第22話 ボーナス屋、魔法を教える
さて、俺はケビンに魔法を教える事になったんだが、その前にボーナスの取得を済ませておいた。
と言っても、ポイントは全部消費させたわけじゃない。
こういうのは自分で選びたいと思うのが人間というものだ。
今回の件が落ち着いたら自分で選びたくなるかもしれない。
だから、今必要なボーナスの取得だけにしておいた。
「と言う訳で、〈ステータス〉、〈鑑定〉、〈職業補正〉、〈職業レベル補正〉、全部で35pt消費だ。」
「誰に話してるんですか?」
「・・・・・・・・・・」
ケビン、そこはツッコまないでほしい。
ちなみに、ケビンのステータスは以下のようになった。
【名前】ケビン
【年齢】10 【種族】人間
【職業】冒険者(Lv1) 魔法使い(Lv1) 【クラス】新米冒険者
【属性】無(全属性)
【魔力】19,200/19,200
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv3) 防御魔法(Lv3) 補助魔法(Lv4) 特殊魔法(Lv3) 剣術(Lv2) 体術(Lv2) 賢者の指輪 鑑定
【加護・補正】魔法耐性(Lv3) 精神耐性(Lv2) 全属性耐性(Lv2) 王の直感 知恵の器 魔法神マナウィダンの加護 職業補正 職業レベル補正
【BP】18
“冒険者”は分かるが、“魔法使い”は何時の間に増えたんだ?
魔法の練習をしようとしたからか?謎だ。
ステータスには俺の知らない秘密がまだたくさんあるみたいだな。
「うわ~!スゴイですね!?」
ケビンは早速《ステータス》を使って興奮している。
そうだ、ケビンの職業や能力の説明もここで確認してみるか!
【魔法使い(Lv1)】
知力微上昇 魔法効果微上昇 魔力回復力微上昇
【賢者の指輪】
・伝説の賢者が作ったオリハルコン製の魔法の指輪。
・装着時、魔法成功率・魔法効果・魔力回復力・魔法習得能力・魔法耐性がいずれも中上昇。
・一度見ただけでその魔法を理解し、習得する事ができる。ただし、この効果は上級以下の魔法に限る。
【王の直感】
・王の血を引く者にのみ現れる直感力。
・近い未来を直感的に感じ取ることができる。
・初対面の相手でも信用できるかどうかを瞬時に判断する事ができる。
【知恵の器】
・一度見聞きした知識は決して忘れない。
・覚えた知識の応用力が高くなる。
【魔法神マナウィダンの加護】
・魔法使いの神、マナウィダンの加護。
・魔法による呪いは全て無効化される。
・魔力の上昇率が高く、普通に暮らしているだけでも常人より遥かに伸びていく。
・魔法の習熟が早く、あらゆる魔法を習得する事ができるだろう。
魔法チートだ!
何か、他の人より明らかに魔力が高いと思ったら加護の影響だったのか。
《賢者の指輪》もチートすぎるだろ!上級以下の魔法を一目見ただけで覚えるって無茶苦茶だ!
こいつはもう魔法使いになる為に生まれてきたとしか考えられねえな!
あと、バカ皇子より皇子っぽいステータスだ!
「ケビン、とりあえず利き手じゃない方の手を前に出して《賢者の指輪》って念じてみろ!」
「え?こうですか・・・・・・わっ!」
ケビンの左手の指に金色の指輪が現れた。
おお!まさに賢者の指輪っぽいデザインだな?
「・・・あのう、これは何ですか?」
「ああ、それは簡単に言えば魔法使いの杖の代わりみたいなものだ!」
俺は《賢者の指輪》についての情報をステータス画面も使いながら説明した。
流石にその効果には驚きを隠せないようだな。
「じゃあ、まずは魔力を感じられるようになってから基本魔法を覚えていくぞ!とりあえず俺の魔力を軽く放出するから、それを肌で感じて自分でも魔力を出せるようにするんだ!」
「はい!」
うん、やる気は十分だな!
俺は右手からちょっとだけ魔力を放出してそれをケビンに向けた。
その結果、ケビンは10秒で魔力を放出する事が出来た。Oh~~~!
「・・・・じゃあ、まずは基本魔法から教えるからよく見るんだぞ?」
「はい、お願いします!」
「よし、まずは火属性の基本からだ。《ファイア》!」
俺は掌の上にマッチサイズの小さい炎を出現させた。
次はケビンの番、けど、何だかチートっぽいから加減するように注意しておくか。
「これが火属性の基本魔法、《ファイア》だ。」
「凄い!本当に火が出た!」
「今度はお前がやってみるんだ。ただし、出す魔力はほんの少しだけにしておけよ?」
「分かりました。え~と、《ファイヤ》!」
ボンッ!!
「うわっ!!」
「ちょっ・・・・!ほんの少しだけって言っただろ!?」
ケビンの手から出たのはマッチサイズどころか一発で火事になり兼ねないサイズの炎だった。
「と、とにかく小さい炎をイメージするんだ!水滴位の!!」
「は、はい!」
すると、今度は一瞬で俺が出したのと同じサイズの炎になった。
ふう、危うく大火事になるところだったぜ!
