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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
港町ヴァール編
22/465

第20話 ボーナス屋、買い物をする

ヴァール編のラストです。


 背後で呪いが未だにしつこく呼びかけるのを必死に無視しながら、俺は謎の剣を持って武器屋のオッチャンに会計を頼みにいった。



「オッチャン、俺はこれを買うぜ♪」


「―――――なっ!!兄ちゃんその剣を持てるのか!?」


「ああ、余裕だぜ!」



 謎の剣を俺が軽々と持っているのを見たオッチャンは信じられないと言いたそうな顔で驚いていた。



「兄ちゃんどんだけ力持ちなんだ?その剣は誰も1人で持ち上げられなくて、何年も大陸中を流れていたんだぞ?」



 なるほど、全く売れなくて鉄の剣と同じ値段なのか。


 まあ、使用できるのは魔力が10万以上なきゃいけないらしいからな。


 今のところ、この世界の人間で10万以上の魔力を持っているのは村長だけだったからな。持てる奴はほとんどいないに等しいよな。



「ほい!銀貨2枚でいいんだろ?」


「お、おう!毎度あり・・・・・」



 俺はオッチャンに銀貨2枚を渡して買取を済ませた。


 早くこの剣を使ってみたいぜ!


 そしてオッチャンは呆気にとられながらも、持っていたナイフや武器をロビンくん達の前に出してきた。



「うちの店にある物の中だとこの辺がお薦めだぜ?」


「あ、どれも丁度良いサイズですね?」



 ロビンくんは出された商品を手で持って試しに軽く振ってみた。


 俺も横から覗きながら《鑑定》を使ってみると、どれも初心者向けの物ばかりだった。



【ビギナーアイアンソード】

【分類】小剣

【品質】高品質

【詳細】初心者用のやや短めの剣。

 片手用と両手用のどちらにも使える。

 刀身を錆や血糊にやや強くなる加工が施されている。

【値段】15000D



 その名の通り初心者用のアイアンソードだな。


 なんか品質も良さそうだ。



【ビギナーアイアンアックス】

【分類】斧

【品質】高品質

【詳細】初心者用のやや小さめの斧。

 取っ手が衝撃を和らげるようになっている。

 錆や血糊に強い加工が施されている。

【値段】15000D



 値段は剣と同じなんだな。


 と言うか、金属系の武器はどれも値段が手頃のような気がするのは俺だけか?



【ハンターナイフ】

【分類】短剣

【品質】高品質

【詳細】鉄でできた採取用のナイフ。

 動物の解体用や護身用にも使える。

 意外と頑丈で刃こぼれがし難い。

 錆や血糊に強い加工が施されている。

【値段】6000D



 あ、これは俺も持っているナイフだ!


 ファルの森に2度目の採取に行く時にアンナちゃんのお母さんに貰ったナイフだ。



「――――ナイフも良い品ですね?」


「ハハハ、どれもうちの店で造った物だからな。素材を持ち込んでくれたら希望の装備を造ってやるぜ?」


「それはまた別の機会にお願いします。とりあえず、このナイフを4本、剣を3本に斧を1本をお願いします。」


「毎度!全部で84000Dだが、今日はサービスして80000D,銀貨8枚にまけておくぜ。」


「ありがとうございます。」



 お!オッチャン気前がいいじゃねえか!


 これは常連になった方がいいかもな。


 ロビンくんはオッチャンに銀貨8枚渡すと武器とナイフをヒューゴ達に渡した。



「はい、これが君達の武器だから大事にするんだよ。」


「ありがとう!けど、お金は・・・・・・・」


「気にしなくてもいいですよ。今日は臨時収入がありましたし、遠慮はいりませんよ。代わりに容赦なく鍛えていきますが。」


「お、おう・・・!ありがとな!」


「俺だけ斧なのか?」


「ジャンは斧の才能が高いですからね。最初は得意な武器で鍛えた方が効率が良いんですよ。」



 ステータスで得意な武器は確認済みだからな。


 それにしても、やっぱロビンくんは家族思いなんだな。武器を持って喜んでいる4人を見て嬉しそうだ。


 ともかく、武器屋での買い物はこれで大丈夫だな。



「では、これで失礼します。」


「おう!また買いに来てくれよな!」



 オッチャンに見送られながら俺達は武器屋を後にした。


 今更だけど、店の名前の『燃えるムスケル』ってどういう意味なんだ?



----------------------


――港町ヴァール 道具屋『甘~~いビーネ』――


 武器屋の次は道具屋だ!


 どうやら冒険者の客が良く集まる通りだから武器屋も道具屋も同じ通りにあるようだ。


 あ!向こうには防具屋もあるな?


 と言うか、店名の意味は何だ!?



「あら、可愛いお客さんね?ウフ♡」



 道具屋に入ると、何か露出の多いお姉さんが出迎えてくれた。


 店間違えたか?



「――――冒険者用の初心者セットはありますか?」


「あるわよ?いくつ要るのかしらん?」


「6個です。」



 お姉さんはロビンくんにアピールしているな?


