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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
12の大迷宮編Ⅰ
279/465

第270話 ボーナス屋、モフモフを見届ける(アルテミス大迷宮3)

――アルテミス大迷宮 第2階層――


 フォルが女の子だったことに驚愕するワッコとダリアだが、すぐに意識をフロアボスに戻す。


 自ら吐き出す糸を使って素早く移動するフロアボスの巨大蜘蛛に4人は苦戦を強いられていた。



『シュシュシュッ!!』


「なっ!こっちから!?」


「やっぱり臭いもしないし、音も聞こえない!!」



 フロアボスのジャイアントステルススパイダーは隠密に優れていた。


 近くに居ると分かっていても獣人の優れた嗅覚や聴覚でもその動きを察知する事は出来ず、更に極稀にだが全身を透明にして背後から襲う事もあった。


 鳴き声も攻撃の直前だけしか聞こえず、次第に1人、また1人とフロアボスの爪の餌食になり、動きが遅くなった者は糸の餌食になっていった。


 魔法で攻撃するが、大してダメージを与えられず、彼女達は次々に捕まっていった。



「あ……体が…痺れ……」


「動け……!」


「や、ヤベエ……!」



 ダリア、フォル、ニロスは糸に巻かれて木の枝に宙吊りにされてしまった。


 残ったのはワッコだけ、状況はもう絶望的に見えた。



「た、助ける…ワン!」


「ワッコ、私達はいいから逃げて!」


「嫌だワン!みんなを見捨てたくないワン!」


「―――後ろだ!!」


「ワン!?」



 そしてワッコの背後に凶刃が迫った。


 だが、ワッコはギリギリのところでそれをかわし、周囲に張り巡らされた蜘蛛の巣から飛び降りてきたボスに向かって魔法を放った。



「ファ、《ファイヤー》!!《ファイヤー》!!《ファイヤー》!!」



 ワッコは火属性魔法を撃つが狙いが定まっていないので思いっきりはずした。


 が、ここで意図せぬ事態が発生する。



『『『ボ~~~ン』』』



 ワッコがはずした先、ボスの後方を小さい植物型魔獣の一団が通過していた。


 一見、根が足のように動いているユリに似た花を咲かせたその魔獣は「ボムリリー」と呼ばれ、普通の植物とは異なり、光合成で可燃性ガスを生成し、死にかけると自爆する厄介な魔獣だった。


