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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
ダーナ大陸漫遊編
233/465

第226話 ボーナス屋、モーブ王国を回る1

――モーブ王国――


「初めまして勇者様。私はモーブ王国第一王女、メルル=E=モーブ(18歳)です」



 長身の金髪巨乳美女が胸を揺らしながらアピールしてきた。


 残念!


 アヌ様の“爆”以上“超”未満を知った俺に“巨”のアピールは通じない!


 一昨日来やがれ!



「私は同じく第二王女のリスティアーナ=K=モーブ(16歳)よ!今日は私が貴方の付き人になってあげるんだから感謝しなさいよね!」



 強気なツインテール“平”少女は俺を指さしながら喋った。


 コイツはきっとツンデレだな。



「「そして私は第三(第四)王女の…真似しないでよ!!」」



 最後は双子ちゃんだった。


 まさに瓜二つで、違いと言ったら着ている服の色ぐらいだ。



「――――改めまして、私は第三王女のエメリン=P=モーブ(14歳)です。そして私より太いのが妹のエスターですので、間違えないでくださいね」


「勇者様、私はこの姉よりも理知的で優雅な第四王女のエスター=F=モーブ(14歳)です。自意識過剰な姉の分も勇者様の手となり足となりますのでよろしくお願いします」


「誰が自意識過剰ですか!この大飯食らい!!」


「誰が太いよ!!そっちこそ、さっき着替えている時に無理矢理締めてたじゃないの!!」


「な!!何で知ってるのよ!?」



 ちなみに、双子は“並”だ。


 仲が悪いようだが、俺の勘だと喧嘩するほど仲が良いタイプの双子だろう。



「―――さあ勇者殿!存分に我がモーブ王国を見て回って行ってくれ!」



 モー様、1人だけ満面の笑みを浮かべているよ。


 あ!


 ちょっとステラちゃん、クリスタルセイバーはココでは出すな!!






--------------------------


――モーブ王国 鉱山の町『ゴールドランス』――


 噴火しそうなステラちゃんを鎮めた後、俺達6人は南部国境近くにある鉱山の町に転移した。


 着いて早々に目にしたのはすっかり寂れている街と、路上で座り込んでいるホームレスや酔っぱらいの光景だった。


 かつては金で栄えていたとは到底想像もできない街の光景を前に、俺だけでなくステラちゃん達も複雑な顔をしている。



「……話には聞いてはいたが、これがかつての黄金の街の成れの果てとは」


「廃坑になって以降、町の住民の数は最盛期の半数以下にまで減りました。残った人の多くも職を失い、スラムには親に捨てられた子供が大勢いるそうです」


「「問題はそれだけじゃなく、この地域の土壌は農業には適さない上に、付近を流れる川には食べられる魚がいないので食糧難が……真似しないでよ!!」」


「いい?これから貴方をこの町の領主に会わせるけど、私に恥をかかせるような真似だけはしないでよね!」


「ハイハイ、迷惑はかけないよう善処するから指差さないでくれる?」



 同行者が一気に4人も増えたせいか、俺の周りだけは随分と賑やかだ。


 ちなみにチーム王女の服装は豪華なドレスじゃなく、動き易い騎士風の格好だ。


 一見すれば貴族出身の騎士って感じの軽装備で、動き易さに重点を置いているから他人が見てもすぐには王族だとは思わないだろう。


 だけど、服装とは関係なく美女ばかりなので嫌でも目立つんだよな。



「チッ!昼間っからイチャつきやがって!」


「死ね!」


「死ね!!」


「地面に沈んじまえ!」


「魔獣に食われてしまえ!」


「……俺、まだ童貞」


「1人でもいいから分けてくれよ~」


「俺は男の方が……好みだ♡」



 嫉妬の視線が痛い!


 って、最後の奴は絶対に視線を合わせちゃいけない!


 掘られるのは嫌だ!!


 近づいてきたら絶対に逃げる!全力で逃げる!!


 この時俺は知らなかったが、この町にはかなりの数の同性愛者がいる。


 鉱山が閉山する以前のこの町には“働く男”が溢れていて、住民全体を見ても女性よりも男性が圧倒的に多いことから必然的に異性よりも同性に走る男が続出したそうだ。


 その名残が現在も残っていて、この寂れた町の何処かにはゲ〇バーやそっち系の娼館が今も営業しているそうだ。


 俺は死んでも近付かないけどな。



「はぁはぁ……外の男だ……!!」


「若い、男ぉぉぉぉぉぉぉ!!」



 とか考えている間に色んな意味で汚い男どもが俺に向かって襲い掛かってきた。


 俺、人生最大の危機!!



「盗賊か!失せろ!」


「「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」」


「ステラちゃんグッジョブ!!」



 暴漢達はステラちゃんの剣舞の餌食となった。


 俺、今日ほどステラちゃんに感謝したことはない!


