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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
オリンポス大陸編
262/465

第253話 ボーナス屋、衝動買いされる

――王都デウス 服飾専門店『ファッションのモフモフ』――


 俺はネコ耳ウーマンに簡単な事情説明をした。


 初対面の人に対して不用心かもしれないが、俺の直感が彼女は大丈夫だと告げていたし、何より同じ神の被害者なので親近感がわいたのだ。



「にゃ~、世界は奇天烈にゃ~」



 ネコ耳ウーマンは呆然としながら俺の話を最後まで聞いてくれた。



「カメと鶏とメイドを連れていたからただ者じゃにゃいとは思ったけど、まさか勇者だとは驚きにゃ」


「“ただ者じゃない”の基準、おかしくないか?」


「そうかにゃ?あ、そういえば自己紹介がまだだったにゃ!私はこの店の店主のタマ=ラエーモンにゃ!よろしくにゃ!」


((“タマ”って……))



 誰だよ、そのネコ感全開な名前を付けたのは?


 まさか異世界人か?



〈…………さあ?〉



 それ、肯定と受け取れるよな?


 一体、この世界には異世界人が何人いるんだ?



――――ピロロ~ン♪



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

『回答:異世界人の人数』


 現在、168名です。(注:死者を除く)


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 結構多いな!?


 まあ、今の地球の年間失踪者数を考えればそれ位いても違和感はないな。


 日本でも、突然人がいなくなっても事件性がないと捜査されないことが多いし、何人かが異世界に行ってしまっても気付かないし想像も出来ないから大して騒がれないだろう。


 消えた場所や状況によっては失踪した事自体気付かれない場合もあるしな。


 案外、この世界以外の異世界に召喚された人も結構いるのかもしれない。



「――――それで、今日はどんな商品をご希望にゃ?久しぶりのお客さんだからおまけするにゃ!」


「ホント!?じゃあ、まずは――――」


 まあ、異世界人については後でいいか。


 というか、1人で黙考してたら唯花がドンドン服を買って大変なことになりそうだ。


 一応、かなりの金を――こっちのギルドで両替済み――持っているけど、油断したら破産するかもしれない。



「これなんかどうにゃ?乳白羊(ミルク・シープ)の毛皮で作ったコートにゃ!これを来たら真冬でもポカポカにゃ!」


「何コレ!凄くイイ!!」


「へえ、良いデザインだな~」



 タマさんが持ってきたのは乳白色の毛皮でできた女性用コートだった。


 デザインは日本で売っているコートに近い。


 俺はファッションにそれほど熱心という訳じゃないけど、このコートが凄く良い物だというのはよく分かる。


 普通にファッションショーにも出せるんじゃないのか?



「見てみて!似合う?」


「ああ、凄くイイぞ!サイズもピッタリじゃないか!」


「うん♪あれ?なんだか力が湧いてくる気がする?」


「当然にゃ!乳白羊の毛皮でできてるから体が元気になるにゃ!」



 どうやら只のコートじゃないらしい。



【乳白羊のムートンコート(女性用)】

【分類】コート

【属性】光・土

【魔力】――

【ランク】B+

【品質】高品質

【用途】防寒着

【詳細】乳白羊(ミルク・シープ)(稀少個体)の毛皮でできた冬用コート。

 通気性と防寒性が高く、また体内の“気”の流れを良くして体調を良くする。。

 人によっては女子力がアップする……かも?

【値段】50000G



 “G”は新大陸の通貨単位で「ゴル」と読む。


 1Gが大体10円位だから、このコートは50万円に……高!!


 これ、庶民が買う品物じゃないぞ!!



「これ、買うわ!」


「毎度ありにゃ!オマケして3万5千Gにゃ!」


「士郎、お金!」


「俺が買うのかよ!?」


「男の甲斐性の見せどころにゃ」


「そうよそうよ!」



 タマさんや、あおらないでくれ。


 ちなみに、現在の俺の財布の中にある新大陸通貨は2千万Gだ。


 全然余裕だが、コート1枚でこの出費は何気に痛い。



「他にも見せてくれる?」


「勿論にゃ!沢山買ってほしいにゃ!」


「ちょっと待て!まさか、全部高級品じゃないのか!?」


「良い品は高いにゃ!」


「そうよ!あと、士郎の分も買ってあげるからね!」


「払うの俺だろ!!」



 なんか俺が知らない間に唯花のタマさんが仲良くなっている気がする。


 まだ財布の中は余裕があるけど、大丈夫……だよな?