それにしてもケビンの魔法の才能は半端ねえみたいだな?
まあ、補正とかの影響もあるんだろうけどな。
「とにかく、練習するときはちゃんと威力の加減を忘れないようにしろよ!」
「はい、ごめんなさい・・・・・。」
「まあ元気だせ、才能があっても失敗くらいは誰だってするさ。それよりも、他の属性の魔法もドンドン教えていくからよく見とけよ?」
「あ、はい!今度は失敗しません!」
「よし!じゃあ、次は風属性の《ウインド》だ!」
その後、俺は次々に基本魔法を教えていった。
元々の才能に加え、加護や補正の効果もあってケビンはものの数分で全属性の基本魔法を習得していった。
最初の火の《ファイア》から始まり、風の《ウインド》、水の《ウォーター》、土の《アース》、氷の《アイス》、雷の《サンダー》、木の《ウッド》、空の《ムーブ》、時の《ストップ》、光の《ライト》、闇の《ダーク》、無の《ショット》の全属性12種の基本魔法をケビンは呆気なく覚えた。俺が使えない属性の魔法なんか、言葉だけで教えただけなのに簡単に使うとは凄すぎる。
これで補助魔法以外の適正レベルが全部4か5だったらどうなっていたのか、あまり考えたくはないな。
いや、チート加護・補正で総合的にはそれと同等レベルなのかもしれないな。
「――――――基本魔法はこれで全部だ。とりあえず、毎日これを何度も使って練習するようにするんだ。あと、可能な限り魔力を全部使い切る様にすると魔力が上昇しやすいから覚えておけよ?」
「毎日全部使うとどんどん上がるんですか?」
「基本的にはそうだな。魔法を使えるのはこの辺だと裕福な連中ばかりで、そういう連中に限って、この基本的な修業はしないみたいだけどな?」
「そうなんですか?」
「ああ、ロビンくんにも聞いたから間違いない話だ。」
これはロビンくん達やステラちゃん達に魔力上げの修行法を教えた時に分かったことだ。
この世界で魔法が使えるのは基本的に貴族や商人といった富裕層がほとんどで、その訓練法も1日に使える魔法を1回ずつ使うといったものが多いそうだ。
バカ皇子とか甲冑1を見ればわかるが、富裕層は基本的にプライドの高い連中ばかりだから俺が言ったような修行法はカッコ悪いとかが理由でやる者はほとんどいないし、いたとしても毎日続けるものは皆無だ。
多分、この世界の人間の魔力が基本的に低いのはそのせいなんだろうな。
「それと、できるだけ魔力が濃い場所で練習するともっと上がりやすいな。森や山、海の上みたいな自然の魔力が多い場所で修業するといいな。」
「そうなんだ!」
「まあ、適当に魔力を放出して作った空間でも同じ効果は得られるけどな。今俺達がいる場所も、ロビンくんが造った結界の中に俺が毎日魔力を放出した訓練空間だから他より魔力が濃いんだぜ?」
「あ!それで何だか変な感じがしたんだ!」
「そう言う事だ。じゃあ、今度は初級魔法をいくつかやってみるか?」
「はい!」
その後、俺はケビンに《ファイアアロー》や《ウォーターショット》といった攻撃魔法、《シールド》や《ロックウォール》といった防御魔法、後は補助魔法をいくつか教えた。
ケビンはどれも一発で成功させていくので教える俺も結構楽だった。
というかケビン凄すぎ!
特に適正レベル4の補助魔法なんか俺が見本に見せたのより上の結果を軽く出していた。
なお、特殊魔法は癖が多いし、どれが使えるかはまだ分からないので後日と言うことにした。
「――――――――《ファイアアロー》!」
「よし、命中だな!今日は魔力が全部使い切るまで何度も反復練習だ!」
「分かりました!」
元気よく返事をすると、ケビンは俺が造った的に向かって再び魔法を撃ち始めた。
俺も夕飯まで時間があるから修行をするか。
このままだとケビンに追い越されかねないから基礎修行はしっかりやらないとな!
あ、そう言えばロビンくんの方はどうなっているかな?
俺はちょっと様子を見に行ってみた。
-----------------
「――――――――今日はここまでにしましょう。明日は早朝から始めますので夜更かしせず早めに寝る様に!」
「「「は、はい・・・・・・!」」」
うわあ~~~!
ロビンくんの足元に屍みたいな真っ白い物体が3つ・・・・・・・
俺がいない間に何が・・・・・・?
「あ、シロウ殿!ケビンの方はどうですか?」
「あ、ああ・・・!何か神様の加護とかもあって基本魔法は全部覚えたし、初級魔法もいくつか習得して今は自主練してるぜ?」
「そうですか。では、今度はヒューゴ達にも魔法の基礎を教えておいてくれませんか?私はこれから村長の所に行って、彼らの分の食事と寝床の手配をしに行ってきます。」
あ、そう言えばその事を忘れていたな!
