第212話 ボーナス屋、訪問する
――ファリアス帝国 帝都タラ シュナイダー準男爵邸――
ファリアス帝国史上初の女性貴族となった発明家エルナ=シュナイダーは自宅の地下研究室でその才能をフル稼働させていた。
「できた……ついにできたわ……!!」
その日、エルナはまた新たに画期的な発明を完成させた。
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「エルナさん、久しぶり~♪」
「あ!シロウさん、ようこそ!」
みんな久しぶり!
俺、勇者こと大羽士郎!
日本への帰省から戻ってきた日から3日が経った。
つまり、俺が大人になってからも3日になるって訳だ。
あの日の翌朝は色々とあったけど、取り敢えず半分はバカ皇帝の方に問題が移ってくれたから今は何の問題も無しだ。
今日はようやく時間ができたというエルナさんのお家へ訪問に来ている。
何やらまた何かを発明したから来てほしいとのことだ。
「―――で、今度は何を発明したんだ?」
「はい!先日、ヌアザ様から授かった知識を元に学院時代の友人達も集めて研究を続けた結果、シロウさんの話で聞いた異世界のデンカセイヒンを魔法具で再現し、更に独自の改良を加える事に成功しました!」
「マジで!?」
「はい!パソコンというものも完成しました!」
剣と魔法の世界についにパソコン登場!
前にどっかの神様から貰った知識や、俺が暇潰しに話した内容だけで完成させるなんて凄い!
やっぱりエルナさんは天才だな!
「とにかく、私の研究室に来てください!」
俺はエルナさんの案内で屋敷の地下にある研究室に移動した。
研究室に入ると、そこには日本でも見た事のある電化製品っぽい魔法具が沢山置かれていて、その周りにはどっかの燃え尽きたボクサーみたいになっている人達が床で鼾をかきながら寝ていた。
きっとエルナさんの友達だろう。
「これです!」
「おお!!」
~エルナの発明品その1~
そこにあったのはデスクトップ型のパソコン…っぽい魔法具だった。
形状は思いっきりパソコンで、モニターは勿論、キーボードとマウスもしっかりと付いている。
あ、スピーカーっぽい穴もあるな?
「本体の素材には火や水に強い「プラク樹」の木材を使用し、各部品や回路などには「純化魔石」や「軟化性ミスリル」を使用し、記憶媒体には帝国の鉱山で産出される「アルバ水晶石」を使用しました。燃料となる魔力も「魔石蓄電池」を使いましたので、魔法が使えない人でも自分の魔力で使用できるようにしてあります。更には―――」
エルナさん、説明に燃えまくっている!
段々難しい単語が使われ始めたけど、兎に角凄いってことだけは十分に伝わった。
「―――では、実際に起動してみますね!」
そしてエルナさんはパソコンを起動した。
最初、画面に「Doors」なんていう文字が見えたのは気のせいだろう。
おいおい、なんか文章ソフトとか表計算ソフトとかも入ってるぞ?
それとインターネット…?
ホームページの作成ソフトみたいなのもあるぞ…?
オーバーテクノロジーの塊だな。
「ヌアザ様の知識にあったそふとの情報も(説明書付きで)入れたので、誰でも使える筈です。あと、通信網の――――」
30分ほど説明が続くので俺が簡単に纏める。
インターネットの通信網は基本無線式、各地に設置したアンテナが大地から魔力を吸収してアンテナ同士のネットワークを造りだすそうだ。
しかも超高速通信らしい。
ヌアザ、どんだけ知識を送ってたんだ。
「それと、今朝ヌアザ様からメールが届きました」
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From:紳士なヌアザ
Sub:開通オメデトー
ヽ(゜∀゜)メ(゜∀゜)ヽ
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「変わった手紙ですね」
「いや、手紙ですらないから」
パソコンの話はここまでにしよう。
エルナさんの発明品はまだまだありそうだからな。
~エルナの発明品その2~
「この箱は?」
それはコピー機サイズの大きな箱だった。
「自動錬成機です。これに材料を入れて何を作るか指定すれば色んな物が作れるんです。試しに使ってみますね」
そう言ってエルナさんは傍にあった木材の残骸と水を箱の中に入れた。
そして待つこと10秒、箱から真っ白な紙が沢山出てきた。
「最低限の材料と魔力で高品質の紙が生産できます!」
「それ凄すぎ!」
「海水から塩も作れます!」
「製塩所が潰れるんじゃない?」
「道端の石や土から金や銀を抽出する事も出来ます!」
「………」
凄すぎてこれ以上感想が言えなかった。
これ、現代日本の科学者が見たらどう思うんだろう?
というかこれ、世間に公表したら絶対盗もうとする奴が出てくるな。
「盗まれると危ないので、持ち主以外は使用不可能な造りになってますし、勝手に移動ができないようにもしています」
「それなら安心だな」
セキュリティはバッチリらしい。
~エルナの発明品その3&4~
「次はこちらのカメラです!」
「おお!」
次に紹介されたのは木製のカメラだった。
流石にデジカメみたいにコンパクトじゃないけど、それでも持ち運びには楽そうな設計だ。
「―――こちらの記録用の水晶に映したい光景を記録して、こちらにある印刷機で映した内容を印刷できます。」
「印刷機もあるんだ?」
「はい!《地図魔法》で地図を作製できる仕組みを応用して、カメラやパソコンで作成した情報を印刷できるようにしました」
「もしかして、複写もできるの?」
「はい!」
エルナさんは自信満々の顔で答えた。
活版印刷とかをスルーしていきなりコレって凄すぎだろ!