 というか、この店に客が来ないのって、経営者が獣人である以前に、商品が高すぎるせいじゃないのか?



〈勇者は『オサイフ勇者』になった!〉






--------------------------


――王都デウス 旧貴族街『裏・王都』――


「また来るにゃ!君達なら何時でもオマケするにゃ!」


「勿論♪今度は友達も連れて来るわ!」


「待ってるにゃ!」



 唯花は満面の笑みでタマさんに手を振っている。


 隣でユニスも同様に手を振っている。


 あの後、テンションが上がった唯花がユニスも巻き込んでのプチファッションショーがあった。


 最初は抵抗していたユニスを唯花がどんどん着せ替えしてゆき、そのままユニスも変なスイッチが入ってしまい、最終的に大出費になってしまった。俺が。



「さあ、どんどん買うわよ!」


「はい!奥様!」


「コッコくんも似合ってるわよ?」


『ゴケ~♪』



 そして何故かコッコくんも着せかえされていた。


 驚いたことに、タマさんの店には鶏用の服もあったのだ。


 獣人の国では鶏も服を着ているのか?


 調べればすぐに答えが来るが、今はやめといた。


 それはさておき、俺達の散策は続く。



「ヒヒヒ……!そこのお兄さん、この「絶倫秘薬」はいかがかな?」


「いらん!」


「そこのお嬢さん、「浮気防止薬」はいらんかね?」


「幾ら?」


「あ~!あの店はなんだ~!?行ってみよう!」



 危険な予感がしたので無理矢理唯花を引っ張って別の店に移動した。



「おばちゃん、この店は何を売ってるんだ?」


「魔獣と卵だよ。買っていくかい?」



 次に訪れたのは半壊状態のボロ屋敷の前にあった露店、白髪の目立つおばちゃんが見た事の無い卵や小動物っぽいのを売っていた。


 魔獣って、買えるものなのか?



「坊や達は見たところ外国の人だね?他の国と違ってこの国じゃあ家庭で魔獣を飼ったりするのは表向き(・・・)“野蛮”と言われているせいで表じゃ売れないんだよ。騎士の人とかは移動用の道具(・・・・・・)として飼ってる人もいるけどねえ。まあ、表では飼う人はいないけど、裏でコッソリと飼う人は貴族にも結構いるからあたしも食うに困らない暮らしをさせてもらってるよ」


「ふ~ん」


「ところで、坊やが連れている()は使役獣かい?長いことこの商売をしているが、その子みたいな鶏は初めて見るねえ?希少種かい?」


『ゴケ?(僕?)』


「ま、まあ……確かに稀少だな」


「そうかい。こんなのもいるとは、世界は広いねえ」



 おばちゃんはコッコくんを物珍しそうに眺めている。


 そりゃあ、コッコくんみたいな鶏が早々他にもいる訳がないから珍しいだろう。


 なにせ、既に半分は神になってるんだから。



「――――それで、何か買っていくかい?2匹以上買うなら少し安くするよ?」


「う~ん、おすすめとかある?」



 俺にはコッコくんやカメ、ドラコとかがいるからそれほど必要ないけど、唯花の相棒に1体買うのもいいかもしれない。


 護衛にはユニスがいるとはいえ、あって無駄になることはないだろう。


 子猫や仔犬に似た魔獣なら、日本に連れて行ってペットにするのも良いかもな。



「そうだねえ、オークやリザードマンはどうだい?」


「……もう少しカワイイ系で」


「可愛いのは愛玩用で大人気だから少し値が張るけどいいかい?」


「ああ」


「なら、こっちに来なさい」



 俺達は露天の後ろにあるボロ屋へと案内された。


 中には檻に入れられた大小様々な魔獣がいた。



「ここにあるのはどうだい?背中から妖精みたいな羽を出して飛ぶ貴族に人気の妖精胴長犬(フェアリー・ダックスフント)、賢く決して道に迷わず飛び続ける賢鳥鸚哥(インテリ・パラキート)、回復魔法を使う白魔三毛猫(ヒーラー・キャット)、仲間を幻覚系の魔法で護るのが得意な夢幻(ドリーム)ミンク、あとはこの前運良く入荷できた一角聖小兎(レッサー・アルミラージ)だねえ。気に入ったのはあるかい?」


「全部買います!」


「ちょっと待てえええええ!!全部でいくらすると思ってるんだ!?」


「妖精胴長犬が10万G、賢鳥鸚哥が9万G、白魔三毛猫が6万G、夢幻ミンクが8万G、一角聖小兎が17万Gだよ。全部で50万Gだねえ」



 500万円の大出費だろ!!


