第260話 ボーナス屋、続々・傍観している
――王都デウス――
「――――あ!ゼウスが消えた!」
――――ピロロ~ン♪
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レジーナ=スプロットに強制召喚されました。
追記、レジーナから逃亡中のヘルメスとロキはアルテミスに狙撃されました(笑)
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アルテミス様、グッジョブ♪
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――王都デウス ゼウス大神殿跡地前――
ネメシスの次はゼウスが降臨した。
「最後の特別ゲスト、最高神ゼウスです」
『…………』
『…………(ギロ!)』
GODモードのゼウスはその意志に関係なく降臨していた。
隣ではネメシスが絶対零度の視線を突き刺している。
一方、アウルム王国はというと……
(ゼゼゼゼゼゼゼゼゼゼ、ゼウス様ああああああああああああああああああああああああああああ!?)
(終わった!あの女の言っていた事は、全て本当だった!)
(ゼウス様、私はな……ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさい生きててゴメンなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)
もう殆どの人間が折れていた。
圧倒的、あまりにも圧倒的な威圧感の前に心が折れに折れまくった。
そんな中、約1名は未だに反省の色を見せていなかった。
国王である。
「ヒ、ヒヒヒヒ……!か、神よ!我が神よ!このざざ、罪人に天罰を!」
国王は既に精神が壊れかけていた。
そんな中でも、未だに自分は間違っていないと思い込んでいた。
『――――その望み、叶えよう』
「ヒ、ヒヒヒヒ!ありがたき……」
直後、罪人である国王に雷が直撃した。
ゼウスは国王の望み通り、罪人である国王自身に天罰を下したのである。
『――――汝の望み通り、幾百の罪を犯した罪人であるお前に天罰を与えた。悔い改めよ』
「……貴方、いい加減にしなさい」
国王は吹っ飛んだ。
レジーナのお仕置きビンタで吹っ飛んだ。
音速を超え、城壁を貫通して吹っ飛んでいった。
そして《召喚》で再度彼女の前に連れ戻され、今度は逆方向へビンタされる。
今度こそ心を木端微塵に砕かれる。
「――――貴方は只の犯罪者、何も無い只の凡人です。最高神ゼウス公認の、ね」
「ヒ…ハハハ………」
国王の目から生気が消滅した。
彼が今の今まで信じていたもの、大切にしてきたもの全てを失った瞬間である。
「――――ネメシス、やりなさい」
『神罰、Death!!』
直後、王国全土を光の柱が飲み込んだ。
国境線に綺麗に沿って王国の全てを飲み込んだ神罰の光、これにより王国内にいる大罪人達が、思い上がった者達全てがネメシスによって裁かれた。
金を盗んだ者は全財産を失い、人を傷付けた者は与えたのと同じ痛みを全てその身に受け、快楽に溺れた者は一生快楽を味わえない体にされていった。
そして最後に、アウルム王国の殆どの国民が弱体化した。
魔法を、魔力に関係する全ての能力を喪失したのである。
『終わり、Death!!』
最後に、国王を始めとする王族や貴族、神官達の姿がこの場から消滅した。
彼らが何所へ消えたのか、それとも死んだのかはまた別の話である。
『愚かな者達よ、古の時から汝らを我が権能で庇護したのが間違いであった。今は亡き古き友との約束も既に果たされた。この地に与えていた《魔獣抑制の理》を消すとしよう。汝ら、無力を知り、どん底よりやり直すのだ』
OSHIOKIが終わると、ゼウスが勝手に締めに入っていった。
アウルム王国の領土にはゼウスのちょっとした小細工が仕込まれていた。
それは嘗て、この大陸の住民の祖先が地球から移住してきた際、まだ力の足りない彼らが魔獣の脅威で滅ぼされない為に与えた、魔獣を弱体化させ活動を抑制する結界の一種だった。
その為、今までのアウルム王国は他の11ヶ国に比べて魔獣による被害が極めて少なく、国民達は他国よりも遥かに安全な暮らしを保っていた。
だが、その力も今を持って消滅した。
これからは、他国と同じ条件下で生きていく事になるだろう。
そして、ゼウスは最後に――これは殆どノリで――この大陸の住民全員に神託を与えた。
『――――この広き地に住まう者達よ、12の『大迷宮』を攻略せよ!そして、間もなく訪れる災厄より汝らの愛するものを守るのだ!』
ゼウスは何時の間にか装備していた杖を掲げながら決めポーズをとった。
そして静かに姿を消していった。
(腹が立つ、Death!!)
