第２５４話 ボーナス屋、神殿に入る
予約するのを忘れてました
――王都デウス 魔獣屋『魔獣のムツミ屋』――
俺は貰ったスライムに、試しに自分の魔力を与えてみた。
一気に与えたショックで死なないようにゆっくりと与える。
そして１分が過ぎようとすると、変化が起きた。
〈……おや！？スライムの様子が……！〉
五月蠅いナレーションとＢＧＭが聞こえてきたが無視だ。
そして、スライムは分裂して新たなスライムを生み出した。
同時に２体も。
〈おめでとう！ブレイブスライムが誕生した！〉
新しいスライムが誕生した瞬間だった。
横で見ていた唯花達は呆然としている。
【ブレイブスライム（※新種）】
【分類】スライム型魔獣
【属性】無
【魔力】５０,０００/５０,０００
【ランク】Ｂ
【状態】正常
【用途】使役
【詳細】歴代最強勇者の強大な魔力を吸収し生まれた新種のスライム。
金色に染まる体はノーマルスライムの２０００倍以上の強度を持ち、全ての属性の魔法を使うことができる。
温和で知性も高く、恐怖に負けない勇気を持つ。
やってしまったかもしれない。
たった１分でとんでもないスライムを誕生させてしまった。
あ、おばちゃんの目が太陽のように輝きだした。
「代金を半額にするから１匹譲ってくれないかい！？」
「イイよ♪」
タダ同然で生まれたブレイブスライムは４０万Ｇ以上の値段で売れた。
ふう、これで俺の財布は救われた。
買った魔獣は取り敢えず四次元倉庫にしまっておく。
流石にあの数の魔獣と一緒に街を歩いたら物凄く目立つ。
既にコッコくんも目立っているけどそれはそれだ。
『ピィ』
『ピィ』
と思ったら、ノーマルスライムとブレイブスライムが一緒に居たそうな鳴き声を出してきたので２匹をコッコくんの背中に乗せる。
先に《魔獣使いの秘技》を使って俺の使い魔にしておいたから、途中で逸れてもすぐに召喚で戻せるから安心だ。
うっかりコッコくんの羽毛を食べたりしたら……とも思ったが、コッコくんの羽毛は頑丈だからそう簡単には抜けないだろう。
俺達はおばちゃんと別れ、裏・王都の散策を続けた。
－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－
――王都デウス 裏・王都『名も無き古き神殿』――
それは裏・王都の無数の廃墟の陰に隠れた場所に立っていた。
「……神殿？」
それは小さな神殿だった。
一目見ただけで千年以上は昔に建てられた歴史建造物なのが分かる神殿からは何とも言い難い不思議な“何か”が感じられた。
ゲームだったら、ここで何かのイベントが起きたりするんだけど……
「――――旦那様、あそこに隠し階段があります」
起きた。
俺達は安全確認をしながら地下へと続く階段を下りていった。
罠？
そんなものはユニスが解除してくれたし、出来なかったものは魔法で強制排除した。
『ゴケ～！（ビーム！）』
邪魔な扉も破壊し、俺達は地下室に入った。
そこにあったのは幾つもの壁画と、部屋の中央に立つ石像だった。
『全知全能の神、ゼウスの像』
石像はゼウスの像だった。
この神殿を建てた人達が作ったものだろうな。
「……ねえ」
「ん？」
「……この壁画、何？」
「え？」
唯花は何とも言えないような顔をしながら壁画を指差した。
そこには男の神と女神が争う絵、そしてその内容を説明する文章が刻まれていた。
――――☓☓☓年 久方ぶりにイオに逢いに行ったが、そこには彼女の姿はなく代わりに正妻がいた。死にかけた。一瞬、ペルセポネが見えた気がしたら回復され再度死にかけた。
――――〇△☓年 デメテルとデートしようとしたらデメテルがヘラに殺された。次に復活するのは３００年先だろう。あと虫にされた。
――――〇〇〇年 巫女達が全員馬にされていた。くそ……。馬に変身して燃えた。翌朝死にかけた。
――――△☓☓年 アテナが梟に変身して逃げた。ヘルメスは１０日前に逃げた。逃げ遅れた儂はヘラに殺されかけた。愛人が５６人豚にされて食われた。
ゼウスの浮気日記じゃねえか！！
または女神ヘラの処刑日記！？
「ねえ、この地下室ってもしかして……」
日記がある以上、ここはゼウスの秘密の部屋……隠れ家のようだ。
よく調べてみれば部屋全体が魔法で強化されていたり、外部から探知されない仕掛けが施されていたりしていた。
じゃあ、あの石像は何だ？
まさか、自分の部屋に自分の像を飾っているのか？
【ゼウス（体）】
【分類】御神体
【属性】――
【魔力】――
【ランク】ＳＳＳ
【用途】ゼウス専用の依り代
【詳細】オリンポス十二神の王であるゼウス専用の依り代の１つ。
ゼウスが現世で活動する為に全知全能の力を結集させて創りだした。