 特に雨上がりの晴天時(・・・・・・・・)はより多くの可燃性ガスを体内で生成している上、群れて大移動をするので厄介なことこの上なかった。


 そしてその厄介な大集団にワッコの火魔法が飛んでいく。


 それは、火薬庫に火炎瓶を投げ入れるようなものだった。



『『『ボッ!?』』』



 そして今度は見事に命中した。


 直後、大爆発が発生する。



『シュッ―――――!!??』


「ワ~~~~!!耳が痛いワ~ン!!」



 爆音に犬獣人のワッコは思わず耳を両手で塞で身を縮めた。


 爆発とともに生じた炎は周囲を飲み込み、フロアボスの――ジャイアントステルススパイダーの巨体を蜘蛛の巣もろとも飲み込んで燃やしていった。


 炎は周囲にも燃え広がったが、幸いにも豪雨の後なのでそれほど被害は広がらなかった。



「アチチチチチチチチチチチチチチチチチチ!!」


「何だったんだ、今のは!?」


「だけど助かったよ!」



 捕らわれていた3人は運良く助かっていた。


 ボスが燃えている間に全身を縛っていた糸もどうにか解き、荷物の中から解毒薬を取り出して飲む。


 宝箱から見つけた解毒薬だからなのか、その効果はすぐに出て彼女達の麻痺を一瞬で回復させた。



『シュシュシュシュシュシュッ!!??』


「あの蜘蛛、まだ生きてるみたいだぞ?しぶといな~」


「……散々やってくれたお礼をしてやるぜ!!」


「ワッコ、大丈夫?」


「うううぅぅ……まだ耳が痛いワン」


「……私も痛いよ。けど、もう少しだから我慢して!」



 そして4人は絶賛炎上中のフロアボスに最後の攻撃を仕掛けた。



『シュッ!?』


「まずはその厄介な爪を斬らせてもらうぜ!」



 フォルは剣でボスの爪を斬り落としていく。


 実はこのボス、魔法に対して高い耐性はあるが、通常の物理攻撃に弱かったりする。


 ワッコ達は大迷宮に来て手に入れた魔法に大興奮し、ここまでずっと魔法に頼り切った戦いをしていた為に苦戦していたのだ。


 所詮は第2階層のフロアボス、調子に乗らずに慎重に戦えば彼女達でも十分に倒せる相手なのだ。



「イッケ~!」



 ダリアの射る矢がボスの急所に命中する。



『シュ………シュゥ…………』



 ボスはここで息絶えた。


 そして最後は炎に全身を焼かれていった。



「倒したワン!」


「ふう、危ない所だったぜ!」


「よくわからんが、ワッコのお蔭で助かったな?」


「そうね!ありがとう、ワッコ!」


「どういたしましてワン♪」



 戦いを終え、4人は少しだけ休憩した後に倒したボスの解体を行った。


 ボスの体の殆どは燃えてしまっていたが、体内には大人の拳位の大きさの魔石があり、他には爪の先端部分や運良く燃えなかった糸を幾つか回収した。



「こっちにも魔石があるワン!沢山あるワン!」



 次にワッコのはずした魔法の餌食になったボムリリー軍団の魔石の回収もした。


 小指の先ほどの小さな赤い魔石だったが、数が数である。


 全部集めるとかなりの量になった。


 そして最後に、知らぬ間に爆発したボムリリーの爆炎の餌食になった魔獣達の解体である。


 これはそれほど多くはなく、しかも全身が焼けていたので殆ど使い物にならなかったのでこちらも魔石だけ回収した。



「よっし!これで終わりだな?」


「いよいよ第3階層ね!」


「いや、その前にいったん外に出ないか?装備とかも整えたいしよ?」


「そうだワン!このままだとフォルの胸が丸出しだワン!」


「そうだな~、フォルの巨乳を隠すさらしを買わないとな~♪」


「ニロス!!テメエ!!」


「アハハハハハハ♪」



 解体作業を終え、4人は一旦大迷宮の外に出ることにした。


 『アルテミス大迷宮』は各階層の奥、次の階層へと繋がる階段の横に脱出用の魔方陣が設置してある。


 ただし、フロアボスのいる階層ではフロアボスを倒さないと使用できないという制限がある。


 そのかわり、次回からは入口から直接この場所に移動できるので、探索者達からすればそれほど厳しい制限ではなかった。



「じゃ!取り敢えず、街でフォルの下着を買ってから酒場で宴だな♪」


「ニロス、覚えていろ!!」


「わははは♪一緒に買い物するワン!」


「どうせだから、可愛い装備を買おうね♪」


「や、ヤメテくれ~~~!!」



 こうして約1名が悲鳴を上げながら、彼女達は一旦大迷宮から脱出するのだった。






--------------------------


――ファル村 勇者の家――


「モフモフの勝利!最高ですわ~~~♡」


「次!次のモフモフを!」



 ワッコ達の戦いを観戦していた元・王女姉妹は恍惚の表情になっていた。


 一方で、俺はワッコ達のボーナスを魔法特化にした事を少し後悔していた。


 まさか、交換直後に遭遇したボスキャラが魔法への防御力が半端なく高いとは思ってもいなかった。


 ここは反省して、バランスよく物理系のボーナスも交換しておいた方がいいかな?



「あれ~?」


「どうした、銀洸?」


「僕思ったんだけど~、さっきの犬耳ちゃんの魔法でお花モンスターが爆発したでしょ~?」


「ああ、したな」


「あれって犬耳ちゃんの攻撃で全滅させたってことになるよね~?それで~、その爆発で近くに隠れていた魔獣も一杯死んじゃったから~、犬耳ちゃんに沢山経験値が流れてるんじゃないかな~?」


「あ、確かに!」


「きっと~、4人の中で一番レベルが上がってるんだろうね~」



 バカの言うとおりだ。


 意図してなかったとはいえ、結果的にワッコちゃんが今回のボス戦のMVPだ。


 きっとレベルもかなり上がっている筈……!