ネメシスは心の中で舌打ちしながら消えていった。
ちなみに彼女、過去の腹いせにこの後「ゼウスが現世でナンパしている」と他の神達に言い触らし、そのあながち嘘ではない噂がゼウスが最も恐れる恐妻の耳にも届く事になる。
神罰の女神ネメシス、その神罰の対象にはゼウスも含まれている。
「さてと」
神々がいなくなった後、静寂に包まれた王都でレジーナは王都住民の中に紛れているある人物達に視線を送った。
尚、生中継はまだ続いている。
「立ちなさい。ソル帝国皇帝アナトリオス、及び皇妃ネフリティス、第一皇子ソロン、第一皇女クロエ」
「「「!!」」」
心の折られた人々が驚愕する中、旅人風の格好をした親子が平然とした態度で立ち上がった。
「お?気付かれてました?」
男はソル帝国の皇帝だった。
今回の召喚の儀を見物しに、親子でコッソリ来ていたのだ。
仕事を押し付けられた大臣達にとっては迷惑でしかないが。
「勿論です。加護を持たない人達の中で、貴方方親子は全員加護を持っていましたから。貴方のは、《太陽神アポロンの加護》ですね。息子さんも同じね」
「へえ、見ただけで分かるのか?」
「そういう力を持っているということです。それよりも、貴方方……いえ、もう一方呼びましょう。《召喚》」
「な!ここは!?」
「アレクシオス!!」
「アナトリオス!では、ここはアウルムの王都か!」
レジーナは神聖グラディウス皇国の皇帝を召喚した。
殆ど誘拐である。
「先に無理矢理お呼びしたことと、お騒がせしたことを謝罪します。私はレジーナ=スプロット、異世界人です」
「おぅ……これはご丁寧に……」
皇帝アレクシオスはレジーナの魅力に心が揺れた。
だが、すぐに気を引き締め直し、威厳溢れる態度で挨拶をした。
「――――という訳なので、この国の事は御二方の国にお任せします。分割してもいいですし、放置しても構いません。私はあくまで余所者の身なので」
「神の御使いの御言葉、確かに承りました。ですが、我が国はアウルムとは大河を挟んで接している為、兵などを動かすには船の用意が――――」
「それなら問題はありません」
レジーナはパチンと指を鳴らす。
直後、王国と皇国に挟まれた大河に橋が出現した。
それも何カ所も。
幅広く強度も抜群、大河に阻まれた国同士が陸路でつながった瞬間だった。
「今回のお詫びも兼ねて、です」
「おおお!」
生中継で橋がでくるのを見た皇帝はひざまずいてレジーナに感謝した。
彼にはレジーナが女神に見えたのだ。
当たらずも遠からずである。
「あと、この『転移の指輪』をお渡しします。知っている場所に少ない魔力で移動できる魔法具です」
「何から何までありがとうございます」
「いえ、当然の事をしたまでです。では、私はこれで失礼します」
そしてレジーナは最後に皇帝を元居た場所に送るとこの世界から静かに去ってゆき、同時に生中継も終わった。
余談だが、後年、オリンポス大陸には『レジーナ教』という宗教が誕生するのだが、それはまた別の話である。
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――王都デウス――
「……国王、どこに消えたんだ?」
「私に訊かないでよ。自分で調べればいいでしょ?」
「そういえばそうだな」
さあ、チートくんの出番だ!
――――ピロロ~ン♪
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『検索:消えた国王達の行方』
消えた国王夫妻は、南半球にある『ガンドウ(雁道)大陸』の辺境に強制転移している。
アンデッドの出現多発地帯なので、運が悪ければアンデッドの仲間入りは間違いなし!
夫婦の絆が試される、ナイトメアモードでの大冒険が始まる?
双子王子は国内の『ゼウス大迷宮』の第10階層にいます。
果たして、彼らが外に出られるのは何年後なのか!?
その他の皆さんはそれぞれ別の大陸や大迷宮の中にランダムで転移されています。
無視してOKです(笑)
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ここに来て、また新しい大陸の存在が発覚したな。
余生は超難関モードとは、因果応報だな。
『クゥ~ン』
「あ、そういえばまだお前がいたんだったな?」
「このチワワ、召喚に巻き込まれたの?」
「そうなんじゃないのか?首輪はないけど、飼い主とか……名前はあるのか?
俺の腕の中で潤んだ瞳をしながら何かを訴えるチワワちゃん。
俺は飼い主がいるかどうか、なんとなくステータスを見てみた。
【名前】ゴエモン
【年齢】1 【種族】犬
【職業】ペット 勇者 【クラス】世界一可愛い勇者
【属性】メイン:光 サブ:火 土 風 水
【魔力】500,000/500,000
【状態】正常
【能力】チワワ魔法(Lv5) 巨大化 宝箱 癒しの眼差し 鎮静の鳴き声
【加護・補正】物理攻撃無効 魔法耐性(Lv5) 精神耐性(Lv5) 全属性耐性(Lv5) 全状態異常無効化 長寿 超嗅覚 超聴覚 犬神の加護 獣神の加護
【BP】118
……はい?
爺「婆さんや、ゴエモンの姿が見えんが?」
婆「おやおや?お隣の梅さんのところに行ったのかしら?」
ゴエモン『ク~ン』
婆「帰って来たようですよ」
爺「心配したぞ、ゴエモン」
ゴエモン『ク~ン』
ゴエモンは無事に老夫婦の下に帰り、後に名犬ゴエモンとして世界に名を轟かせました。
めでたしめでたし。