ゼウス自身が抜けている間は石像状態になるが、決して朽ち果てる事は無い。
この依り代に入っている間のゼウスは力を行使しない限りは人間と区別がつかなくなり、如何なる神にも気付かれる事無く活動する事が出来る。
恐妻にもばれないで浮気できる超優れもの。
「「壊そう！」」
俺と唯花の声がハモッた。
「浮気の為に全知全能を使ってるんじゃねえ！」
「歴史ロマンを堪能できると思ったのに台無しじゃない！士郎、これ壊して女神に通報よ！」
「よっしゃあ！！」
俺はクラウ・ソラスとブリューナクの両方を出して依り代の破壊を行った。
だが壊れない！
「クッ！無駄に頑丈だな！？全知全能の力を使ってるだけはあるか？」
「魔力を吸収したら」
「像自体に魔力が無いみたいだから駄目だ！」
「無駄にハイスペックね！腐っても大手の神様だから厄介だわ。リセットはできないの？あれって亡霊とかにも有効って言ってたでしょ？コレにも使えないの？」
「試してみるか……あ、できた！よし、強制オールリセットって、魔力が！魔力がめっちゃ減っていく～！！」
俺のチートは石像にも有効だった！
だけど魔力を一気に４００万も使ってしまって、意識が一瞬薄れてしまった。
まあ、神速で回復するから問題ないけど。
「――――よし！《物理攻撃無効化》も《魔法攻撃無効化》も消えてた！今度こそ破壊するぞ！」
「やっちゃえ！浮気ばかりする変態神の道具なんて木端微塵にして異次元に捨てるのよ！」
「おうよ！」
そして俺は今度こそゼウス像を破壊しようとした。
こんな像、現世には百害あって一利無しだからな。
――――ノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ！！！！
遥か遠くから悲痛な声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
俺はクラウ・ソラスとブリューナクでゼウス像を破壊した。
久しぶりにスカッとした。
「「ふう♪」」
「……旦那様？奥様？」
「さあ、ここにはもう用もないし行くか？」
「そうね。次は靴屋さんに行くわよ」
「……また高い者を買う気じゃないだろうな？」
「気分次第よ！」
ユニスが何か言いたそうだったけど、俺も唯花のスッキリした顔を見ている内に黙り込んだ。
そして用が済んだ俺達は地下室を後にしようとした。
『――――無事に出られると思っているのか？』
だがその時、地下室全体にとんでもないプレッシャーが襲い掛かり、今まで聞いた事の無い程荘厳な声が聞こえてきた。
そして地下室全体に途轍もないオーラが充満していった。
これは、神オーラ！？
『我が依り代を破壊せし罪人よ、ここから生きて出られると思わぬ事だ。汝らには、我が雷霆による制裁を与えてくれる』
それは怒りに満ちた声だった。
俺は慌てて周囲を見渡すが声の主の姿は見当たらない。
――――ピロロ～ン♪
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
足元を見て下さい。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
え？
俺は視線を足元に移す。
すると、そこにいた。
『神の領域に無断で足を踏み入れたこと、後悔するがよい！』
「………ちっさ！！」
ザ・テンプレ神様がそこにいた。
手乗りサイズで。
何、コレ？
【名前】『全知全能』ゼウス
【年齢】？？？ 【種族】神
【職業】最高神 全能神 【クラス】神級恐妻家 ミニチュア神
【属性】無（全属性）
【魔力】１０,９００,０００/１０,９００,０００
【状態】神・隠蔽 実体化 能力制限(大)
【能力】全能神之神魔法(Lv5) 全能神之武術(Lv5) 天空神之御力(Lv5) 天罰神之御力(Lv5) 秩序神之御力(Lv5) 守護神之御力(Lv5) 支配神之御力(Lv5) 父神之御力(Lv5) 家庭神之御力(Lv5) 慈愛神之御力(Lv4) 軍神之御力(Lv4) 好色神之御力(Lv5) 千変万化 神之息吹 雷霆 etc
【加護・補正】物理耐性(Lv5) 魔法耐性(Lv5) 精神耐性(Lv5) 光属性無効化 雷属性無効化 風属性無効化 水属性無効化 火属性無効化 他全属性耐性(Lv5) 全状態異常無効化 全能力異常無効化 完全詠唱破棄 思考加速 並列思考 神速再生 神速回復 不老長寿 不滅 神の威光 全知全能 親殺し 神ハンター 悪魔ハンター 天使ハンター 天魔ハンター 超次元ハンター 神の王 超絶倫王 超浮気王 超子宝王 全能神 天空神 天罰神 秩序神 守護神 支配神 父神 家庭神 慈愛神 軍神 好色神 etc
【ＢＰ】９９９９