 その後、暴漢達はしっかりと拘束されて近くでサボっていた衛兵を引っ張ってきて連行させた。


 その衛兵は少し酒が入っていたのか最初は不機嫌そうな顔をしていたが、チーム王女が耳元で何かを囁いた途端に顔が一瞬でコバルトブルーに変わり、地面と垂直に立って敬礼をして暴漢を連行していった、。


 あれ、絶対正体をバラしてたな。



「予想以上に治安が悪いようだな」


「お恥ずかしい限りです。あら?あそこにいるのは……ワイルダー伯爵?」


「「あ、本当……だから真似しないで!!」」



 双子、本当に元気だな?


 それはそうと、俺達が歩く先にツルハシを持ったオッサン…じゃなく青年が大通りを横切ろうとしていた。


 服装はまんま鉱夫だけど、土で汚れたその顔は鉱夫とは思えないほど端正な顔立ちだった。


 もしかしなくても、あの人がここの領主か?


 ステータスで確認してみるか。



【名前】ユーリ=G=ワイルダー

【年齢】25  【種族】人間

【職業】領主 地質学者  【クラス】アウトドア伯爵

【属性】メイン:土 風 サブ:火 水 木 雷

【魔力】4230/7300

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv3) 特殊魔法(Lv3) 剣術(Lv1) 体術(Lv2) 槌術(Lv3) 弓術(Lv1) 錬金術(Lv1) 大地神の智針(ガイア・クロス)

【加護・補正】物理耐性(Lv3) 魔法耐性(Lv1) 精神耐性(Lv2) 土属性耐性(Lv2) 風属性耐性(Lv2) 探究者の直感 山の肺 速読者 鉱業神クリドネの加護

【BP】100



 確かに領主だ。


 鉱夫の格好をしているのはアウトドア派だからか?


 何してるんだろう?



「お久しぶりですね。ワイルダー伯爵?」


「な!王女殿下!?」


「し!今日は非公式(おしのび)なので」


「……!分かりました。しかし、何故急にこの町へ?」


「それはですね……」



 チーム王女を代表してメルル姫がワイルダー伯爵に事情を話していくと、伯爵は冷や汗を流しながら慌てて自分に魔法をかけて全身の汚れを落とし、俺とステラちゃんに頭を下げながら丁寧な挨拶をした。


 この人、親の跡を継いだのはほんの一年前のことで、それまでは王都にある大学みたいな所に勤めながらフィールドワークの日々を過ごしていたらしい。


 しかし先代領主である父親が急病で倒れてしまい、仕方なく故郷に戻って家督を継ぐことになった。


 けど、既に金山が閉山して寂れてしまった町の領主の仕事は意外にも彼の性に合っていた。


 治安の回復や不況対策、税の回収などの仕事は主に先代から仕えている家臣達がやるので伯爵は最後の確認ぐらいしかやることはないので、普段は自由気ままに領内のフィールドワークに明け暮れているそうだ。


 とはいっても趣味で出歩いている訳じゃなく、王都で地質学を専門に研究していた伯爵は領内に新しい鉱脈がないかを調査していて、今もその帰りだったらしい。



「僕の仮説が正しければ、このゴールドランスの地下には金以外の大鉱脈がある筈です。それを見つけ、この町に再び活気を取り戻すのが領主としての僕の目標の1つなんです。それ以外では、十数年ほど前から領内で流行り始めた奇病の解決や、領内での農業の発展させるための方法を研究しています」


「へえ、立派だな。ところで奇病って、風土病か何かか?」


「メルル姉様、そういえば南部一帯では昔から原因不明の奇病が流行り始めていると父上が言っていましたわよね?」


「ええ、その話なら私も何年も前から聞き及んでいます。人間だけでなく動物や魚にも罹る病で、この辺りの川や湖では魚も捕れないところが多いとか……」


「「私も知って……だから真似しないで!!」」


「うむ。フィンジアス王国でも、モーブ王国との国境付近で似たような事が起きていると聞いたことがある。一部の貴族の間ではモーブ王国が病をばら撒いていると邪推している者がいるが、父上(陛下)達はそのような根も葉もない話は一蹴していたな。「―――似たような奇病は他の地域でも発生しているのだから、その全てを他国の陰謀だと考えるのは愚行だ」と仰っていたな」