 なら、次の階層からは大活躍するかもしれないな。



「取り敢えず~、あの大迷宮は大丈夫じゃない~?」


「そうだな。そろそろ次の方にいってみるか!」


「次は~『アフロディーテ大迷宮』がいいな~。きっとエッチがありそ~♪」


「おい!!」



 俺はバカの頭を叩いた。


 このバカ、絶対女神系の大迷宮にしか興味ないに違いない!


 他人の家でエロ観賞でもしにきたのかコイツは?



「じゃあ、次行ってみよう~♪」


「勝手に仕切るな!!」



 俺のクエスト達成は思ったより遅くなりそうだ。


 主に、このバカのせいで。






--------------------------


――補足(第2階層攻略後)――


【名前】ワッコ=アップル

【年齢】15  【種族】獣人(イヌ族)

【職業】冒険者(Lv25) 盗賊(Lv25) 魔法使い(Lv26)  【クラス】爆炎ガール New!

【属性】メイン:火 サブ:風 土 雷

【魔力】204,000/204,000

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv1) 補助魔法(Lv1) 特殊魔法(Lv1) 剣術(Lv2) New! 体術(Lv4) New! 投擲(Lv2) 獣化 New! 鑑定

【加護・補正】物理耐性(Lv2) 魔法耐性(Lv1) 精神耐性(Lv1) 火属性耐性(Lv2) 麻痺耐性(Lv2) 健康眼 獣人の勘 職業補正 職業レベル補正

【BP】11(*全自動決定:ON)



【名前】ダリア=フォーレ

【年齢】15  【種族】獣人(レッサーパンダ族)

【職業】冒険者(Lv15) 弓士(Lv15) 魔法使い(Lv15)  【クラス】森の射手

【属性】メイン:土 サブ:水 風 木

【魔力】87,000/87,000

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv2) New! 防御魔法(Lv2) New! 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv1) 弓術(Lv3) New! 体術(Lv2) 調合術(Lv1) 鑑定

【加護・補正】物理耐性(Lv1) 精神耐性(Lv1) 土属性耐性(Lv1) 麻痺耐性(Lv1) 混乱耐性(Lv1) 獣人の勘 職業補正 職業レベル補正

【BP】4(*全自動設定:ON)



【名前】フォル=アローペークス

【年齢】17  【種族】獣人(狐族)

【職業】冒険者(Lv18) 剣士(Lv17) 魔法使い(Lv17)  【クラス】男勝りな巨乳狐

【属性】メイン:風 雷 サブ:土 火 水

【魔力】115,000/115,000

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv3) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv1) 特殊魔法(Lv1) 剣術(Lv3) New! 体術(Lv3) New! 獣化 New! 鑑定

【加護・補正】物理耐性(Lv2) 魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv1) 風属性耐性(Lv2) 雷属性耐性(Lv2) 毒耐性(Lv1) 麻痺耐性(Lv1) 爆乳の器 獣人の勘 職業補正 職業レベル補正

【BP】6(*全自動設定:ON)



【名前】ニロス=ニュドール

【年齢】17  【種族】獣人(川獺族)

【職業】冒険者(Lv17) 剣士(Lv15) 魔法使い(Lv17)  【クラス】巨乳好き獣人

【属性】メイン:氷 サブ:水 風

【魔力】100,000/100,000

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv2) New! 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv1) 特殊魔法(Lv2) 剣術(Lv2) 体術(Lv2) 盾術(Lv1) 獣化 New! アイテムボックス New! 鑑定

【加護・補正】物理耐性(Lv2) 魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv1) 氷属性耐性(Lv2) 水属性耐性(Lv2) 麻痺耐性(Lv1) 飢餓耐性(Lv2) 獣人の勘 職業補正 職業レベル補正

【BP】6(*全自動設定:ON)









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