 ロビンくん、視線を合わせないようにしているな。


 って、ロビンくんの弟達+αはガン見してる!スケベ共め!



「これでいいかしら?」


「はい、全部で幾らですか?」


「ウフ♡全部で銀貨6枚だけど、坊やが私と仲良くなってくれたら半額にするわよ?」


「―――――――いりません。」



 あからさまに誘ってるな~~~?


 全部で銀貨6枚てことは、単価は銀貨1枚か。



【初心者用冒険者セット】

【分類】道具一式

【品質】普通

【詳細】冒険者活動に必要な最低限の道具が入っている。

 セット内容:リュック×1、皮袋×2、ロープ×2本、傷薬×3、毒消し×5、火打石×1、狼煙道具×2、簡易地図×1、水筒×1

【値段】11000D



 あれ?既にちょっと値引き済みか?


 それをさらに半額って・・・・・お姉さん、マジでロビンくんを気に入ったのか?



「残念だわ~~~♪けど、何時でも待ってるわよ?」


「・・・・銀貨6枚です。」


「もう!素直じゃないんだからん♡」



 あ、胸がブルンと揺れた。


 ロビンくんはさっさとここから出たそうだな。


 俺達はそれぞれ初心者セットを受け取るとさっさと道具屋を後にした。


 あ、ジャンとロルフはまだお姉さんの胸を見てる!スケベめ!


 なお、後で俺の分の代金をロビンくんに渡しておいた。





---------------------


――港町ヴァール 服屋『海のハッスル』――


 俺達は防具屋『山のハッスル』に隣接した服屋に来た。


 何だこの町、店の名前が変なのばっかりだな?



「いらっしゃい!ハッスルしようぜ!!」


「――――マントか防寒着を見せてください。」



 ロビンくん、また視線を逸らしている。


 店長らしき筋肉兄さんは何着かのローブやマントを持ってきた。



【ファイターマント】

【分類】マント

【品質】普通

【詳細】金属の糸を編み込んだ一般的な戦士用のマント。

 防寒性にも優れており、また、《補助魔法》による強化がし易い。

【値段】6000D


【ヴァールアクアコート】

【分類】コート

【品質】やや良

【詳細】ヴァール近海に多く生息する魔獣の皮から作ったコート。

 防寒性や通気性に優れ、夏は涼しく冬は暖かい。

 水に濡れても劣化しにくい。

 また、フードもかぶれば短時間なら火の中でも活動できる。

【値段】9000D


【マジシャンローブ】

【分類】ローブ

【品質】普通

【詳細】魔法使い向けの一般的なローブ。

 特に特別な効果はないが、防寒性や通気性が良い。

【値段】5000D


【ダーナシルクローブ】

【分類】ローブ

【品質】普通

【詳細】ダーナ大陸各地に生息する小型魔獣ダーナスピリットワームの糸から作ったローブ。

 動き易く、魔法使い向けの装備。

 魔法によるダメージを軽減してくれる。

 《補助魔法》で魔法を付与して使われる事が多い。

【値段】10000D


【プレインウルフマント】

【分類】マント

【品質】普通

【詳細】魔獣プレインウルフの毛皮から作ったマント。

 物理攻撃や魔法攻撃にも同程度の防御力を持ち、通気性も良い。

【値段】10000D


【プレインウルフコート】

【分類】コート

【品質】普通

【詳細】魔獣プレインウルフの毛皮から作った季節に関係なく着られるコート。

 物理攻撃や魔法攻撃にも同程度の防御力を持ち、通気性も良い。

 戦闘スタイルに関係なく向いているのでヴァール地方では一番のお薦め商品。

【値段】12000D



 いろいろあるな~~。


 俺もどれか買ってみるかな?



「この辺がお薦めですので、ハッスルしながら選んでください!」


「「「しねえよ!」」」


「・・・・・(シュン)。」



 俺達に突っ込まれて筋肉兄さんはションボリと落ち込んだ。


 さて、どれにするかな?



「好きなのを選んでいいですよ?」


「いいのか!?」


「俺も!?」


「ええ、自分に合ったのを選んでください。」



 ロビンくんの言葉に甘えて、4人はそれぞれマントやコートを試着しながら選んでいった。


 う~ん、俺は魔法と剣の両方を使うからちょっと贅沢してプレインウルフコートにするかな?


 財布もまだ少し余裕があるし、これにするか!



「店長さん、俺はこのコートを1着頼むぜ!」


「・・・・銀貨1枚・・・・小銀貨2枚です・・・・・。」



 筋肉兄さん、まだ落ち込んでるよ。


 俺はとにかく代金を払い、ちょっとサイズを調整してもらってからコートを着た。


 うん、夏だけど全然暑くないなこれ?お薦め商品なだけはあるぜ!