 唯花、ぶりっこポーズなんかしても俺には効かないぞ!!



「だって~、私もペットが欲しいんだもん♪」


「もん♪じゃない!唯花、今日のお前はタガが外れまくってないか!?」


「でも~」



 クッ!


 唯花の奴、今まで高い買い物なんかした事が無いからここに来て変なスイッチが入ってしまったみたいだ。


 最近まではセレブが衝動買いする別世界の光景をテレビで羨ましそうに見てただけだったけど、文字通り別世界(・・・)に来て、日本じゃ出来ない事をしてみたくなったのか?



「旦那様!番犬にこれはいかがでしょうか?」


「それは氷帝魔狼(インペリアル・アイスウルフ)の子供だね?その仔はメスだから15万Gだよ。オスなら20万になるよ」


『ゴケェ!ゴケゴケ!(勇者様!これはどうでしょう!)』


「それは灼熱大鶏のヒナだねえ。1羽1000Gだよ」


「お前らもか!」



 コッコくんのは別にいいけど、ユニスのは高すぎだった。


 俺の魂の叫びも結局通じず、またダブル美少女(?)の潤んだ瞳に負けた俺はまたしても財布の紐を解くのだった。


 俺、このまま破産とかしないよな?



「――――灼熱大鶏のヒナが10羽で1万、全部で86万Gだけどオマケして85万Gでいいよ」


「うう……どうぞ」


「坊やも大変だねえ。何だか不憫に思えてきたよ」


「だったら半額にして……」


「それは無理だねえ。けど、代わりにこの子を上げるよ。売れ残りだけどね」



 同情する目で俺を見るおばちゃんは、店の奥から1つのケースを持ってきた。


 中には透明な水色の物体が入っていた。



「これって……」


「当店で地味に不人気な売れ残り魔獣筆頭のスライムだよ。エサは何でも食うけど、放っておくと分裂してすぐに増えてしまうのが難点だけどね。店の裏にはまだ数十匹いるから、坊やに1匹あげるよ」


『……ピ?』



 スライムが鳴いた。


 何処から声が出てるんだ?


 しかしスライム、某RPGではお馴染みのスライム、ダーナ大陸ではこれの上位種をザックザック狩っていったよのスライムか。


 戦闘力が低そうだし、飼っても増えるだけで成長するか不安だ。


 一応、鑑定してみるか。



【ノーマルスライム(オリンポス大陸産)】

【分類】スライム型魔獣

【属性】無

【魔力】5/5

【ランク】G

【状態】正常

【用途】各種素材、大人の玩具

【詳細】オリンポス大陸で最も数多く棲息しているスライム。

 戦闘力が極めて低く、攻撃も体内で精製した酸を吐きだす事しかできない。

 子供でも木の棒で倒せる魔獣なので常に雑魚扱いされている。

 体が不定形で何でも食べる為、一部の変態さんは特殊なプレイに愛用したりもしている。

 碌に研究もされていない魔獣だが、その特筆すべき能力は極端に強い適応力と増殖力、そして成長限界の皆無である。

 エサや環境によってその体の構成を変え、分裂の際により強い別種の個体を生み出し、さらには自身も強い敵を倒す事で何所までも成長、そして進化を続けていく。

 過去の記録によれば、瀕死のドラゴンを捕食して突然変異を起こし都市を幾つも破壊した個体が存在したので決して油断できない魔獣である。

 また、一定数以上集まると合体する。




 ……マジで?


 この(スライム)、意外とスゴイの?


 これって、コッコくんの時みたいにチート化するフラグか?







 士郎の!士郎の財布が……!!

 果たして、彼は破産せず障害を全うする事が出来るのだろうか!?

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