第24話 ボーナス屋、採取に行く
――ファルの森――
俺だ!士郎だ!
俺は今、ファル村のすぐそこにあるファルの森に来ている!
これから薬草の採取に向かうところだ!!
「よし!これから薬草採取に行くぞ!!」
「「「おおお~~~~~~!!」」」
そして森に入っていく俺!
その後をケビンとマイカとニールとリン・・・・・・・・
「――――――――って、ケビンはともかくお前らは何でいる!?」
俺の後ろにはケビン以外にもチビッ子4人組がいた。
何時の間に!?
村を出る時は俺とケビンしかいなかったはずだ!
あ、ちなみにヒューゴ達は朝早くからロビンくんと村長に鍛えられている。
村長、昨日は敬語だったくせに、今朝からは遠慮なくタメ口だったな。
いや、それよりもチビッ子達のことだ!
「先回りしたぜ!!」
「したじゃないだろ!今すぐ帰れ!」
「「「ヤダ!!」」」
ヤダじゃないだろ!
特にマイカ、何でナイフまで装備してる!
「俺は勇者の仲間だから一緒に行くに決まってる!!それに、俺と同い年の弟が行くのに何で俺はダメなんだよ!」
「・・・・ケビン、お前誕生日は何時だ?」
「え~と、秋になったら11歳になります!」
「嘘!?」
ハイ、マイカの方が弟決定!
「と言う訳で、年下組はお家に帰りなさい!」
「「「え~~~~~~~~~!!」」
「え~~!じゃないだろ!この前みたいに魔獣が出るかもしれないぞ!」
「平気だ!俺にはこの戦士のナイフがあるぜ!!」
【ハウスナイフ】
【分類】ナイフ
【品質】普通
【詳細】一家にひとつは欲しい便利なナイフ!
肉も野菜も切れる優れもの!
趣味の木工細工にも使える!
でも旦那を刺すのには使わないで!
【値段】3000D
普通の家庭用ナイフでした~~~♪
戦闘には使えないぞ、コレ?
「・・・・シロウさん、無理矢理帰してもまた戻ってくると思うから一緒に連れて行った方がいいんじゃないかな?」
「まあ、確かにそうだが・・・・・・。」
こいつらの事だ、きっとコッソリ隠れながらついてくる可能性は高いな。
結局、一緒に連れてった方がマシか?
「・・・・仕方ないな。勝手にはぐれるんじゃないぞ?」
「「「ハ~~~~イ!!」」」
「全く・・・・・・。」
本当に仕方なくチビッ子達を連れていく事にした。
森の奥へ20分ほど進むと、そこにはたくさんの草花が生えていた。
今回採取するのは『ヴェルデ草』という綺麗な緑色をした薬草だ。
大きさは大人の足位の大きさで、森の奥に多くあるらしい。
「お!それっぽいの見っけ!」
雑草に混じって一際澄んだ緑色の草があった。
サイズも事前情報と一致する。
まずは《鑑定》で確認だな!
【ヴェルデ草】
【分類】薬草
【用途】各種薬の材料、香料、消臭剤、調味料
【詳細】ダーナ大陸の森林地帯に自生する薬草。
加工の仕方により毒消しや胃腸薬など多種類の薬の材料になる。
また、香りも良い為、香料や消臭剤、調味料としても用いられている。
一発で当たりだ!
説明文の通り、確かにいい香りがするな。
「注目~~~~!これと同じ薬草をたくさん探すんだ!」
「「「は~~~~い!!」」」
「特にマイカ、また毒草なんか採ってくるなよ?」
「大丈夫だぜ!俺がたくさん採ってくるぜ!」
「・・・・ケビン、お前はマイカの近くにいてやってくれ。すごく不安だ。」
「はい!」
ケビンは良い子だな。
マイカもケビンと一緒なら毒草を採ることはないだろう。
「さてと、俺もどんどん採取するか!」
ついでに需要のある薬草とかもあったら採取していくかな。
後でギルドとかで買い取ってくれるかもしれないしな!
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1時間後、俺の目の前にはたくさんのヴェルデ草が積まれている。
そっくりな毒草もあったけど、《鑑定》のお蔭で間違って採取せずに済んだぜ!
やっぱ《鑑定》って便利だよな~~~♪
「シロウの兄ちゃん!いっぱい採って来たよ~~~~!」
「私も~~~~~!」
「お!ホントにたくさん採って来たな~?」
ニールとリンが両手でギリギリ持てる量の薬草を持ってきた。
何か違うのも混じってるから《鑑定》でチェックしないとな!
「ようし、確認するからここに置くんだ!」
「「は~~い!」」
まずはリンの持ってきたのからだな。
フムフム、大体はヴェルデ草みたいだな。
思ったんだが、ファルの森って薬草も豊富に自生してるんだな?
さてと、これは少し違うっぽいな?
