロルフから聞いた話をそのまま伝えた。
2人の話によると、例の洞窟の中でロルフが壁の中に隠された鍵束を発見し、鍵の1つで扉を開けてみたら知らない高原に出てしまった。
ちなみに、あのギャグっぽい爆発音は鍵束を取ろうとした時に作動したトラップの音だったようだ。
「――――――と言う訳だ。村長はあの洞窟の事は知ってたのか?」
一応村長に訊いてみたが、答えは否だった。
「いいえ、確かに帝国各所には古い遺跡が残っていますが、ファルの森にあるという話は初耳です。その扉というのも、おそらくは古代の魔法具か何かなのでしょうな。」
「多分そうだと思うぜ?《鑑定》でも『古の魔法扉』って出てたしな。」
鍵束には全部で7本の鍵があった。
多分、鍵によって行ける場所が違うんだろうな。
どっかのゲームにもそんな感じの扉があったが、それと似てるな。
「――――――で、このドラゴンの山、全部でいくらで売れるんだ?」
扉の事も気になるが、今はそれよりも金だな!
ベルクドラゴンよりもでかいし数も多いし、きっと高く売れるんじゃないか?
「これを全部売るのか?」
「それは流石にやめた方がいいでしょうね。売るとしたら1体にしないと怪しまれますし、市場も竜種関係の素材の価格が一気に下がるでしょうね。」
なるほど、元々入手し辛いから高いのに、一度に大量に出回ったらそうなるだろうな。
金や銀だって鉄や銅より貴重だから価値があるんだしな。
「あれ?じゃあ、この前のベルクドラゴンとかも不味かったか?」
「いえ、ベルクドラゴンは竜種の中でも数が多いですし、ファイヤードレイクと比べれば討伐難易度も低いので今日もどこかの冒険者が売ってるでしょうね。帝国内だと月に2~3体分の素材が市場に流れてますが、ファイヤードレイクは年に1~2体、1体も討伐されない年も少なくないほど貴重なので、これだけの数を売ると・・・・」
「・・・目立つだろうな。」
「そうですな。」
う~む、じゃあコレどうするんだ?
このままにしておいたら流石に腐って邪魔になるだけだし・・・・・。
「じゃあ、どうすんだ?」
「・・・・ここは専門家に任せた方がいいでしょうね。」
「専門家?」
俺が首を傾げながら訊くと、ロビンくんは俺も知っている名前を言った。
「――――――フライハイトさんです。」
ファイヤードレイクはヨーロッパ各地の伝承に出てくる空を飛んで火を吐くドラゴンで、和訳すると「火の竜」となり、現代で一般的なドラゴンのイメージそのものが当て嵌まるドラゴンです。