「お兄ちゃん、僕はこれがいいです!」


「何だ、ケビンも一緒か?」


「俺もだ!」


「全員お揃いだな♪」



 ヒューゴ達はどうやらプレインウルフマントに決めたようだ。


 俺のコートと同じ少し白っぽい茶色系のマントだ。



「じゃあ、このマントをそれぞれサイズの合ったのを5着お願いします。」


「はい・・・・少々お待ち下さい。」



 元気のない声で筋肉兄さんは店の奥へと向かって行った。


 ハッスル拒否されただけであそこまで落ち込むとは・・・・・・・・。


 そう言えば、隣の防具屋とはどういう関係なんだろうな?



「・・・・・毎度ありがとうございました。」



 最後まで落ち込んだままの筋肉兄さんに見送られながら俺達は服屋を後にした。


 この店、これから大丈夫か?



「これで買い物は一通り終わりましたね。」


「そうだな。そろそろ時間だし、フライハイトさんの所に戻った方がいいんじゃないか?」


「そうですね。修業などもありますし、後はファル村に戻ってからにしましょう。」


「俺達も行くのか?」



 ヒューゴが頭を傾げながら訊いてきた。



「ええ、君達には私達と一緒にファル村の方に来てもらいます。そこで薬草の採取をしながら修業をしていってもらいます。分かりましたか?」


「はい!」



 ケビンくんはすぐに返事をした。


 他の3人はちょっと困惑しているようだな?



「あなた達も良いですね?」


「お、おう!!」


「わ、分かった!」


「何でもやってやる!」



 他の3人も返事をすると、ロビンくんはニッコリと笑いながら4人の頭を撫でていった。


 馴れ馴れしくするなと言っていたヒューゴも何だか嬉しそうに頬を紅く染めている。


 うん、少しは素直になったかな?



-----------------


――港町ヴァール フライハイト商会――


 途中、4人が空腹だったのをステータスで知っていたのでパンや果物を買ってから俺達はフライハイト商会の倉庫に来ていた。


 すると、丁度待っていたかのように爺さんAとフライハイトさん一家が俺達を出迎えてくれた。


 何だか他にも人が出入りしていて賑やかだな?



「おお、丁度来たですぞい!」


「爺さん、買取は終わったのか?」


「ホッホッホ!大分色を付けてもらったところですぞい♪」



 どうやら麦も毛皮もいい値で買って貰えたようだ。


 馬車の方を見ると、色々な物が積まれている。村人達に頼まれていた物資や家畜だろう。



「シロウ殿、お蔭で妻がすっかり元気になりましたよ!」


「シロウ様、この度は本当にありがとうございました。」


「お兄さんありがとう!」


「いえいえ、元気になって何よりだ。それより、何だかすごく賑やかな気がするんだが?」


「そうなんです!シロウ殿が悪魔を倒してくれてからお蔭で、急病だった職員達が全員戻って来ただけで闇く、支払いが滞っていた商人や住人からの金の支払いが一気に進んできたんです!この様子だと、今日だけで今月は黒字になりそうです!」



 スゲエな!?


 今の話から推測すると、あの悪魔の呪いは商会の職員全員にも及んでいたみたいだな?


 もしかして、ドゥンケルの職員全員が食中毒になったのもそれだけの呪いを破ったからなのか?職員全員を巻き込んだ呪いだから、反動で向こうの職員全員に罰が当たったってかんじの。



「それと、先程領主様の使いが来まして、直接取引を結びたいとの書状が届きました!書状にはシロウ殿とロビン殿の商会のお蔭と書かれていました。何から何までありがとうございます。」


「いえいえ!」


「お役に立てて何よりです。」



 領主のオッサン、動くの早いな?


 別れてからまだそんなに時間は経ってないぞ?



「それと、奥方様の懐妊祝いの宴への招待状も入ってました。」



 マジで動く速いな?


 親バカパワーで仕事が捗ってるのか?



「―――――で、後ろにいる方達はどなたですか?」


「ああ、ロビンくんの兄弟とその友達!」


「おい!何勝手に話してんだよ!」


「なるほど、目の色とかそっくりですね!」



 フライハイトさんはすぐに納得してくれた。


 後ろでヒューゴが文句を言っているけど、知らんな。


 さて、とりあえずみんな揃った事だし、このまま特急で(・・・)ファル村に帰るとするか!



「じゃあ、儂達はもう失礼しますぞい!」


「ええ、また何かあれば“子機(・・)”でご連絡ください。すぐに馬を走らせて向かいますので。」


「そんじゃロビンくん、村まで一気に転送(・・)よろしく♪」


「分かりました。みんなこっちに集まって!」


「「「え・・・・・・・?」」」



 俺とロビンくん、それと爺さんA以外は俺が言った事の意味が分からないといった顔になった。


 ヒューゴ達を馬車の周りに集めると、ロビンくんはフライハイトさん一家を巻き込まない様に範囲を指定した上で魔法を発動させた。



「―――――《空間転移(ワープ)》!!」


「「「―――――――――――――――――!?」」」



 フライハイトさん一家が目を丸くして驚くのを目にした直後、俺達はファル村へと瞬間移動した。

 空属性万歳♪






ロビンくんは《ワープ》を習得しました。

ファル村とヴァールまでの距離なら一瞬で移動できます。




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