「流石はフィンジアスの賢王ですね」



 メルル姫はフィンジアス王(ステラパパ)に尊敬の念を抱いているようだ。


 しかし、原因不明の奇病か……。


 鉱山地帯で原因不明、人間以外も発症して川や湖から魚が捕れなくなる。


 俺の現代日本の知識に当て嵌めてみると、社会の授業で習った事件に行き着いた。


 多分、それで合っているはずだ。



「……それ、もしかして公害病じゃないか?」


「「「コウガイビョウ?」」」


「シロウ、コウガイビョウとは何なのだ?」


「あ~、やっぱこっちにはそういうのは知られてないのか。公害病っていうのはな―――」



 俺は頭を傾げているステラちゃん達に簡潔に説明した。


 日本で公害病と聞けば最初に思い浮かべるのは、小中学校で習った「四大公害病」だろう。


 戦後の高度経済成長期に発生した、工場等から排出された有害物質が原因で大勢の人達が犠牲になったあの病気だ。


 今では社会の教科書には必ず載っている公害だけど、その種類は日本だけでも数十種類以上もあったはずだ。


 その中でも今回のケースに当てはまるのは公害の中でも鉱山地帯で多く発生した『鉱害』だろう。


 鉱石の採掘作業や製錬作業の際に発生した有害物質が外に流出して河川や土壌を汚染し、草木が枯れて動物達が死んでしまい、人間も重い病に苦しむケースが日本でも問題になったことがあった。


 日本では「鉱業法」が施行されて鉱害の発生を抑止しているけど、こっちの世界じゃ「公害」って言葉自体存在しないからそういう法律も存在してないのかもしれない。


 このゴールドランスの奇病も、今は閉山している金山から流出した有害物質が原因の可能性が高いな。



「そんな……!じゃあ、父の病も山のせいで……!」



 俺の説明を聞いた伯爵は大ショックを受けていた。


 嘗ては町に富と活気を齎した金山が奇病の原因だとは想像すらしていなかったという顔をしている。


 それはステラちゃんも同様のようだ。



「なんということだ……。確かに、フィンジアス内でも奇病が発生しているのは鉱山地帯や、そこから流れる川の流域だったが……これは父上にも進言した方がいいな」



 フィンジアス王国は金や銀の産出量が大陸№1だから、その分鉱害も多いんだろう。


 ファリアス帝国も鉄や銅の鉱山が多いから、同じような被害が出ている地域がある可能性があるな。



「では!領民達の病は止められないということでしょうか!?」


「ん~、俺もそこまで詳しくないから何とも言えないけど、取り敢えずは有害物質の大元をどうにかした方がいいんじゃないか?多分、ゴミ同然の金属屑や放置しっぱなしの坑道がそうだと思うけど…。まずは場所を調べてみるか」



 俺は何時も通りに《摩訶不思議な情報屋》を起動した。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

『検索:ゴールドランスの奇病の大元』


 サウスモーブマウンテンは金以外にもクロムを始めとした重金属類を含んだ鉱石を多く保有しており、長年の金の採掘の際に屑石として廃棄されていた鉱石から漏れ出た重金属が地下水に溶け出し、またこの山を源流とする河川にも流出して土壌や水質を汚染し、付近一帯の生態系を破壊していった。

 閉山されて以降も旧第7・19坑道、町の東部にある排石所から鉱毒が流れだし、住民達の体を蝕んでいた。

 しかし今から2年7ヶ月前、フィンジアス王国軍の討伐部隊から逃げてきた中位竜「メタルドラゴン」が国境を越えてこの山に逃げ込み、屑石として廃石所に放置されていた鉱石を全て食べ尽くして上位竜「毒々しき重金属竜(デッドリー・ヘヴィーメタルドラゴン)」に進化した。

 このドラゴンは山中の鉱石だけでなく毒物も喰い尽くしてゆき、体内で特殊な毒を精製して体外に排出している。

 ゴールドランスの住民達を蝕んでいる病の大元は最初は鉱山そのものだったが、現在はデッドリー・ヘヴィードラゴンとなっている。

 現在、このドラゴンは旧第19坑道の奥に大空洞を作って巣としており、坑道内には猛毒のガスが充満していて無防備な人間は10秒で死に至ってしまう。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 さあ、みんなでドラゴン退治だ!


 猛毒?


 そんなの、《全状態異常無効化》がある俺には効かないから平気さ!








--------------------------


――サウスモーブマウンテン 第19坑道最奥部――


『アンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』


「オラア!!」


『ギャッ………』


「よし!」


「「「瞬殺!?」」」


「うむ。さすがシロウだ!」



 ドラゴンを瞬殺しました。


 かなり硬かったけど、そこはクラウ・ソラスのレーザーカッターで首をサクッて切り落として難なく倒した。


 ちなみに坑道内や河川に流れた猛毒は魔法で強引に全部中和して、土壌汚染の方はアヌ様の加護で山だけでなく周辺一帯全てを綺麗に浄化した。


 ふう、仕事終了♪









 デッドリー・ヘヴィーメタルドラゴン、一瞬で出番終了!

 ちなみに、「メタルドラゴン」は餌によっては進化します。


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