第281話 ボーナス屋、契約(強制)!①
――神聖グラディウス皇国 アネモス湖――
『ピギィィィィィィィ!!』
…………。
『ピギィィィィィィィ!!』
…………。
『ピギィィィィィィィ!!』
………何、コレ?
邪神も消滅したので《邪悪殺し》を解除したら、俺が右手に持っていた《黒蛇鞭ナーガ》(強化バージョン)の先に、小さな龍が縛られていた。
何コイツ?
縛られていたのって、ヴリトラじゃなかったか?
〈ヴリトラだな(笑) byスサノオ〉
「マジ!?」
〈マジ(笑) by弁財天〉
「先生!?何やってんだよ!?」
『ピギィィィィィィ!!放せ~~~!!』
どうやら、あれはヴリトラらしい。
さっきまでの巨体とは比べ物にならないほど小さくなった龍、精々ゴールデンレトリバーぐらいの大きさしかない。
というか、さっきまで1回死んで幽霊になっていたのに、もう復活したのか?
まだ半信半疑の俺は、ヴリトラ(仮)のステータスを確認した。
【名前】『魔龍王』ヴリトラ
【年齢】28,606 【種族】龍族(魔龍氏族)
【職業】龍王 【クラス】綺麗になった龍王
【属性】闇 火 土 風 空
【魔力】1/7,300,000
【状態】拘束(強)
【能力】龍王之魔法(Lv5) 龍王之武術(Lv5) 魔龍之呪力(Lv5) 乾光 星墜 神喰い 黒魔焔 魔龍之血 眷属創造 人化
【加護・補正】物理耐性(Lv5) 魔法耐性(Lv5) 精神耐性(Lv3) 闇属性無効化 火属性無効化 土属性無効化 風属性耐性(Lv5) 空属性耐性(Lv5) 全状態異常耐性(Lv5) 全能力異常無効化 完全詠唱破棄 思考加速 超速回復 超速再生 悠久の生命 超不滅 吸魔の黒鱗 悠久の記憶 性別固定化・女 始祖龍 神虐殺者 使徒殺し 天魔殺し 精霊ハンター 干上がらせる者 女神嫌い(水) 孤独者 神格の欠片 etc
【BP】0+100(*ヴィシュヌさんからの贈り物)
間違いないようだ。
寄生虫を取り除いたからか、今度はしっかりステータスを見ることができた。
《神虐殺者》って、どれだけ神様を殺しまくったんだ。
説明には「100を超える神を一方的に殺しまくり、その力を奪ってきた者」としか書いてないし。
『ピギィィィィィィィィィ!!放せインドラ~!!』
「だから、俺はインドラじゃない!ただの人間だ!」
『ピギィィィ………え!?』
「よく見ろ!」
『…………………あ!』
こうして誤解は解け、俺はヴリトラを解放した。
ヴリトラは暫く気まずそうな顔をしたまま一言も喋らず、俺はその間にコッコくん達と合流した。
『ハッハッハ!随分と可愛い姿になったじゃないか、ヴリトラ♪』
『ピギィィィィ!!五月蠅い!!』
『ハッハッハッハッハ!』
クロウはヴリトラで遊んでいた。
一方は龍神、もう一方は龍王、なのに会話の内容は意外と子供レベルだった。
『あ、そうそう、インドラ死んだぞ?』
『何!?』
『……その様子だと記憶は曖昧か。お前を操ってた奴に操られた挙句、人間に討滅されてあの世行きだ。お前と違って、奴が次に復活するのは暫く先だろう』
『ップ!ざま~!』
ヴリトラは爆笑した。
物凄く爆笑した。
異世界の果てまで響き渡るかのように爆笑した。
「ヴリトラ、そんなにインドラが嫌いなのか?」
気になって訊いてみると、ヴリトラはここぞとばかりに長年の恨み辛みを吐きだしてきた。
『俺、何度か奴と和解したんだが――――』
曰く、ヴリトラはインドラさんと何年もの間殺し合いをしてきたが、その中で何度か和解した事があったそうだ。
最初は昼も夜も攻撃しないと約束したが、インドラは朝や夕方に攻めてきてヴリトラの弱点をブスッ!
次は色々あって男の友情を結び、インドラの紹介で出会った水の女神様と目出度く結婚、だが、その奥さんに禁じられていた飲酒を勧められて泥酔、その隙にインドラがブスッ!
その奥さんは別の神と再婚したらしい。
ハニートラップで殺されるなんて、酷過ぎるな。
「汚ねえ…………」
『だろ?アイツ、兎に角卑怯で卑怯で卑怯なクソ神なんだよ!一度でも奴を信用した俺が情けねえ!過去に戻って、過去の自分を打ん殴ってやりてえ!』
『そのインドラも、卑怯過ぎて最近は人気が低迷しているようだけどな?』
『ザマア~♪』
『元妻も、その後も暴漢に襲われたり権力闘争で他の神の道具にされ続けているみたいだな』
『ザマア~♪』
ヴリトラは物凄く嬉しそうだ。
さっきまでの暗黒龍とは別人(?)過ぎてちょっと戸惑うな。
と、ここで俺はコッコくんが何かをしていることに気付いた。
「コッコくん、何をやってるんだ?」
『ゴケ!』
「ん?何だ、それ?」
コッコくんは石像にも化石にも見える不可解な石を咥えていた。
【神骸[トヴァシュトリ]】
【分類】聖遺物
【属性】無
【魔力】9,000,000/9,000,000
【ランク】SSS
【品質】高品質
【用途】御神体、儀式道具、魔術触媒 etc
【詳細】技巧神トヴァシュトリの遺骸が100%浄化されて現世に残った物体。
聖にも魔にも属さない強大な力が秘められており、然るべき場所に祀ればトヴァシュトリを復活させる事も出来る。
一方で、魔術に使う触媒としては神器級以上である為、あらゆる魔術の行使にも使える。
体内に取り込むことで強大な力を得る事も出来るが、受け入れるだけの器でない場合、力に飲まれて異形の怪物と化する場合があるので要注意。
基本的に破壊は不可能だが、万が一破壊されたり消滅した場合、トヴァシュトリは……未来永劫泣き続けます。
激レアのドロップアイテムのようだ。
つまり、コレがある限りあの邪神はまた復活する可能性がある訳だ。
そんな危険なアイテムはこのままにしておくわけにはいかないな。
という訳で、
「コッコくん、食べちゃいなさい♪」
『ゴケ!(ハイ!)』
『『エ!?』』
クロウとヴリトラが目を丸くする中、コッコくんは『神骸』を食べた。
―――――あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
悲鳴が聞こえたのは気のせいだろう。
そして、コッコくんはついに更なる進化を迎えた。
ヴリトラはバツイチでした。
そしてコッコくん、ついに……!?