4人の修業の事ばかり考えていて、衣食住の事が頭から抜けてたぜ、テヘ♪
「―――――俺はいいけど、確かロルフは魔法の適正が無いからボーナス交換しとかないと無理だぜ?」
「それについては鍛えながら3人にも説明しておきました。特にロルフは積極的に魔法の適正を欲しがっていましたし、ヒューゴとジャンも強い能力を欲しがっている様子なので、すみませんがお願いします。」
「ああ、そう言う事なら任せとけ!」
そしてロビンくんは村長宅の方へと向かっていった。
あ、そう言えば今日はバカ皇子を村長に丸投げしておいたけどどうなったんだ?
まあ、多分死んではいないよな・・・・・・・・?
召喚された時から身に着けている腕時計は午後5時過ぎを表示していた。
屍3人組に水をぶっかけたらようやく復活し、ボーナス交換を開始した。
「・・・・・本当に大丈夫か?」
復活とは言ったものの、ヒューゴ達の顔はどこかやつれているようにも見える。
ロビンくん、一体どれだけ濃密な修業をしていたんだ?
「だ、大丈夫だ・・・・・・!」
「・・・・うっぷ!平気だ!」
「・・・・・・・・・・・・。」
いや、どうみても大丈夫そうには見えないぞ?
ロビンくんには悪いけど、今日はボーナス交換だけにした方が良いかもしれないな。
とりあえず、まずはロルフのボーナスから決めてくか?
「ロルフは魔法の適正でいいんだよな。後は他に必要なのはあるか?」
「・・・とりあえずはそれだけでいいけど、俺にはよく分かんないから他にも強くなれそうなのがあったらそっちで選んでくれていい。」
「そうか?う~ん、どうするか・・・・・・」
まずは〈魔法適正〉、調べてみたら適正レベルはほぼランダムに決まるようだけど、遺伝関係も多少は影響するみたいだな。
後は勝手に選んでと言われたが、まずはいつもどおりに〈ステータス〉と〈鑑定〉だな。冒険者をするならこれはあった方がいいよな。
これで合計20pt、残りはまだ55ptも残っているがどうすべきか?
すぐに実戦レベルまで強くなりたいという希望に沿うならケビンと同じ〈職業補正〉と〈職業レベル補正〉を選んだ方がいいよな?
それと、ロルフは4人の中で一番魔力が低いから〈魔力上昇〉もいいかもな。
過去の経験から、魔力が10万以下なら1ptで魔力が2000~7000も上がるみたいだから2pt使えば結構上がるだろう。
これで残りは28ptだが、残りはどうするかな?
ロルフには《鍛冶術(Lv3)》もあるし、生産系の能力を上げるというのもいいかもしれないな。
悩みながらボーナス一覧を見ていると、初めて見るボーナスを見つけた。
〈宝探しの秘技〉 20pt
・山や森、無人の廃墟など人の住んでいない場所に隠れているアイテムを見つける事ができるスキル。
・所有者のいるアイテムは探知できない。
・運が良ければ貴重な品を発見することができる。
意外といいかもしれないな?
今一番必要なのは金!
これを使えば隠された財宝を見つけられる可能性がある。
お宝じゃなくても貴重な素材とかを見つけられるかもしれないな?
まあ、このスキルが探知するアイテムの種類まではまだ分からないのが少し不安だが。
と言うわけで以下のようになったぜ!
〈魔法適正〉 10pt
〈ステータス〉 5pt
〈鑑定〉 5pt
〈魔力上昇〉 2pt
〈職業補正〉 10pt
〈職業レベル補正〉 15pt
〈宝探しの秘技〉 20pt
最後の“決定”を押すと、ロルフは何かショックを受けたように痙攣した。
あ!魔力が一気に何倍も上がるとショックが大きいんだっけ?
うっかりしてたぜ!
「ロルフ!?」
「大丈夫か!?」
ヒューゴとジャンが驚いて声をかけてきた。
「へ、平気だ!スゲエ・・・・全身から変な力が湧いてくる感じがする・・・・!」
おお!
何かもう魔力を感じられるようになったみたいだな?
【名前】ロルフ
【年齢】12 【種族】人間
【職業】冒険者(Lv1) 戦士(Lv1) 【クラス】新米冒険者
【属性】メイン:土 サブ:水 風
【魔力】9,750/9,750
【状態】疲労(小)
【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv5) 特殊魔法(Lv2) 剣術(Lv1) 体術(Lv1) 鍛冶術(Lv3) 宝探しの秘技 鑑定
【加護・補正】物理耐性(Lv1) 土属性耐性(Lv2) 毒耐性(Lv2) 麻痺耐性(Lv1) 職業補正 職業レベル補正
【BP】18
あれ?予想以上に魔法の適正が高いな?
補助魔法なんか、ドチートなレベル5ってマジ!?ケビンより上じゃん!
これってマジでランダムなのか?
本人はまだ自覚してないみたいだが・・・・・・・・。
「・・・・・・・・じゃあ、次はヒューゴとジャンだな!」
とりあえずスルーすることにした。
ケビンの職業の“魔法使い”は本来なら“見習い魔法使い”になっています。
《職業レベル補正》の都合上、見習いが職業からは消えました。
次回の更新は3月2日です。