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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
聖国編Ⅲ-????の章-
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第205話 ロルフ、ハッピーエンド?

――多分ミストラル王国 ジェダイト公爵家――


 勇者シロウが修羅場から緊急避難して数時間、場所は変わって多分今はミストラル王国にあるジェダイの公爵領の領主の屋敷。


 ロルフはここへ祖父のブラスを強引に連れてきた。


 本来なら事件の犯人一味のリーダーであるブラスを連れ回すのは非常識な事だが、そこは神の気まぐれな進言のお蔭で監視付きという条件で通ったのだった。



「「お帰りなさいませ!ロルフ様!」」



 双子執事に迎えられ、ロルフとロルフに引っ張られているブラスとその監視役はロルフの祖母、アリアドナの病室へ向かった。



「お祖母ちゃん、お祖父ちゃんを連れて来た………よ?」



 病室の扉を勢いよく開けて中に入ったロルフは、そこで信じられない光景を目の辺りにした。



「あら?遅かったわね、ロルフ?」



 扉を開けて最初に声を掛けてきたのは祖母のアリアドナ、だが、次に声を掛けたのは、ここには居る筈の無い人物だった。



「――――ロルフ?」


「か、母さん!!!???」



 アリアドナが入っているベッドの横で椅子(・・)に座っていたのは、3年前に死んだ筈のロルフの母親

であり、ブラスの一人娘のアリシアだった。



〈あ!ロルフの母は生きていた!〉



 ヘルメスはまだ遊んでいた。



「な…何で……!?」



〈ロルフは混乱した!〉



「ロルフ!!本当にロルフね!?話には聞いていたけど、こんなに大きくなったのね!!」


(この感じ……本物の母さんだ!!)



 母親に抱きしめられたロルフは、その温もりから紛い物ではない本物の母親アリシアだと理解した。


 一方のアリシアは、生き別れた一人息子との再会に大粒の涙を流しながら「寂しい思いをさせてゴメンね」、「こんなに立派になって」と、愛情のこもった言葉を零していった。


 そしてもう一方、ロルフの後に部屋に入ってきたブラスは、ロルフ以上の衝撃に襲われていた。



「アリアドナ………アリシア………」


「……パパ?」


「あら?随分と遅いお迎えね?今まで何処で何をしていたのかしら?」



〈おや?巨大火山が噴火しそうだ!〉



 ヘルメスは、面白がっていた。



「2人とも、生きて………」


貴方(・・)、ちょっと黙ってこっちに来なさい」


「………」



 120年ぶりに会う最愛の妻のドスのある命令には逆らえず、ブラスは黙ってアリアドナの前へ進む。


 そして、ベッドから起き上がったアリアドナは両手を組んでバキボキと音を鳴らしながら笑顔で久しぶりに会う夫の顔を見た。



「歯を食いしばりなさい♡」


「…………」


〈監視役の騎士達の心が折れた!〉



〈上空を通りすがろうとしたドラゴンが一目散に逃げた!〉



〈ロルフは恐怖で気絶しかけた!〉



〈アリアドナはデレた!〉



〈しばらくお待ち下さい!〉






「本当に…本当に待ってたのよ……」


「ああ、すまなかった…」


「パパ、ロルフをちゃんと抱いてあげて?」


「ちょっ…!人前で恥ずかしいだろ!!」


「……ロルフ、ありがとう」


「お祖父ちゃん……」



 恥ずかしながらも、ロルフはブラスに優しく抱きしめられた。


 この夜、ひとつの家族が長い時を経て新たな時を刻み始めたのだった。


 約1名、忘れられているが…



「アリ…シア……何時まで…椅子を……?」



〈椅子が喋りだした!〉


〈椅子はジェダイト公爵だった!〉



 その晩、ロルフとその家族はささやかながら家族団らんの時を過ごしたのだった。


 外を見れば、何時にも増して美しい銀雪が降っており、まるで彼ら一家を祝福しているようだった。




「そういえば、何で母さんは生きてるんだ?あの時、死んだのを確認してお墓に埋めたのに…」


「実は死んでなかったのよ。珍しい病気で仮死状態のまま埋められたところを、通りすがりの神様に助けてもらったのよ。応龍様っていう龍神様に。」


(――――応龍、殺す)


「あと、一緒にいた医者のスプロット先生に」


「…………」



〈真の黒幕は大魔王だった!〉



「…………」



 ブラスも薄々気づいているが、「実は知っていた」という言う意味ではヘルメスも共犯である。


 ギリシャ神話で有名な『オリンポスの十二神』の1柱であり、神々の伝令役、つまり情報の神である。


 多才で頭もよく、伝令神(情報神)でありながら風神、商業神、音楽神、道祖神、冥府神、旅人の神、スポーツの神、牧羊の神、言葉の神など様々な神格を持っており、困っている人がいれば見捨てられない好印象の一面がある神であるが、同時に泥棒や詐欺師の神でもあり、生まれてすぐに同じ『オリンポスの十二神』であるアポロンが飼っていた牛を盗んだ挙句、最終的には自作の琴とアポロンが持っていた神器「ケリュケイオン」を交換して友達になるなど狡賢い一面を持つギリシャ神話におけるトリックスターでもある。


 そんなヘルメスの情報収集能力は、士郎の《摩訶不思議な情報屋(エクセレント・リポーター)》と同等かそれ以上であり、異世界ルーヴェルトに関する情報については誰よりも精通している。


 当然、今回の一件における裏事情も最初から知っており、知っていて楽しんでいたのである。


 ちなみに、ヘルメスの聖鳥(*眷属の鳥)は雄鶏(・・)だったりする。


 さらに余談だが、日本では有名な七福神の“ある神”の起源は、一説によればヘルメスだとされている。












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 余談、

 ロルフ達が温かい空気に包まれている頃、公爵邸の来賓館の一室では1人の少女が苛立っていた。


「ちょっと~!!絶対、私のこと忘れてるでしょ!!??」


 元・クラン帝国皇女マルグリットは、ロルフにずっと放置されている事にキレていた。










 ロルフのお母さん、応龍に拾われた後は対価として3年間メイドをして暮らしていました。


 これにて聖国編本編は一応終わりです。


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