どれだけ才能が有り余ってるんだ?
地球の発明系偉人達が天国で泣いてしまいそうだ。
いや、もしかしてエルナさんはエジソンやダヴィンチの生まれ変わりなんじゃ…?
なんて考えていると、神様メールが届いた。
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From:名無しの冥府神
Sub:疑問への回答
秘密ダヨ ♪(・∀・)♪
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その回答、思いっきりフラグじゃん!
とういうか、本当に心を読むな!
~エルナの発明その5~
匿名希望の神への苛立ちをおさめて次の発明品に移った。
次のは日本でもお馴染みなアレだ。
「これって、もしかしなくても洗濯機?」
「はい!洗う物を水と一緒に入れて動かすと《洗浄》で汚れを落とし、脱水もしてくれるようになっています。これから冬に向かう時期、洗濯が楽になればいいなと思って作りました」
「へえ、それはいいな!」
この世界の洗濯はお伽噺にもある様な川や井戸の周りでの手作業だ。
これが普及すれば、この世界の主婦は大喜び間違いなしだな!
「本当は乾燥機も作りたかったんですけど、友人達の体力が尽きたのでできませんでした」
いや、そこまでやらなくても十分だと思うぞ?
~エルナの発明その6~
そこにはボタン式の電話機があった。
「電話も作ってみました。以前作った通信魔法具よりも材料費が安く済みますので量産が可能です」
「これって、一台一台に番号とかを決めてるの?」
「はい、一部の部品を変えたり入力した情報を変更する事で1台位ずつ異なる番号を与えました」
パソコンも作れたんだから電話の発明もできるだろう。
近い内にこの世界にも電話帳が作られそうだな。
「あと、この鏡を取り付けると相手の顔を見ながら会話ができます」
テレビ電話だと!?
テレビと言えば、この前のクーデター制圧の時に使った放送魔法具もあるんだし、テレビ放送とかできるんじゃないか?
あ、エルナさんが何だかニヤけている…!
「―――ありますよ」
「あるのか!」
どうやら、異世界でテレビ放送が始まるのはそう遠くない話のようだ。
~エルナの発明その7~
そして最後の1つ、それは―――
「―――車!?」
部屋の隅に置いてあったので気付くのが遅れたが、そこには四輪駆動の自動車があった。
タイヤはちゃんとゴム製、フロントにはライトも付いてあった。
「昨夜完成したばかりの試作車です。試験走行をしてみましたが、最高で時速65kmで走る事が出来ました」
「イヤイヤイヤ!!俺、自動車の構造とかって話してないよな?何でこんなにリアルに造れたんだ!?」
俺はエルナさんに自動車の話はしたけど、その詳細な構造は全く話してない。
俺自身、車の構造なんて知らないからだ。
だとすれば、俺以外の誰かに聞いた事になる。
「――――シロウさんが帰った後、ルチオくんと銀耀くんが御家族の方と一緒に遊びに来たんです。その時、色々と異世界の話を聞いてそれで……」
「アイツラカ………」
あのバカ龍王や大魔王ファミリーならやっちゃいそうだ。
この調子だと、年内に列車か飛行機も造ってしまいそうだな。
いや、冗談抜きでエルナさんなら造ってしまいそうだ。
「これだけ発明して、レベルもかなり上がったんじゃないのか?」
「あ、はい!大分上がりました。とは言っても、シロウさん程じゃないですけどね」
エルナさんは謙遜しながら自分のステータスを俺に見せた。
そういえば、エルナさんのステータスを見るのは久しぶりだな>
どれどれ…?
【名前】エルナ=シュナイダー
【年齢】22 【種族】人間
【職業】稀代之発明王(Lv35) New! 魔工学博士(Lv34) New! 生産聖女(Lv30) New! 【クラス】神も惚れる女 New!
【属性】水 氷 風 土 雷 時 空
【魔力】2,721,000/3,170,000
【状態】疲労(微) 睡眠不足 空腹(小)
【能力】職人之魔法(Lv4) New! 剣術(Lv1) 体術(Lv1) 弓術(Lv1) 調合術(Lv2) 錬金術(Lv5) 複製 鑑定之達人 New! 天啓 New!
【加護・補正】物理耐性(Lv1) 魔法耐性(Lv3) 精神耐性(Lv2) 水属性耐性(Lv2) 氷属性耐性(Lv2) 風属性耐性(Lv2) 発明王 New! 生産之達人 New! 詠唱破棄 高速睡眠 健康眼 発明神テウタロスの加護 技巧神ルフタの加護 New! 知恵神エクネの加護 New! 職業補正 職業レベル補正
【BP】376pt
……加護、増えてない?
しかも『神も惚れる女』って、どういう事?
「―――今朝、夢で神様に告白されたんです。「私の聖女になりませんか?」と。」
エルナさん、神の心を落としていやがった!