第206話 ????
聖国編の最終話です。
――次元の狭間のどこか――
勇者シロウが修羅場から逃亡してから数時間後、場所は変わって世界の狭間の中にある深き場所。
何も見えない闇の中で、7柱の神々は彼等以外には誰にも聞こえない声を交わしていた。
――――失敗したか。
――――新たな『暗黒龍』も倒され、別の存在へと化したようだ。
――――《強欲》も滅んだ………
――――バロールの“体”は欠片も残らず滅んだが、これで『冥王』の枷はまた1つ外れた。
――――あの小僧……!我が肉体を………
――――猛るなバロール。貴様の肉体はあれで2つ目、また作ればよいだけではないか?
――――貴様は肉体が滅ぼうとも、“魂”と“力”が健在なら幾度でも“肉体”を創りだせる。
――――そうだ。むしろ、“今の体”が存在する限り“次の体”を創れないという制約の枷が外れたことを喜ぶべきだ。
――――確かにな………。ならば、次はあのような醜態で滅びない体を創るとするか……あの小僧も、忌まわしき孫も次こそ滅ぼしてくれる……!
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――――これで解けた封印は3つ………バロール、サマエル、アポフィス。最後のハデスを除く3つはどうなっている?
――――我が眷属の1人が『悪神』……アンラ・マンユの“鍵”を先程見つけた。これで残るは2つ、お前達だけだ。ウロボロス、アメノトコタチ……
――――我らの“鍵”は既に把握済み。
――――その通り。後は邪魔者を消すのみ。
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――――サマエル、あの小僧の“力”をお前はどう見る?
――――《救恤》のイェグディエル………当代の七大天使が目覚めさせたものだろう。アレは面倒だ………種を問わず、あらゆる存在を我らの領域に近付かせかねない。あの勇者は、今世の『大特異点』の1人とみて間違いない。
――――消すしかあるまい。
――――だが、『暗黒龍』を片手間に倒す存在、生半可な相手では二の舞になるのは明白………
――――《傲慢》………いや、《憤怒》と《嫉妬》を向かわせるか……
――――否。あの世界は浄化され、悪魔は存在するだけで力を失う。何より、『大罪』には別の役目がある。
――――クラーク……クラーク=ガーランドを行かせるとしよう。
――――それだけでは心許無い。我が眷属も遣わせよう。アジ・ダハーカ、浄化された世界を再び闇で飲み込ませてくれよう………
――――ならば、他の“蛇”と“龍”も目覚めさせるとしよう。嘗て、オリンポスの神共に敗北した……ゼウスが封じた“奴”も………
――――決定だ。
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かくして、異世界ルーヴェルトには新たな刺客が送り込まれようとしていた。
その事に、勇者シロウはまだ気付いてはいない。
これにて聖国編は終了。
次回からは暫く番外編が続きます。
尚、本日中にもう1話を更新します。
予定では午後6時を予定としています。