【クリーン草】
【分類】薬草
【用途】胃腸薬の材料、消毒薬の材料
【詳細】ダーナ大陸南部に自生する薬草。
主に乾燥させて胃腸薬の材料に用いられる。
殺菌成分もある為、消毒薬の材料にもなる。
食べると凄く苦い。
あ!確かこの薬草は別の依頼にあったっけ?
これもファルの森で採取できるんだな。
「リン、この薬草は何所にあったんだ?」
「え~と、あっちの大きい木の周りかな?」
「そうか、後でこれと同じ薬草も採ってきてくれるか?」
「うん!」
「よし!次はニールが持ってきたのだな?」
「僕はあっちの岩がたくさんある所で採ってきたよ!」
どうやらこの辺り一帯は薬草がたくさん自生してるみたいだな。
あ、これは雑草だ!これは当たりだ!
うん、他はみんな当たりだな!
「シロウさ~~~~ん!」
「たくさん採ってきたぜ~~~~!!」
お!マイカとケビンも戻って来・・・・・・・って何だあれ!?
「おい!お前らが引き摺ってるのは何だ!?」
「魔獣です!!」
そんなの見れば分かる!!
マイカとケビンは2人より大きなウサギみたいなのを引き摺っていた。
薬草じゃなくて魔獣狩ってきたのか!?
とりあえず鑑定してみるか?
【大兎♂(死亡)】
【分類】哺乳類型魔獣
【用途】肉は食用、皮は防具や服の材料になる。
【詳細】木の実の多い森の奥地に生息する草食系の魔獣。
イタズラ好きで、たまに単独で森の外側近くにくる個体もいる。
果物を好んで食べるためその肉は美味である。
皮は防寒着や高級服の材料に使われる。
さてどうするか・・・・。
肉は美味いようだから高く売れそうだが、マイカとケビン(多分ケビン単独)の戦利品だ。
とりあえず、毛皮だけ売って肉はみんなで食べるか?
「そういえば、2人だけで良く倒せたな?」
「うん!僕とマイカに《肉体強化》を使って戦ったんだ。ほとんど僕の魔法で倒したんだけどね。」
「とどめは俺が刺したけどな!」
「とどめも僕がやった!」
どっちだよ!?
何かマイカとケビンが兄弟喧嘩を始めだした。
それにしても、相手が魔獣だったとはいえ、どっちも10歳なのに命を奪った事に抵抗を感じないようにも見える。
やっぱ世界が違うから価値観も違うってことなのかもな。
ああ、ちなみに2人が持ってきた薬草は全部ヴェルデ草だった。
「後はエレンだな。こっちから呼びにいってみるか?」
「あ、エレンならさっき奥の方に行ったよ?」
「何!?すぐ捜しに行くぞ!」
てっきりこの辺にいるとばかり思ってた!
エレンは最年少なんだから一緒にいてやるべきだった!
くそ!こういう時に限ってとんでもない魔獣が出たりするんだよな。
「うえ~~~~~~~ん!!」
エレンの鳴き声が聞こえてきた!
お願いだからお約束的な展開にはならないでくれ!!
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――ファルの森 洞窟前――
「え~~~~ん!!」
「ゲヘヘヘ!こいつは高く奴隷商に売れるぜ!!」
魔獣じゃなくて盗賊団でした。
エレンは頭目らしき髭男に捕まって泣き続けている。
ヤバい!このままだとエレンまで奴隷にされてしまう!
何とかして助けないと!
「やい盗賊ども!俺の妹を返しやがれ!」
「何だこのガキは?」
マイカ~~~~!!
何勝手に動いてるんだ~~~!?
「ケケケ!お頭、こいつも捕まえて売っちまいましょうぜ~~~?」
「そうだな!よし、そのガキを捕まえろ!!」
「「「ヘイ!!」」」
ヤバい!
こうなったら力ずくで助けるしかない!
「させるか!《植物の鞭》!!」
俺は飛び出して攻撃魔法を放った。
「何だテメ・・・ギャア!?」
地面からたくさんの蔓が飛び出して髭男や盗賊達に襲いかかった。
もちろん、エレンに当たらないように狙いは盗賊達の顔面にしてある。
よし!髭男がエレンを放したぞ!
「エレン、こっちに走ってこい!!」
「うえ~~~ん!!」
エレンは泣きながら俺の所に走ってきた。
俺はしっかりとエレンを抱きしめると、エレンもギュッと抱きついてきた。
「よしよし、もう大丈夫だからな?ゴメンな、俺が一緒にいてあげるべきだった。」
今まで順調すぎて油断してた。
この世界には魔獣もいるし盗賊だっている。
そこら中に死の危険が転がっているのに小さい子を連れて来るべきじゃなかった。
あとでみんなにも謝ろう。
けど、今は目の前の危険を排除しないとな!
次回更新は5日の予定です。