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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
12の大迷宮編Ⅰ
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第268話 ボーナス屋、モフモフを観察する?(アルテミス大迷宮1)

予約忘れてた。

――ファル村 勇者の家――


 『ゼウス大迷宮』でのボーナス交換を粗方終えた俺は、別の大迷宮に視点を移した。


 さ~てと、次は何処の大迷宮にするかな?



「ね~、何やってるの~?」


「あ、また来たのかよ。馬鹿」


「酷~い~」



 このバカ龍王、また勝手に人の家に入って寛いでやがる。


 おいコラ!勝手に人んちの食糧を漁るな!



「それで~、何やってるの~?」


「チート量産化!」


「うわあ~!世界が超人キングダム~!」


「何だそれ?」


「で、何処を見ているの~?」


「新大陸に出てきた大迷宮だよ!」


「あ~、ヘルメスとロキが半分暇潰しに創った~」


「そう、それ!」



 既に銀洸の方にも大迷宮の情報は届いているようだ。


 しかも、犯人(・・)の動機の方についても。



「ヘルメスとロキ、リンチされてるらしいよ~?カーリーさんとかが刃物持って切刻んでるって~。タタキができたら分けてくれるって言ってたっけ~?」


「要る奴いるのかよ?」



 叩くのはカツオだけにしろよな。



「で~、大迷宮なら、『アルテミス大迷宮』がお勧め~♪」


「何でだ?」


「探索者は~、みんなネコ耳やウサ耳だから~♪癒されるよ~♪」

「それかよ!」


「モフモフできる女の子って良いよね~♪今度、一緒に行かな~い?」


「1人で行けよ!あ、今の無し!行くな!」


「え~?」



 このバカはモフモフが好きらしい。


 どこぞの元・王女姉妹と気が合いそうだな。


 けど、次に視る大迷宮にするのには良いかもな?


 よし!次は『アルテミス大迷宮』にするか!



「私を呼びました!?」


「モフモフって聞こえた!」


「呼んでないよ!」



 最近、妙に耳が良くなっている元・王女までやってきた。


 頼むから、人の家を荒すなよ!



「あ~、ラスク発見~♪」


「コラ!!」






--------------------------


――アルテミス大迷宮 第2階層――


 ラウルス公国の首都西部にある大森林に出現した天を貫く大樹、それが『アルテミス大迷宮』だった。


 他の大迷宮と異なり、大樹の複数の根元に1つずつ入口が存在し、一度攻略した事のある階層なら、入口を通る際に行先をイメージする事で一瞬で移動できるようになる仕組みになっていた。


 どこぞのバカ神が創った大迷宮と異なり、ここは比較的常識的な大迷宮であった。



「そっちに行ったワン!」


「イッケ~!」



 犬獣人のワッコの合図で、レッサーパンダの獣人ダリアは弓から矢を放った。


 屋は弧を描くようにヒマワリに似た植物魔獣の急所を貫いた。



「命中だワン!」


「やったね♪」



 2人はタッチして勝利を喜び合った。


 ワッコとダリア、10代の獣人少女の冒険者コンビが大迷宮に入ったのは一昨日のこと。


 冒険者としてはまだ新人だが、獣人の高い身体能力を発揮することで第1階層を難なく攻略し、第2階層も順調に進んでいた。



「この先に川があるワン!そこで休憩するワン!」


「うん!この辺りには木の実も多いし、休むのには打って付けだね!」


「行くワン!」



 清水の匂いに釣られ、2人は走っていく。


 『アルテミス大迷宮』には外と全く同じ自然が再現されており、仮に遭難してもすぐに餓死したりすることなない環境になっていた。


 随分と優しい造りのようにも見えるが、それは決して探索者達を甘やかす為のものではなく、文明と切り離された環境の中で魔獣を始めとする危険を生き抜く為の試練の一部である。


 そして外の世界と全く同じであるが故、大迷宮内では天災なども気紛れに発生するようになっている。


 雨、雪、雷、暴風は勿論のこと、地震や土砂崩れなども発生して探索者達の命を奪おうとしていくのだ。


 大自然の猛威から生き残れるだけの強さ、それが『アルテミス大迷宮』の攻略で求められる最低限の強さである。



「……風の匂いが変わったワン!」


「何だか嫌な予感がするよ」



 そしてこの2人にも大迷宮の猛威が迫っていた。


 2人は獣人特有の五感や第六感により天候の変化を敏感に感じ取り、川原での休憩を早めに切り上げて移動を再開した。


 そして1時間後、天気は急変し、第2階層に豪雨が襲い始めた。



「あっちに洞窟があるよ!」


「急ぐワン!」


『『『ゲロゲロ!』』』


「「!!」」



 洞窟に向かう2人の前に、カエル型魔獣が現れた。


 その数20以上、雨天化で活性化するFランク魔獣、レインフロッグである。



『ゲロ!!』



 レインフロッグの水鉄砲が襲い掛かる。


 2人は反射的にかわすが、代わりに直撃した木の枝は粉砕した。


 レインフロッグは、雨天化ではその攻撃力が通常よりも2割以上上昇し、個体によってはEランク以上の能力を発揮するのだ。



「逃げるワン!」


「う、うん!」



 2人は戦わずに逃走を開始した。


 状況から考えれば賢明な判断だったが、逃走する2人の前に巨大なカエルが立ち塞がった。



『ゲロロ!』



 レインフロッグの上位種、キングレインフロッグである。



「……マズイ、ワン」


「ど、どうする?」



 前方にはキングレインフロッグ、後方には20体以上のレインフロッグがいる。


 豪雨のせいで視界は勿論のこと足場も悪い。


 逆に敵は強くなっている。


 絶体絶命のピンチである。



『『『ゲロロ!!』』』


『ゲロッ!!』



 カエルたちが一斉に攻撃を開始する。


 だがその時、2人の真上から2つの人影が現れた。



「《アイスショット》!!」


「《ウインドエッジ》!!」



 氷の玉と風の刃がカエル達に降り注いだ。


 レインフロッグ達は風の刃で切り刻まれ、キングレインフロッグも氷の玉が当たった箇所が凍っていき、手足が地面に張り付いたまま凍り動けなくなった。



「何だワン!?」


「獣人……?」


「お前ら、大丈夫か!?」



 ワッコとダリアの前に、2人の獣人が着地した。


 狐の獣人と、カワウソの獣人の2人組だった。






--------------------------


――ファル村 勇者の家――


「キャア~~~!!モフモフが一杯~~~♡♡♡」


「今スグ行きた~い♡」


「じゃ~、行く~?」


「行くな!誰も行くな!」



 家の壁に(銀洸の能力で)映し出されている『アルテミス大迷宮』の光景に、元・王女達はハイテンションになっていた。



「じゃ~、出発……」


「するな!!」



 俺はバカ龍王の頭を殴った。


 こいつら、さっさと出て行ってくれないかな?








 次回は土曜日更新予定です。


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